Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

仮定法過去完了(ベルファストでの殺人未遂事件と人種主義者たちによる暴動の件まとめ)

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ベルファストが燃えている。日本語圏ではあまり報じられていないようだが*1、少し注意を払って英語圏のニュースを見ている人ならば、特に北アイルランドになど関心がなくても、下記のような写真で報じられているのは見ているだろう。

なお、これはアイルランドの話でありアイルランドの話ではない。北アイルランドとアイルランドの違いについてはしょっちゅう書いてきたのでどこに何を書いたかも忘れてしまったが、最近では、アイルランド大統領選挙に関する説明文でさくっと書いてあるから、それをご参照いただきたい。

note.com

■目次■

 

「ベルファストでの暴動」の基本的構図(いつものやつ)

さて、ベルファストが燃えていたところで、わりと「いつものこと」なので、「なんだ、またか」と流してしまう人が日本の報道機関の編集部に多いとしても不思議ではない。だが今回のこれは、「いつもの」とは文脈が違うし、起きていることも異なる。

「いつもの」は、だいたい、警察を標的とした暴動である。若いのが(一応政治的な主義主張を掲げるなどして)暴れる→警察がごっつい車でやって来る→若いのが警察車両に火炎瓶を投げつける、みたいなパターン。暴れるのはナショナリスト(←以降、語義はリンク先を参照。20年近く前に私が書いてウェブにアップしてある現地資料の翻訳解説である)の側の若者たちであることもあれば、ユニオニストの側の若者たちの場合もある。ちなみにナショナリスト側の暴動は2020年代に入ってからはほぼ聞かなくなっている*2

この「ナショナリスト(およびリパブリカン)」「ユニオニスト(およびロイヤリスト)」は北アイルランド紛争(1969-1998, または2005*3)当時の概念であるだけでなく、北アイルランド社会の基本構造の一部で、宗派や居住エリアが違うだけでなく、義務教育の学校も異なる。紛争が終結して20年以上が経過して、職場などを含め社会一般ではこういう区分もなくなってきているだろうが(紛争の時期は就職差別、住宅差別などもあった)、暴動を起こす界隈ではその区別が頑として存在しつづけていて、基本的に両者が交わりあうことはない。というか両者が接点を持とうものなら、暴動が大暴動になるので(実際になったこともある。2021年4月のことだ)、両者引き離しは大前提だ。ナショナリスト側の若者たちはナショナリストの地域で(警察を呼び込んで)暴れ、ユニオニスト側の若者たちはユニオニストの地域で(警察を呼び込んで)暴れる。これが基本である。

ただし今回は、「どうせまたいつものでしょ」と先入観を持っていると、まったく事態を見誤る。

 

今回(2026年6月)の暴動は「いつもの」とは違う

今回、2026年6月に発生した暴動は、上述したような「いつもの暴動」とは背景が異なる。背景は異なるが、現れ方はだいたい同じになるのが北アイルランドらしいという感じだが、荒れているのはユニオニスト(つまり親英の側、プロテスタント)の地域であり、ナショナリスト(カトリック)の地域ではないし、都心部の商店は面倒になることを予期してシャッターを下ろしていて、幹線道路も閑散としていると伝えられている。下手に暴動エリア近くに車を出せば乗っ取られるか燃やされるかするからだ。その地域の経済も停止してるんだろうな……これはいつものことだ。20年ほど前に、北アイルランドや北アイルランドの武装組織の活動があったイングランドについて「テロ慣れしている」と言うとなぜか何も知らないはずの日本語圏の人が「失礼な!」と怒り狂って挑んできたりしたものだが(私は彼らがいかに「テロ慣れ」しているかを直接の体験として知っている)、紛争後のベルファストという都市は「暴動慣れ」しているのだ。

戸惑っているのは団体ツアーの観光客で、壮麗な建築として知られる市庁舎前警備で増派された警官と写真を撮るくらいしかやることがないようだ。現地紙ベルファスト・テレグラフのフォトグラファーの(ちょっと笑える)報告。

今回起きたこと

組織面での基本的構図

「いつもの」暴動は、地域を仕切るその筋の組織が若いのを動かして展開するのが通例だ。「その筋の組織」とは、北アイルランド紛争時の武装組織の成れの果てで、ナショナリスト側ならIRAやその分派組織の系統があり、ユニオニスト側にはUDAやUVFの系統がある。

