週末あたりから、ネット上の日本語圏でやたらと「ホームタウン」という語を見るようになり、それが「移民がー!!!!!」っていうパニックと重なってて、「なんだこれ」と思っていたのだが、ガザ・ジェノサイドで手一杯&頭もいっぱいで、22日に封切られたドキュメンタリー映画も初日に見たんだがそれについて書くこともできていないなかで、目の端にとらえるくらいしかしてこなかった。
それが今日、電脳塵芥さんで検証記事が出ているのを見かけ、おかげでようやく、だいたいの経緯が把握できた(気がする。わけわかんないままだけど)。
とにかくこれ、わけわかんないのは、そもそもJICAが使っている用語の「ホームタウン」が意味不明であるというところから始まってる。何の話をしているのかわからないときに、「何の話をしているのか、説明を!」と呼びかけるのではなく、その意味不明な用語を好き勝手に解釈してパニクっている人たちが引き起こしている大騒ぎがネットで肥大化しているわけで、なんつうか、虚無の上に虚無を重ねても虚無なんすよ。豆腐の上に豆腐乗っけても豆腐でしょ。ねぎとかしょうがとか醤油とかがないと冷奴にはならない。何の話だ。
JICA語の「ホームタウン」については意味がわからないままだが、hometownは「故郷」っていうか「出身地」の意味である。あるいはスポーツチームの「拠点(とする町)」。
例えば今BBC Newsを探してみたら、下記の記事がある。
Depeche Mode fans call for hometown recognition
2 August 2025
https://www.bbc.com/news/articles/c4gzvvgyejpo
これは、デペッシュ・モードというバンドのファンが、出身地(エセックス州ベイジルドン)に記念の壁画なり何なりを作って、バンドを顕彰し、バンドのファンがいわゆる「聖地巡礼」ができるようにしようと言っている、という記事である。
あと、これ。
Lemmy mugs created in Motorhead singer's hometown
6 August 2025
https://www.bbc.com/news/articles/c620j1g4e17o
2015年に没した*1モーターヘッドのレミーの出身地が、焼き物の街であるストーク・オン・トレントで、そこの製陶業者(窯)がレミーを記念するデザインのマグカップを作った、という地域ニュースである。5月には銅像もできていて*2、「レミーの出身地」が没後10年にして盛り上がっている、ということか。(でも彼の活動拠点は米国のハリウッドだった。自宅もそこ。)
それとこれ。
Tour de France Scot hailed a hero in his hometown
30 July 2025
https://www.bbc.com/news/articles/c07p99kglp9o
これも、ツール・ド・フランスで活躍したスコットランド人の選手が、出身地(故郷)でたたえられている、という記事だ。彼はこの町のサイクリングクラブでトレーニングしていて、彼が活躍したことで次の世代が触発されるだろう、といった地域ニュースである。
いずれも、誰かの「出身地」をいうときにhometownという語が使われている例だ。「現在の拠点」ではない。
最初の例のデペッシュ・モードは、バンドとして成功したときには故郷 (hometown) のベイジルドンを離れてロンドンを拠点としていたはずだし*3、モーターヘッドのレミーは英国を出て米国のLAを拠点としていた。しかも、「LAのロックスター」なのに豪邸ではなく小さなアパートに住んでいたことで有名だ。レミーは国境を越えているから「移民 immigrant, migrant」だけど、hometownはストーク・オン・トレントであって、移住先のLAではない。
7月に亡くなったオジー・オズボーンも、ミュージシャンとしては長くビバリーヒルズに暮らしていたけれど(ふなっしーが訪問してたよね)、最後は故郷である英国のバーミンガムに戻っていた、というのを、亡くなったときのBBC Newsでやっていたけれど(ラジオで聞いた)、ついでにオジーについての英語版ウィキペディアでhomeの用例を探してみると次のようになってる。
The original Black Sabbath line-up of Ozzy, Tony Iommi, Geezer Butler, and Bill Ward reunited in November 2011 for a world tour and new album. Ward had to drop out for contractual reasons, so the project continued with Rage Against the Machine's Brad Wilk stepping in for Ward on drums. They played their first reunion concert in May 2012, at the O2 Academy in their hometown Birmingham.
...
In January 2016, the band began a farewell tour, titled "The End", supposedly signifying the final performances of Black Sabbath. The final shows of The End tour took place at the Genting Arena in their home city of Birmingham on 2 and 4 February 2017, where Tommy Clufetos replaced Bill Ward as the drummer for the final show.
