Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

関心を寄せるべきは「衝突が起きている」ことではない。イスラエルが何をしているのか、だ。

今回は、少し変則的に。

ハマス(ハマース)*1がロケットを撃ち始めてようやく世界的に報じられるようになったが(そもそも「ハマスが先に手を出した」わけではないのだが)、ここ数週間、イスラエルパレスチナ情勢がひどく緊迫してきていた。

日本でゴールデンウィークが終わるころ、私は具合が悪くて寝込んでいたのだが、布団の中で手にしていたスマホの画面に流れてくるエルサレム――イスラエルが完全に「自分たちの物」扱いしているこの都市は、国際社会としては "The international community largely considers the legal status of Jerusalem to derive from the partition plan, and correspondingly refuses to recognize Israeli sovereignty over the city," つまりイスラエルの主権を認めていない――や、ヨルダン川西岸地区からのニュースは(それらは地域的にはハマスが拠点とするガザ地区とは別なのだが、なぜこれらの地域が「別」になっているか、何がそれらを「別々」にしているのかが、問題のroot causeである)、とても重苦しいものだった。今年は偶然にも、イスラエルが(勝手に)制定している「エルサレムの日」が5月9日から10日、イスラム教のラマダーンの最終日が5月12日と近接していた上に*2イスラエルの政治情勢がとても微妙で、何がどうなるかわからないという状態だった。

イスラエルでは、一応「首相」の立場にあるネタニヤフ(文中敬称略)が、収賄や背任といった汚職で起訴されて2020年5月以降裁判の被告となっていて、そしてそれでも「首相」のポストは維持し続けていたのだが(私はその理由までは把握していない)、いかにも政権が安定せず、この3月に2年間で4度目となった総選挙が行われたものの、何度選挙しても、ネタニヤフの政党(「リクード」という)が第一党になりはしても単独過半数は取れず(それ自体はイスラエルでは普通のこと)、したがってどこかほかの党と連立を組むことになるのだが、その連立が難航したり、何とかして政権発足にこぎつけても予算案が通せなかったりといったことになって総選挙が繰り返されていて、要するにネタニヤフ的には何が何でも何とかしたいという局面にある(雑駁な説明ですみません)。イスラエル新型コロナウイルスのワクチン大量接種(ただしイスラエルが占領しているパレスチナには雀の涙ほどしかワクチンを入れていない)が「成功」していて、世界の注目を集めているのには、そういう背景もある(それがあっても、ネタニヤフはこの3月の選挙後に組閣できなかったのだが)。どんな手に出てくるかわかったもんじゃない。

 

ここまでで1000字を軽く超えてしまっているので先を急ごう。

エルサレムというと宗教がなんちゃらと言いたがる人たちが日本にはとても多いが、それ以前に単に人々が暮らす街の行政という面で、エルサレムは東西に分断されていて、東エルサレムは「アラブ人」の街である(かつてはヨルダンの支配下にあった)。イスラエルの右派は、その東エルサレムも自分たちのものにしようと、そこに住んでいる人々(つまり「アラブ人」)を追い出しにかかっている。これは「立ち退き」ではなく「追い出し」である。そしてそれは今に始まった話ではない。「住居建設の許可が下りていないのに勝手に家を作っている」という口実をつけて、イスラエル当局が「アラブ人」の家をブルドーザーで破壊しているというニュースは、私の環境ではもうずっと何年も前から、しょっちゅう流れてくる。この4月から5月だって、住民の追い出しが行われているという実況のようなものが、英語で、あるいは英語翻訳付きのアラビア語のツイートで流れてきているのだ。「ハマスのロケット」のずっと前に。そしてそれは、国際ニュースにはほとんどならない。追い出されているのは元からの住民、追い出しているのは新規の入植者である。

*1:正確には、「ハマス」は抵抗運動で、武装組織は「エゼディーン・アル・カッサーム旅団」と言うのだが、本稿では用語として「ハマス」を用いる。「ハマス」と「アル・カッサム旅団」を区別することは、「シン・フェイン」や「リパブリカン運動」と「IRA」を区別するのと同じことなのだが、一般的に目にする文書類では誰も区別していない。なぜなのかは私にはわからない。

*2:どちらの日程も、それぞれ西暦とは違う暦で決められるので、私たちが使っている西暦では日にちは毎年変わる。

続きを読む

if節の区別(副詞節か、名詞節か), 接続詞+分詞構文, 形式主語itの構文, if/thenの論理, butの論理(東京五輪についての大坂なおみ選手の発言)

今回の実例は、報道記事から。「報道」というより時事的なトピックに関するインタビュー記事だが。

テニスの錦織圭選手が、この夏の五輪開催について疑問を抱いていることをオンライン記者会見で述べたという。下記は共同通信の記事より(掲載は毎日新聞): 