IRA側は、分派(旧Real IRA=現New IRAなど)の活動が派手でやることも凶悪なので(人混みに発砲してジャーナリストを撃ち殺したりとか)分派の活動が目立っているが、IRA本体の組織的統率力みたいなものは残っているようである。上層部が「動くな」と指令を出せば人は動かないだろう。そりゃそうだ。IRAには「政治部門」があり、それは今や北アイルランドでは第一党だし、アイルランド全島規模で大政党だ。この点、いろいろあるんだけど、いちいち書くのはやめておく。映画『ニーキャップ』の行間読める人は読んでね。一瞬だけ出てきた大物がいたでしょ……。

他方、UDAやUVFのほうは、ほぼ独立状態となっている各支部が乱立している状況のようで、すでに中央の指令が有効でなくなっているとかいう話もあり、ゆるくつながってる状態の武装組織を誰も統率していないという極めて危険な状態にあると考えておくのがよいような雰囲気になっている。暴力団ではなく半グレの集団みたいになっているというか。誰も統率していなければ、小支部の判断でそれぞれ好きなように、外部の者とでもつながりを持っていくのが自然だろう。Brexit後の暴動*4では旧来の北アイルランドの組織だけでなくブリテンからも何かあったっぽいが、ブリテンの極右組織と北アイルランドのロイヤリスト組織とのつながりなど、今に始まった話ではないわけで、まあ、あれである。あと、あまり語られないけれど、北アイルランドのプロテスタントはスコットランド系で(元がスコットランドからの移民)強烈なカルヴァニズムで、プロ・ライフ、つまり妊娠中絶反対とか、同性間の結婚に反対とかいうことを政治運動化しており、その点で共鳴すれば誰とでも手を組んでいる(誰とでも手を組まないと数が足らないので)。アイルランド共和国内のカトリック保守過激派との連携も実際にある。共和国でのプロ・ライフ系の活動は人々の投票の前に敗北したが(妊娠中絶は合法化、婚姻の平等も実現)、北アイルランドでは、中絶手術を行うクリニックの閉鎖や、啓発団体つぶしといった形で強い影響力を誇示している。

話が長くなったが、今回、2026年6月の暴動に際しては、プロテスタント/ユニオニスト武装組織は直接の関与を否定しているが、個々の成員を止めようとはしていないという。現地紙がトップ記事にしている。

研究者のコメントを取ってるメディアもある。(The Irish News. ナショナリスト側のメディアである。)

つまり、「組織的関与」があるかないかというと、法的にはないとしか言いようがない(したがって暴動の計画や教唆などで起訴はできない)が、現に今回の暴動を引き起こしているのはロイヤリスト側の人物である。

リパブリカンの側は、暴動の中での攻撃対象とされた人々とともにあると明確に示している。

北アイルランドとアイルランドの区別なんかつけなくてもいいと考えている人々は、この点で間違えていて、今回ベルファストなどで暴れたのは「アイルランド人」だと考えている。だが実際には、暴れたのは「アイルランド人」を自認する人々ではなく「英国人」を自認する人々である。

笑えるのは、北アイルランドの外から暴動を扇動した北米などの極右勢力がそれを全然わかっていなくて、IRAの画像(有名なプロパガンダ写真に文字を書き加えたもの)で暴動を称賛して、普通に北アイルランドについて常識的なことを知っているイスラム排斥の極右筋から「暴れているのは、アルスター*5のブリティッシュのプロテスタントである」とツッコミを入れられているのが、北アイルランド界隈で画像で回覧されていたことだ。

笑いごとじゃない、不謹慎だ、と怒られるかもしれないけど、めっちゃ笑える。コメディの台本だ、これ。

 

