Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

助動詞のmay, いろいろなif節、ifの省略と倒置、「現実味のcould」かもしれないもの、など(ドイツの兵役をめぐる法改定)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。 2026年に入ってから、Amazonアソシエイトをやめました。これにともない、過去のリンクが無効になっているところろがあります。また、以降の記事では、代わりに楽天市場にリンクしていることがあります。

ぼーっと新着ニュース記事を眺めていたらまたウェブ検索では探せない文法事項の実例を見かけたので、メモっておこう。

記事はこちら

www.bbc.com

内容を要約すれば、ドイツでは、17歳から45歳(いわゆる「戦闘年齢」)の男子に対し、3か月以上海外(国外)に滞在する場合は、軍の許可が必要になる見込み、ということだ(見出しにある「長期間の滞在」は「3か月以上」で、これは旅行業界の概念でも「え」って感じなのではないか。6か月以上ならわかるけど……)。センセーショナルに煽り立てることが活動の一部の収益目当てのインフルエンサーなどなら「ドイツ、徴兵制復活か?!」みたいな見出しを立てそうな話である。

なお、記事を一読した限り、見出しで "German males under 45 may need military approval" と言っていることの根拠は、よほどよく読まないとわからないかもしれない。記事本文でも、第1パラグラフで "German males aged between 17 and 45 may need to seek approval" と書いてある一方で、第3パラグラフでは "In a statement sent to the BBC, a defence ministry spokesman confirmed that males aged 17 and older were required to obtain prior approval for stays abroad lasting longer than three months." と、ドイツ軍からのステートメントを根拠として、許可取得は義務であることが明示されている。これを読む限り「許可を得ることが必要になるかもしれない」という話ではなさそうだ。この点、記事の先を読むと一応読み取れるようにはなっているが、あからさまに「パニックを引き起こさないための文体」で、なんだかなあと思う。

英語の実例としてみるのは第8パラグラフから先: 

https://www.bbc.com/news/articles/cvg3nr83xyvo

The legal basis for the requirement lies in Germany's 1956 Conscription Act, which has been amended several times, most recently last December.

このlieを使えるようにしないとね。lie in ~で「~にある」の意味。the basisとの共起に注目。

次。

Prior to the latest amendment, the obligation to report extended stays abroad applied only if Germany was in a state of national defence or mobilisation. 

これはこれで1文だが、ぱっと読んで述語が見つかっただろうか。

カッコなどを使って構造を示すと(文頭の "Prior to the latest amendment" は文の構造からは外して考えてよい): 

(Prior to the latest amendment,) the obligation ( to report extended stays abroad ) applied ( only if Germany was in a state of national defence or mobilisation ). 

……となり、主語は "the obligation", 述語は "applied" である。このapplyは自動詞で、日本語にすれば「(主語が)適用される」の意味。カッコに入れた "to report extended stays abroad" は主語の  "the obligation" を修飾/説明する句で、全体で「長期間の外国滞在を報告する義務」。末尾の "only if Germany was in a state of national defence or mobilisation" は「ドイツが国家防衛もしくは動員の状態にある場合に限って」で、これが、記事見出しや冒頭で "may need" とmayが用いられている根拠だろう。

日本語でいえば「有事の場合に限り、国民は~しなければならない」みたいなことで、「有事の場合に限り」が重要で、要は「国民は~しなければならない場合もある」と言い換えられる、という理屈だ。

なお、《if only ~》は「~しさえすれば」として暗記している人も多いと思うが、ここではその訳語で考えると意味がわからなくなるだろう。「~した場合に限り」などと、訳語を言い換えられるよう日本語力を鍛えておくことも重要である。

 

で、ドイツ国防省では「同様の決まりは冷戦中もあったので、あんまり違いはないですね」的なことを言っているようだが、冷戦中のドイツは東西分断国家で、互いに敵としあっていて徴兵制もあったので(今も朝鮮半島ではその状態だが)、違いはありまくりだ。国防省がそう言って「パニック予防」を図っているということ自体が、アレだなと思う。

 

次。パラグラフをひとつ飛ばして、

In December, the German parliament voted to introduce voluntary military service, meaning that from January all 18-year-olds would be sent a questionnaire asking if they were interested in joining the armed forces.

