Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

"Remember me", or what's not to be lost among the destroyed university buildings /破壊された大学と、決して失われぬものについて

はじめに Introduction: 

今回は英文法解説とかじゃなくてただの文章。英語と日本語の二本立てで書きます。12月6日、ガザのリフアト・アルアライールさんが殺されて1年になる日に、リフアトさんについてガザと薄くつながっている線の上でふらふらと踊るようにしながら書き始めました。最初に英語、次に日本語です。

Basically this blog is about English grammar tips, but today I'm going to post an essay in English, and a companion piece in Japanese.  Inspired by a post by Majd, a Gazan on Twitter/X, I started writing the English version on 6th December 2024, one year to the day since Israel killed Dr Refaat Alreer. 

英語圏(というか米国)では、10日にリフアトさんの遺稿集が出ます。版元は米ニューヨークの独立出版社、O/R Booksです。版元のサイトに内容見本などが出ています。米国では、これを(あえて)Amazonで注文して、ベストセラーリストの1位に入れようという運動があります。

10th December sees Refaat's book on sale in the US. It's published by O/R/ Books, an indepentent publisher in NY, USA. They have excerpts and page samples on their website. I crave for a paper copy but may have to resort to an e-book

orbooks.com

目次 Contents: 

  • In English
    • The Beacon of Knowledge
    • Light a candle
    • "Remember me"
  • In Japanese 日本語 (not a straight translation of the above): 
    • ろうそくを灯してほしい
  • 追記

 

In English

The Beacon of Knowledge

The other day, while I was translating something that I still dare not speak publicly about, I came across this phrase, referring to a university in Gaza: the beacon of knowledge. 

In Gaza, and perhaps anywhere in the world, universities are local landmarks. Something you can't miss when you pass by, and can be seen over the city from a distant viewpoint. And that landmark has an awful lot of knowledge in it! It has lasted and will last for a very long time, sometimes centuries. My own university, located in a Tokyo suburb, is more than 100 years old. Considering it was in the second half of the19th century that Japan came to have western-style universities, it's quite old. One of the oldest, perhaps. It will remain there long after I die. It will last for a very long time, giving its students an awful lot of knowledge and producing an awful lot of tales. 

I translated the phrase into Japanese as "something that shows you where knowledge is", having in my mind a picture of almost intimidating appearance of a typical university building. That might be a Tokyo university. Or a London one. Or a university in Gaza. It could be any university I've seen in pictures, or in person. 

After a careful and precise proofreading by an awesome friend of mine, I changed the line into "something that guides you to knowledge", which sounds better and more suitable. Something more abstract.

For there's no university left in Gaza. There are no more university buildings that stand and welcome students, professors and citizens who want to read and/or attend lectures that are open to non-students. No such thing exists in Gaza any more. University buildings stand in ruins. Perhaps they now exist only metaphysically. 

That is, universities in the abstract. What makes you sadder? 

One of my placards that I recently printed, based on Majd's post:  https://x.com/Majdomar__/status/1863344133894439041
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「これはジェノサイドである」――アモス・ゴールドバーグ教授(ヘブライ大学)のご発言に、日本語字幕をつけました。 #ガザ市民のための声翻訳 #ガザ #Gaza

"Yes, it's a genocide" と題するシンプルなビデオが、12月4日にTwitter/X上の英語圏でバズっていた。ビデオの主は、英国のBrexitというカオスの中から生まれた稀代の風刺アクティヴィズム(というものがあるとして)集団、Led By Donkeysだ。そして「その通り、これはジェノサイド(の一例)です」という言葉の主は、イスラエル人のジェノサイド研究者、アモス・ゴールドバーグさんである。

www.youtube.com

4日の夜(から5日の早朝にかけて)、私は4日に出たばかりのステファニー・クープさんのご著書『国際法からとらえるパレスチナQ&A イスラエルの犯罪を止めるために』(岩波ブックレット、700円弱)*1を読んでいたのだが: 

読書を中断して、Led By Donkeysのビデオ(というかアモス・ゴールドバーグさんのご発言)を日本語化することにした。

字幕翻訳は素人だが、日本語圏で即座に共有しておくべき点がてんこもりだからだ。事実に関する否認論に、これ以上の居場所を与えてはならない。

YouTubeで字幕をつける機能があるので、それを利用した。4分15秒程度の映像だが、ずっとしゃべりっぱなしでみっちり詰まっているし、話の内容は専門的で用語確認も必要だしで、字幕を表示するタイミングの調整にも手間取って、作業にはほぼ3時間を要した*2Led By Donkeysには翻訳の連絡を入れてある

www.youtube.com

ゴールドバーグ教授の言葉は、可能であれば、音声として、耳から入れていただきたいのだが(言葉は元々音声であり、空気の振動であり、それが他者の心に伝わるものだということが感じられる声)、耳から入れるより目から入れたい方には、Led By DonkeysのTwitter/X投稿で全文がテキストでアップされているのをご覧いただければと思う。