具体的に何が起きたのか

6月8日の北ベルファストでの殺人未遂事件

さて、今回の暴動には明確なきっかけがあった。それは突発的な、誰も予期・予定していないものだった。

6月8日(月)の夜、ベルファスト北部の住宅街で、40代の男性が刃物男に襲われた。襲われた男性の悲鳴を聞いた近所の人たちが現場を確認し、警察に通報したところに車で通りがかった人がいて、たまたま持ち合わせていた*6ハーリングのスティックで刃物男に挑みかかり、襲われた人から引き離した。刃物男は現場で取り押さえられて警察が逮捕し、襲われた人は病院に搬送された。被害者は、命に別状はないが、一時は昏睡状態だったようだし、片目を奪われてしまった(目を刺されたので)。事件後数日経過してなお重篤ながら安定した状態が続いている。これから回復に向かうことだろう。私も遠く離れたところから、順調な回復を願っている。

ここまでなら、残念ながら「よくある事件」として地域ニュースになる程度だったかもしれない。ハーリングのスティックということに話題性があるので(ハーリングはナショナリストの側のスポーツで、いろいろあったためにIRAを強く連想させる)、その点で深掘り記事が出るかもしれないが、せいぜいそのくらいで、2週間もすれば忘れられるような事件だ。

加害者は「移民」というか「難民申請者」

だが、この刃物男の事件が暴動を引き起こしたのは、加害者が極右勢力やメディア、一般的政治家らから「移民 immigrant」と呼ばれる立場の人物だったからだ。刃物男は2023年にフランスから空路ダブリンに入り、ダブリンからベルファストに来て、そこで難民申請をし、2028年までの英国滞在許可を得たスーダン人である*7。詳細はBBCのこの記事などにある。ちなみに2023年の英国は保守党のスナク政権である。

他方、被害者の男性は白人で、スコットランド系のお名前、つまりおそらくはユニオニスト側のコミュニティの人だろう。事件現場の住宅街自体は紛争後に新たに開発された住宅地で、エリア的にはナショナリストのエリアだが(Google Street Viewで何年も前までさかのぼると、通りの一番北端のあたりにナショナリスト系の落書きがなされているのが確認できる)、この新しくてきれいな住宅街では、近年、ユニオニストによるナショナリストの追い出しが実行されているともいう(北アイルランドってまだそんなんなんですよ。今の和平がfragile peaceと言われている通り。ロイヤリスト武装勢力がいる限りはずっとそうだと思う)。

ちなみに、被害者を救出したハーリングスティックの人は西ベルファストの住民で、お名前はこてこてのアイルランド語名。この点、北アイルランド紛争の構図で考えていると面食らうと思う。

なお、現行犯逮捕された加害者は、殺人未遂や武器不法所持などですぐに起訴された。初回の出廷(名前などの確認程度)はすでに済んでおり、次の公判は7月8日に予定されている

そして、このあとはしばらくは加害者についての情報は出ない。裁判が陪審制の英国では、陪審団に先入観を与えることがないよう、起訴された加害者についての報道は基本的になされないからだ(個人でも憶測などをネットで公開の形で書けば、法廷侮辱罪に問われうるので、個人のSNSやブログなどを掘っても、事件については何も出てこない)。日本みたいに近所の人に話を聞いて回ったり、動機を学者が推測したりということは絶対にない*8。今後も、判決までは、法廷で語られることだけが報道に出るだけである。よって、「事件の動機は……」といったことはたぶん判決が出るまではわからないし、判決が出てもわからないかもしれない。実際、つい最近、イングランドで「反移民」のムードを高めていたヘンリー・ノヴァクさん殺害事件(インド系のシク教徒の男が、白人の男子大学生を刺殺した事件。法廷で明らかにされた警察の現場での対応のまずさから警察への抗議行動→暴動が起きた)では、判決後に凶器についての記事はいくつも見たが、動機が報じられた記事を私は見ていない。

