Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

'a friend of mine' 型の表現、完了形の動名詞、have yet to do ~、that節の繰り返し、ずっこけ分詞構文かもしれないもの(パム・ボンディ解任)

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米トランプ政権のパム・ボンディ司法長官がクビになったというニュースがトップに来ていたので、リンク先の記事をぼーっと読んでいたら(まともに読もうという気はない)、実例を採取できてしまったのでメモしておく。ほか、ちょっと気になるところも含めて。

 

Bondiの読み方を確認する

「パム・ボンディ」は英語で書けばPam Bondiである。Pamは人名(女性名)のPamelaの愛称で、Bondiはイタリア系の苗字だそうだ。

このBondiについて、以前ボンディ司法長官の言動が何かニュースになったときに日本語圏で「読み方が間違っている、『ボンディ』ではなく『ボンダイ』だ」という主張を見かけた。固有名詞の読み方は人それぞれ・場所それぞれで、「この綴りなら必ずこう読む」ということはない*1

確かに少し前にテロ攻撃があったオーストラリアのビーチはBondiと書いて「ボンダイ」と読む。このように、何通りかの読み方がありうる固有名詞については実際の発音を細かく確認することが必要になる。一般人だと本人に聞かないと100パーセント確実なことはわからないが、ニュースに名前が出てくるような人ならニュース映像で確認すればよい。つまりYouTubeで検索するという手段を使えばよい。

ここで注意が必要なのは、自動読み上げソフトなどで作成されているYouTube動画の音声は、固有名詞の読み方に関してはあてにならない、ということだ。そういうのを引き当ててしまうのを避けるためには、大手報道機関が公式アカウントでアップしているニュースクリップに絞り込んで探せばよい。ニュースなら、冒頭部分で局のアナウンサーが当該人物の名前を読んでいるはずなので、確認には30秒もかからない。

私がさっき調べてみたところ、NBC Newsのクリップが見つかった。冒頭のジングルから最初の挨拶を経てキャスターが何かぺらぺらとしゃべったあと、11秒のところで(カタカナにすれば)「パム・ボンディ」と言っているのが誰でも聞き取れると思う。

www.youtube.comというわけで、ボンディ司法長官の場合、Bondiは間違いなく「ボンディ」である。

 

今回の記事はこちら

さて、記事はこちら

www.bbc.com

BBC Newsは基本的に「ドナルド・トランプ大好き」なメディアなので*2、パム・ボンディ解任のこの記事も、冒頭は「トランプさんがー」の連呼みたいなことになっててよくわからない。トランプの筋の通っていない言動を筋が通っているかのように見せかける仕事は大変ですね、という印象でしかないのだが、もとより、(英文のサンプルを探して)ぼーっと読んでるだけなので内容はどうでもいい。

 

"a friend of mine" 型の表現

最初の実例は、ずーっと下まで進んだところにある次の箇所。

https://www.bbc.com/news/articles/ce843ge47z4o

Another Republican critic of Bondi's, South Carolina representative Nancy Mace, accused her of having "stonewalled every effort to hold the guilty accountable" and "seriously undermined" Trump with her handling of the files. 

英語で「私の友人」と言うとき、次の2通りの表現ができる、ということは多くの人が知っているだろう。

  She's a friend of mine

  She's my friend

どちらも「彼女は私の友人である」、つまり「あの子なら友達だよ」を言う表現だ。「使い分け」に血眼になる系の日本の英語教育では細かいことを言うかもしれないが(「"my friend" というと、その子ひとりしか友達がいないみたいに聞こえて変ですよ」など……私も学校でそう教わっている。笑止)、実際には両者の意味は同じで、ニュアンスだけが異なるのだという。ただし、もとより1人しかいないことが前提とされているときは、"a friend of mine" 型を使うのはおかしいので、She's a girlfriend of mine. とは言わない(girlfriendは通例1人しかない存在なので)。こういうのの使い分けは、使い分けが必要なレベルで英語を使うことになる人は大量の実例に接しているうちに自然と身についていることが多いと思う。

というわけで、上記引用で太字で示した "another Republican critic of Bondi's" だが、これは "a friend of mine" 型の言い方で「また別の、共和党内のボンディ批判者」の意味。同じことを "my friend" 型で表せば、another Bondi's critic in the Republican Party とでもなるだろう。不格好だ。だから "a friend of mine" 型を使っているのだろう。

ここで注意しなければならないのは、another critic of Bondi's であって、another critic of Bondiではない、ということである。"a friend of mine" という表現では、ofの直後は目的格 (me) ではなく、所有代名詞 (mine) を使う、ということと紐づけてしっかり確認しておきたい。ちなみに私はこれをまあまあよく間違える。ごちゃごちゃ書いたものを推敲して書き直したりしているときに落としがちな「アポストロフィ+s」である。

 

完了形の動名詞

ついでに同じパラグラフで実例を見ておくと、下線で示した "accused her of having 'stonewalled ..." は《accuse + 人 + of + doing》の構文と、《完了形の動名詞》の合わせ技。文の述語動詞 (accused) より前に起きたことを言うために、完了形にするのである。「かねがねstonewallしてきたとして彼女を批判した」ということだ。

