Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

やや長い文, 関係代名詞, 助動詞mightなど(ディエゴ・マラドーナ死去)

今回の実例はTwitterから。

日本時間で今日未明、ディエゴ・マラドーナが亡くなったとのニュースが流れてきた。最初は「現地報道によると」という形で、その「現地報道によると」はすぐに外れた。BBCのサッカー番組Match of the Dayのプレゼンターをしているガリー・リネカーさんは「現地報道によると」と同時に故人への追悼の言葉を綴っていた。

私のスマホには、速報が出るようにしてあるメディア2つ、BBCアイリッシュ・タイムズから速報の通知が飛んできていた(もちろん、この2つのメディア以外のメディアもそれぞれ速報を出しているだろう)。

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この速報から数時間後には 、各メディアのトップニュースになり、ガーディアンはlive blogの形式でこの悲報への反応をまとめていた。ほぼ同じタイミングで米国ではトランプが出てきてしゃべったとかいうことがあり、私のTwitterのフィルターバブル内ではアメリカの人々は「トランプがー」「共和党がー」「民主党がー」という状態だったが、それ以外の個人アカウントは、英国もアイルランドもトルコも中東も、みんなこの話をしているといってよいような状況だった(東アジアはみんな寝ている時間帯だったが)。引退したスポーツ選手やチームの監督の訃報でTwitterの画面が埋め尽くされるのはよくあることだが、プロサッカーに基本的に興味のない北米を除いて*1、全世界的にこういうふうになったのは、マラドーナの現役時代はそう遠い昔ではなく、多くの人が鮮明に記憶しているからだろう。(ヨハン・クライフが亡くなったときのことを思い出す。あのときも、「欧州の人たちはみんなその話」という状態だった。)

日本時間で朝5時ごろのBBC Newsとガーディアンのアプリを立ち上げた画面のキャプチャ。(ガーディアンのほうは大きな写真はスライドショーで、たまたま写真が切り替わる瞬間をスクショしてしまったので多重露光みたいになっている。)

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こうしてみんながマラドーナのことを話していて、そのどれもが、彼がいかにすごかったかを語っていた*2。今回見る実例はそのような言葉のひとつ。こちら: 

 ツイート主のビル・ニーリーさんは米NBCの国際部のジャーナリストだが、2013年までは英国のITVにいた。北アイルランドの出身で、北アイルランド紛争の報道からキャリアをスタートさせた人で、ディエゴ・マラドーナと同世代である。自身もスポーツマンで、マラソントライアスロンの大会に出場していて、サッカーではリーズ・ユナイテッドのサポーターだ(ガチ)。

このツイートには実は誤認が含まれているようなのだが(後述)、ニーリーさんがツイートしているこの写真は今日の訃報でTwitterにも多く流れたし、英国の新聞でも大きくフィーチャーしているところがあるので、英語を読むということをしながら少しみてみよう。

*1:本気か冗談か、「アメリカではMadonnaとMaradonaが死んだことになってる」というツイートも流れてきていた。かなりイラっとしたのでスルーしたけど記憶からは消えてない。

*2:しばらく後に出た英タブロイドはそうではなかったのだが、その話はまた次回。

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「~は終わった」を過去時制で表すかどうか(米大統領選挙は終わった)

今回の実例はTwitterから。

日本語では「~た」や「~した」と、《過去》のような形で表すものを英語にするときに、英語では《過去形》を使わないことがある。こういうところでつまづいてしまう人も少なくないのだが(私もかつてはそうだった)、日本語の「~た」や「~した」についてまず《過去形》という思い込みを捨てて、《現在の状態》ととらえなおしてみるとスッキリすることが多い。

つまり、「~した」は、「すでに~した状態である」という《現在》のことを言っていると考えてみよう。

ここで混乱したら、一歩下がって基礎的なところを確認してみよう。《過去》と《現在》は断絶しているのではなくつながっている。例えば「(過去のある時点で)書類に住所を書いた」ら、「(現在)その書類に、住所が書かれている」ということになる。そういう理屈だ。

それを意識して、例えば「試合は終わった」を考えてみよう。午後6時20分に試合が終わった場合、現在6時30分の現在の時点では「試合は終わっている」。別の言い方をすれば「試合は終わった状態にある」。

これを英語で表すと、6時20分には "The game finished." (「終わる」の意味の他動詞の過去形)で、6時30分は "The game is over." (be動詞の現在形と「終わっている状態にある」ことを言う前置詞のover)だ。そしてどちらも日本語にすれば「試合は終わった」になる(前者は「試合終わった」と言うほうが自然に感じられるかもしれないし、後者は「試合は終わっている」と言うこともあるが)。

英語を学習するとき、動詞にせよ、形容詞などbe動詞と一緒に使うものにせよ、単語について、このように「《状態》を表す」という概念を持つようにすると、的確に書く力がかなり身に付きやすくなる*1。そして「書く」ということは必ずしも文書を書くことを意味するわけでなく「言いたいことを英語で表す」ということで、つまり「話す」能力にも直結している。

というところで今回の実例。米大統領選挙がようやく終わったとのことで、11月24日は "be over" という表現をいくつもTwitterで見かけることとなった。それらを個別に見ていこう。

*1:一般動詞については、動作動詞と状態動詞の区別に注目するとよい。また、一般的にbe動詞はそれ自体が《状態》を表すということも意識しておくとよい。

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仮定法過去完了におけるifの省略と倒置(エメット・ティルが生きていたら)