英語の字幕は映像に最初から入っている(YouTubeの画面で字幕をオンにしなくても大丈夫)。私がつけた日本語の字幕は、その上に表示されるようになっている。再生ボタンを押しても日本語字幕が表示されない場合は、下図で矢印をつけてあるように、歯車のアイコンをクリックして[字幕]から[日本語]を選択すれば表示できる。

今回のブログの本体は以上。

以下、「有料部分」には、英文法・語法解説と、発言者やビデオのアップ主について、書いていく。

 

■目次■

発言主のアモス・ゴールドバーグ氏について

Amos Goldberg is a professor in the Department of Jewish History and Contemporary Jewry at the Hebrew University of Jerusalem and a fellow of the Van Leer Jerusalem Institute, also sitting on the institute's editorial board. Goldberg has published widely on The Holocaust, and was the editor of the journal Dapim: Studies on the Holocaust (2004–2014).

Amos Goldberg - Wikipedia

ざっと日本語化すると、「アモス・ゴールドバーグ氏は、エルサレムにあるヘブライ大学のユダヤ史・現代ユダヤ民族学科(日本語の正式な訳が私には確認できない。正式な名称ではないかもしれない)教授。ヘブライ大学は、日本でいえば東京大学みたいな存在である。Van Leer Jerusalem Instituteという人文科学・社会科学の研究機関のフェローもつとめ、この機関の編集理事でもある。ホロコーストに関する著作は数多く、2004年から14年の間は、ホロコースト研究の学術誌Dapimの編集者でもあった」。

つまり、このトピックに関して政治的な思惑に左右されて発言するような立場ではないガチの専門家で、非常に信頼性の高い発言主である。

 

*1:ハンユニスの学校の先生で、自助というか共助団体のCare For Gazaをやってるムハンマド氏や、ジャーナリストのヒンド・フーダリー氏の現地報告がフィーチャーされてる。

*2:時給1000円で計算して3000円分、専門技能らしく時給2000円で計算して6000円分のボランティアである。

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hardly any ~, 不定冠詞aに複数形の名詞が続いている例, no sooner + 倒置の構文, など(韓国、大統領がいきなり戒厳令→秒殺)

いや、びっくりした。

昨日の夜というか今日の早朝、ふとTwitter/Xの画面を見たら下記のようになっていた。

この画面を見て、私は、「シリア情勢が急激にアレなことになっとるな、やはりヒズボラがいないと……」などとひとりで納得した。Trendingの項目にあるMartial Law(戒厳令)は、Damascus(シリアの首都、ダマスカス)と関連しているものだと思い込んでいたのである。

"Martial Law" の文字列をクリックするまでは。

トムとジェリー』で、ジェリーが何かしようとしているのを発見したトムみたいな顔になった。目玉がびょーんと前に飛び出すやつ。声も出なかった。

私は別なことをやっていたのでニュースに気づくのが遅く、「これはいったい何」ということを把握して、その飛び出した目玉が元に戻るころには、事態は展開しまくっていた。大統領が何やら陰謀論的なものを開陳しているのを英訳で読み終わったころには、国会議事堂にかけつけ、封鎖も乗り越えて窓を破って議場に入った議員たちが、決議案を可決していた。

はえぇ。ジェットコースター・ドラマか。

突然だがここで英文法解説。

There are hardly any from President Yoon’s party

太字にした "hardly" は《準否定語》で、「ほとんど~ない」の意味。直接扱うのは難しく感じる人は、解釈するときにはnotで仮に置き換えて考えるとよい(There are not any from ... と考える)。要するに否定語なのだが、それとanyが一緒にあるので「ほとんどまったく~ない」の意味。

この "any" の直後には、先行する投稿(前の文)にあるmembersが省略されている(Membersというか、members of parliamentであるが)。繰り返しを避けるためというか、いわずもがなのことなので省略されているという事例だ。

There are hardly any members of parliament from President Yoon’s party

文意は「ユン大統領の政党の議員はほとんどだれもいない」。

「野党がー」と言いつのって戒厳令を出した大統領が、「あんな人たち」扱いをしている人たちが、民主主義の手続きにのっとって、戒厳令という無茶を粛々とひっくり返したのだ。ものすごい短時間の間に。