男子テニスの錦織圭日清食品)が10日、新型コロナウイルス禍で開催反対の声が目立つ東京オリンピックパラリンピックについて「一人でも感染者が出る状況なら気が進まない。政治のこともあるが、究極的には一人も感染者が出ない時にやるべき」だと述べ、国民の安全が最優先との考えを示した。……

https://mainichi.jp/articles/20210510/k00/00m/050/317000c

ほぼ同じタイミングで、英BBC大坂なおみ選手に(リモートで)インタビューして、その映像(音声)を添えて、インタビュー内容をまとめた記事を出している。今回の実例はその記事から。記事はこちら: 

www.bbc.com

見出しで引用符(一重の引用符が使われているのはBBCの表記基準によるもので特に深い意味はない)でくくられている "not sure" は、インタビュー内での大坂選手の発言からそのまま持ってきた語句で、直訳すれば「確信していない」となるが、日常語の文脈では "I'm not sure that ..." は "I don't think that ..." と同義といってよい。もっと言えば、 "I don't think it's right that ..." の意味(「…が正しいことだとは思わない」、つまり「…は間違ったことだ」の少し婉曲な表現)である。大坂選手ご自身の発言は、見出しの下に示されているリード文にあるように "not really sure" と、 "not sure" にさらにワンクッション置いたマイルドな表現になっているので、「間違っている」と断言するトーンではないが、示されている見解は、今夏の五輪開催に疑問を呈する内容である。

記事は短いものなので、ぜひ全文を読んでいただきたいと思う。BBC Newsの表記ルール通りに最初の1パラグラフは太字で示されたリード文で、次のパラグラフからが記事の本文となるが、この記事の場合、そこに、開幕まで10週間の現時点で、東京が感染急増(この「急増」について、日本では2020年春の時点で専門家様のどなたかが「オーバーシュート」という珍妙なカタカナ語を使っていたが、英語ではsurgeとかspikeとかいった表現を使う。overshootは「うっかり間違って遠くまで行きすぎてしまう」というのが原義である)による緊急事態宣言下にあることが端的に説明されている。

実例として見るのはその次の部分から。

続きを読む

if節のない仮定法 (without ~), 挿入, 否定, thank ~ for ..., パンクチュエーション(セミコロン)(ジュリアン・スミスNI大臣の解任)

今回の実例はTwitterから。

起きたことがショックすぎて文脈とか説明できる状態ではないので、今回はサクッと。

何が起きたかというとこういうこと。つまり、英国政府の北アイルランド担当大臣が、2月13日のジョンソン内閣改造でクビになった: 

 

実例として見るのはこちらのツイート: 

 ツイート主のサイモン・コヴニー氏はアイルランド共和国外務大臣、つまり英国との交渉を行う担当者で、今回クビになった英国のジュリアン・スミス北アイルランド担当大臣とともに、3年間も機能停止していた北アイルランド自治議会の再起動に尽力し、それを実現させたのだが、彼自身、先週末の選挙の結果、外務大臣のポストを失うことは確定的だと思われている(ただし、先週末の選挙の結果は非常に複雑なもので、新政権の組閣は、すぐには始まっていないのだが)。つまり、ほんの1か月前に北アイルランド自治議会を再起動させた英国・アイルランド共和国両国政府の代表者が、そろって表舞台を去るわけだ。かもしれないということになった。(←記述修正。わけのわからないことに、アイルランドのFGが政権を去るかどうかがわからなくなってきてるのでここを修正し、少し上のところは「確定的だと思われている」と加筆しました。)

続きを読む

一人称の代わりに用いられる二人称のyou(「総称のyou」とは別のもの)と、総称のyou(メイズ刑務所のダーティー・プロテスト)

今回の実例は、前回と同じ記事から。背景解説などは前回のエントリをご参照いただきたい。

映画Hungerをご覧になった方はご記憶かと思うが、視点人物のひとりに「新入りの若者」が設定されている。メイズ刑務所(リパブリカン側の用語では「ロング・ケッシュ」)に新たに入れられることになったリパブリカンの若者で、映画は、彼が刑務所に連れてこられ、獄吏による入所手続きを済ませると、素っ裸に毛布を巻き付けた姿になるところを、特に説明なく映し出す。彼はこの映画の主題人物であるボビー・サンズではなく、いわば「その他大勢」のひとりで、実在の人物を忠実になぞっているというよりは、何人もの体験をひとりの登場人物としてスクリーン上に表した存在だが、1980年から81年のメイズ/ロング・ケッシュでの出来事について何も知らないでこの映画を見ると、まず、ここがわからないのではないかと思う。

