Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「貴様、誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ」を、仮定法で表しなさい。

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。 2026年に入ってから、Amazonアソシエイトをやめました。これにともない、過去のリンクが無効になっているところろがあります。また、以降の記事では、代わりに楽天市場にリンクしていることがあります。

■目次■

 

【本編】

まさかこんな実例がニュースで流れてくるとは思っていなかったし、ましてやそれが米大統領の発言ということは、10年くらい前までは想定もされないことだっただろう。私が学校で英語を学んでいたころは「イギリス英語にキングズ・イングリッシュがあり、アメリカ英語にはプレジデンツ・イングリッシュ (President's English) がある」と言われて、JFKの演説などがありがたがられていたものだが、あのころの先生方がご存命だったら、今頃目を白黒させているに違いない。

 

何の話かというと、はてブでも話題になっている件である。まずCNN: 

b.hatena.ne.jp

記事より: 

トランプ氏は時折、相手をののしる表現を使い、計画されていた攻勢への不満を伝えた。……

ホワイトハウスは、電話会談の険悪な雰囲気についてコメントしなかった。この件については、米メディアのアクシオスが先に報じていた。

こんな調子で「相手をののしる表現」は直接は書かれていない。お上品であらせられる。

 

 他方、CNNに先行するアクシオス報道(後述)を参照しているTBS: 

b.hatena.ne.jp記事より: 

イスラエルによるレバノンへの攻撃をめぐり、アメリカのトランプ大統領が「誰もがあなたを憎んでいる」などとネタニヤフ首相を激しく非難したと報じられました。

……

激怒したトランプ大統領は「一体何をやっているんだ」とネタニヤフ首相を問い詰めたほか、「私がいなければあなたは投獄されていただろう。今や誰もがあなたを憎んでいる。そのせいで誰もがイスラエルを憎んでいる」などと述べたということです。

テレビで米大統領のスピーチなどを流すときに同時通訳者さんがこういうふうに日本語にしてるよね、という印象を受ける日本語である。つまり、メディアの制約の中で何とか処理しているのであろうという「激怒」の言葉。

原文はこんなおとなしいものじゃないんですけどね。

 

 続いて毎日新聞。これもアクシオスを参照している: 

b.hatena.ne.jp

記事より: 

米ニュースサイト「アクシオス」によると、トランプ氏は電話協議でネタニヤフ氏を「今や誰もがお前を嫌っている」「完全に狂っている」「俺がいなければお前は刑務所に入っていた」などと罵倒し、強い不満をあらわにしたという。

 二人称を「お前」としていて、かなりトーンがアレな感じになってきたけど、これもまだ、日本の大手メディアで許されている表現で最大限過激にしてみましたという感じで、原文のニュアンスとは違う。

 

だって原文、到底メディアに掲載できない表現なんですもの。放送だったら、例の親子喧嘩みたいに、「ピー」音がかぶされっぱなし。記事書いた人の投稿:  

 文法屋的にはここ。

《仮定法》の定番構文っすね。時制としては仮定法過去。

You'd be in prison if it weren't for me.

《if it weren't for ~》で」「~がなければ、~がなかったら」。直訳すれば「私がいなければ、あなたは刑務所の中にいるだろう」。

けど全体の口調としては、「いったい何のつもりだよ。頭おかしいだろ、貴様。誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ。こっちが貴様のケツ持ってやってっからって調子乗んな。貴様にはもう味方なんざいない。貴様のおかげで、イスラエルは誰からも好かれなくなってんぞ」くらいか。

 

【追記】英文法・語法的にはもう1つ。

Trump lit into Netanyahu

litはlightの過去形。light into ~は「~をどやしつける、~を一喝する」といった意味のアメリカ英語(たぶん俗語)。

 

アクシオスの記事はこちら。読むにはメールアドレスの登録(無料ニューズレターの受信)が必要です。

www.axios.com 

トランプとネタニヤフの電話会談の内情を知る人のうち2人に話を聞いているようで、その2人ともがトランプがFワードで罵倒していたと記者に語っており、その文言はMarc Caputo記者がツイートしている通り。

もう1人、記事にクレジットのあるBarak Ravid記者はイスラエル人で、昔ハアレツで仕事してて、そのあとイスラエルのテレビで仕事してたんだけどネタニヤフのご機嫌を損ねてクビになり、米国のベテランのジャーナリストが立ち上げた新興メディア、アクシオスに入ったという経歴の持ち主。私はハアレツにいたときから彼のTwitterをフォローしていたけど、気づいたらアメリカに行っててびっくりした。ちなみに徴兵されてたときは例の8200部隊にいた。そういう事情もあるんだろうけれど、「匿名の情報筋」頼りの彼の報道記事はあまり高くは評価されていない。今回のこの記事も「匿名の情報筋」の記事。