Stonewallというと、日本語圏では1969年の「ストーンウォール暴動/反乱」で知られている語なので、それを連想してしまうと意味が取れないかもしれないが、ここでは固有名詞ではなく(「ストーンウォール暴動」は、その舞台となったゲイバーの名称にちなんだ言い方)、動詞として使われている。stonewallで「議論を妨害する」「話をさせないようにする」の意味だが(まさに「石で壁を作る」ということ。日本語だと「ケンもホロロ」か)、 "stonewalled every effort to hold the guilty accountable" 「加害者に責任を問おうとする取り組みをすべてstonewallしてきた」というこの実例を見たついでにCambridge辞書を見てみると、これが他動詞として使われる場合、目的語として《人》を取ることもあれば(「誰それの発言を封じる」的な用例)、《物事(議論、など)》を取ることもある(「私の呈した疑問点への回答は拒否された」といった用例)ということがわかった。微妙に英米差もありそうだから、より突っ込みたければコーパスで英米比較するのがよかろう。

ああ、辞書っていいなあ。特にウェブ版はスペースの制限がないからいろいろ載ってる。ここまで気にしなければならないのは、自分で英文を書く人だけだが(翻訳者も含めて……最近の人は辞書ひかずに「翻訳(自認・自称)」してるっぽいけど、翻訳する人は普段から辞書ひきましょうね。湖に優雅に浮かんでる白鳥は、水面下では必死の努力をしているということを忘れずに)。

 

yet to do ~がbe動詞じゃなくてhaveを伴っている……

同じスクショ画面からもうひとつ。

Survivors also told the BBC that Bondi had yet to meet them or respond to their emails about Epstein's wrongdoing, and that the matter had become a political liability for Trump. 

冒頭の "survivors" はジェフリー・エプスタインの被害者たちのことをいう。英語では最近、暴力の「被害者」をvictim扱いせず、「過酷な状況を生き延びた人」と言い表すことが一般化していて、ニュースでもsurvivorを使うことが標準となっている。この2つの表現は意識的に使い分けられているものなので、特に暴力の被害という文脈でものを書くことになれば、違いを認識しておくことは必要だ。こちらが参考になる

survivors.org

本題はそこじゃなくて、that節内。

Bondi had yet to meet them 

これを見て「え、be動詞じゃないの」と思ったあなたは私の友人。調べたんですよ。単にウェブ検索しただけだけど。そしたら英語学習系掲示板の大手のスレッドが出てきて、1つ目の回答は難しすぎて読んでてわかんなくなってきたんだけど(have yet to doはhave to doの意味と誤読される、というのはわかるが、「道義的責任」となるとよくわからない。まだ修行が足りてない。I'm yet to learn...)、2つ目が: 

I would say that in North America the standard usage in the sense of "haven't yet done" is always "have yet to."

In Britain, however, they almost invariably write and say "is yet to." No idea why -- I've lived here 20 years and it still sounds completely wrong to me. After all, the auxiliary for almost any verb in English is "have" not "be."

phrases - "be + yet + to-infinitive" vs "have + yet + to-infinitive" - English Language & Usage Stack Exchange

英米差……!!!!! ひょっとして、おまえか!!! 

 

that節の繰り返し

あと、下線で示した "that" は、tellの目的語のthat節が2つ以上ある場合(that節の繰り返し)、2つ目のthatは省略されない、という例の謎ルールのやつ。これも私、よく間違える。下記で下線で示してある構造に注意。

Survivors also told the BBC that Bondi had yet to meet them or respond to their emails about Epstein's wrongdoing, and that the matter had become a political liability for Trump. 

なお、この記事、英文の形・形式しか見ていないので、内容はわかりません。どうせ支離滅裂でわかんないんだし。トランプに忠誠を尽くしてトランプの名前を隠蔽して資料を公開したらトランプにクビにされたんでしょ。意味不明。そのうえ、ほんとに心底どうでもいい。

 

ずっこけ分詞構文

さて、もう少し下までぼーっと眺めていると、当ブログの隠れヒット・コンテンツ、「ずっこけ分詞構文」が出てきた。が、よく見ると「見かけ上のずっこけ分詞構文」かもしれない。これは故・江川先生にお見せしたいレベルの実例だ。

https://www.bbc.com/news/articles/ce843ge47z4o

スクショで3パラグラフ目: 

Since returning to the White House last year, commentators and political strategists had remarked that Trump's approach in his second term had been more disciplined and less chaotic.

冒頭のsinceについて、ちょっと考えてたらわかんなくなってきたんで的外れなことを言うかもしれないんですが(その場合、コメントでご指摘いただけると幸甚です)、これが前置詞ならば "Since returning to the White House last year" は《前置詞+動名詞》の句になり(その場合「ずっこけ分詞構文」ではない)、sinceが接続詞とすれば、これは《接続詞を加えた分詞構文》(江川泰一郎『英文法解説』p. 345)ということになるはず。

ごちゃごちゃ考える前、一読した段階では私はこれは後者、つまり《接続詞を加えた分詞構文》だと判断していて、それゆえ「ずっこけ分詞構文」と考えた。文の主語である "commentators and political strategists" は、 return to the White Houseしていないので。

return to the White HouseしたのはTrumpで、それはthat節内に出ているのだが、これが単にthat節内の主語ならば、分詞構文が長い文の文頭(主節の前)に出たことによって見かけ上ずっこけてるということになるのだが: 

  He told me that his brother met the gentleman while staying in Paris.