前回のエントリのなかで参照している拙ブログの過去記事に、そのことについて詳しく、リンク付きで書いてあるので、詳細についてはまずそちらをお読みいただければと思うが、今回見るピーター・テイラーの解説記事はその経緯を改めて、端的にわかりやすく説明しており、その点でもぜひお読みいただきたいと思う。

www.bbc.co.uk

今回実例として見るのは、まさに映画Hungerの「新入り」と同じようなことを実際に当時のメイズ/ロング・ケッシュで経験していた元囚人のひとりが、テイラーに語っていることばがそのまま引用符で引用されている部分から。

続きを読む

リスニング(聞き取り)の練習素材, 定型表現, would like to do ~, thank ~ for ..., 省略, make + O + C, 仮定法, without ~(カズ・ヒロさんのアカデミー賞受賞スピーチ)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回も、先日のエントリに引き続き、音声を素材に聞き取りをして文法を見てみよう。というか、「聞き取るためには文法と語彙力が必要」ということの意味を確認してみよう。

すごく簡単に説明すると、誰かが口頭で発する「もにゃもにゃもにゃもにゃ」という音の連なりを、「〇〇ポイントカードはお持ちですか?」と認識するためには、「ポイントカード」、「お持ち」、「ですか?」が《ことば》であるということを、聞き手の側があらかじめ知っておく必要がある。

特に「お持ち」、「ですか?」は重要だ。この例では、「お持ちですか?」が聞き取れないとコミュニケーションが全然取れない。別の言い方をすれば、「お持ち」は「持つ」という動詞の別の形であることを知っていないと「お餅」だと思ってしまうかもしれないし、「お持ちですか?」を「おも」+「ち」+「で」+「すか?」と認識して「主地でスカ?」とか「重血で須加?」と解釈してしまうかもしれない*1

「ポイントカード」がどういうものかを知っていれば、「〇〇ポイントカード」という固有名詞は知らなくてもコミュニケーションは成立するが(「〇〇ポイントカード」という固有名詞を知らない人は、おそらくそのポイントカードは持っていないだろうから、「何ポイントカードだかは知らないけど」と言語化されるまでもないことを頭の中に思い浮かべて「持ってません」と答えるはずである)、「ポイントカード」を知らない場合や「ポイントカード」という単語を認識できない場合は、「何を持っているかですって?」ということになってしまう。

また、「〇〇ポイントカードは」の「は」は助詞で、これは実際には聞き取れないくらい小さく、弱く発音されていることが多いが、私たちは頭の中でそれを補って聞き取っている。聞き取っているわけではなく、推測して解釈しているのだ。

この推測の根拠となっているのが文法とか構文の知識で、これが補えるということは、この言語(日本語)が使える、この言語に慣れているということだが、そうでない人がここは何なのか、「に」なのか「が」なのか「の」なのかといったことで頭を悩ませてしまうかもしれない。

あるいは「〇〇ポイントカード、お持ちですか」と、助詞を一切発音しないことすらあるが、それを私たちは "Do you have 〇〇 pointcard?" という意味であると解釈するのであって、"〇〇 pointcard has?" などとは解釈しない。

というわけで、単に音だけ聞かされても、人はそれを《ことば》として聞き取ることはできない。《ことば》として聞き取るためには、単語を知っていなければならないし、文法・構文の知識が必要だ。

 

それを前提として、下記の音声を聞いてみよう。話者は日本生まれの日本育ちでネイティヴ日本語話者のカズ・ヒロさん(2019年に米国籍を取得。日本の法制度では二重国籍が認められておらず、よその国の国籍を取得すると日本国籍を放棄しなければならないので、国籍としては「元日本人」)。2月10日の米アカデミー賞でメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞したときのスピーチだ。

全部で1分28秒あるが、最後の数秒はクレジット表示で本体は1分20秒くらい。最初の24秒は受賞者発表と登壇シーンなので、耳は休ませてぼけーっと見ていてよい。そのあと、カズ・ヒロさんがスピーチを始めるので、まずはこの人の発音に耳を慣らすつもりで聞いてみよう。「ネイティヴ日本語話者による、世界の舞台での通じる英語」のお手本としてはこれ以上望みようのない音声素材である。つまり、重要な部分さえ押さえていれば、「ネイティブみたいな発音*2」である必要はない。

受賞スピーチだから「だれそれに感謝します」と述べる部分が多く、人名がやたらとたくさん出てくるが、そこは聞き飛ばしてしまってよい(聞き飛ばしてよい箇所を判断できるかどうかも聞き取りの力のカギになる)。その上で、このスピーチを聞き取れるかどうかは、まずはこういうときの定型表現を知っているかどうか、あるいはその定型表現そのものを知らなくてもその表現に使われる単語を知っているかどうかになる。

