このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例は、学術的な報告書から。
国公立大・私立大の二次試験などで、「与えられたグラフを見てわかることを英語で説明せよ」という主旨の自由英作文が課される場合、視覚的な(見てわかる)情報を言語化できるか(それも、英語で表現できるか)ということが問われているのだが、その際、決まりきった定型表現を使えるか使えないかで結果に大きな違いが出る。学術論文などはそういった表現の宝庫というか、そういった表現で書かれることが決まっているものだから、二次試験直前の仕上げの時期に、自分で使えそうな英語表現を見つけようというつもりで英語の学術論文を見てみることは、かなり効果的な勉強法になるだろう。
今回見る報告書は下記の記事で紹介されているもの。
More than half of British voters now unhappy with democratic system, new research reveals https://t.co/miDsCSOeJI 29th January 2020 (h/t @yunod) 😱
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) January 30, 2020
この記事の見出しで内容の概略を把握したうえで、報告書そのものを見てみよう。URLは下記(PDFのほう):
ケンブリッジ大の元記事: Global dissatisfaction with democracy at record high, new Cambridge report reveals https://t.co/jkcwHMqilA
— nofrills/共訳書『アメリカ侵略全史』作品社 (@nofrills) January 30, 2020
レポートはここ: https://t.co/CPQVywxUOH (PDF)
報告書は全部で60ページ、本文だけだと40ページくらいあって、受験生がちょっとやそっとで読める分量ではないが、最初の方にあるKey Findingsのところだけなら問題なく読める。そこを見たうえで、もしより詳しいことを知りたいなと思ったら、本文でそれが書いてある箇所を読めばよい。
キャプチャ画像にした文章量で、語数カウントのソフトウエアにかけると346語。今年のセンター試験の第4問A(説明文)が約420語だったそうだから*1、それよりずっと短い。さらに言えば、項目ごとの箇条書きで、全体を一貫する論理の流れを見なくてもよいから、多くの受験生は読むだけなら余裕で読めるだろう。
単語もそんなに難しいものはない。
難しいのは、しょっぱなの "Across the globe, democracy is in a state of malaise." のmalaiseだが、これは "democracy is in a state of malaise." と、後のほうの "Since then, the share of individuals who are “dissatisfied” with democracy has risen..." とを関連づけて読むという論理的な処理ができれば、単語の意味は推測できるはずだ。ちなみにこういう意味である。
2行目の "time-series data" というのも見たことがない人がほとんどだろうが、これは学術用語で「時系列データ」のこと。「時系列データ」という用語が出てこなくても、「なんか時間順に並べたデータのこと」とわかれば問題なく読めるし、そこがわからなくて 「とりあえずなんかのデータ」としかわかってなくても文が読めないことはなかろう。
というわけで、まずはこのキャプチャ画像の文を全部読んでみてほしい。かなり暗い、重苦しい調査結果である。(´・_・`)
さて、今度はここにある英語表現を自分で英作文で使える表現として自分の中でストックしておくという観点で見てみよう。まず、この第1パラグラフで注目しておきたいのは、《前置詞by》の使い方だ。ついでに言うと、「~の割合は、…ポイント増加した」と言いたいときの定型表現を覚えてしまおう。つまり:
the share of individuals who are “dissatisfied” with democracy has risen by around +10% points, from 47.9 to 57.5%.
太字にした部分が定型表現。
このbyは《程度》を表すbyで、次のような例文で覚えていると思う。
Tom is younger than Jim by three years.
(トムはジムより、3歳若い)
特に「〇パーセントから、□パーセントへ、△パーセント・ポイント増加した」などと言いたいときは、上記で下線で示したような形にするのがお約束である。昨年10月の消費税率引き上げについての日本の首相官邸に掲載されている英語の文面も、次のようになっている。
The consumption tax rate is scheduled to be increased by 2% from the current 8% to 10% on October 1, 2019*2
(2019年10月1日、消費税率が、現行の8パーセントから10パーセントへと、2パーセント引き上げられることになっている)
これを覚えておくと、「この都市では、コンビニの数は、100件から95件へと5件減少した」といったことがきれいに書ける。(ちなみに、In this city, the number of convenience stores decreased by five from 100 to 95. という形になる。)
続いて、第3パラグラフの書き出し、"The rise in ..." に注目。「…の増加」の定型表現だ。例えば「気温の上昇」はa rise in temperature, 「失業率の増加」は a rise in unemployment, 「価格(物価)の上昇」はa rise in pricesである。
そのほか、《付帯状況のwith》や《分数》など、英作文で使いまわせる表現がいくつか入っている。一度に扱うと長くなりすぎてしまうので、それらはまた次回以降に見ていくことにしよう。
参考書:
*1:自分で数えてもいいんだけど、解析できるように下準備するのが手間がかかるので、東進ハイスクールさんの分析を参照した。
*2:英文出典: https://japan.kantei.go.jp/98_abe/decisions/2018/_00007.html