Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「アメリカ人としては、ベストなプレイヤーを欠いたチームに勝ちたいかと言われたらノーだ。だから出場停止処分を取りやめさせたトランプは評価できる」という言説の存在

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サッカーのワールドカップで、アメリカ代表のプレイヤーの1人がベスト32の試合でレッドカードを出されてベスト16の試合に出られなくなったら、米大統領トランプがFIFA会長に「処分の見直しは要請したが、指示はしていない」(そりゃそうでしょうよ、「指示」する権限など1ミリもないのだから)という、民族浄化の否認における「退避を勧告はしたが、命令はしていない(退避しなければ爆撃するが)」というのとそっくりなロジックの展開を経て、出場停止処分が「猶予」されて、ベスト16の試合にはスタメンで出場、ということが起きた。

このあとに書く部分で英文法解説できるとは思えないんで、今やっとく。"He gave him a red card." は《SVOO》の構造です。はい、今回の英文法解説終わり。

この画像を使うしかない局面。リーダーありがとう

「ルールなんてくだらねぇから破っとけ、イノベーションのためにならん」っつって、ルールに違反して建造し、深海まで潜って何度目かで、水圧でつぶされた潜水艇がありましたね……。

そしてUEFAがFIFAに激怒し、さらにゼップ・利権食いの汚職まみれ・ブラッター前FIFA会長まで苦言を呈するというすさまじい事態を経た後のベスト16の試合で、アメリカ代表はベルギー代表に4-1でぼっこぼこにされて、大会を去ることになった。まさに Good riddance! としか言いようがないが、めちゃくちゃ苦い思いをさせてもらった後味がまだ残ってるんで、全然メシウマではない。

 

この試合結果を報じるCNNの日本語版記事についているブコメを見ると、どうも、この事態はトランプが悪くて、トランプのやったことはアメリカでも不評だということになっているっぽいのだが、私が実際に眺めていた画面では、「アメリカ人だいたいみんなヒャッハー」な状態だった。つまり、レッドカードによる出場停止を回避するロジックを、広く一般のアメリカ人は受け入れていた。

レッドカードを出されたのはアメリカ代表のエースで、彼が出場停止になると、この3週間でにわかに増えた「サッカーファン」が盛り上がらなくてビールの消費も増えなかったからかもしれない。

と、いわゆる「経済効果」の話がどうしても出てくるのは、レッドカードによる処分を取り消せと言い出したのは商務長官のラトニックだったという報道を見たから。今はDisclose.tvのフィードしか見つけられないんだけど、元はPolitico、手堅い筋の話だ。

USA! USA! と騒げそうだということでにわかにサッカー熱に取りつかれたアメリカ人は、ベルギーがサッカー、いやフットボールの強豪だということすら知らなかったかもしれない。英国人のピアース・モーガン(1ミリも信頼できない奴だが、筋金入りのフットボール・ファンである*1)の番組でリモートでインタビューを受けたアメリカ人(誰なのか私は知らない)の発言。

「ベルギーにいるのが大統領なのか指導者なのかも知らないし、ベルギーのことは何も知らないっすね、ただアメリカがぎゃふんと言わせてやる相手だという認識しかなくて……」的な発言。

バカなんじゃないのと言われても弁解の余地はない。

これにイギリスからこんなリプがついている。

キレッキレでいいですね。「ここまで恥ずかしい奴らだなと思うのは、アメリカがイランとの戦争に30回目に勝って、300bnドルを与えたとき以来」。つい最近じゃないですか。

この画像もいっぱい流れてきた。ルカクの煽りをもろに受けて棒立ちのアメリカ人3人。「ベルギーだかエネルギーだかイデオロギーだか知らんが、ぼっこぼこにしてやんよ」と思ってたんだろうな。

ともあれ、試合前、どうやらアメリカでは、レッドカードの事実上の取り消しについて、「こちらのチーム最強のプレイヤーを欠いていては、仮に相手が勝ったとしても不満足であろう。そのため、相手のためにも、最強のプレイヤーの欠場という事態を生じさせないよう、万全が尽くされたのである」という理屈にもならない理屈が喧伝されていて(絵に描いたようなプロパガンダだ)、それをアメリカ人の多くが真に受けて、USA! USA! とキモチヨクなっていたようだ。その言説が日本に入ってきている感じがしないんだけど、私の視界にはがんがん流れてきてたので*2、書き留めてたのは少ないけど、おすそ分けしておくね。