  → While staying in Paris, he told me that his brother met the gentleman. 

ここではthat節内での主語はTrump's approachであり、Trumpではない。

Since returning to the White House last year, commentators and political strategists had remarked that Trump's approach in his second term had been ...

となると、sinceは前置詞で、Since returning to the White House last yearは《前置詞+動名詞》なのかなと思うのだが、それにしたってreturningという動名詞の意味上の主語 (Trump) が主節の主語 (commentators and political strategists) と一致していないので、破格っちゃー破格ではあるだろう。

何にせよ、ちょっと崩れてておもしろい実例である。

というか、こんな英文を翻訳者が書いたら、チェッカーから何を言われるかわかったもんじゃないかもしれない。「こんなひどい英語を書く奴に翻訳させるな」くらいまで言われそうだ。

 

なお、パム・ボンディ解任については、前島和弘教授の下記解説が腑に落ちた。

「第2次政権の閣僚は、トランプ氏への忠誠心の高い人ばかりを集めたので、ヨイショがうまい一方、能力的には劣るんです。で、そろそろ化けの皮が剥がれてきた。閣僚たちがトランプ氏にとってプラスと思ってやることが、あまりの太鼓持ちで世間に滑稽に映り、一線を越えるとトランプ氏からの評価も下がる。忠臣でも、目立つミスが一定程度重なると、一人ずつ追放されるわけです。悲劇なのか、喜劇なのか」(上智大教授・前嶋和弘氏=現代米国政治)

……

このままでは「そして誰もいなくなった」となりそうだが、「トランプ氏をヨイショする人は次から次へと出てくる。ただ、同じタイプなので、閣僚に就いてもしばらくしたら、また解任となりかねませんが……」(前嶋氏)。

狂乱のトランプ大統領 終わらない米政権の閣僚解任ラッシュで早くも挙がる“次のクビ”候補|日刊ゲンダイDIGITAL

こういう専門家の指摘を読むにつけ、BBC Newsの異様なトランプ推しっぷり(「トランプは特におかしなことはやっていない」という論調)は際立ってくる。何しろ、ここまででスクショした部分に入っていたように「第一期のころの回転ドア状態での解任祭りに比べたら、今はまとも」みたいなことを書いてるんだから(しかもマイケル・「モスコー」・フリンとFBIのコーミーを同列に扱うという恥知らずなスピンまでかまして)。

 

情報の力点を置き、焦点を当てるべきは、トランプが誰を解任するとかいう以前の問題だろうに……

www.businessinsider.jp

米政治ニュースメディアPoliticoによれば、2025年初め、国防長官に就任したばかりのヘグセスは、「lethality(殺傷能力)に関わらない部署はムダ」という考えに基づいて国防総省の民間人保護部門を縮小・解体した。

中東情勢を左右するトランプ腹心、ヘグセス国防長官の「異様さ」を日本人はまだ知らない。米国内の批判“10のポイント” | Business Insider Japan

 

www.sankei.com

米紙ニューヨーク・タイムズが軍関係者の話として伝えたところによると、ヘグセス氏とジョージ氏は、軍内の黒人や女性の人事を巡る意見の相違などが積み重なり、関係が悪化していた。3月末には、トランプ米大統領に影響力を持つとされる女性右派インフルエンサーのローラ・ルーマー氏がSNSで、ヘグセス氏がジョージ氏の解任を検討していると投稿していた。

ヘグセス米国防長官、陸軍トップを解任 任期1年以上残し、人事巡り対立の見方も - 産経ニュース

 

 

 

 

*1:それをネタにしたモンティ・パイソンのスケッチがあるくらいである……ただし非常に微妙な、ブラックジョークを突き抜けてあっち側に行ってるジョークなので閲覧は推奨しない。「ラグジュアリーヤッチト」のスケッチですが。

*2:1度目の大統領選のときに、共和党内予備選の段階で、ただの候補者に過ぎなかったドナルド・トランプの発言を逐一トップニュースにしていたくらい、トランプ推しのメディアである。同様に推してたのが、最も勢いがあった時期のフランスのマリーヌ・ルペンだ。エマニュエル・マクロンが大統領になったときの仏大統領選挙など、BBC Newsが報じたのはルペンの発言ばかりだった。対抗馬だったメランションの発言はちょろっとあったが、マクロンなど、最有力候補だったのに顔と名前すら投票当日まで大きな記事にはならなかったくらい。まともにニュースを追おうと思ったらBBCじゃなくてFTとか見てないとダメ。英文のサンプル集めならFTのペイウォールの向こうまで行かなくてもBBCでいいと思うけど。

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