鮮やかである。さすがである。全Twitter/Xが震えていたであろう。

英文法解説。《最上級 + ever》の表現が使われている。「史上最も~な」の意味である。皮肉やあてこすり、あるいは誇張で使われることも多いが、ここでは文字通りの意味。文意は「これは史上最短の戒厳令ですかね?」句読法も含めてきっちりした英語で書かれているが、発言者はカナダで経済や市場に関する調査や分析の仕事をしている人のようだ。

そしてこの「史上最短」については: 

「なんかすさまじい2時間だった」。2時間! 映画館に入って、映画観終わって出てくるくらいの時間! 長尺映画だったら、2時間なんて映画観てる間にすぎてしまう。

……というように、"2 hours" をひとつのまとまりとして扱っているので、複数形のhoursなのに、単数形につく《不定冠詞》の "a" がついている。

同じことを言っているのが、下記のミーム画像である。

ここで、客相手に武勇伝をおもしろおかしく披露する(というシーンだと思うが)バーテンが言っている "That was a scary couple of hours." は、

That was a scary two hours.

と表すこともできる(a couple of を使った方が自然だと思うが)。a couple of ~は「(同じものが)2つ」の意味で、日常生活ではa couple of minutes[hours, days, weeks, etc]の形でよく出てくる。

韓国の2時間で終わった戒厳令について書かれたものから、もうひとつ。ソウルを拠点とするフリーランスのジャーナリスト*1の投稿だ。

第1文の "can be" は、とても日常的な表現だが、自分で使いたいときに使えるようにするには練習が必要な表現だ。いろいろ言ってみるといい。Trains can be very crowded even in the afternoon on a Wednesday. (水曜日の午後でも、電車はとても混むことがある)とか、Fruits can be too costly for an ordinary worker like me. (果物は、わたしのような普通の労働者には高価すぎることもある)とか、10個くらい自分で文例を考えると、だいたい使えるようになる。

文法ポイントがあるのは第2文。んでもって、日本の英語教育では、「こんな小難しい言い方をする人はいない。暗記のための詰め込み教育は無駄」的な根拠不明な言説にあおられて、こういう表現を教えなかった時期があるのだが、こういう構文は普通に英文でニュースなどを読んでいれば1日に1度は遭遇する。TwitterXのような気軽な場でさえこういうふうに使われているのだ。

No sooner had martial law been declared than protesters appeared with paper banners demanding it to end.

《no sooner ~ than ...》は、基本的に《比較》の表現で、「…よりゼロだけ早く」と直訳できる(noは「ゼロ」の意味)。つまり「…と~はほぼ同時」みたいな意味だ。これを、もっとこなれた日本語で、「~するや否や、…」とか「~するとすぐに、…」と日本語にするのが一般的である。

Noという否定語が強調のために文頭に出て(それと強くつながっているsoonerも一緒になっている)、そのあとは《倒置》が起きている。

martial law had been declared

→ No sooner had martial law been declared

文意は、「戒厳令が宣言されるとすぐに、戒厳令終結を要求する紙のバナーを持ったデモ隊が現れた」の意味。自分でパソコンで作ったり、手書きしたりしたプラカード的なものを持って、人々が集結したのである。夜中に。しかも戒厳令が出されてから1時間もしないうちに人々は集まったという。

強い。

 

というわけで、「えっ、韓国で戒厳令?」とびっくりし、私でも知っている先例のことを考えて頭をぐるぐるさせているうちに、民主主義国家らしい手続きが粛々と勧められて戒厳令が解かれたという怒涛のような2時間について、Twitter/X上の英語圏を見ていたら、あれこれ文法項目が目に入ったよ、というお話しでした。

ガザ・ジェノサイドについては英文法がどうのこうのという余裕はほとんどない。とにかくおこなわれていることがひどすぎるのと、それについて書かれた文が大量すぎる。でも、本当は、ガザの人たちが封鎖下にあってあれほどに優れた英語を使えるようになっているのはなぜかということを、もっと知りたい。その一端は、2023年12月7日に爆殺されたリフアト・アルアライール教授が編集した、ガザの若者たちが英語で書いた短編小説集の前書きに、リフアト先生自身が書いていることからうかがえる。

この本が、つい最近、日本語に翻訳された。

 

Let it be a tale. 