「アメリカ人として、俺なら、ベストなプレイヤーを欠いたチームに勝ちたいかと言われたらノーだ。やるなら徹底的にな*3。外国では話が違うようだが」とナメたこと言ってるMac氏、試合後に「外国」の人から刺されている。

Economissive氏はNZの方。「これが、最高の状態のアメリカ」と書き添えられた映像クリップは、……ああ、ご愁傷様です。【7月11日追記→】投稿に埋め込まれている映像が著作権問題で消されているので注記。この映像はベルギーの(確か)2点目の映像で、USAのキーパーが前に飛び出していて、ベルギーが楽々と得点を決めたシーンのものでした。日本語記事: アメリカGKが「衝撃的ミス」痛恨の失点 W杯大騒動の一戦で…米ファン憤慨「マジで恥を知れ」【←追記ここまで】

この映像クリップの中でアメリカの解説者が叩いてる軽口をまじめに検討しているFrans Cassar氏は欧州、マルタの方。

「VARをめちゃくちゃな使い方をしたことで競技自体が損なわれたが、それがどういうものだったかを如実に表す発言が、このアメリカ人解説者の『VARでファウルと判定されない限りは』だ」。私は今回、ガザ・ジェノサイドを黙認して平然と行われている大会そのものをボイコットしていて、試合は全然見ていないので、VARの使われ方はよく知らないんだけど、すごく評判が悪いということだけは知っている。

さらに煽る「外国」の人もいる。

この方はチリの方。「ベストなアメリカ代表 vs 最悪のベルギー代表*4。そんな試合でもベルギーにはがっかりした。1点献上したの、このチーム相手に」【7月11日追記→】アメリカの1点はセットプレーからのものでしたね。【←追記ここまで】

「俺らがサッカー強くなってきちゃったから世界がびびってる」と、プレミアリーグで耳にする応援歌みたいなことを言って自信満々のアメリカ人を長文で刺しているこの人はフランスの方です(お名前はイタリア系だけど)。Allez les bleus! 

「親愛なるアメリカの友人のみなさん。ええ、その通り、まさにそうなんです。何しろ、貴国代表の中で最高のプレイヤーは4番目のリーグで7番目に強いチームで4番目に優れたプレイヤーですから。みなさんが、対戦相手の脚を踏みつけることに問題などないと考えていることとは無関係ですし、貴国大統領が堕落した上に歯止めの利かない人物であることとも無関係です」。【7月11日追記→】レッドカードで出場停止になったはずのバログンは、フランスのリーグアンのモナコ所属*5。【←追記ここまで】

あんまりこんなふうに上から目線で語ってるのも見てて気分がよいものではないけどね。そういうのをひっくり返したカーボベルデは、ランキング的にはもっと低いところにいるプレイヤーの集まりだったはず。

一般的には、強豪があんまりナメたまねしてるとぼっこぼこにされるのがサッカーでもあるのだが(3月にウェンブリーで日本にやられたイングランドみたいに)、この試合はそうではなかった。スタジアムはUSAのホームなのに。

試合前に「ぼっこぼこにしてやんよ」と盛り上がってたアメリカ人の皆さんの映像をベルギーのアカウントがさらしている。ハイになってるっぽい人もいるけど(試合会場シアトルだから合法)「ベルギーって、ちっちゃい国じゃん」とか言ってるのはさすがに限度超えてるよね。

これ見て、「うわっ」って思う以前に、私は怖くなった。こんなにも簡単に踊らされちゃうんだ。日本でもサッカー報道(「報道」って言っていいのかどうかはわかんない)はすぐに「撃破」とか「伝説」とか勇ましいことを言って煽り立てるし、サポーターの中に入ると「うおー」っていう人しかいないから根拠もなく「行ける行ける」と上がっていっちゃうものだろうけど、少なくとも日本では、強豪と当たるときは一定の距離感を持って闘志を燃やしていると思う。「胸を借りるつもりで」っていう慣用表現があることも大きいのかもしれない。【7月11日追記→】イングランドのサッカー番組などでは、それで批判もされてるんですけどね……。「腰が引けてる」「もっと堂々とすることを覚えるべき」と。【←追記ここまで】

 

こういうイケイケのお祭り好きばかりではない。一応「インテリ」の区分に入ると思われる人もこうだ。

途中で切れちゃうので全文: 

If rest of the world is pissed at us because we're starting illegal wars or funding Israel's genocide, I get it. But when it comes to World Cup, I'm unapologetically for Team America. This is a country where a Turk and an Armenian can come together and fight against a genocide.