この記事、ここまで個別に見てきていないところでも接続詞の《if》が何度も出てきていて、それぞれがどういう《if》なのかを瞬時で読み取る練習にとてもよい素材文だと思うのだが、このパラグラフの《if》は《名詞節》を導いている。この部分は、「軍隊に加わることに興味があるかどうかを尋ねるアンケート」という意味。

やや余談だが、こういう《be interested in -ing》の用法は、これを「…することに興味がある」という対訳でしか考えることができないと、わかりにくいようだ(いくつもの英語エッセイでこれについて書かれているのを読んだことがある)。例えば "Are you interested in obtaining a review copy of my new book?" といえば、「もしよろしければ、評価用ということで新刊を一部、お送りしましょうか」ということだ。わりとかしこまった言い方になる。

 

次。これが本日のメイン。これがウェブ検索ではまず探せない。

From July 2027, they must also undergo a fitness assessment to determine whether they would be eligible for service should war break out.

太字で示した部分は、《ifの省略》で《倒置》が起きている。

  if war should break out 

  → should war break out

そして、この《should》は、江川泰一郎『英文法解説』で「万一のshould」と説明されているもので(p. 257)、「実現の可能性が少ないという話者の気持ちを表す」のだが、現実には「実現の可能性はさほどないのではないかという希望的観測を表す」ということだったりもする。この文は「2027年7月以降は、万が一戦争が起きた場合に、兵役につくのに適格であるかどうかを決定するための健康検査も受けねばならなくなる」という意味。ここはためらいなくmustが使ってあって味わい深い。

そりゃもう、当局がパニック抑制の文体を使いたがるわけです。

ちなみにこういうときのwarは「戦争」という漠然とした抽象名詞ということで《不可算名詞》。個別の戦争は可算名詞です。つまり、概念上の戦争は不可算名詞で "if war should break out," 過去に起きた実際の戦争は可算名詞で "A war broke out." となる。ウィキペディアの「戦争一覧集」のページ見出しはLists of warsである。

 

そしてその次、「ドイツでは憲法(基本法)により女性については兵役は免除され、志願兵に限られている」という説明。これは冒頭からここまでの前提である "German males aged between 17 and 45" に関しての補足なのだろうけれど、おそらくこれでまた現地版の「女さんはー」という女叩きの光景が展開されるのだろうと思う。(「不公平だ」と思うんなら、叩くんじゃなくて法改正を求めて運動しろ。)

 

キャプチャした部分の最後のところ。

While the plan is for voluntary service, if the security situation worsens or if too few volunteers came forward, a form of compulsory military service could be considered.

これはもう「万一のshould」みたいなものもかなぐり捨て、《直接法のif節》、つまり「単なる条件」で「もしも安全保障状況が悪化したり、志願兵があまりに少ない場合には」と書いたうえで、「徴兵制が検討されることになろう/なるかもしれない」と述べている個所。このcouldは《現実味のcould》(「~になることは確実だ」くらいのニュアンス)なのか、《仮定法のcould》(「~になるかもしれない」くらい)なのかは判断できずにいるが、if節が直接法なので、形式的には《現実味のcould》だろうなと思う。

そう解釈すると、文頭のwhileの節が「一応言っとく」的なものということで、筋が通る。「一応、この計画は(徴兵制ではなく)志願兵に関するものだが、安保をめぐる情勢に変化があった場合、もしくは志願兵が人数的に少なすぎる場合は、徴兵制も検討されることになろう」。

 

ドイツはEUの一員で、シェンゲン協定があるので、EU域内なら特に届け出ることなく住むことができる。これと、兵役に関しての「国外長期滞在届け出義務」みたいなのの導入の間には齟齬が生じる。

実際、長期滞在に許可取りが必要ということが注目されたのはこの金曜日(4月3日)になってからだというし、仮に許可を取らずに3か月外国に滞在したとしても、現状、罰則はないということもこのBBC記事には書かれている。

 

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。