※……と言っても、今回、特に中身はないです。書いてる間に『ブレグジットの日に少女は死んだ』の話になったりしてます。

 

※ここまでで約5000字

*1:この方はフリーランスだが、大手報道機関の特派員でも、20年前なら東京や香港を拠点としていたかもしれない東アジア担当のジャーナリストが、最近はソウルを拠点とするようになっている。

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ガザで何百人ものアスリートが殺されていることが不問に付されるなか、アムステルダムで「暴徒化」したのは誰だったのか(英文法解説つき)

11月8日(金)の深夜、「アムステルダムでサッカーファンが暴徒化してイスラエル人が襲われた」的な話が流れてきた。まるでアムステルダムユダヤ人標的のテロ計画でもあったかのような書きぶりの記事もあったが、何があったのか、具体的に中身を見てみたら、そういう話ではなかった。

もはや「フェイクニュース」などということばを誰も使わなくなった今、こういうことが白日のもとで起きている。しかも「欧米」が主導している。日本で盛り上がる「背後にロシアの影」云々のたわごとすらも出る状況にない。

唖然とするよりない。

以下、とても長い。あと、今回は英文法解説もある。

■目次■

 

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私のTwitterアカウントに、何が起こったか (A very lengthy post with a much shorter English version)

10月26日時点で鋭意執筆中……URLを確定する必要があるので中身のない状態でアップロードしています。このあと、出かける用事があるので、帰ってきたらアップします。→予定を超過して24時間を要してしまいましたが、10月27日にアップしました。

書かねば、書かねばと思っているうちに3か月。その間、ただぼーっとしていたわけではないのだが、3か月も「放置」してしまったことは申し訳なく感じている。

Below, I'm very extensively explaining in Japanese what happened to my Twitter/X account. A much shorter version in English follows at the bottom. For your convenience, I'd recommend you use the link in the table of contents below. 

次の「続きを読む」の先に目次がある。

Please proceed to find the table of contents by cliking 続きを読む. Thank you. 

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「地面」の意味で使われるfloor(ロンドン、レスター・スクエアの傷害事件で、極右デマが始まりそうな情報空間を見た)

7月末にマージーサードのサウスポートで子供たちが何人も連続して切り付けられ3人が亡くなるという痛ましい事件があってからしばらく続いていた英国(主にイングランドと、北アイルランド)の極右のネットワークによる暴動は、日本でも関心を集めたようだ。ただその関心の少なからぬ部分が「背後にロシアが絡んでいる」という誤情報、もしくは「ロシアがらみでは」という推測に基づくものだったようで、英国ウォッチャーとしては「ロシアなんか絡んでこなくたって英国では極右は活動してます。もうずっと昔っから」と指摘しなければならないだろう。イーロン・マスクが英国でものすごい影響力を持っているかのような認識もあるようだが、英国でのインフルエンサーはマスク以上のがごろごろしているわけで、「マスクがー」ってのもちょっと違う。

そう思ってブログを書こうとしているのだが、何せそんなことは書いてて楽しいわけでもなんでもないのだから、全然やる気にならない。しかもこの暑さである。ここ数日は、東北地方にいきなり上陸した台風のおかげで、その南側に入っていた関東地方は熱帯の空気を直送していただいている状態で、気温は35度程度と今となってはさほどではない気温かもしれないが、「暑さの質が違う」としか言いようがなく、もうほんとに何もできない。

そうやってだらだらしているときに、イングランドでまた、子供が刺されるという痛ましい事件が起きた。今度はロンドン、それもレスター・スクエアだ。東京で言えば新宿アルタ前とか、六本木交差点とか、銀座和光前みたいな、超メジャーなスポットである。

そしてまた、Twitter/Xでは、サウスポートのときのように、「子供を襲う外国人*1」というステレオタイプを一方的に連想しては、(石原慎太郎が何度も繰り返し強調して言っていたような)「悪い外国人」という言説をばらまこうという動きが見られた。

今回、それをちょっと見ていたので、そのことを記録しがてら、その過程で遭遇した英語の語法実例について書いていきたい。

 

◆目次◆

  • レスター・スクエアでの事件
    • レスター・スクエア (Leicester Square)
    • 刃物男が女性と女子を刺し、警察に身柄を拘束された、という報道
    • 事件現場
    • ニュースに飛びついた極右インフルエンサーたち
      • トミー・ロビンソン(本名スティーヴン・ヤックスレイ=レノン)
      • アンドルー・テイト
    • 事件のヒーロー
    • 取り押さえられ、警察に拘束された容疑者は白人
  • 英文法・語法の実例
  • 極右デマが始まりそうだったネット上の界隈
    • アンドルー・テイトの投稿のリプライ欄
    • Twitter/Xという場
  • 事件翌日、容疑者の名前が判明して……
  • おまけ

 

*1:immigrant「移民」やasylum seeker「難民申請者」とカテゴライズされる人々だが、日本語では「外国人」と表現するのがいいと思う。

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be going to do ~を使った表現, have no idea+what節, など(ガザの大量料理人と、Twitter/Xでの心温まるやり取り) #ガザ市民の声翻訳 #ガザ #Gaza

たまには心温まることを書こう。

先日、当ブログでエントリ化した刷り物で取り上げている、ガザのWatermelon Reliefで、真顔で大鍋で大量の料理を作って子供たちを笑顔にしているハマダさんの7日の投稿: 

パンクチュエーションがくだけた文体のものになっているので、それを格式ばったものに改めると: 

I'm gonna need your help, my Spanish-speaking friends..