This is a country where we can put old, ethnic grievances aside and work together. This is a country where the citizens expect and demand freedom. It's a gorgeous country with good, decent people. We have a plenty of faults, but this is still a place of hope and opportunity.

I believe in America. And I will always root for it. So, during the World Cup, here's what I have to say to the rest of the world - USA, USA, USA!!!

これは、ガザ・ジェノサイドを止めるべく情報を共有している界隈でよく見かける*6アカウントの発言。発言者のCenk Uygur氏はトルコ系(トルクメニスタン人かもしれない)米国人で、左派ポピュリズムの著名人でメディア運営者。つまり、一般受けするというか、「刺さる」ことを言って生計を立てている人だ。

ええ、トルコ人もアルメニア人もジェノサイドに抗して戦えるのは素晴らしいことですね。でもそれが、レッドカードによる出場停止というルールをひっくり返すことと何の関係が? 誰がそんな話をしてるんでしょう。すり替えもいいところ。

こんなのはサクッとミュートしておけばよろしいかと。

 

まとめとしてはブルーノ先生(ポルトガル)のこちら: 

「これはあとになってからお気づきになられることでしょうが、アメリカ社会は、リベラルも左派も含めて、国旗をまとったものであればどんなものだって支持するんですよ」

 

あと、「ルール無視」ということでの国際政治との関連についての指摘が束にして売るほどあったんですが、それはまた別にまとめておきます。 【7月11日追記→】まとめました→ https://posfie.com/@n0fr1ll5/p/JqHZZkm 【←追記ここまで】

 

こういうの↓がたくさん流れてきた。

Did you want a sense of why and how Israel cheats so profoundly and considers itself wholly justified? Just look at Trump's America and Balogun's red card suspension. Now Americans are explaining that FIFA's decision to cancel the automatic suspension is a reward for his mature behavior when being issued the card in error. Other Americans have gone on a social media rampage, accusing Europeans of being everything from cry-babies to saboteurs. No one doubts the American response should the proverbial shoe have been on the other foot. While no Palestinians are being killed wholesale, this is precisely what Israel does when it moves Gaza's yellow line, when it bombs a tent camp of displaced persons claiming it "thinks it saw a tewowist (think Elmer Fudd)" or when it refrains from fulfilling various territorial promises (evacuating occupied territory in Lebanon) just because it feels like it. Cheating is the heart of murderous solipsism.

【7月11日追記→】発言主のオリ・ゴルドベルグさんは在イスラエルのユダヤ人。ガザ・ジェノサイドを「ジェノサイド」と呼んでいるイスラエル人のひとりで、中東研究を専門とする研究者。病気治療中のため病院のベッドからSNSで書いている。この投稿とか読むといいです。【←追記ここまで】

 

うんざりだよね。ガザの子どもたち見て気分切り替えましょう。

 

【以下、7月11日追記】ブコメたくさんいただきました。ありがとうございます。

「「胸を借りるつもりで」っていう慣用表現がある」相撲発祥らしいので伝播したのでなければ他国では使われまい。

確かに。

検索で見つかった相撲分野の報道の文例: 

仕上げのぶつかり稽古では二所ノ関親方(元横綱・稀勢の里)に指名された。17番連続で取ってへとへとの状態ながらも必死に腰を下ろして横綱を押し「重かったです。きつかった」。現役を引退して5年半以上経っても大関・大の里や白熊の稽古相手を務める横綱に胸を借りたことには「うれしし、です」とおなじみの決めぜりふで感謝した。

https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2024/11/06/articles/20241106s00005000162000c.html

 

https://x.gd/bJjCg こちらが詳しいが主張したのは判定でなくVARの運用のほうで、不適切な運用で出されたレッドなので懲戒規程第27条より罰則を猶予しろという論理。論理の導き方、法的措置を持ち出す点が米国的と感じた。 

リンクありがとうございます。 https://number.bunshun.jp/articles/-/871137

一野洋さんによる2回構成のレポートで、2回目はこちら→ https://number.bunshun.jp/articles/-/871138

サッカーにおいてレッドカードを覆すということは不可能なので、そのレッドカードの元となったVARを突いた、という解説は*7、事態発生直後に回ってきた専門家(サッカー・ジャーナリスト)の音声解説で聞きました。私のフィルターバブル内なのでイングランドのジャーナリストの誰かですが、誰だったかは覚えてないです。

で、Numberのレポートの2回目にあるんですが: 