アイルランドの南北のボーダー

アイルランドは北部6州(北アイルランド)と南部26州(アイルランド共和国)に分断されているが、その境界線(ボーダー)は、(北アイルランド紛争の終結以降は完全に)開放されている。「国境」と言うこともテクニカルには可能だが、そこでは「国境」らしい実態はなく、パスポート・コントロールはない(Common Travel Area)。これは、「アイルランドは島全体でひとつの国」というアイルランド側の立場と、「英国の一部である北アイルランド」という奇妙な存在の矛盾が凝縮されたようなものだから、特に2016年の英国のEU離脱決定以降、EU加盟国であるアイルランドと、EUを離脱した英国との間の境界線をどうするかというのはめちゃくちゃ厄介な問題となった(それを考えもせずにEU離脱可否を問うレファレンダムを実施したキャメロン政権の責任はとても大きい)。現実にはBrexitがあろうとなかろうと現状維持をする以外の方法はなく(非常に英国的)、特に関税をどうするかといった点で官僚らがめっちゃ難しいパズルのようなことをやって辻褄を合わせて何とかしている状態だが、Brexit後もダブリンとベルファストを結ぶ鉄道内で越境時にパスポートチェックがあるわけでもないし、道路だって、日本の県境程度かそれよりも地味だ。ダブリン(アイルランド共和国)に入った人がノーチェックでベルファスト(英国)に入るのは、私が東京都から千葉県や茨城県に行くようなものだ。

この点で、またひと悶着ありそうな流れなのだが、今はまだそこまでは踏み込めない。紛争後の北アイルランドの自治は、いずれかの側に権力が集中する単純な与党・野党の仕組みではなく、一定数の議席を獲得した政党がすべて大臣職を担当して行政を担う「パワーシェアリング(権力分譲)」の仕組みで、現在はナショナリストのシン・フェインが第一党でファーストミニスターを出しているが、それと同格の副ファーストミニスターはユニオニストのDUPから出ている。シン・フェインは言うまでもなく「移民歓迎」の立場だが、DUPが逆で、今も「そもそもあの刃物男が入ってきたのはダブリンのせい」「ボーダーが問題」という方向で動き出しているようだ。ヲチャとしては「またか……」と目を閉じるよりない。

 

「反移民」の側の理由付けと動き、およびメディアの奇妙な用語法

今回の北ベルファストでの事件は、住宅街で、その街に暮らす人が「移民(難民申請者)」に襲われた、と単純化できる。

それは、例えばロンドンで女性が帰宅中に現職警官に襲われて殺された事件を、「女性が男性警官に殺された」と単純化するのと同じだが、ここで「男性警官は全部危険な存在だから禁止すべき」などと言い出す人がいたら、頭がおかしいと扱われるだろう。

そのくらい雑なことが、「移民」のこととなると「まっとうに取り合うべき政治的意見」として扱われる(ようになってしまったのが今の英国である)。

そもそも、加害者が逮捕されてほぼ即時で起訴されている刑事事件に対し「抗議 protest」も何もあったものではない(加害者が野放しになっているとか、何かの忖度で起訴されないとかいうことがあるのなら「抗議」もあるだろう)。しかし実際には、この事件を受けての「反移民」陣営の行動は「反移民の大衆運動・抗議行動」としてメディアで言及され、そのように扱われている。さらにいえば、その行動が「抗議行動」をはるかに超えて、放火や破壊、襲撃、略奪といった、普通に「暴動」と呼べる状態*9になってもまだ、大手メディアは「抗議 protest」扱いだった。明らかにおかしい。(そのうちに、BBCは「騒乱 disorder」と言い出したが。)

どうやら、暴れている側の大義名分は「女性・子供が危険にさらされる前に守れ、という抗議だ」ということらしいが、暴動を起こしている側に、自分の配偶者やガールフレンドを殴ったり殺したりしてるのが何人いるんだっていう話だ、という声もガンガン上がっている。それらのフェミサイドに対し、今暴れている連中が一度だって抗議行動に出たかというと出てないだろう、と。

実際、日本語圏にまでは届かないが女性がDVで殺されるという事件はときどき報じられている(紛争時代は「紛争のトラウマ」で語られることが多かった北アイルランドのDV問題だが、もう紛争のトラウマなど持っていない若い人が加害者になってるんだよね……)。日本の北海道で起きたのと非常によく似た状態で被害者が遺体で発見された、若年者の川での変死事件があるのだが、この事件で亡くなったのは民族的マイノリティ(白人と黒人の間の子)の男児だ。「移民」が原住民(白人)に危害を加えるというファンタジーを盛り立てたい人々は注目もしない現実。

 