今回の実例はTwitterから。 

ジョー・バイデンの圧勝に終わった(が敗北した現職がなかなか負けを認めないのでめちゃくちゃな事態になっている)米大統領選の投票日を間近に控えた10月の終わり、米国各地から武装した「ミリシア (militia)」と呼ばれる集団が街をうろついて威嚇しているという話が聞こえてきていたころ、大統領選の開票結果がわかったあとの現在ではトランプを完全に見放している「保守系タブロイドニューヨーク・ポストがバイデンの息子についてのガセネタ(というか狭義でのデマ、つまり政治的目的のある嘘)を掲載したことが依然話題になっていて*1そのガセネタがいかにデタラメな出自であるかが明らかにされるなどしていたころに、一杯の冷たい水のようなツイートが私の見ている画面の中に流れてきた。こちら:

書き出しの "Had he not been murdered" は、《仮定法過去完了》 のif節のifが省略されて、《倒置》が起きた形である。日本ではこの形については*2「日本では受験英語として教えられるがネーティブは使わない」という間違った思い込みが蔓延し(そもそも「ネーティブ」とは誰なのかという問題もあるのだが)、それが「英文法不要論」の根拠になったりもしてきたのだが、実際には英語圏では普通に使われている形である。なんだかんだとちょこまかニュースなどを読んでいれば、週に1度は遭遇すると思う。当ブログでも何度か取り上げている

省略された形を、省略しない形と並べてみよう。

  Had he not been murdered

  = If he had not been murdered 

節の先頭の "If" が省略されたことで、主語の "he" と助動詞の "had” の位置が逆転し(つまり、倒置が発生し)、"he had not been" が "had he not been" という形になったわけだ。

この部分の意味は「もしも彼が殺害されていなかったら」。

ここまでの5語を読んで、この "he" とは過去において殺害されてしまった人物だということは瞬時にわかる。ではその "he" とは誰のことか、というのが、この節に続く主節の主語となっている。

Emmett Till would have been only a few years older than both our presidential candidates this year. 

エメット・ティル。#BlackLivesMatter運動(これについても日本語圏では本当にデマと不正確な情報が多くて、実際のことが伝わっていない。英語で情報を入れない人々と英語に接している人々との情報ギャップがひどい。日本語圏で信じられているBLMは、ハリウッド映画の中の類型的な日本くらい現実離れしていると言っても過言ではなかろう)の文脈で名前が出てくるのをときどき見る。例えばこのオハイオ州デイトンでのプラカード(2019年5月)とか、今年6月に撮影されたワシントンDC、キャピトル・ヒルでのプラカードとか(→一部拡大写真を下記に)。

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https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Signs_from_inside_CHAZ.jpg を一部拡大。

Photo by Mayopotato, CC BY-SA 4.0

 "Say their names" 「この人たちの名を口にせよ」という標語の下に、今年のテニス全米オープン大坂なおみ選手がマスクにつけていた数々の名前や、大坂さんが着けられなかった名前が並ぶ中に、Emmett Tillとある。下から2行目の左端だ。エメット・ティルもまた、アメリカでのレイシズムの暴力で殺された、つまり「matterしない命」として扱われた黒人のひとりである。ただし、最近殺された人ではない。

*1:あの説が完全なでっち上げでデマだということは確定しています

*2:この形についてだけの話ではないので、正確には「この形についても」。でも「も」を使うと読みにくくなるのでここでは「は」を使っておく。

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forbid ~ from -ing, 準否定語のlittle, interest in -ing (日本の天皇即位)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。英語学習者の当面の目標は、こういう文をつっかえずに速度をもって読めるようにすることだと思うが、その過程で、ここで見ているような細かい英文法をひとつひとつ確認していくことは、重要なことである。

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今回の実例は、日本の天皇即位の礼を伝える報道記事から。

解説のための前置きは不要だろう。早速記事(英ガーディアンのジャスティン・マカリー記者による): 

www.theguardian.com

この記事は、10月22日の即位の礼の日に何があったかを伝える部分が上の方にあり、背景解説などが下の方にある、という構造になっている。今回実例として見るのは、記事の一番下のほう。

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《結果》や《目的》を表すso that ~ (英議会とジョンソンのBrexitプラン)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。センター試験や中堅私立大入試でよく出題されてきた構文が、矢継ぎ早に2度使われている報道記事を読んでみよう。そし、て機会があれば、「受験英語は役立たない」という寝言を言っている人にこういう実例を見せてさしあげよう。

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今回の実例は、Brexit関連の報道記事から(またか!)。

先週土曜日の19日、「土曜日に英国下院で審議」という異例のことが行われた。ジョンソン首相としてはそこで "Get Brexit Done" (彼の保守党の標語)を決めたかったのだが、そうは問屋がおろさなかった。それについて詳細を書いていたら1日がかりになるし、そういう話は書くならここじゃなくて本家ブログだと思うのでここでは書かないが、簡単に言うと "Get Brexit Done!" と叫ぶ首相がゴリ押ししてくる協定案に対し、「待った、それを決めるには、こっちを決めておく必要がある」として議員が対案を出し、その対案の方が通ってしまった、というのが土曜日に起きたことである。

国会という場ではこういう丁々発止が起きるのだということを、2010年代後半のことしか知らない日本の人々は知らないかもしれない。だからこれを「ジョンソン首相に対する妨害」的に書いたほうが、日本語圏では通じやすいのかもしれない。

現に英国でもジョンソン支持のメディア(デイリー・テレグラフなど)はそういうナラティヴを採用している(個々の記者はそうとは言い切れない)。

だが私が毎日読んでいるガーディアンは政府に批判的なトーンが常であるメディアで(それは保守党政権でも労働党政権でも変わらない。ただし、労働党はガーディアンは支持しているので、政府のやることをscrutiniseすることはあっても、否定を前提に批判してかかることはまずない)、ジョンソン政権については極めて懐疑的に報じているし、Brexit推進とは逆の側、つまり労働党やLibDemsといった、日本語メディアの表現でいえば「野党勢力」の動向について詳しい記事を多く出している。そういった記事の1つが今日の実例の記事。

www.theguardian.com

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"pleasant if awkward" の中身は、《譲歩》のif節と《省略》