だから記事自体は、センセーショナルな発言(というかガサツな発言)を看板にしたクリック稼ぎと見た方がいいのかもしれないけど、さくっと "Israel no longer plans to strike Hezbollah targets in Beirut, an Israeli official told Axios." とかいう情報(どう解釈したらいいんだ、この否定文)も入っているので一応真面目に見ておいた方がいいのかもしれません。

 

【おまけ】

 

【追記: はてブ】

はてブ、ありがとうございます。トップページのかなりの部分がトランプの罵倒で埋められている……。

 

ブコメへの返信: 

「I'm saving your ass.」アメリカ人的には刑務所に入る=肛門が犯される、なんかな。

最初にどういう文脈で使われだしたかは私は知らないんですが(「遡ったら最初はシェイクスピアだった」ということもあり得る)、assは「人」のことを下品に描写する表現で、直接的に「お尻、ケツ」を言っているわけではないです。英語で、(意図的に)下品で粗野にした言い方で、「剛毅な人物、痛快な人物、快傑」のことをbadassって言いますよね、あのassです。

 

 ケツ持ち(saving your ass)って日本語でも英語でも意味が大体同じなのがびっくり

英語でも日本語でも謂れ・語源を確認する必要はあるのですが、英語に関しては上記のような次第で、両言語で意味がだいたい同じなのは、偶然のような気がします。こういう偶然があるからおもしろい。しかし私、日本語の「ケツを持つ」という表現をいったいどこで覚えたんだろう……ヤクザ映画の類かも(英語圏のギャング映画・西部劇の吹き替え翻訳を含む)。

 

8200部隊ってあのAIと電子戦の部隊か

です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Unit_8200

現在進行形でその問題が起きてて、相互フォローの人が巻き込まれていて大変だったんです。(;_;) 

ちなみにバラク・ラヴィドさんは: https://en.wikipedia.org/wiki/Barak_Ravid

彼の経歴・職歴を一瞥すればわかる通り、米国とイスラエルの関係は「AIPACがー」では片付かないくらいですね。Unit 8200上がりは米国の大学にもIT企業にも入ってますし。

 

真面目に翻訳するときのニュアンスとして、ヤンキーもののマンガのノリじゃないと適切ではないということなのでしょうか?

そもそもFワードてんこもりなので、真面目に翻訳するなら、基本的に粗暴な言い方にするのが定石ですね……。あと、ドナルド・トランプの場合(日本語の俗語で言う)「ヤンキーもの」というより、やくざ・マフィアものかと。『アウトレイジ』の「バカヤロウ」調というか。

www.youtube.com

こっちも読んでね

みなさまがたにおかれましては、こんな『アウトレイジ』みたいなのではなく、ちゃんとやってる翻訳も見ていただけますと幸甚です。

note.com

note.com

さらに輪をかけて真面目に、なおかつ友人たちの手も煩わせて作っているこちらもお願いします。

nofrills.base.shop

ちなみにトランプのFワード連発にネタニヤフがどう答えたかというと……

こういうことらしいです。

"Netanyahu told the American President to go to hell"

おまえら2人~連絡ゥー船に乗れーーーーー!!!!! (地獄への)

 

【さらに追記: 並んだ並んだあかしろきいろ】

 

毎日新聞さん、ちーっす(購読者)

 

【翌日追記: ブコメへのお返事など】

AxiosってUnit 8200上がりが記者やってんのwwwwwwwwwwww そりゃすぐ情報出てくる訳だわ

あそこはそういうウェブ媒体。英文法に興味がない方も、今日はこれだけは覚えて帰ってください。

 

以前は放送局がトランプ大統領の発言を吹替えて報じる際にはジャイアンのような声で元発言に近い翻訳だったのが、ある頃からどの局もソフトな翻訳で物静かな男性の声に変わった気がする。(略)

(「自慢」とかじゃなくて単に事実として)うちにテレビがないので、こういう視点はなかった! ありがとうございます。そういえば、2024年の大統領選でまだバイデンが二期目に挑むという段階だったときの日本のニュースでの吹き替えが、在日外国人の英語話者の間で話題というかネタになってました。バイデンが「正義の味方」の声で、トランプが「悪役」の声だ、と。