英紙『The Guardian』が問題視したのは、開催国への特別扱いそのものではない。トランプ大統領の働きかけやホワイトハウスによる法的対応の動きを詳報した上で、「もし今回のような手続きが認められるのであれば、今後は同様の法的異議申し立てが相次ぎかねない」と指摘した。ベルギー協会が「大会の公平性」を理由に強く反発したことも紹介し、この裁定がワールドカップの運営に与える影響へ警鐘を鳴らしている。

 

この記事が7日に出たのと前後して、こういうことが起きてたんですよね。The Sunの政治部エディターの投稿: 

この話↑は個人的にはよくわかりませんが(試合開始時刻の話まで私は追ってない)、イングランドのサッカー協会(FA)ではなく、英首相がFIFAに直接接触したというのが重要。FAが言うべき話だと思うけど、違うんですかね……。

で、そのメキシコとの試合でレッドカードもらったイングランドのジャレル・クアンサーは、今度は1試合ではなく2試合の出場停止。

この「2試合の出停」という判断の前に何があったかというと: "A government minister has suggested that Sir Keir Starmer is 'probably texting' FIFA to overturn England star Jarell Quansah's World Cup suspension." 

https://metro.co.uk/2026/07/06/keir-starmer-colleague-suggests-pm-may-intervene-england-stars-red-card-29061470/

 

政治家が公然とスポーツ大会に介入するというこの事態を、私が見る画面では人々が「第三世界か!」と非常にアレな表現 (third-worldism) を使って憤っていました。国家が大会に政治的圧力をかけて、それでも負けて国に帰ったら投獄されるとか拷問されるとかいうのが、「第三世界」の独裁政権では実際にあったわけですが、もはやその「第三世界」という旧植民地に対する上から目線の設定自体が崩壊しているという……。

 

まあ日本人の大半も、ベルギーは首相なのか大統領なのか知らないし、地図でどこか示せないので、アメリカ人の無知を笑えるレベルではない。

いやあ、「大半」ってことはないんじゃないですかね。「ベルギー王室御用達」はチョコレートの高級ブランドの惹句になっているし、中学でも「立憲君主制の国」として習うはずだし、それに普通につい最近のニュースであったばっかりじゃないですか。

天皇皇后両陛下は、6月20日から26日までベルギーを公式訪問されました。
国王夫妻と旧交を温めたほか、愛子さまと同い年のエリザベート王女をはじめ4人の子どもたちとも親交を深められました。

https://www.fnn.jp/articles/-/1070679

ひょっとして、「国王」(君主制)と「大統領」(共和制)は両立しないということを日本人の大半は知らない、という話じゃないですよね……実際に私も学校でそれを習った記憶はないのですが。

 

あと、文中に書いた件、文脈を書き留めておくために本題以外のものも多めですが下記にまとめてあります。単にまとめただけで小見出しなどは入れていません。"米大統領の「要請」でFIFAがサッカー・米国代表のレッドカードを事実上なかったことにした件。国際法における法秩序の無視との連関まで指摘されている。"

posfie.com

さらに、どうでもいい追記。当エントリにスパムコメントが投稿されましたので、はてなユーザーのみなさんにIDを共有しておきます。下記画像をご参照ください。画像にALTテキストつきです。はてな運営には通報済みです。

id:yy9882はスパム。はてな運営には報告済

 

 

 

*1:ちなみにグナ。

*2:主に、呆れかえって引用で投稿している欧州の学者界隈のせいで流れてきていた。

*3:"I want all the smoke" はアメリカのスラングの表現だそうだけど、私がおもしろいと感じないのでスルー。銃を文化ってことにしてる国で、始終誰かが撃ち殺されているヒップホップ界隈発祥の表現。

*4:ベストなメンバーはベンチだった……。デブライネは最初から最後までベンチだったし、ルカクも途中で投入された。

*5:ユースからプロデビューまではアーセナルで、ヴェンゲル人脈かな……。ちなみにアメリカ目線では、彼の両親は英国在住のナイジェリア人で、母親がたまたま訪米中に彼を産んだため、彼自身はイングランド育ちでアメリカとはほとんど縁がないにも関わらずアメリカ代表となっている。そう、トランプ政権がなくしたがっている「アメリカで生まれたために米国籍を持っている市民」のひとり。

*6:見かけるだけでフォローはしていないので、実はよく知らない。

*7:ここで各日本語は私の脳内に格納されている要旨で、そのままの文言だったわけではありません。

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