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】

 

今回も引き続き11月18日のエントリやそれに続くエントリ群へのブコメへのお返事的なことを。(細かい事実誤認・誤記などはスルーしてます。すみません。例えばこの誤訳をやらかしたのが共同通信であるというブコメが散見されますが、そうではなく時事通信です。)

ブコメでは、"A pleasant if awkward fellow" というフレーズについて「このifは知らなかった」「このifは習っていない」というものを含め、《形容詞A if 形容詞B》の構文に関する反応が見られたのですが、それについて少し整理しておくと役立つかなと思いました。

これは《譲歩》のif節と《省略》の合わせ技です。それについて本稿は詳しく書きます。

なお、「このifの用法はとても高度なものなので難しくて訳せなくても当然」という方向の誤訳弁護のような言説もあるようですが、まず、どんなジャンルにせよ、英語を使って仕事をするレベルの人にとってこのifが「高度」ということは、ありえません。翻訳を業とする者はもちろん、翻訳まではしなくても英語で情報を収集するのが仕事という人にとってもです。

それから、報道機関で記事を出す判断をする立場、決定権を持っている立場の人たちは50歳近辺かそれ以上だと思うのですが、現在その年齢の人は「受験戦争」「詰め込み教育」と呼ばれた状況を生きてきた人で、なおかつ、あの時代に報道機関に入れたのは「受験戦争」に「勝った」エリートがほとんどです。就職するまであのifを知らずに過ごしてきたということは、まず考えられません。そのくらいの基礎力があっても、しばらく英語を使っていなければ忘れてしまうということもあると思いますが、報道機関の中で英語を使って仕事をしてきた人があのifを忘れるということは、ありえないと断言してよいです。

そのくらい、英語で仕事をする上では重要で基本的なことです。

なので、全然知らなかったという場合だけでなく、わかってるつもりだけど実は不安という場合もあらためて確認はしておくべきでしょう。

目次 

  • 《譲歩》のロジック
  • 英語での《譲歩》の表し方
    • though B, A または A though B
    • even if B, A または A even if B
      • このevenが省略されてただのif節になることがある (《譲歩》のif節)
    • 複合関係詞
  • 《省略》
    • 副詞節における主語とbe動詞の省略
      • if節における主語とbe動詞の省略

 

 

《譲歩》のロジック

《形容詞A if 形容詞B》の構文については、18日に書いた通りですが、要点だけいうと、このifは英文法用語の《譲歩》の意味です。

この《譲歩》という用語はわかりづらいかもしれませんが、基本的に「BではあるがAだ」「BだがAだ」という意味を表す構造のことです。この構造では、あくまでも重点は「Aだ」にあります。意見が対立している相手の言い分を聞いて(譲歩して)、それでも自分の意見を強く言う、という状況をイメージするとわかりやすいと思います。例えば: 

  ウィリアム: 午後はまったりと、ネットフリックスで映画見ようよ。

  ケイト: それもいいけど、まずは掃除を終わらせちゃわない? 

この場合のケイトの「それもいいけど」が《譲歩》の態度です。でも「まずは掃除を」という自分の意見を強めに主張するときのスタイルです。

ケイトにこう言われたときに、ウィリアムが「ネットフリックス見るの、いいって言ったじゃん」と食い下がると、ケイトとしては「はぁ? 話聞いてんの?」となってしまいます。これが重点の問題です。この構造を使うとき、ケイトはウィリアムの言い分に賛成しているのではなく、自分の考えを示したいのです。ウィリアムに賛成するだけなら「それもいいけど」の「けど」は余分です。

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いただいたブコメから、有益な追加情報ならびに参考書& "if awkward" について調べてわかったこと

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】

 

今回も引き続き変則的に。

一昨日11月18日のエントリは、はてなブックマークで現時点で768件のブクマをいただいていますブコメは現時点で214件いただいています。ありがとうございます。1万字など軽く超えてしまっている長文記事であるにもかかわらず、ブコメという公開の場に言葉を書く前に中身をちゃんと読んでくださっている方ばかりで、感謝にたえません。私自身がはてブを非公開にしているのが申し訳ないです(これは、とあることがきっかけで、私の過去の断片的な発言をほじくり返して難癖をつけ、最近流行りの「ターフ」というレッテルを貼り付けようと待ち構えている人々の存在を察知したことによります。日本語圏の「ターフ」は本来のキリスト教社会の宗教保守の文脈から切り離されててわけがわからず、それゆえ、誰にでも貼り付けられる危険性が高いレッテルで、今のSNS社会では、レッテルを貼り付けられたら、残念ですが勝負は終わりです。「言論の自由」という私たちの社会の大原則に関して自分の言いたいことが思うような形で言えなくなってしまったのは、その「言論の自由」をカサに着てデタラメや差別言説をばらまく連中のせいですが、単に「言論の自由」という大原則を確認しただけで、私のような立場の者でさえも、そういう差別主義者どもと同一視されかねない状況が現にあるのは、「危機的」と言うのではとても足らない何かだと思います。でも個人に何か有効な手立てがあるわけでなく、そっと鍵をかけておくことしかできません)。

いただいたブコメの中で、別途調べ物などしてくださっているものをここに列挙しておきたいと思います。埋もれてしまうのはもったいないので。以下、投稿の早かった順で項目ごとにソートします。

目次: 