そして終盤、カズ・ヒロさんのスピーチが定型表現を離れて受賞作で主演とプロデューサーをつとめたシャーリーズ・セロンに感謝と賞賛の気持ちを伝えるところでは、より一般的な表現が使われており、「定型文の聞き取り」ではなく一般的な文の聞き取りとなる。

スピーチの全文文字起こしは見つけられていないが、終盤の文字起こしが下記記事に含まれているので、 正しく聞き取れているかどうか確認したい場合などはそちらをご参照のほど。

edition.cnn.com

www.dailymail.co.uk

*1:実際、パソコンやワードプロセッサーでの日本語入力の漢字変換の仕組みは、こういうのをいかに克服するかという課題と常に向き合ってきた。

*2:日本における「ネイティブみたいな発音」は多くの場合、アメリカの巻き舌の強いベタベタしたアクセント(しゃべり方)を大げさに表現したものである。ああいう英語を使っている「ネイティブ(・スピーカー)」は全体の一部に過ぎない。あの発音が性に合っている学習者はあの発音をお手本にすればよいが、無理と感じたら無理に追求する必要はない。アクセントのお手本はほかにもあるので。

続きを読む

倒置, not only A but B, keep + O + -ing, 【ボキャビル】tangible(米アカデミー賞で韓国映画が最優秀作品賞他4冠)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例は、Twitterから。

2月10日の第92回米アカデミー賞は、韓国映画『パラサイト 半地下の家族』が、最優秀オリジナル脚本賞、最優秀国際長編映画*1、最優秀監督賞、そして最優秀作品賞まで獲得するという、驚きの展開となった。この映画、アメリカのスタッフも資本も入っていない、アメリカから見れば完全な「外国」映画である。

これまでも「外国語映画賞」部門はあり、そこでイタリアのフェデリコ・フェリーニとか、スウェーデンイングマール・ベルイマンとか、日本の黒澤明とか、スペインのペドロ・アルモドバルとか、イランのアスガル・ファルハーディーといった映画作家たちを高く評価してはきたが、基本的に米アカデミー賞アメリカの、アメリカ国内向けの映画賞である。「外国語とか何とかという条件をつけず、単に、映画として素晴らしいもの」に与えられる「作品賞」はアメリカの映画がとるのがお約束だ。ときどきイギリスの映画がとることがあるが、いずれにせよ英語の作品である。

昨年(第91回)、メキシコが舞台でスペイン語の映画であるアルフォンソ・キュアロン監督『ROMA/ローマ』が「外国語映画賞」(今年からは「国際長編映画」)と「作品賞」に同時にノミネートされ、この作品が劇場公開という形よりむしろNetflix配信で一般の人々に届けられたこともあいまって、「異例の作品が、最優秀作品賞獲得なるかどうか」という話題になったが、最終的には最優秀作品賞をとったのは、普通にアメリカ映画の『グリーンブック』だった。(『ROMA』は最優秀外国語映画賞はとった。)

むしろ昨年は、『グリーンブック』が最優秀作品と位置付けられ、スパイク・リー監督の『ブラック・クランズマン』が受賞しなかったことで「アメリカにおける黒人の歴史をいかに語ったものがいかに評価されるのか」という問題を前景化させたことが、少なくとも英語圏では大きな話題となり、「スペイン語の映画が作品賞にノミネートはされたが受賞はしなかった」ということは、「Netflix配信の映画が作品賞にノミネートはされたが受賞はしなかった」ということほどにも注目されなかった。

そういうのがあって、「米アカデミー賞ってのはそういうものでしょう」とみなが思っていたところに、韓国を舞台にした韓国語の映画『パラサイト』が、「外国語のすばらしい映画」としても、「単に映画としてすばらしい映画」としても評価されたのだから、人々の驚きはひとしおではない。しかも、この韓国語の作品、脚本賞もとっている。オスカー像4体お持ち帰り!