I was sent this video, but have no idea what she is saying.

Thank you @informativost5 for this report.

というふうになるだろうか。

英文としては、ほぼ誰でも「読めばわかる」文だと思うが、自分でゼロからこれが書ける/言えるかどうかは別で、もし書けなければ、暗記して、自分で使える文のベースとして頭の中にストックしておくといいと思う。「復文」の練習素材にしてもいいだろう。

文面を見ていこう。

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「~を経験する」の意味のsee, 感覚動詞+目的語+過去分詞(ヘイトに基いたイングランドの組織的な極右暴動とSNSでのデマの拡散、フェイクニュース)

イングランドで、悲惨な事件が起きて、それを利用して極右が暴れている。

そのニュースを追って(ものすごく久しぶりに)ガーディアンの報道記事*1を読んでいたら、この内容はどうしても書き留めておかなくちゃと思うと同時に、収集している英文法・語法の実例に遭遇した。

というわけで、昔のような形式のエントリをこれから書く。

◆目次◆

  • サウスポートという街で、事件は起きた
    • サウスポートという街
    • 7月29日のひどい事件
    • 容疑者は17歳(だから名前も即時公表されない)
    • 暴動
      • なぜモスクが標的に
  • 誤情報の拡散についてのガーディアン記事
    • 英文法・語法の実例の箇所
  • 誤情報拡散についての関連記事と、拡散元サイトの1つの内容
    • このサイト、中の人の名前がわからない
    • このサイト、記事が古い
  • ちなみにその後、暴動は……

*1:ガザ・ジェノサイドに際してのシオニスト丸出しの姿勢にうんざりして、昨年10月にアプリを消して以来、ガーディアンでは個人が寄稿する論説記事しか読んでいない。報道記事はガーディアンのは読まなくなってしまった。

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極限状態のガザ地区で、自身も苦境にありながら、ほかの人たちや動物たちを助ける活動をしている人々(リンク集)

昨年10月にTwitter/Xで始めた翻訳ハッシュタグについて、紙に印刷してネットの外(リアル世界)に持ち出すようになったのが今年になってからのことだ。細長い短冊形で、A4で6枚取るという小さなスペースのものだった。

ハッシュタグ(現在は廃用)紹介の短冊

この初代の翻訳ハッシュタグの印刷物を配り始めたまさにその日にとんでもないことが出来し、普通にツイートを読んでるだけではわからないし、部外者が簡単に書けるようなものではない(しかし、翻訳などをするなら当然想定しておかねばならないような)各種の危険をおかして発言を続けているガザの人々の安全を脅かすと判断したので、初代のハッシュタグはほどなく自分の中では廃用とし、数日のうちに2代目のハッシュタグに差し替えることになった。それの印刷物も作った。

#ガザ市民の声翻訳 と #ガザ市民のための声翻訳 ハッシュタグ紹介の短冊。2月から配布

この「短冊」は、最初は表面にハッシュタグを印刷しているだけだったが*1、手渡した人が裏返しているのを何度か見たので、裏面も活用しようと考えて、ずーっと前からフォローしているガザの学校の先生ムハンマド氏がやっている支援活動*2Care For Gaza (CFG) を紹介する文面をこしらえて、gofundme.comのページのQRコードをつけるなどするようになった。

片面でハッシュタグ紹介、もう片面で現地支援団体を紹介した短冊。5月から配布

やがて、CFGに加え、私が「真顔料理ニキ」と呼んでいる料理人ハマダ氏(支援物資の特に美味しくはなさそうな食材を使って子供たちを笑顔にするなかなかの豪華料理をすごい大鍋で作ってて見事なのだが、その様子を収めたTikTok調の映像ではなぜかずっと真顔でカメラ目線なのである。ちなみに彼は元々フードブロガーだ)や、サッカー好きのジャーナリスト、アフメド氏らの支援活動であるWatermelon Reliefの紹介文とgfmのQRコードも付け加え、それを6月のプライド月間に合わせてセレクトした翻訳ハッシュタグからの抜粋と裏表にしたA5判の印刷物を、6月から7月にかけて、池袋、新宿、高円寺などで配った。

片面にハッシュタグ紹介(Pride月間仕様)、もう片面に現地支援団体2件の紹介の印刷物。6月から7月に配布

そして、その印刷物約600部(もっとあったかも)を配り終えた今、さらに多くの支援団体を紹介すべく、新たな印刷物を作っているのだが(後述)、A5のスペースにはどうにも収まりきらない。