  •  《形容詞A if 形容詞B》の構文について
  • awkwardについて、また "if awkward" というフレーズ(?)について
  • 再度、《形容詞A if 形容詞B》の構文について、および《譲歩》のifについて
    • Webster Unabridged: 
    • Longman Dictionary of Comtemporary English (2nd Edition, 4th Edition): 
    • Collins Cobuild English Dictionary for Advanced Learners (3rd Ed): 
    • 小学館プログレッシブ英和辞典』第3版 
  • そして再度、awkwardについて、および "if awkward" について

 

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昨日のエントリの補足

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】

 

今回も引き続き変則的に。今日は英文法解説なしです。

時事通信の誤訳について指摘した昨日のエントリは、当ブログには非常に珍しいことに、はてなブックマークのトップページの上の方に表示されるくらいに多くの注目を集め、ブコメもたくさんいただいた。

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今回はそれに対する「お返事」的なもの、兼、事態発生から時間が経過してまたもや別のカオスが生じている感じなので、改めて確認というか整理的なことを書きたいと思う。

昨日のエントリはこちら: 

hoarding-examples.hatenablog.jp

アップした数時間後に追記したり、タイポを修正したり、差し替えを行ったりしているので(ブクマが指数関数的に増えだしたのはその差し替えの後だが)、その中で特に必要と思われることについてもここで整理したいと思う。

とはいえ、頭の回転だけが妙に早くて、3歩歩いたら忘れるニワトリ状態になっているので、今もやっと頭の中にあることを全部言語化することはできないかもしれない。だから言葉足らずになるところはあるかもしれない。その点、あらかじめご了承いただきたい。

目次: 

  • 昨日のエントリの論点
    • 論点1: 取り上げているのは時事通信の記事である。NHKの報道ではない。
    • 論点2: 時事通信記事に関する本質的な問題は訳語レベルの問題ではない。構造の解釈レベルの問題である。
    • 論点3: そのうえで、時事通信記事には訳語レベルの問題もある。
      • ※awkwardをどう訳すかという問題
    • 論点4: 「~と指摘した」「~と酷評した」のメディア用語は印象操作に使われるので要注意である。
  • 昨日のエントリで追求していないこと
    • 当ブログは「翻訳」は扱っていない
    • 「翻訳」に必要なもの
      • 物理的に
      • 物理的なものとは別にーー当ブログは何をしていないか

 

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《形容詞A if 形容詞B》の構造, awkwardの語義(バラク・オバマの回想録と時事通信の誤訳)

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】

 

今回の実例は、予定を変更して、今日まさにTwitterで話題になっている件について。

米国のバラク・オバマ前大統領が回想録を出したとかで、今週は英語圏の各メディアでもロング・インタビューを出すなどしていた。BBCも(ドナルド・トランプがぎゃあぎゃあ言ってるのをよそに)オバマのインタビューをトップニュースにしていた。それがトップニュースになっているときのキャプチャは取っていないが、記事はこちら: 

www.bbc.com

回想録そのものについては、BBCに出てるのはこれだけかな: 

www.bbc.com

ほかの媒体のサイトを見るなどすれば、回想録についての記事はたっぷり出てくるだろう。今回の本題はそれではない。

この回想録について、日本語圏でも日本語で「報道」がなされている。そして、その日本語の質がひどいということで、特にオバマには関心がない*1私の視界にもそれについての発言がどんどん入ってきている。

「ひどい」と指摘されている(ツッコミが入っている)のがどういうものかというと: 

これは時事通信の記事をYahoo!ニュースのTwitterアカウントがフィードしたものであるが(したがって文責は時事通信にある)、結論からいえば、おそらく「厄介」なんてことはオバマは言っていない。「扱いづらい相手」「やりにくい相手」という意図はあったのかもしれないが(詳細後述)、それは「厄介」ではない。さらに言えば「同僚」もおかしい。

時事通信のサイトでの記事はこちら (archive): 

www.jiji.com

この記事には次のようにあるが、朱字で示すところが問題ありである。

オバマ米大統領は17日発売の回顧録で、2009年11月に鳩山由紀夫首相(当時)と初会談したことに関し、「感じは良いが厄介な同僚だった」と指摘した。その上で、「3年弱で4人目の首相であり、日本を苦しめてきた硬直化し、目標の定まらない政治の症状だ」と酷評した

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020111700728&g=int

本稿、少し長くなるので目次をつけておく。

  • 準備: 原文の確認(Google Booksの利用)
    • このテクストの文脈
  • 本編: 問題の箇所の検討
    • 問題点1: 「~と指摘した」という日本語
    • 問題点2: "pleasant if awkward" を「感じは良いが厄介な」とするのは誤訳
      • 《形容詞A if 形容詞B》という表現(構文)
      • awkwardという語の意味
    • 問題点3: オバマ氏は鳩山氏を「酷評した」のか
  • 【追記】時事通信だけじゃなかった。NHK

 

準備: 原文の確認(Google Booksの利用)

まず、オバマ氏の回想録の原文を確認してみよう。Twitterでは何人かが電子書籍から当該箇所を引用しているが、自分でも直接参照できればそれにこしたことはない。買えばよいのだが、このためだけに1冊蔵書を増やせるほどの余裕は金銭的にもないし、いくら電子書籍があるとはいえこれ以上「積読」を増やすわけにもいかない――というときにまず見てみるのは、Amazon電子書籍のSearch Inside(なか見検索)だが、この本でKindleで読めるのは序文の前半だけで、Search Insideには対応していない。

そこで、次の手段としてGoogle Booksを見てみる。Google Booksについて説明している時間はないのでここでは説明は端折るが、英語で調べ物をする人には必須のサイトのひとつがGoogle Booksである。いわゆる「ウェブサイト」「ウェブページ」だけでできる調べ物など、全体の一部であり、最終的には本で調べなければならないことはとても多い。そのときにウェブ検索ではなくGoogle Booksを使うことで、ある程度のことができる場合が多い(ただし私が知っているのは英語圏に限った話)。というわけで: 