 

トランプ発言は内容より「べらんめえ口調」が本体。かつての格調高い大統領英語を嫌う赤首層を狙ってTVショウで磨いてきた演技だから。S.BegleyやT.Markmanが指摘したように、90年代までのトランプ語法は流麗精緻な正統派。

映画『ホーム・アローン』にカメオ出演したときは、「上品な物腰の紳士」でしたよね。実際にはあの頃、ジェフリー・エプスタインと懇意にしていたのですが。

 

NHKのアナウンサーが真面目な顔して原文ママ訳で伝えたら視聴者は白目むきそうだなとは思った良記事

おほめにあずかり恐縮です。CNNが、情報源から伝えられている発言そのものを記事に掲載せずに、「相手をののしる表現」と丸めてるのはこういう事情かと。

 

 

『どう解釈したらいいんだ、この否定文』はThe other sideを読むとネタニヤフの発言として「ヒズボラが攻撃してこないかぎりベイルートは攻撃しないよ!(でも南レバノンでの作戦は続けるよ!)」と書いてて分かってやってる感

 

The other sideというのは記事の下の方にあるコーナーで、そこには確かにそう書いてあるのですが、問題の否定文を含むパラグラフ全体が "Israel no longer plans to strike Hezbollah targets in Beirut, an Israeli official told Axios." であることと、レバノン政府(ヒズボラではなく政府)との関係を考えると、いろいろ……。レバノン南部が今最大の注視を必要としていることは確かです。

ベイルートはこれがあります。

 

 

実際に言ったセリフを別の仮定法でパラフレーズしなさい:(1) Had I not helped you, you'd be sitting behind bars. (2) But for my help, you'd be sitting in a cell. これだと下品さ/頭悪さが 3 割減になっちゃうけど…

 

帰結節までパラフレーズされててすごい! 

(1) Had I not helped you は《ifの省略》とそれに伴う《倒置》が生じている形で、元はIf I had not helped youと読み解くと納得できると思います。実際にはHad I not... の省略&倒置の形でよく接する構文。

(2) But for ~は、私は高校のときはIf it were not for ~(ifの省略と倒置があればWere it not for ~)と単純に置き換えられると習いました。ついでに、Without ~も同じ。空所補充問題ならカッコの数で考えろ、と。これを踏まえて、空所補充問題は1問15秒以内でこなすという無駄な訓練もしてました。そのころ覚えた例文: 

  If it were not for your help, I would fail. 

  Were it not for your help, I would fail. 

  But for your help, I would fail. 

  Without your help, I would fail. 

  (あなたのご助力なしでは、私は失敗するでしょう)

 

一般教書演説の言葉選びからして、妙に俗っぽいというか格調をどこかに置き忘れてきたような印象を与えるんだよな

大統領がトランプでなければ、一般教書演説はチェックして、英語教材のネタを集めるものなのですが……(仮定法)

 

べ、勉強になるなぁ(ウソツケ

マジレスすると、米大統領の下品な発言はわざわざ探す必要はないかもしれないけれどたまたま遭遇した場合は勉強の素材として消費して、自分のために使えるものは使った方がいいです。これでも一応、英語は英語。それもいわゆる「生きた英語」。「こんな口の利き方をする奴と遭遇したら、関わり合いになる前に全力で逃げる」という指標にも。

 

日常で使える英会話だなあ(棒

使っちゃいけません(真顔)

 

でもこの品性下劣な俗っぽい言い方がトランプ支持者には受けてるってことなんだよね。

「俺たちの」感があると言いますけどね。「下劣」かどうかは別として庶民と同じ口の利き方をするという選択を戦略としている政治家は日本にもいますね。名古屋の河村氏とか、もう故人ですが東京には「寅さん」みたいなしゃべり方の民主党の国会議員がいた。

 

このforはなんなのってchatgptに聞いたら慣用表現です意味はないですって

Were it not for ~の構文・慣用表現で「意味がない」のはitの方ですね。このforは《原因・理由》を表すforです。『ジーニアス英和辞典』(第6版)のforの項では20番目に上げられている語義(812ページの右列一番下)。