というわけでTwitterで実況を追っていたが私もびっくりしたし、私の視界に入ってくる反応もみな「これは驚いた!」「すごい!」というものばかりだった。

やや時間をおいて、アカデミーの公式アカウントから受賞スピーチのクリップが配信されてきたが、会場も「すごい!」のムードに包まれている様子だ。 

 2分40秒あたりで舞台の照明が落とされてしまうという一幕があるが、最前列に座ったトム・ハンクスシャーリーズ・セロンといった映画スターたちが「照明つけてつけてつけて」と騒いでいる様子は、早くもGIF化されている。

 

というような状態で、要するにみんな「うわー、すごい」と口々に言っているような状態だが、そういったツイートのひとつが今回の実例。こちら: 

ツイート主のザック・シャーフさんは、アメリカの映画・TV評論&ニュースメディアのIndiewireのニュース・エディター*2

*1:前回まで「外国語映画 Foreign Language Film」と位置付けられていたものが、2020年2月の第92回から、「国際長編映画 International Feature Film」となった。

*2:「映画専門誌の編集者」のような仕事。

続きを読む

リスニング(聞き取り)の練習素材, thatの判別(ホアキン・フェニックスの英アカデミー賞でのスピーチ)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例は、スピーチから。

今日2月10日は米国の西海岸、ロサンジェルス「アカデミー賞」の授賞式が行われていて世界的な注目を集めているが、あれは実は米国の「映画芸術科学アカデミー」が選ぶ米国のローカルな賞で、国際的な賞ではなく、正確を期すならば「米国のアカデミー賞」と呼ぶべきだろう。実際、「アカデミー賞」は世界各国にある。「日本アカデミー賞」もあるし「英国アカデミー賞」もある。今回の実例はその「英国アカデミー賞」でなされたスピーチから。

「英国アカデミー賞」は、「英国映画テレビ芸術アカデミー (British Academy of Film and Television Arts, BAFTA)」が選ぶ英国のローカルな映画賞で、「BAFTA賞 (BAFTA Awards)」と呼ばれている。毎年、米アカデミー賞の少し前に授賞式が行われるが、今年は2月3日にロンドンで授賞式が行われた。ノミネートされた作品や監督・俳優、および受賞した作品や監督・俳優については、下記ウィキペディアにまとまっているので、そちらをご覧いただきたい。

en.wikipedia.org

 

ここで大きな注目を集めたのが、最優秀主演男優賞を獲得したホアキン・フェニックス(『ジョーカー』)のスピーチだった。その内容は、ネット上の日本語圏でも広く伝えられた。

 

今回はこのスピーチを見てみよう。まずはBAFTAのアカウントがアップしている映像から。

英語として特に聞き取りづらさはないスピーチだが、ネイティヴ英語話者がスピーチとしてナチュラルに話す程度のスピードはあるので、センター試験のリスニング程度のスピードのものしか聞き取れないとちょっと厳しいかもしれない(聞き取れなくてもあまりヘコまないでほしいと思う)。また、言葉(テクスト)としてはあまりきれいに整理されきっていない、生々しい発話のスタイルなので、聞いただけで意味を把握するのはちょっと難しいと感じる人もいるかもしれない。

聞き取りができてもできなくても、このスピーチは下記記事で文字に起こしてあるので、それを見ながら答え合わせをするなり聞き取りの練習をするなりするとよい。

www.bbc.com

記事の途中に "Joaquin Phoenix's Bafta speech in full" というコーナーがあるので、そこを参照。

続きを読む

時制, 関係副詞の非制限用法, 関係代名詞, 分詞構文(40年前、北アイルランドでひとりの男が獄中で餓死した)

40年前の5月5日、北アイルランドでひとりの男が死んだ。66日間の絶食の末のその死は、その後の事態の展開を大きく変える死であった。

男の名前はボビー・サンズ。1954年3月9日生まれ、1981年5月5日没。27歳で、死亡したときはウエストミンスターの英国の国会下院*1議席を有していた。それ以前に、彼は、英国政府が「テロ組織」に指定していた(今も指定している)the Provisional IRA(いわゆる「IRA」)のメンバーであり、彼がメイズ刑務所という英国の刑務所内で最期を迎えたのも、そのためである。

……と書くと「わけがわからないよ」となってしまうだろう。正直、私もこの話を他人に説明できるようになるまでには苦労した。日本語で書かれている文章には十分な情報量がない。しかも多くの場合は事実に照らして間違ってさえいて、英語圏で一般的に知られていること(「信じられていること」とは別に)を英語で仕入れて、ネット上の日本語圏でせっせと修正するなどしていたこともある。

例えば、サンズの絶食――ハンガーストライキ、すなわちハンスト――を題材に、ヴィジュアル・アーティストのスティーヴ・マックイーンが作った、ほとんどセリフがなく説明もない映画 Hunger には、監督が大きな賞を取り、主演俳優が「イケメン俳優」と騒がれ出したあとに日本でDVDを出すなどした配給会社によって『静かなる抵抗』なるロマンチックで寝ぼけた副題がつけられ、「あらすじ」としてDVDパッケージや各配信サイトに掲載されている文面も映画の内容にも、映画が立脚している事実にも即していない完全なでたらめで、日本語版ウィキペディアも非常にひどいものになっており、2015年にそれを修正したときのことは怒り散らしながら(なのでお見苦しいところもあるが)ブログに書いてある。この、ことばによる説明というものを最初からせず、ことばによらない説明もほとんどせずに、既に社会の中で《神話》化している《物語》に人間の身体を与え、人間の重みを描き出した映画については、2014年に書いたこのエントリで言いたいことは全部言った感がある。