こうして出てくる検索結果は2件で、そのうちの1件は索引、もう1件が当該の記述である。

*1:米大統領選が終わって、私の関心はBrexitに向けられている。あと、やけになったトランプが軍事面で何をするかということ。

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本日、記事のアップロードが遅れます。

表題通り。今、18:00で、本日のエントリを書いているのですが、あと30分で書き終わる気がしません。すみません。書きあがり次第アップします(このエントリは消します)。

 

何やってるかというとこれ: 

 

 

ある「主張」に対置すべきは「もう一方の主張」ではなく「事実」である。Comment is free, but facts are sacred.

今回は、先週ずっと見てきた「フォー・シーズンズ(ホテルではない)」のインシデントに関する落穂拾い的なことを。英語表現としておもしろいものがあったのでそれを書いておきたいということがひとつ、そして "Facts are sacred" という前提について強調しておきたいということがひとつ。

どちらから行こうか、と考えたときに、当ブログは英語の実例を集めておくブログなのだから当然前者だろうと思いはするのだが、キーをたたく指が自然だと訴えるのは後者なので、そちらから行こう。

「公正・公平」という理念がある。これは「不偏不党」という四字熟語で言い換えられうるし、現に「公平中立」と言い換えられて流通しているが、理念というより「原則」と言ってよいかもしれない。実務において、それは多くの場合、複数ある説をすべて併記するという形で実現される。そして多くの場合、その「複数の説」は2つだ。これを「両論併記」と言う。この妙な四字熟語っぽいものが世間で四字熟語として認知されているかどうかは私はよく知らないが、四字熟語のもつ金科玉条性とでも言うべきものは持っているように感じられる。

それがまっとうに機能するのは、そこで併記される2つの(あるいはそれよりも多い)説がそれぞれまっとうな場合である。例えば「車の自動運転は人間の生活を向上させるので積極的に推進すべきである」と「制御不能な行動をとる人間を前に、車の自動運転には安全性という問題があるので、慎重になるべきである」といったもの。日本の大学受験生も、ディベート的な小論文課題としてこのパターンの両論併記に遭遇することが日常的にあると思う。

他方、そういった、いわば理性的な議論を超えたところに話を持って行った上で、形式的な「両論併記」を実現することが「公平・公正」だという誤誘導(ミスリード: mislead)の試みも広くみられる。特に「post-truthの時代」と位置付けられる2016年以降はこれが英語圏の一般的報道機関でも切実な問題となった*1

この場合に「両論併記」を行うのは、議論の上で対立する2つの勢力のうち、一方の勢力が理性的な議論を超えたところに話を持って行くことを正しいこと、許容されることと認めてしまうことを意味する。

ご飯を食べたばかりの猫が「ごはん食べてませんけど?」と主張し(ここで以前述べたような「主張」がカギとなる。主張だけならいくらでもできるのである)、飼い主が「食べたでしょう」と主張する場合(これも事実の裏付けがなければ単なる「主張」であるが)、事実として飼い主が空いたばかりの猫缶ときれいになめ取られたお皿を持っているときは、猫の「ごはん食べてませんけど?」という主張は「根拠がない (baseless, unfounded) 主張」である。これを日常語では「嘘 (lie)」と言うが、特に英語において「嘘」は非常に強い言葉なので*2、「嘘」という言葉の代わりに「根拠のない主張」など遠回しな表現が使われる。

飼い主が猫缶やお皿を持って「あなたはもうごはんは食べたでしょう」と言うのは、「主張」ではなく「事実の指摘」である。これが事実だ。

そこに猫が「まだ食べてませんけど?」と主張するのは自由だが、猫の言うことは事実ではない。

これが、英ガーディアン紙を立ち上げた19世紀のジャーナリスト、C. P. Scottの "Comment is free, but the facts are sacred" という言葉の意味するところである。「主張・論評 (comment) をするのは自由である。しかし、事実は神聖不可侵*3である」。

「事実は神聖不可侵である」。つまり、どのような主張がなされようとも、それが事実を揺るがすということは、端的に、ありえない。猫がどんなに「まだごはん食べてませんけど?」と言い張ったところで空っぽの猫缶ときれいになめ取られたお皿の示す事実は変わらない。そういう事実を示すことが「公正 (fair)」であり「公平 (unbiased)」である。

逆に言えばこの場合、猫の側に立って「でも猫はまだごはん食べてないと言ってるじゃないか」と言うのは、「公平ではない、偏っている (biased)」ことになる。事実を無視して猫に加担しているわけだ。猫かわいいもんね。そうなっちゃうのもわかるよ。でも猫の言っていることは事実ではない。

この状況に両論併記(「猫はごはんを食べていないと主張し、飼い主はもう食べたと主張している」とする記述)を持ち込むことは、事実を無視し、猫の側に立つ行為であり、「公平・公正」とは程遠い。

*1:日本の報道機関ではずっと以前からこの問題があったように思われる。現状、私に確たる根拠はないが、英語圏シンクタンクなどは日本のこのnormを大いに参考にしているのではないかと思うことがある。もちろんこれは私の「主張 opinion」であり、「事実 fact」ではない。

*2:拙著にも書いた。ロンドン本参照。

*3:"sacred" は日本語に直訳してもピンとこないが「絶対である」「動かせない」としてもよいだろう

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不定冠詞のa(「第二のレファレンダム」を求める人々)【再掲】