というわけで、そういった支援活動の情報を、ブログにまとめておくことにした。

ブログなら、紙のような「スペース(紙面の面積)」という制約もないし、Twitter/Xを埋め込むこともできるので、紙よりも詳しく紹介できるだろう。

なお、ここでは個人のガザ退避のための募金活動は基本的に扱わない。それが未来への唯一の希望となっていたり、精神的にもっと深刻なことになっていたりするケースを私はいくつも知っているが、それは別なカテゴリなように思うのだ。(ただし、他者のための支援活動をしている人が、自身の家族のために募っている募金には言及すると思う。)

極限状態にあって、人が人を助け、動物を助けるということは、「生命の尊厳」そのもののための活動だ。それを、世界中の人たちがネットワークを作って支えていこうとしている。

「ジェノサイドが起こるのをただ放置している世界」は、実はただ放置しているだけでなく、政治的意思決定層を動かそうと努力しても動かすことができずにいる一般人は、個人にできる限りのことをしている。そのことは、記憶にも記録にもとどめるべきだろう。

以下、書きかけ。とりあえず、ページのURLを決めるためだけに、ここまで書いていったんアップする。

◆目次◆

  • 極限状態のガザ地区で、自身も苦境にありながら、他者や動物を助けるため尽力する人々にご支援を
    • Care For Gaza (CFG) 
    • Watermelon Relief 
    • Cat lover 
    • Sulala Animal Rescue (Sulala Society) 
    • Salam Animal Care
    • Help Animal Gaza
    • Cruelty Free Meals for North Gaza
    • Gaza Animal Care 
    • eSIMの寄付

 

*1:その後、マイナーバージョンアップで、ハッシュタグQRコードも入れるようにした。

*2:今般のジェノサイドが始まる前から、恵まれない立場の人たちに食料支援などをしていた。

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性別を特定しないとき、また、特定する必要のないときに用いられる3人称単数の代名詞they(ドナルド・トランプ銃撃事件で警官は……)

ものすごく久しぶりに、元々このブログでやっていた書き方でのエントリを上げようと思う。つまり報道に出てくる英語の実例と、英文法の解説だ。さくさくと、20分くらいで書き終えようと思う。

久々にあれをリンクするぞ。どーん。

といっても、20世紀のあいだに編まれたこの文法書では、今回ここで取り上げるような21世紀に入ってからの英語はフォローできない。著者も2006年に没している。

あんまり余計なことを書いてると20分では書き終わらないので先に行こう。以下、敬称の類は略して書く。

7月13日、米ペンシルヴァニア州に設営された野外ステージで、支持者を集めて集会をおこなっていたドナルド・トランプに向けて、近くの建物の屋上から銃弾が発射された。何発かの銃弾で、トランプは右耳を負傷したが大事には至らず、家族を伴って聴衆の中にいたトランプ支持者の男性が、銃声でとっさに家族に覆いかぶさって被弾して絶命、他2人が負傷している。

銃撃があってすぐにトランプはステージから降りて車で病院に向かったそうだが、このときに聴衆に向けて拳を掲げてみせる瞬間をとらえたAPのフォトグラファーが撮影した写真がバイラルした。それが日本語圏で「王者の風格」云々ときゃっきゃきゃっきゃと取りざたされているのを見てしまったが、あの写真の写真としてのすごさと完璧さ*1はさておき、連写されている写真の1枚で、トランプの背中側にいるSP(男性)がトランプの背中を強く押すような様子で、さらに手前にいるSP(女性)が「お願いですから、そんなことやってないで、身を低くしてください」という表情で必死にトランプにしがみついているのに相手の体が大きすぎて何ともなっていない様子がうかがえて、痛ましいと思った。あのときさらにまた銃弾が発射されていたら、と考えるとぞっとする。米国のSPは、トランプのような「本質的に『俺様』をアピールすることにはすごい反射神経を持っているショーマン」を普通に警護するにはどうしたらいいかということに、頭を悩ませていることだろう。「カメラの前にさっそうと登場して笑顔を振りまく」タイプとは違う。常に「強い俺」をアピールしたがるタイプだ。

*1:撮影したフォトグラファーはステージの反対側からあそこまですっ飛んで行ってあの1枚をものした。「その場にいる」こと、「構図を決める」ことなど、訓練とスキルの賜物の1枚だと思う。

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五輪開幕も迫るなか、イスラエルは爆撃してパレスチナ人アスリートを殺し、私は翻訳の調べものに四苦八苦する(ChatGPTは翻訳者の実務に使えるか)