バーミンガムは「シティ」の格がある町・都市なのだが、hometownも使われるし、home cityという表現もあることがわかった。すばらしい。濡れ手に粟だ。
一方で、オジー・オズボーンにとって、長く拠点としていたビバリーヒルズはhometownではない。
となると、例えばナイジェリアのラゴス出身の人が日本の東京都杉並区に住むとして、hometownと呼ばれるのはどこか。2秒も考えればわかるだろう。ラゴスである。
だから、JICAの「ホームタウン」という用語がトンチキなことは別として、「日本の〇〇市が、アフリカからの移民のホームタウンになる」という文は、完全に意味不明なので、取り合う必要がない(「何かの勘違いでしょう」と指摘すればよい)、といえる。
のだが。
しかも発端がGoogle翻訳というのを知って、私は膝から崩れ落ちたよ。崩れ落ちているヒマなどないのだが。私の頭の中はテトリスががんがん積みあがってる状態で、とにかくひとつひとつ片づけなければならないのに、崩れ落ちていたらそれもできない。
それ以上にショッキングなのはJICAの英語のセンスのなさなんだけど……英語使える人、いるよね、さすがに。意思決定層にも。
以下、Twitter/Xにとりあえず連投したものの転記。
「JICAアフリカ・ホームタウン」に関するデマについての拡散の流れ https://t.co/tVqjDB0W7b
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
この件、大騒ぎのもとって、ひょっとして「英語記事のグーグル翻訳」だったの……? (^_^;)
※画像はリンク先ブログに含まれているものより。ただしユーザー名などはマスク。 pic.twitter.com/CeqpxBUzwN
JICAが勝手に使ってるカタカナ語の固有名詞の「ホームタウン」(意味不明)を、現地英語メディアがそのまんまhometownと英訳(JICAの資料でもそうなってるという話なので、現地メディアに罪はない)→それを日本で英語を読まない・読めない人がグーグル翻訳にかけたら「故郷」と訳出されが→大騒ぎ
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
※最後の方「訳出されが」は制限文字数に収めるときの編集ミスで、「訳出」です。「訳出されてそれが」と書いてあったのを編集したんだけど、なんでこうなった。
ていうか、Google翻訳が吐き出している「アフリカ諸国の『故郷』」という珍妙な日本語の段階で「だめだこりゃ」判定しろよ。意味わかんないでしょ、「諸国の故郷」って。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
例えば「私の故郷」が名古屋だとして、「名古屋の故郷」は意味不明でしょ。「故郷の名古屋」にすれば「の」は《同格》だけどさ。
↑↑↑↑↑↑これ、重要↑↑↑↑↑↑
普通に読まれる文として書かれた英文*4を日本語に訳したときに、日本語として読んで何を言っているかわからないのは、9割以上は自分の解釈ミス・誤訳です。このケースでは「故郷」が誤訳ですね。「(JICA用語の)ホームタウン」であって「故郷」ではない。
それはテクストに書かれているんですよ。Google翻訳は捨象しちゃうかもしれないけど。
さらに、上記ブログでさっきのGoogle翻訳の次に掲示されているスクショ(名前などはこちらでマスク)。ユーザーがユニオンフラッグ掲げてるから英語読める人ということなのかもしれないけど、JTの原文のAfrican nationsを勝手に「アフリカ人」って訳出して騒いでる。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
ダメすぎる。 pic.twitter.com/VmiWnZNVNT
これは、おそらく、「アフリカ諸国の故郷」だと意味不明なので、そこから原文を読み直すという方向に行かずに、「故郷」を基準にして「アフリカ諸国」を勝手に「アフリカ人」に置き換えて、それでパニクってぎゃー、というパターンと思われ。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
原文に書いてないことを勝手に読むなよ。(呆)
しかもこれ、ジャパン・タイムズの見出しのhometownという語には引用符ついてるじゃん。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
引用符読めよ、「他人の発言をそのまま引用してますよ」「ひょっとしたら独自の使い方してる箇所ですよ」っていう明示なんだから。
この引用符、1つ前のエントリにも出てきてるので、そっちも見ておいていただければと。
hoarding-examples.hatenablog.jp
まあ、元凶は「ホームタウン」というカタカナ語ですけどね。それが一般企業ならまだ「あー」って感じだけど、JICAだよ、JICA。日本って、ここまで英語できない、っていうか英語というものに関してセンスないのか。絶望的だな、まじで。日々、ガザの英語話者のすばらしい英語に接しているとなおさら。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
ブログに書く。はてブのほう。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2025年8月27日
こんなことをやってる時間はないのに。
こんなものをみているじかんはない……
*1:もう10年になるのか……。
*2:北アイルランドで量産される誰だかわかんない銅像を見慣れている目には新鮮なことに、誰だか一目でわかる。
*3:ファンが「ロンドンの聖地マップ」みたいな本を作っている。https://walkingintheirshoes.info/
*4:読んでも意味があまりよくわからないように書かれている芸術性の高い英文は話が別。ジェイムズ・ジョイスとか。