本日、PC不調のため(再起動の画面のまま進まないので待っている)、過去記事の再掲とします。ご了承ください。

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。冠詞は日本語にはないもので、なおかつ最初に英語を習うときに出てくるのだが、学校教育の過程で満足な説明をされないまま、何となくわかったようなわからないような感じになっている人も少なくないし、実際にどう説明すれば満足がいくのかが人それぞれなのだが、こういった実例にひとつひとつ接していくことでわかってくる部分は大きい。

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今回の実例はTwitterで配信された映像から。

10月19日の土曜日、英国会下院で起きたことは、たぶん日本語圏でも報道されていると思う。私は日本語記事までは見ていないが、英語記事はものすごく大量に出ていて、さくっとした報道記事を探し出すのが大変なほどだ。例えばガーディアンの19日付下記記事がそういったさくっとした記事のひとつである。

www.theguardian.com

 

ごく短くまとめると、この日、ジョンソンの英国政府がEU27か国との間で合意に至ったEU離脱協定案の採決が英国会下院で行われるはずだったが、その前に修正案が出され(レトウィン議員の修正案なので「レトウィン修正案 Letwin amendment」と呼ばれる)、その修正案が賛成322対反対306で可決されたため、本題たるEU離脱協定案の採決は行われなかった、という次第である。レトウィン修正案の中身は、ジョンソンが持ち帰ってきた離脱協定案(合意案)の施行法が可決成立しない限り、協定案の採決を行わない、とするもので、言い換えれば、上記ガーディアン記事見出しのように「ジョンソンのBrexit合意案にブレーキをかける」ものである。

 

下院の議場でこのレトウィン修正案の審議が行われ、採決へと進んでいるとき、ロンドンではEU残留派(離脱反対派)を中心とする離脱再考を求める人々による大規模なデモ・集会が行われていた。国会議事堂の目の前の広場(といってもそんなに広くはない)を終結点とし、周辺の道路を数万人単位の人々が埋め尽くした。

彼ら(離脱再考を求める人々)は、「離脱の意思確認をするレファレンダム(国民投票)」を要求している。これは、2016年6月のレファレンダムに続く「第二のレファレンダム the second referendum」と位置付けられているのだが、それを求めるキャンペーン団体が「人々(国民)の投票 People's Vote」を名乗り、報道では(小文字で)"people's vote" と(多くの場合引用符付きで)表記されている。

www.peoples-vote.uk

www.theguardian.com

 

今回の実例は、それを求める標語の中から。

下記ツイートの映像を再生していただきたい。これは国会議事堂の目の前の広場(Parliament Squareという)に設営されたステージ*1前から、標語を印刷した巨大なバナーが広げられていく様子を空撮した映像である(この「バナー広げ」は、サッカーのサポーターが観客席で巨大バナーを広げることにヒントを得たという)。

映像の25秒ほどのところで印刷されたスローガンの全体が見えるようになる。今回の実例はそのスローガンだ。

*1:この日、このステージでは国会議事堂から出てきた何人もの国会議員が「第二のレファレンダムを要求していこう」というスピーチを行って、議事堂に戻って審議を行っていた。労働党のダイアン・アボット議員は、警察に警護されて戻るその道すがら、Brexit支持派の男に付きまとわれ、罵声を浴びせられていた。

https://twitter.com/39_stephs/status/1185571331980566530 にその映像がある。

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動名詞, 方法・材料などを表すin, so (that) ~, howの節, whilstなど (ひどいフォントをあえて使ってメッセージの拡散を狙う英保守党)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。再掲時には、ここで取り上げているような英保守党政権のやり口を指揮していたであろうドミニク・カミングズがついに政権中枢を去ったというニュースがあったばかりなのだが、その頭で見るとなおさら味わい深い話である。もちろん文法事項もてんこ盛りである。

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今日の実例はTwitterから。

10月22日、英国下院でまたもやBrexitに関する審議が行われ、もう話についていくのが大変で疲れたなあと思っていたころ、TwitterのUKのTrendsに "Comic Sans" という文字列があるのに気づいた。

"Comic Sans" は、Windows 95が出たときから内蔵されていたWindowsのフォントのひとつで、「世界で一番ひどいフォント」というようなネガティヴな評価が定着している。

今でこそWindowsはいろんなフォントを最初から搭載しているが、Win95や98のころは基本的なフォントしかなかった*1。最もよく使われる本文用フォント(見出しだけに使うような可読性低めのフォントではなく普通に読める文を組むためのフォント)といえば、役所からの通達みたいな書類に使える堅苦しい系のフォントであるTimes New Roman*2と、もうちょっとカジュアルな場面にも適したサンセリフ体(日本では「ゴシック体」と呼ばれる)のArialと、そして幼稚園や小学校で使える子供にも親しみやすいフォントのComic Sans MSだ。日本語環境ではそれらに加えて「MS明朝」や「MSゴシック」*3、およびそのプロポーショナル・フォントが入っていたが、まあ、細かい話はいい。

このComic Sans, 名前からわかるように、漫画のセリフの吹き出しの中に入っているようなフエルトペンの手書きっぽい風合いのサンセリフのフォントで、英語で同じ言葉を書いても、Times New Romanだと「ごきげんいかがですか」というニュアンスに感じられるものが、Comic Sansだと「元気?」っぽくなる、という効果があるし、そういう効果を狙ったデザインだ。

だからこのフォントで何かが書かれているとき、少なくとも大人の目では、それはシリアスに受け取れないという印象を受けるのがデフォである。

にもかかわらず、Windows 95や98が爆発的に普及し、WordやPaintを使って文書やロゴみたいなのを作れるようになったときに、この「ふざけたフォント」は看板やチラシという形で、街にあふれるようになった。フォントについての感覚がそなわっていないというか、フォントなんかどうでもいいという人々が、「Times New Romanでは堅苦しすぎるな」と感じたときに使うフォントが、これだったのだ。(というか、実際にはArialのほうが多く使われていたに違いないのだが、Comic Sansは「ここ、それ使うところじゃない!」っていう場面で多く使われていたので、非常に目立った。)