6月9日(火)、暴動

詳しい経緯はすでにウィキペディアにまとめられているが、上記の北ベルファストでの殺人未遂事件を受けて、その犯行の異様さ*10も手伝って、いつものネットの極右インフルエンサーが騒ぎ出した。X.comのオーナーのイーロン・マスクも例外ではなかったようだ。私は個人的に、そのころはガザ情勢で忙しくてベルファストの殺人事件のことは知らなかった。仮に知ってても「また殺人か」と流していたと思う。

私が知ったときにはもう政治家たちがコメントを出していたが、まだ暴動が始まる前だった。

※「警察は把握しておらず」というのは、国際手配されている人物だったり、英国の当局が独自に追跡等している人物だったりしていないということ。つまりテロ容疑者ではなく、テロ組織内で操ろうとしていたスパイ候補者の類でもない。

このころには、約20年前に毎日読んでいた北アイルランド政治に関するグループ・ブログ、Slugger O’Tooleで書いていた人たちが、現地から緊迫した情勢について非常に重いトーンで伝えてきていた。

ドネリーさんのこの映像なんか、映画『ベルファスト』の1シーンみたいでしょ。街並みもそっくり。典型的な労働者階級の住宅街。そこを、犬笛に集まった暴徒が練り歩いている。

ちなみにこれらの暴徒(の側の人々)、これまでにさんざん、「移民」への追い出しの暴力を働いてきた連中である。その種の暴力・圧力は、何度も何度も報道されている。

 

そして実際に、ベルファストでは放火攻撃がおこなわれた。「ポグロム」である(ベルファストでは北アイルランド紛争の始まりの時期に、プロテスタントがカトリックの家に火をつけて追い出すということが組織的に行われた。これを俗に、主に被害者の側から、「ベルファスト・ポグロム」と言う。映画『ベルファスト』はその時代を扱っている)。

BBC Newsのこのフィード↑にある写真、わかりにくいが、よく見ると、歩道の縁石が赤・白・青の3色に塗られているのがわかるだろう。これはロイヤリストのエリアのしるしだ。つまり、奴ら、自分らの街を自分らで燃やしている。またか。事件現場とは全く関係のない場所で暴れている。

以下、現地からの報告などは、別途、まとめておくことにする。

→作業中

いきなりですが英文法解説

こんなタイミングで見た現地記事に美しい《仮定法》があった。なので、本稿、seesaaのブログ*11ではなく、英文法ブログであるここに書いている。

https://www.belfastlive.co.uk/news/belfast-news/belfasr-family-would-been-beaten-34094377

見出し: 

Belfast family 'would have been beaten to a pulp' says woman who helped them flee home

見出しだから読みにくいので、普通の文体にすると: 

The woman who helped them flee home says the Belfast family 'would have been beaten to a pulp' 

記事を読めばわかるが、これは暴徒が襲撃した家から、その家に暮らす家族を救出した女性の証言である。反射的に体が動いたようだが、同じ街路の家に暴徒が押し掛けるのを見て慌てて駆け付け、「この人たちは事件に関係ない!」と暴徒を一喝し、その家に暮らす家族の盾になるようにして一緒に歩いてその家族の身を守った。紛争のときもこういう堂々たる女性の行動があったのだが、お手本にしたい立派な人である。

見出しの情報を含む部分を本文から抜き出すと: 

The woman said she believed that "definitely, something really bad would have happened" had she not intervened.

 

"I think they would have been beaten to a pulp," she said.

2文とも《仮定法過去完了》で、太字にした部分が帰結節、下線が条件節である。

第1文は条件節があるが、《ifの省略》により《倒置》が起きている。これを省略・倒置のない形にすると: 

... "definitely, something really bad would have happened" if she had not intervened.

文意は「もし自分が介入していなかったら『きっと、ものすごくひどいことが起きていたのではないか』と確信している、とその女性は述べた」。

 

第2文は条件節(if節)がない仮定法になっているが、直前にある "had she not intervened" がダブるので省略されていると考えることができる。青い太字の部分が仮定法過去完了。文意は「『(私が介入していなかったら)ご家族はめった打ちにされていたのではないかと思います』と彼女は言った」。

 

be beaten to a pulpは慣用表現と言っていいと思うが「めったうちにされる」「タコ殴りされる」「ボコボコにされる」。pulpは紙を作るあの「パルプ」で、めったうちにされて体中骨折したらそういう状態になるという比喩表現。