ChatGPTもそのほかのLLM/AIも、英文法の質問を日本語でするとめちゃくちゃな答えが返ってくることがまあまあ多いです。おおもとの教師データが貧弱だったんじゃないかと思う。江川とか安藤とか安井とかの定番を食わせてないのかも。英語圏の英文法解説はFowlerなどが著作権失効で元々フリーな状態でウェブにあるので、それを参照しているんだと思うけど、LLM/AIに英語で英文法の質問をすると普通に文法書みたいな答えが返ってきます。

 

今回の発言が本当なのかは未確定だけど、以前アメリカのニュースで「これからトランプ大統領の言葉が流れますが不適切な表現を含むので留意ください」と前置きしてたのは笑った。

配慮があってすばらしいですね。前置きがあれば、子供がいる場では音声ミュートにできますし。

 

日本の報道では翻訳フィルターで大変マイルドな表現になっております

俗に「翻訳フィルター」と呼ばれているものは、この場合は実際には「報道機関の用語基準フィルター」であることにご留意ください。

より一般的な「翻訳フィルター」には、「女は常に《だわ・のよ》でしゃべる」というのがあります。例えばカズオ・イシグロの『遠い山なみの光』の翻訳は、素晴らしい翻訳家による1980年代の訳業なのですが、昭和30年ごろの長崎のうどん屋のおばちゃん(映画で柴田理恵が演じていた役)までも「だわ・のよ」。東京から来た佐知子(二階堂ふみ)の山の手言葉との違いは原作(英語)でもわからないので、これは映画が映画にしかできないことをしててすごいという面もあるのですが。

 

"I'm saving your ass." これはprisonを踏まえての一言だから、『ケツ持ってやってる』よりももっと下品な感じだと思う。

ご自身でご自由におやりください。

 

 こういうのってなんで文面まで漏れるんだ?それはともかく原文味わい深いな。

電話のあちら側かこちら側かはわかりませんが、電話会談の場にいるスタッフからAxiosへのリークですね。意図的なものでしょう。"one thing we should remember from the Biden years is that the "POTUS swore at Netanyahu" news cycle is often followed, some days or weeks later, by Netanyahu finding a way to continue doing the thing that prompted the call in the first place." というカールストロムさん(ジャーナリスト)の下記の指摘は、本当にその通りだと思います。

 

追記の、レバノンで殺された方の日常の写真が悲しい。

そこを見ていただいていたことに感謝します。セオドシア・カラムさん。お名前からキリスト教徒だと思います。髪も覆っていないし。大学でお友達ときゃっきゃうふふしている映像もあります。白衣着てるから実験系の学部でしょうか。魚や鳥は料理シーンにも見えるけど。

 

今の学生は、実際使われてる生きた英語を教材にできるのはいい時代?だよね。

1998年に、型落ちになってて手取り1か月分もあれば買えるようになっていたWindows95でネットにつないでからずっと、これ言いっぱなしです。

 

「テメェ誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ!俺だろうが!あぁん!?」ぐらいかな、貴様では綺麗すぎる。と思って追記見たら、確かにこれアウトレイジだわ。タケシで再生余裕。

本当に「全員悪人」ですし。トランプ、ネタニヤフだけでなく、英首相スターマー、フランス大統領マクロン、ドイツ首相ショルツ(当時)および同外相ベアボック(当時)、などなど。この悪人の輪の外に、ロシアのプーやら中国のプーさんやらの悪人もいる。

 

こんな「会話」が漏れてきてるのは、記事が脚色してるのかトランプサイドが穴漏れ放題なのかどっちなんじゃろか

脚色しているとしたら「記事」の段階ではなく情報源の段階からでしょう。あと、穴漏れ放題なのはトランプサイドとは限らない。電話の反対側かもしれない。アクシオスですし。

 

アイ・ウィッシュ・アイ・ワー・ア・バード。

イフ・アイ・ワー・ア・バード、アイ・クド・フライ。

(「ぬるぽ」「ガッ」くらいのやりとり)

https://www.youtube.com/watch?v=XIotLREauPg

 

……というあたりで時間切れです。ブコメありがとうございました。

 

 

【追記: 6月4日(天安門事件の日)】

ブクマが300件を超えましたが(うちブコメつきのが85件)、私が見る限り、ここまで、ass = 「ロバ」の指摘なし! ゼロ! 「ケツ」ばっかり! ひどいときは「ケツの穴」との解釈!! 「教師が英語をしゃべれない」と教師いじめに邁進してきた日本の英語教育は、実のところ、一体何に失敗してるんでしょうね。

さすがに数百件もブクマがあれば、1件くらい指摘があるだろうと思ってた……

 

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。