だから、Comic Sansといえば本来意図されていた用途である「子供向けの使用」みたいなことではなく、「場違いなところに突然出現」みたいなことで、ネット上で「ネタ」化されていった。

だが当時はまだブロードバンド普及前、常時接続などしていなかったころのことだ(ネットを使うには、その都度電話回線で電話番号に接続しており、電話の通話と同じ料金がかかった)。誰も彼もがネットを常用するようになる前の時代。

そのころネットをよく見ていたのはIT系の技術者だったりコンピューターを使って仕事するグラフィックデザイナーだったり、個人でウェブサイト(ホームページ)を運営するようなタイプの人だったりした。「パソコンは買ったけどメールの送受信をするくらいだ」とか「ワープロ表計算ソフトは使うがネットは使わない」といった人々とそういった人たちの間には見えない壁があり、ネット系の人々の間で盛り上がる「ネタ」は、その中だけで完結していた。

つまりComic Sansを「ネタ」として笑う一種の「文化」は、「ネットに詳しい人たち」だけのものだった。

そしてそういうことは、20年くらい経過した今でも続いている。常時接続の時代になろうがスマホの時代になろうが、「フォントなんか別に注目しないけど」という人は、フォントにこだわる人よりずっと多いと思われる。当たり前だ。普通、誰もそんなところ、気にしない。(そういう「言われなければ誰も気にしない」っていうようなところを仕上げて整えるのがデザイナーなど職人の仕事で、これはとても大切な仕事である。)

だから、10月22日の夜に次のようなツイートが英国の保守党のアカウントから流されたときに「なんだこのフォントは」的に反応したのは、「ネットに詳しい」系の人たちだけだった。そうでない人々は、フォントではなくそこに書かれている文を見るのだ。

誰が見たって醜い。職場で部下に書類を作らせたらこんなんだった、なんて日には、誰だって「もっとちゃんとしたの作れ」と言いたくなるだろう。でもこの文面がComic Sansで醜くデザインされていることは、ここに書かれているメッセージを伝えることを邪魔しない。「読みづらいな」「バカみたいだな」と思っても、"Get Brexit Done" という今の保守党の標語に、国会批判を絡めたこの文のメッセージが読めないということはない*4

 

保守党のこのツイートに、「ネットに詳しい」系の人たちは「このデザインはひどい」と言って拡散する(自分で一言付け加えてリツイートする)という形で反応した。そしてそれは、いかに批判的な一言を付け加えていようとも、単に保守党のメッセージをそのまま拡散することになった。

f:id:nofrills:20191023061707j:plain

2019年10月22日、Twitter

Twitterにはもちろん、「気をつけろ、これは罠だ」と警告する人々もたくさんいた。今回実例として見るのはそういった警告のツイートのひとつである。(学習者は安易に使うべきではない汚い言葉も入っているが、あえて取り上げる。

 ※文意を把握するときは、このshitはbadと置き換えるとよい。前者は後者に比べてニュアンスは比べ物にならないくらい強いが、意味は基本的に同じだ。

*1:Apple Macはその辺、もっとちゃんとしてた

*2:名前からわかるように、英国の新聞The Timesのフォントである。日本でも2000年代くらいまでは英語の本文フォントといえば、教科書や試験問題なども含め、圧倒的にこれだった。とてもバランスがよいフォントなので、一気に何十ページも読んでも目が疲れづらい。

*3:「MS明朝」や「MSゴシック」は悪いフォントじゃなかった。ただし「MS P明朝」などはひどかった。そもそも日本語で「プロポーショナル」なフォントというのはちょっと意味わからなかった。

*4:その点、Comic Sansでのひどいデザインは、仮に読むにたえないものであっても、人々がほとんど読めないようにあえてデザインされているデスメタルなどのロゴとは方向性が全然違う。

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stay in touch with ~, 等位接続詞and, 名詞節のif節, rely upon ~の受け身の形, など(シリア北部からの米軍の撤退)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。ここで扱っているようなandによる接続は、正確に読むように普段から心掛けておかないと、思わぬ誤訳の元になるので、注意が必要だ。

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今回の実例は、非常にハードな内容の記事から。

今月上旬、日本でのメインのニュースがスポーツ(ラグビー)と台風19号の進路に集中していたころ、シリアの一番北、トルコとの国境ではとんでもない事態が展開していた。

この経緯について知らないという方には、ジャーナリストの黒井文太郎さんによる下記記事をおすすめしたい。

(6日に)トランプ大統領が撤退を発表した後、米軍はまず国境の2拠点から特殊部隊50人を撤退。その動きを受けて、トルコ軍は同9日にさっそく本格的な侵攻作戦に着手した。シリア北東部を支配するクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(SDF)」は反撃したものの、両者の戦力には大きな差があり、トルコ軍が戦況を優勢に進めている。

米軍に全面撤退命令が下された13日、SDFは従来緊張関係にあったシリアのアサド政権軍を受け入れ、協力することで合意したと発表した。アサド政権軍はすかさずシリア北東部への移動を開始、翌14日には要衝の町マンビジに入った。

SDFとしては、それまで同盟関係にあった米軍に「見捨てられた」以上、トルコ軍の侵攻を食い止めるには他の勢力に頼るしかない。言ってみれば、米軍撤退がアサド政権軍の進出という結果を生んだわけだ。

https://www.businessinsider.jp/post-200679

www.businessinsider.jp

 

