Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

were to do ~の仮定法でのifの省略と倒置、挿入、イディオム(ホロコーストという過去の現実と、現在を、イスラエルの中から)

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ホロコーストを記念する(「記憶に刻む」と言った方がいいかもしれない)ための日は、いくつかある。ホロコーストで殺された人々、特にユダヤ人の逮捕・移送・殺戮が行われた各国でのものもあるが、大きなのは2つ。

1つは国連の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」で毎年1月27日、これは国際的な追悼と記念の日で、欧州とイスラエルの各国首脳も参列して大々的な式典が行われ、BBCなどで中継される。

もう1つはイスラエルの公休日になっている「ヨム・ハショア」でユダヤ暦のニサン月の27日。ウィキペディア日本語版では2024年までしかリストアップされていないが*1、2026年の今年は4月14日だった。その日、私がいつも見ている画面には、イスラエル国内から、この日のことを伝える言葉が流れてきていた――いくつかは最初から英語で書かれ、いくつかは現地語(ヘブライ語)の投稿がGrokによって自動的に英語で表示されている状態で*2、私がフォローしている範囲内のこととて、そのいずれもが、ホロコーストを利用して正当化されているイスラエルの拡張主義やアパルトヘイトを批判するものだった。その投稿のひとつが、国際法と人道支援の専門家で法律家(弁護士)であるイタイ・エプシュタインさんによるものだった。

というか、その投稿には、最近当ブログでよくメモっている類の、ウェブ検索などでは簡単には見つけられない英文法の実例が含まれていた。それに気づいたときの私の投稿: 

というわけでその投稿: 

実例が含まれている部分は下の方にあって、最初の画面には表示されていない。

エプシュタインさんの投稿の文面、前半部分のコピペ。私が「おお英文法の実例が」と思いながらも固まった部分は、太字で示しておく。

Today #Israel marks #Holocaust Remembrance Day. Yet Bezalel Smotrich @bezalelsm, overseer of the occupied State of #Palestine, sees fit to admonish the German Chancellor @_FriedrichMer for declining to recognize as lawful Israeli claims of Lebensraum at the expense of Palestinians. Were my relatives, murdered at Auschwitz-Birkenau and Chełmno, to have graves, they would be turning. 

太字の前の部分は、少し長いので構造が取りにくいかもしれないが、ドイツのメルツ首相がイスラエルの拡張主義(大イスラエル主義)にお墨付きを与えるのを拒んだことを、スモリッチがわざわざこの記念日に合わせて非難している、ということを述べている。スモリッチの言っていることを、非常に批判的に(ナチス用語を使ってまでして)とらえている記述である。

そして太字の部分。これは文法的には、《仮定法》で、《ifの省略》が発生していて見た目上《if節のない仮定法》になっており、省略によって《倒置》が起きている。プラス、その《仮定法》が《were to do ~》の形である。しかも《挿入》も入りこんでいる。

つまり:

If my relatives, murdered at Auschwitz-Birkenau and Chełmno, were to have graves, they would be turning.  

  ↓

Were my relatives, murdered at Auschwitz-Birkenau and Chełmno, to have graves, they would be turning.  

この英文を文頭から読んでいって、《挿入》の部分を読んで、その先の "to have graves" を読んだとき、日本における墓というものの形骸性と象徴性にうんざりしていて自分には墓なんざいらんと思っている自分でも、ホロコーストの非人道性がのどをふさぐような形で迫ってきたし、さらに、そのホロコーストと同じように、あるいはもっと徹底的に非人道的な形で、生存したという痕跡を消されているガザの人々のこと(病院の中庭など人々が身を寄せていた場所が、人がそこにいる状態でブルドーザーによって踏み荒らされた上に、近隣の遺体をまとめて埋めておく場所にされたりしているし、今生きている者たちを殺戮しているばかりか、以前からあった墓までがめちゃくちゃに掘り起こされて平らにされている)、墓などないガザの死者たちのことがおのずと念頭に浮かんで、「ああ」としか言えなくなった状態で「ああ」と声が出た。声が出てよかったと思う。でなければ内に抱え込んでいたので。これを。

文意は、「もしも、アウシュヴィッツ=ビルケナウヘウムノの絶滅収容所で殺害された私の親族に墓があったとしたら、彼ら・彼女らは墓の中でじたばたともんどりうっているだろう」。

turn in one's graveは、多くwould be turning in one's graveという仮定法過去+進行形の形で用いられる表現で、直訳は「墓の中で身を返す」。動かないはずの死者が動くレベルで衝撃を受けたり憤ったりする、ということで、「死人が暴れだす」とでも訳すのが分かりやすいだろう。日本語の慣用表現では「草葉の陰で泣く(泣いている)」が近い(が、かなりおとなしくなる)。

この慣用表現の例文は、DuckduckgoのAIを利用して、GTP-5 miniに出力してもらった。日英対訳にしてくれたが、日本語がぐだぐだなので英語だけコピペしておく。名詞句になったりするのを除いてほぼ例外なく《仮定法》で用いられる(実際に死人が動くわけがないのだから、直説法で扱える領域にはない)。

  • He would be turning in his grave if he saw today's designs.