他にも、私のブログでは、ボビー・サンズについては何度も書いている(あるいは言及している)。

というわけで、1980年から81年にかけて、何があったのかということについては映画Hungerを見ていただくのがよいと思うのだが、この映画は説明というものを全然しておらず、その「説明」という点で非常によいと思われる記事を、今回は読んでみよう。

記事はこちら: 

www.bbc.co.uk

記事を書いたのは、北アイルランド紛争の時期を通じて現地の情勢をずっと取材して伝えてきたジャーナリストのピーター・テイラー。北アイルランド紛争を「ロイヤリスト」、「リパブリカン」、「英国の国家機関(英軍、情報機関)」の三つ巴として分析し、それぞれに入念な取材を行ってまとめた3部作が主著で、1994年の停戦後の和平へのプロセスまで、「テロ」の中で(アメリカ流の、いわゆる「カウンター・テロリズム」のスタンスとは別の立場で)目撃し、伝えてきたジャーナリストである。 

Loyalists (English Edition)

Loyalists (English Edition)

 

 

*1:The House of Commons, これを日本語にするときは「庶民院」と書かないと噛みついてくる人もいるのだが、正直、「そういうこだわりなんですね」というポイントであるとしか言えない。現代の政治においては特別な文脈でもない限り、そこまでこだわる必要性はないところだろう。

続きを読む

分詞構文, 同格, prompt + O + to do ~, 助動詞+受動態, be able to do ~, of + 抽象名詞(首相官邸とメディアと報道の自由)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例も、前々回および前回見たのと同じ、英国の首相官邸がおこなう記者会見に「出席できる記者」を選別しようとし、排除された記者たちとともに全記者が会見をボイコットした、ということを報じる記事から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

こういう「記者選別」(首相官邸の側が、報道が自分たちに都合のよいことを書くように環境を作っている)は、正直日本のうちらには特に新しいこととは見えないのだが、民主主義の前提を破壊するものとみなされている。そういう「民主主義の前提」は、正直、もはや顧みられることもなくなりかけているのだが(もしそれが重要視されていたら、最初から嘘と不正と不法行為にまみれていたBrexitはどこかでストップされていただろう)、報道に携わる人々の間ではまだ完全に「こんなもんじゃね」みたいなムードにはなっていない。だからこういう記事が出ているのだが、こういうことを伝えるときに引き合いに出されているのが「ドナルド・トランプ流」みたいな概念である。

報道機関を敵視し、自分に都合の悪いことを報じられるとfalseやunfoundedといった言葉ではなくfakeという小学生じみた言葉を使って「フェイクニュースだ」と連呼するトランプは、CNNやニューヨークタイムズを敵視し、Fox Newsや右派新興メディアを優遇してきた。この「トランプ流」のやり口については、例えば2018年11月のForbes Japanのコラム(水本達也さんによる)に詳しい。

forbesjapan.com

2016年大統領選の民主党の指名争いでヒラリー・クリントン国務長官に敗れたサンダース上院議員は、アコスタ氏のような大手メディアの記者を「メディア・エスタブリッシュメント(支配階級)」と呼んで、批判の対象とした。

そして、彼らの立場を一変させたのが、トランプ政権の発足だった。スパイサー大統領報道官(当時)は、これまで記者会見を事実上独占してきた大手メディアの記者たちを一切無視し、あまり知られていない新聞や雑誌の記者を指すようになった。また、ネットを通じて、ホワイトハウスには縁のない地方紙の記者から質問を受けることもあった。

筆者も当初、トランプ政権の前代未聞のやり方に、ある種の小気味よさを感じたことは否定しない。なぜなら、花形記者とその他大勢の記者たちの「格差」が、今後は縮まるかもしれないという錯覚を覚えたからだ。

しかし、しばらくして、新たに「参入」してきた記者たちが、大手メディアの記者がこれまで繰り広げてきたような政権や大統領の説明責任を追及するやり取りに消極的なことが分かってきた。権力から嫌われれば、再び質問ができなくなるからだ。

トランプ氏が執拗にCNNなどを「国民の敵」として仕立て上げるのは、自らに批判的なメディアをたたくだけではなく、大手メディアとそれ以外のメディアの間にくさびを打ち込む狙いもあった。