より簡単にまとめると、シリア北部のクルド人支配地域にはこれまで米軍がいわばお目付け役的な立場で駐留していたが(武器も米国によって供給されている)、トランプが米軍を撤退させると言い出してそれを実行してしまったので、クルド人だけが残された。そのクルド人を標的に、トルコが攻撃を開始した。困ったクルド人は、これまでもいわば戦術としてときどき手を組んできた相手であるアサド政権と結んだ。これに伴い、アサド政権の後ろ盾となっているロシアの武装勢力(民間軍事企業)がクルド人支配地域に入った。つまり、アメリカがいなくなってロシアが入ったのだ。

と一気に書いてしまったが、「で、そのクルド人って?」という解説は本稿の一番下に置いておく(長くなるので)。

 

今回参照する記事は、その米軍の撤退について、昨年12月にトランプ政権の「対イスイス団(国際)連合特使」のポストを辞したブレット・マクガーク氏が語ったことを、米オンライン・メディアのThe Daily Beastがまとめた記事である。

www.thedailybeast.com

The Daily Beastは2008年にスタートしたオンライン・ニュースサイト。ただでさえ人の入れ替わりが激しい米メディア界にあっても非常に動きの激しいメディアで、一時はビュー数さえ稼げたらいいんだという方針だったようだが、あるとき気づいたら、かつてWIREDの安全保障・軍事コーナー "Danger Room" をやっていたノア・シャクトマンが編集長になっててびっくりした。彼が編集長なら軍事系の記事は読みごたえのあるものが多い。今回の記事は、WIRED時代にシャクトマンと一緒にやってて、その後ガーディアンでエドワード・スノーデンが暴露した監視システムPRISMについての調査報道を行ったスペンサ・アッカーマンと、ベテラン記者のクリストファー・ディッキーが書いている。

内容は難しいかもしれないし、語彙は高度だが、英語は読みやすい。

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ツッコミどころ満載の記者会見をツッコミながら実況する記者, 「待望の~登場」の定型表現, 接触節, not ~ any ...での全否定(連載:「フォー・シーズンズ」事件、その5)

今回も前回からの続き。今週はずっとこのトピックを扱ってきたが、今回で終わりにする。

英語圏で「現場」があることの多くについて、このような形での「現場の記者からの実況ツイート」がある。Twitterで誰にでも見られる形で提供されている情報である。しかもタイムスタンプまでついていて、リアルタイムである。そこでは、記者が伝えていることだけでなく、何も伝えていない時間帯があることも受け手にわかるようになっている。例えば、紙面の記事で「デモ隊の一部が暴徒化」と伝えられていることが、実際に現場ではどういうふうなのか(たとえ話でいうと、混雑した電車の車両の片隅での口論のような規模だったのか、車両全体が騒然とするような事態だったのか、といったこと)も、手に取るようにとまではいかずともある程度はわかる。何か異常な事態が起きたときに、それだけを切り出して伝えるのがメディアの仕事だ。火事が起きて報じられるという「異常な事態」の裏側には、火事が起きていないので報じられないという「平常」がある。

事故や突然の災害のように、偶然に記者がその場に居合わせて現場から実況ということもあるが、今回の「四季造園」の事案を含め、そもそもジャーナリストが何かの取材をするためにそこに行っているときは元から完全な「平常」ではないわけで、そういう、いわずもがなの大前提での部分で雑な混同をしたうえで語ることはもちろん避けるべきであるが、それでも、Twitterのような開かれた場での、新聞記者という「伝聞」のプロによる言葉と視覚情報での実況は、いわばパッケージ品として出来上がった新聞記事で読み取ることは難しいような「現場」ならではの情報をも伝えてくれる。別の言い方をすれば、そこには「現場の空気」がある。

私はTwitter英語圏のジャーナリストや報道機関のアカウント*1リストを作っている。お役立ていただければと思う。

twitter.com

 

さて、というわけでペンシルヴァニア州の開票結果が明らかになった日に、同州最大都市の高級ホテル「フォー・シーズンズ」ではなく、なぜか同市郊外部の工業地帯のど真ん中にある「フォー・シーズンズ・トータル・ランドスケーピング」という造園業者の敷地内、車庫のシャッターを背景として行われたドナルド・トランプ陣営の法律家たちによる記者会見の現場から実況ツイートしていた英インディペンデント紙のリチャード・ホール記者のツイート。前回は、AP通信の結果確定の速報から20分が経過してもまだ会見が始まらないので、取材に来た諸メディアの撤収が続いていることを伝えるツイートまで見たが、今回はその5分後に、ルディ・ジュリアーニその人が出てきたというツイートから。

 "~ is here" は直訳すれば「~がここにいる」だが、意味的には「待望の~が登場〔完成、実現〕」といったことを表す。先日当ブログで取り上げた核兵器禁止条約発効のニュースのときにICANのアカウントが掲示していた写真にも、この定型表現を使った "The Ban Is Here" というスローガンが書かれたプラカードがあった。そのくらいに、言いたいことがわかりやすく通じやすいフレーズである。

「待望の新作が完成」という日本語を英語にするときに、日本語のままで直訳すると、意味をとるのがめんどくさいほど回りくどい言い方になってしまう。定型表現を使うことで手短に、直接、必要な情報を伝えることができるのだから、そうすべきである。それはお見舞いやお悔やみのメッセージでも同じだ

ジュリアーニ弁護士の発言内容は、文法的に見どころはあるのだが(to不定詞、関係代名詞)、今回ここまでですでに1700字を超えているので解説は割愛する。

*1:英語圏の英語メディア、第一言語は英語ではないが第二言語として英語を使っているジャーナリストも含む。

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