  • Grandma would be turning in her grave if she heard the family using that kind of language.

  • The composer would be turning in his grave at the way they arranged his music for the film.

最初の例は「こんにちのデザインを見たら、彼は墓の中でもんどりうつだろう」で、「彼」は昔の名建築家かな。そうよねー、クリストファー・レンがロンドンのビジネス街のガーキンやウォーキートーキーを見たらそうなるよねー、という感じ。

2番目のは、「亡くなった祖母は言葉遣いにやかましい人だった」ということで、「家族がそんな言葉を使っているのを聞いたら、亡き祖母は草葉の陰で泣いてしまうだろう」。ドナルド・トランプのおばあちゃんかな

3番目のは、「その作曲家が、映画用に自分の曲がアレンジされているのを聞いたら、墓から起きだしてくるんじゃねえの」ということで、映画サントラでクラシックがめちゃくちゃにされている例というのは私はすぐには思いつかないが、ポップ・ミュージック等ならあるある、かもしれない。

 

話を元に戻して、エプシュタインさんは、上記投稿の後続部分で、イスラエルの政治を担っている過激派が、パレスチナ人を殺戮し、パレスチナを破壊し、収奪しながら、同時にホロコーストを利用してドイツに圧力をかけている、というか、ホロコーストを圧力の道具に貶めていることに憤っている。

ご自身とホロコーストのつながりについては、何度か投稿なさっているが、今年の1月27日の国際デーのときにこのような投稿があった。

いわく、1944年8月にひいおばあさんとおばあさん(母子)が、ポーランドのウッチ・ゲットーからアウシュヴィッツ=ビルケナウ収容所に移送され、ひいおばあさんのミンドラさん(ツイートについている写真の女性)は到着後すぐに殺害され、おばあさんは奴隷労働を強制されたが生き延びて、1945年4月15日にベルゲン=ベルゼンで英軍によって解放された、と。

これに続く投稿がすごい。

全文:

Standing up to the perpetrators of atrocity crimes saved her life and that of millions. From the ashes of my family rose an international system meant to spare succeeding generations the scourge of war, uniting states to maintain international peace and security. Today, that system is being dismantled by leaders driven by profiteering and fantasies of “peace prizes,” enabled by those who lack the courage to defend justice and respect for international law.

対訳: 

祖母の、そして何百万という人々の命を救ったのは、国際法上の重大犯罪 (atrocity crimes) を犯す者たちに対して立ち上がったことだった。私の家族の灰から、諸国をまとめて国家間の平和と安全を維持し、続く諸世代に戦争の惨禍を味わわせまいとする国際的な機構が興った。こんにち、その機構が、私腹を肥やすことを求め、『平和賞』を夢想している指導者たちによって解体されつつある。それを可能にしているのは、正義を守り、国際法を尊重する勇気を持たぬ者たちである。

エプシュタインさんはイスラエル在住だが、イスラエルの外にも、こういうふうにしてホロコースト(ショアー)とのつながりを持っている人がそこらじゅうにいる(にもかかわらず、「ホロコースト否認」が無視できないレベルで存在してきた)のが「欧米」と呼ばれる地域である。そして「ホロコースト否認」を強く批判する人の中に、ガザについて「ジェノサイド否認」をしている人が、かなり多く存在するのが。

 

[rakuten:renet20:11229479:detail]

 

*1:誰も見ていないんですかね……。

*2:私はTwitter/Xの設定言語を「英語」にしてあって、使っている端末の設定が「日本語」だが、この3月のGrok翻訳の訳文の自動的な表示の導入によって、自分の画面では日本語と英語以外の言語は自動的に英語で表示されるようになった。といっても今、自動的に置換されて流れてくるのは、ヘブライ語とアラビア語ばかりで、韓国語やインドネシア語などアジアの言葉や、フランス語やスペイン語など欧州の言葉がどうなるのかはまだ確認できていない。

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