 

こうやって暴れている人々は……

こうやって暴れている人々は、大半がティーンエイジャーから20歳そこそこくらいの若者で、「IQが低い (low-IQ)」とか「知能が低い (low intelligence)」といった言葉で語られてさえいるが、実際に何年か前の北アイルランドでの調査では、労働者階級プロテスタントの白人男子だけが突出して学習ができていないという結果が出ていたので(同じ労働者階級白人男子でもカトリックの側は普通)、何か構造的なものがあるのかもしれない。

個人的にこれを「IQ」や「知能」という語で語る気にはなれないのだが、彼らが本当に何も考えていない(考えられない)ことは、長屋形式の住宅街に放火しているという事実からもわかる。こんな住宅街の1軒が燃えたらどうなるか、2秒も考えればわかるはずだ。だが火をつけちゃう。日本に生まれてたら闇バイトでひどいことをやってただろう。

同じ労働者階級プロテスタントの白人男性ジェイミー・コリーさんは、13年間暮らしてきた家を、この暴動で焼かれた。隣人の車に暴徒が火をつけ、そこから彼の家に延焼した。彼の持ち物は全部、お父さんの思い出の品なども一切合切、灰にされてしまった。殺人未遂事件が起きた北ベルファストとは全然関係のない、東ベルファストの住宅街でのことだ。殺人未遂の加害者が、入国・滞在を許可すべきではない類の外国人であったのに入国できてしまったのだったと仮定したところで、この住宅街の人々は、かの人物の入国許可に何の関係もない。

これの何が「抗議行動 protest」だというのだろう。

 

ちょうどベルファストの劇場で公演をするはずだった俳優(黒人女性)は、あまりのおそろしい事態に宿泊先の家のブラインドを開けることもできず、外に出ることなどもちろんできず、公演はキャンセルとなった。

www.bbc.com

 

*1:日経報道:

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUF10A3P0Q6A610C2000000/

*2:今は敵側の施設に落書きの応酬といった活動はあるようだ: https://x.com/BelTel/status/2064000612358930743 "A Sinn Féin councillor has condemned an attack on Rasharkin Orange Hall. It came a day after a GAA club was sprayed with sectarian graffiti in the Co Antrim village." ナショナリストのスポーツ施設にロイヤリストが不穏なメッセージを落書きし、プロテスタントのオレンジ・ホールにリパブリカンが落書きを残す、ということがあった、という話。

*3:紛争の終わりを和平合意の終結とすれば1998年、武装組織の武装闘争終結宣言とすれば2005年

*4:英国がEUを離脱してもアイルランドには関係がなく、1998年の北アイルランド和平合意でアイルランドとの境界線を極めてあいまいなものにしてある北アイルランドにとって「EU離脱」とは何かということになるので、その点で政治的圧力をかけるために大衆運動・暴動が起きた。

*5:ユニオニストは、北アイルランド/北部6州のことを「アルスター」と呼ぶ。本来のアルスターは、人口比でカトリックがプロテスタントを上回らないよう計算された境界線が考案されたことでアイルランドの分断時に北部6州から外されたドニゴール州、キャヴァン州、モナハン州を合わせた9州から成る。

*6:息子さんの習い事でもあるスポーツの用具を車のトランクに積んでいたようだ。

*7:事件発生直後はソマリア人という誤情報が警察から流されていた。ちょうどワールドカップ審判団のひとりのソマリア人審判が米国から入国拒否を食らうというニュースがあった日で、「ソマリア」には人々が過剰反応したかもしれない。

*8:日本も、裁判員制度を導入したんだし、何とかすべきだよね……。テレビのワイドショーで、特に知見があるわけでもない芸能人が、刑事裁判について、「私の意見」を述べていられるような状況はいつまで放置されるんだろう。

*9:ちなみに、2010年代までかなり激しかったナショナリスト側の暴力的抗議行動については、「人が集まった段階でメディアが暴動 riot 呼ばわりする」という問題が指摘されていた。ロイヤリスト側が同じようなことをしても「抗議行動 protest」扱いなのに、と。

*10:切り付けたとされる場所がね……。

*11:https://nofrills.seesaa.net/ 絶賛休眠中

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