よく誤訳されている、earlier this month[year, week, etc] というフレーズについて、一発で理解できそうな例が流れてきた。特にガナサポであれば、理解した瞬間に頭の中でアンリが美しいステップを刻み、知識が足先で*1ふわりと踊らされてゴールネットを揺らすであろう。
Arsenal face Paris Saint-Germain in Saturday's UEFA Champions League final, bidding to win the competition for the first time in their history.
— Sky News (@SkyNews) 2026年5月29日
Victory in Budapest would also see them complete a league and cup double, having secured the Premier League title earlier this month.… pic.twitter.com/TYdnKU2iR0
第2文。
Victory in Budapest would also see them complete a league and cup double, having secured the Premier League title earlier this month.
おや。earlier this monthにだけ目を奪われて気づかなかったけど、この文、てんこ盛りじゃんね。
Victory in Budapest would also see them complete a league and cup double
下線部のwouldは《仮定法》ですね。というのは主語の "victory in Budapest" というのは実際に起きたことではなく、これから起きるかもしれないこと(起きると仮定されること)で、全体として「それが起きた場合はこうなるだろう」という意味。《if節のない仮定法》です。
太字で示した部分は、《感覚動詞+O+動詞の原形》の形。
そしてこのseeがまた、日本における英語学習界隈で言うところの「生きた英語」というか「ネイティブらしい表現」というか。
解説するのは面倒、というか、このエントリはearlier this monthについてだけ書くつもり、つまり10分くらいで書き終える予定で書き始めているので、あとから発見したseeに時間かけられないから、各自で辞書でご確認いただきたい。「seeなんて簡単な単語、辞書なんて引くわけないじゃん」という方こそ辞書引いてほしい。どの辞書であっても、かなり後ろの方に示されている語義に「~を引き起こす」的なものがあるはずだ。そのseeである。
つまりこの文は「ブダペストで勝利した場合は、アーセナルはリーグとカップの二冠達成となる」といった意味。
後半。
having secured the Premier League title earlier this month.
にょほー。下線部は《完了分詞構文》。「詰め込み教育にNO!」的なことで「ゆとり教育」導入となったときに、「悪しき受験英語」としてまっさきにやり玉に挙げられた「ネイティブは使わない複雑な英文法」とされた文法項目の代表格ですが(私は当時、そういう主張の煽動文を読んで呆れて物も言えなくなった)、この通り、普通にばりばり使われます。さすがにこれが「実際には使われない」という認識は今は消滅している、というかなかったことにされているはず。
そして本題の earlier this month. これは、非常に頻繁に「今月初め」と誤訳されるのだが(Yahoo! Japanに配信されている「海外メディア」日本語版の翻訳記事などでも散見される)、「今月初め」ならばearlierと比較級にする必要はない。これが比較級になっているのは、「今の時点より早い時点」を言うためで、つまりearlier this monthは「今月の、今の時点より早い時点」、すなわち「今月これまでに」。日本語ではこういうときは普通単に「今月」と言う。
これはmonthでなく、weekやyearなどほかの単位でも同じである。
下記2文を比べてみてほしい。
The suspect was arrested early this month.
(その容疑者は、今月初めに逮捕された)
Charged with murder earlier this month, he will make a court appearance on Friday.
(今月殺人罪で起訴されており、彼は金曜日に出廷の予定である)
というわけであの有名ガナサポの一言。
アーセナルは明日、欧州チャンピオンズ・リーグ決勝でPSGと対戦。それを前に有名ガナサポ曰く:
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2026年5月30日
「アーセナルはプレミアリーグの覇者となった。悲願達成だ……そして今、世界一丸となっての悲願達成を望んでいる――すべての戦争犯罪人が逮捕され裁かれることを」#ガザ市民のための声翻訳 #ガザ #Gaza https://t.co/5AnOKCLvYP
音楽家のユスフ・イスラム https://t.co/1MamVUmZTs の言葉。彼の改宗前の名はキャット・スティーヴンス。
— maybe_frills #EndTheSiege (@n0fr1ll5) 2026年5月30日
あと、キア・スターマー英首相もグナなので、日曜日は英国政治は何も動かないと思われ(政敵もみな気を使って、試合に集中させてくれるはず)。次期労働党党首の座を狙っているアンディ・バーナムは熱烈なエバトニアンで、以前、労働党の若手ホープだったときにメディアの一問一答インタビューで「英国首相として国を率いるか、監督としてエバトンを率いるか、あなたならどっち」という質問に「エバトン監督!」と即答して、そばにいたブレーンに咳払いされていた。
だから何、って話なんだけどね。ユスフ・イスラム/キャット・スティーヴンスが述べているようなことにこそ政治家は動くべきなのだが、スターマーもバーナムもこれには関心を持っていない。スターマーに至っては、旧ユーゴに関してのクロアチアのジェノサイド裁判でクロアチア側弁護団の一員だったようなプロなんだけどね。
*1:決して神の手ではなく。