 

英国でもボリス・ジョンソン首相と側近のドミニク・カミングスらのもとで同様の「くさびを打ち込む」という分断が行われようとしているというのが、今回の「記者選別」という行為に対する評価で、それに対してその場にいた記者たちは「分断を拒む」という意思表示として全員が会見をボイコットしたのである。

続きを読む

there is/are ~の現在完了形, 関係代名詞の非制限用法, 動名詞の意味上の主語, 分詞構文(首相官邸とメディア)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例は、前回見たのと同じ記事から。背景解説等は前回のエントリをご参照いただきたい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

続きを読む

接続詞, 代名詞, tell + O + to do ~, allow + O + to do ~(首相官邸とメディア)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例はメディアに対する首相官邸の扱いをめぐる報道記事から。

2019年夏に英国の首相となったボリス・ジョンソンという人は、一言で言えば「そこそこいい家の子」で、イートン校からオクスフォード大学に進んだという経歴の持ち主だ。1970年代のことで、「そこそこいい家の子」くらいではイートン校ではあまりよい立場にはいられないものだったが、処世術には長けていたようで、学業はダメでも同窓生からの人気は高いという学生だったようだ。

大学でも「愉快な奴」として目立ってはいたようだが学業は全然振るわなかった。1987年に不満足な成績で卒業して、その後はコンサル会社に就職したが1週間で辞め、その後は家族(知識人階級)のコネで一流新聞のザ・タイムズに研修生として入社したが、最初に書いた記事で捏造をやらかしてクビになった。続いて、大学時代の自身の人脈で、同じく一流新聞のデイリー・テレグラフに入った。これにより、ジョンソンは「元々はジャーナリスト」と描写されるが、「ジャーナリスト」といっても現場で取材することが必須ではない、論説記事執筆担当の記者で、いかに読者を引きつける文章が書けるかどうかが勝負の仕事だ。

それはそれで貴重なスキルだし(実際、ジョンソンの書いた文章はおもしろい)、ジョンソンがその道を極めていってくれていたら今頃英国はこんなことになっていないかもしれないのだが、どういうわけか、ジョンソンは大学時代に政治に足を突っ込んでいた。新聞で仕事をし、テレビにも出て顔も名前も売れに売れていたジョンソンは、2000年代に政治家としてぐんぐん目立つようになって、ついには首相にまでなったわけだ。彼の経歴について詳細はウィキペディア参照

https://en.wikipedia.org/wiki/Boris_Johnson

 

さて、そういう経歴の人物だから、メディアの中がどうなっているかはよく知っている。2019年12月の総選挙前に、厳しい質問を次々と浴びせかけることで有名なBBCの「各党党首インタビュー」を拒否したのも、ただの気まぐれではなかっただろう。

日本でもしばしば話題になるが、メディアにとって「取材させてもらえないこと」は何としても避けねばならないことという前提がある。ドミニク・カミングスというかなりとんでもない人物を側近としているジョンソンは、英国の大手メディアに対してそのカードをちらつかせ、時にはそれを切っている。

1月31日にEUからの離脱が正式なものとなって、ジョンソンのその態度がさらに1段階強められた。2月3日、首相官邸での記者会見(ブリーフィング)で、官邸側は、デイリー・ミラー、アイ、ハフィントン・ポスト、ポリティクス・ホーム、インディペンデントの記者を締め出そうとした。これに応じて、政権寄りの報道で批判されている超大物を含む他のメディアの記者たちもこの会見への出席を拒否し、「官邸側が取材する記者を選ぶ」という異常事態は英国では大きく報じられた。

 

というわけで、今回はこの件を報じたガーディアンの記事から。記事は下記: 

www.theguardian.com

 

続きを読む

《程度》を表すby, 分数の表現(「~の3分の1」), as a result, 最上級+ever, 関係代名詞, 接続詞while, 形式主語など(民主主義の後退についての学術的な文)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回もまた、前々回および前回の続きで、学術的な報告書の記述から、大学入試で課される自由英作文に使えそうな表現を拾っていこう。

出典は前回までと同じ(下記のPDF): https://www.bennettinstitute.cam.ac.uk/media/uploads/files/DemocracyReport2020.pdf

見るページも前回と同じ。

続きを読む

付帯状況のwith(インドの感染爆発)

今回の実例は、前回のと同じ文章から。コンテクストの説明などは前回のエントリをご参照いただきたい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

前回書いたように、この文は「書いてあることを、書いてある通りに読む」ということが意外と難しく、その読み方(「正確な読み」)を意識して英文を読めるようにするという練習に適している。わかる単語だけ拾って、脳内で適当に補完しても、何となく意味が通っているように思われるから、そうやって「速読」気分を味わうこともできるのだが、それで済ませてしまうにはもったいないクオリティの英文である。