2023年10月7日以降、初期段階で世界中のジェノサイド研究者らが「教科書通りのジェノサイドである」と位置づけ、標的にされる危険をおかしている現地のジャーナリストや一般市民/市民ジャーナリストによってTwitter/XやInstagramなどでほぼ生中継されながらも、「国際メディア」と呼ばれる大手メディアからは「自社の記者が入れないから伝えられない」的に無視され*1、「国際社会」と呼ばれるものもろくに動こうとせず、したがって、リアルタイムで世界中に現場から事細かにひどい状況が伝えられているにもかかわらず、誰も止めようとしないという異常な状態で続けられてきたガザのジェノサイド (Gaza Genocide, the Genocide in Gaza) は、今月7日、うちら東京都民が都知事選で投票をした日*2に、事態の開始から9か月を迎えた。

状況は、悪化する一方である。そして、大手メディアは相変わらず、事態をろくに取り上げようとしていない。特に最大の軍事的支援国・米国では、大統領の記者会見で、パレスチナの都市と民間人に対して用いられる爆弾を送ることについて、誰も質問しないという状況であるそうだ。この事実が物語っている現実について、1秒でも考えてみてほしい。

私の見るTwitter/Xの画面では、大手メディアが取り上げようとしない大きなニュースが日々、英文で280字以内でフィードされてきたり、分析や解説が長文で投稿されてきていて、そして、「どうしてこれを大手は取り上げないのか」という怒りと絶望とフラストレーションの声が流れてきて、その合間合間にガザ地区現地から「お願い、スルーしないでください」とする募金要請や、「アカウントが制限されているので、Twitter/Xのアルゴリズムに働きかけるため、リプライをつけてください」という要請が入る。5月から6月にかけて盛んだった欧米の大学からの抗議行動に関するフィードは、大学が夏休みに入ったこともあって、今は激減している。その分、ガザからの直接の情報が多く表示されているように思う。同時に、大手でない(独立系の)報道機関などや、イスラエルの報道機関の重要な報道も相次いでいる。一例が、かの『ランセット』誌(英国の、権威ある医学誌)の推定死者数に関する記事だ(「学術的に普通に考えて、関連死を含め、犠牲者数は186,000人になる」という内容)。ジェレミー・スケイヒルが、自身が立ち上げたThe Interceptを離れて新たにスタートしたばかりのDropSiteNewsでも、いきなりなんかすごいのがきてる。イスラエルの新聞ハアレツは10月7日の「ハンニバル指令」のことを報じている(つまり、10月7日に攻撃で殺された人々のうち少なくない人々が、イスラエル軍に殺されたということが、事実として明らかになっている*3。)。こういうのが、日々、現地からのめちゃくちゃな状況を伝える文章や映像と一緒になって流れてくる。もういっぱいいっぱいだ。

ガザ情勢を(英語で)追っている人たちは、誰しも同じような状況だろう。

もう9か月にもなり、「まずは知ることから」と言っていられる局面はとっくに通り過ぎていて、そして毎日悲惨な写真や映像が次々と流れてくる。その中でわかりやすいもの、手に取って自分のペースで検討できるもの、手に負えるという感覚をもたらすものは、個人からの寄付要請や「買って応援」系の情報だが、「そもそも情報量が多すぎて、何をどうしたらいいのかわからない」という状態になっている人は大勢いるだろう。とりあえず確実に「何かができる」のは、eSIMの寄付だ。 #ConnectingGaza (ガザをつなぐ)というハッシュタグで情報がやり取りされている。eSIMの寄付のやり方は、こちらでisaokodesuさんが丁寧に解説してくださっている。

isaokodesu.hatenablog.com

さて、ここまでは前置き。

今日、先ほど、ガザ地区南部ハンユニスで、2021年の国際大会にパレスチナ代表として出場した陸上選手が、イスラエルによって自宅を爆撃されて殺された、という報告を日本語化した。たいていスルーされるか、リツイート/リポストされても数件というのがデフォの拙の翻訳ハッシュタグ「#ガザ市民のための声翻訳」の投稿では珍しく、280件を超えてリツイートされている。やはりスポーツについては関心が高いのだろう。ちなみに私は、今年3月の新宿での集会で、柔道のイスラエル代表の集会乱入というインシデントを目撃していて、事後に彼らの流したデマ(うちらデモ隊が柔道代表に襲い掛かって柔道着をもぎ取って逃げた*4、的な)に対抗して実際にあったことを英語で書いたことでロンドンのスポーツ・ジャーナリストと知り合ったのだが、今回、ハンユニスでの陸上選手の爆殺は、彼女のツイートを通して知った。スポーツはこういうふうにも人をつないでいる。