続きを読む

《it was ~ that ...》の形の文の構造を見極める, 関係代名詞(インドの感染爆発)

今回の実例は、ある状況をかなり長期にわたって分析し、解説する記事から。

インドでの新型コロナウイルス感染の拡大とその深刻な状況については、日本でもいくらかは伝えられている。日本、特に大阪も実にひどい状況になっているが、インドの場合、病院に搬送されても吸入に使う酸素がなく、その他の医療物資も不足していて、まともな医療が受けられないということが、感染の新たな「波」の中で生じている。私の見ている範囲での英語圏では、4月後半はインドの感染拡大状況といわゆる「医療崩壊」がトップニュースになっていて、昨日から今日にかけてはアイルランドや英国、米国の政府が、インドで足りていない物資(病院で使う酸素など)の支援を実施することが決定したとか、支援物資が送られたとか、現地に到着したとかいったことがニュースになっている。

しかしそのインド、欧州各国や米国が感染拡大でひどいことになっていたときには、欧米がいわば「上から目線」で「あんな国でわが国のようなひどい状況が生じたら、すさまじくひどいことになる」と心配してみせていた国々のひとつなのだが、実際には、そのときには恐れられていたほどにはひどいことにはならなかった。その理由もいろいろ取りざたされていた。食事を手で食べる習慣があるから、手の清潔への気の配り方が普段から違うのだとか、常食されるスパイスがよいのだとか、まあ、いろいろあった。同じころ、日本についても、さほど感染が拡大していないことについて、ビタミンDがどうたらとか、幼少期に受けるBCG予防接種がどうたらとかいう理由らしきものがいろいろ取りざたされていたが、インドについていろいろ言われていたのもそれと同じようなことだろう。誰も確証を持っていないが、何となく自分の知ってる範囲、わかる範囲のことで何かを考えたくて、いろんな人がいろんなことを言っていて、中には説得力のあることもあった。でも、科学的には特に根拠はなかった。

科学的に根拠があるかどうかなど、実のところ、さほど重要ではない場合も世の中にはいろいろあって、宗教的信念がハバをきかせているところでは特にその頻度・度合が高まる。そしてインドは、2014年の総選挙で、いろいろとぐだぐだだった国民会議派が大量に議席を失い、ヒンズー・ナショナリズムのBJPが大量に議席を獲得して政権について以来、ヒンズー教徒の宗教熱が高まっているし、宗教熱があおられてもいるという。ほかの宗教、例えばイスラム教に対する公然たる敵視は、BJP支持者の心をしっかりつかんでおくためだろうが、きわめて暴力的な状況を生じさせており、新型コロナウイルス前の世界では、インドが国際ニュースになるときはその宗教を背景とした暴力についてのニュースが多かった。

それが、コロナ禍では忘れられたようになっていて、「なぜインドは感染封じ込めに成功したのか」という話題が時々出るようになり、またさらにはボリウッドの有名映画俳優が感染して入院したといったニュースが時折伝えられ、そして今は俗に「インド変異株」と呼ばれる変異株と、「第二波」と位置付けられる感染爆発のニュースが、あまりに多くの火葬の炎の写真とともに、連日伝えられるようになっている。

そういった状況を振り返りつつ分析しているのが、今回見るガーディアンの記事である。記事はこちら: 

www.theguardian.com

「『われわれは特別ではない』。勝利を謳歌しまくったことが、いかにしてインドを悲惨な状況に追いやったか」という意味のタイトルのこの記事、読んでいてどうしたって「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証として、東京五輪を」云々という日本政府のプロパガンダがかぶって見えてくる。分量もあるし、読むのが楽な記事ではないが、ぜひお読みいただきたいと思う。このウイルスは、「勝利した」と思い込んでしまうこと自体が罠なのだ。感染抑制に成功している国・地域(ニュージーランド、台湾など)は「勝利した」と考えているのではなく「うまくコントロールできている状態を、状況を見てやることを変えつつ、キープしなければ」と考えている。

続きを読む

やや長い文, 関係代名詞, 付帯状況のwith, 【ボキャビル】動詞のmark, so-called, satisfaction with ~(民主主義の後退についての学術的な文)【再掲】

このエントリは、2020年2月にアップしたものの再掲である。

-----------------

今回の実例は、前回(先週末)見たのと同じ学術的な報告書から。

出典は同じで下記のPDF: 

https://www.bennettinstitute.cam.ac.uk/media/uploads/files/DemocracyReport2020.pdf

見るページも前回と同じ。

続きを読む