スポーツ選手がイスラエル空爆で殺されることは、医者や学者、ジャーナリストが同様に殺されるのと同じように常態化しており、スポーツのインフラも破壊されていて、英語版ウィキペディア"Palestinian sports during the 2023–2024 Israeli invasion of Gaza" としてまとめられている。サッカー選手が殺されればUEFA*5FIFAへの抗議の声が上がらなくはないが、「国際メディア」はまず取り上げようともしない。そしてサッカーのEuroも、もうすぐパリで開催される五輪も、何事もなく進行する。

 

目次

  • パレスチナ代表の陸上選手が、イスラエル空爆によって殺された
  • 調べもの1: sporting bodies 
    • まずはウィキペディアを使ってみる
    • 次にChatGPT-4を使ってみる
      • こっちがわかりきっていることについてドヤ顔で説教してくる
      • 根拠も示さずに断言してくる(通常運転)
      • 「根拠を出せ」と言われると根拠と主張するものを示しはする。だがそれを見ているかどうかは別だ
      • ChatGPTはひとまとまりの文章の単語を適当に拾って脈絡なく結びつけることを「読む」と称しているだけ。意味は取っていない
      • 結論: ChatGPTでは私のやりたいような調べものはできそうにない
      • ChatGPTは翻訳者の実務に使えるか
  • 調べもの2: the young Palestinian runner Wasem Ayman Abu Deeb
    • 人名はこの場合、シンプルにいける
    • runner が難しい……《意味》がわかることと、それに《適した日本語》を与えられることとは別
    • 余談: こういうときに「マイナーなアスリートのことを調べるのは大変ですね」などとは言わないようにした方がよい
    • 出場大会の記録から、特定の選手の出場科目を調べる
    • ウィキペディアウィキペディア本文だけでなく、最下部に注目。そこに使えるものが埋まっている
    • 調べものは行き詰まった。ここでどうするか
    • 訳出しないという選択

*1:その前哨戦であるかのようにして、ここ10年の間にガザ地区でどのくらい国際メディアのオフィスなどが破壊されてきたことかを振り返っておくことも必要だろうが、たぶん、誰もそこまで手が回っていないのではないかと思う。また、ジェノサイド開始から9か月となって、イスラエルの外国人記者団体が「イスラエル国政府が、外国人記者を、ガザ地区に入れさせないことは問題である」との非難声明のようなものを出していることも特記しておくべきだろうか。

*2:もちろん、盧溝橋事件の日でもある。1937年、中国の北京郊外で何者かが日本軍に対して発砲、日本はこの機をとらえ、「自衛権」を掲げ、宣戦布告をせずに大々的な軍事行動に出た。日中戦争の始まりである。

*3:実際、ハマスの攻撃力ではなしえないような攻撃のあとがあったんだけど、英語圏の、Twitterでだけ声の大きな(増幅装置として作用する)素人探偵というか自称OSINTの人たちは無視してたよね。ハスバラだろう。

*4:筋肉の塊でしかない格闘技の選手が、しっかり着こんでいる衣類を、スマホやプラカードを持つのに忙しい一般人が奪い取れるわけがない。なのに、イスラエル柔道代表の流したデマを受けて「これが事実だったらよくないことだ」と拡散する日本人がいた。しかも大手新聞の在米記者とかがそうしてたの。新聞記者なら何よりもまず先に事実を確認しろっての。

*5:イスラエルが所属しているのはUEFAである。パレスチナ代表はアジアなのに、イスラエル代表はヨーロッパって、そもそもおかしいでしょ。サッカー界がずっと無視してきたイスラエルの特別扱い。

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「敵の敵は味方」ではない――パレスチナ支援の中に紛れ込む極右・ネオナチについて(実例記録)

イスラエルによるガザ攻撃、というより「ガザ・ジェノサイド」は終わる気配などまったくないが、「停戦 ceasefire」を求める声はやんでいない。

というより、「停戦 ceasefire」を求める声はやんでいないが、イスラエルによるガザ攻撃(というより「ガザ・ジェノサイド」)は終わる気配などまったくない、と書くべきだろうか。

そんなことで悩んで数分が流れていったが、目薬をさしても肩のストレッチをしてもどっちがよりよいという結論が出なかったので、両方書いておく。自分のブログだからそこは好きにしてよいだろう。

ともあれ、そのようにして続いている「停戦 ceasefire」を求める声――「昨年10月に始まったときには、まさか、夏になっても同じことを言い続けているとは思ってませんでしたよね」と言いつつ、続いて発されている声――に便乗して、というかその中に入り込むようにして、ただただ「ユダヤ人」を排斥したい勢力の声が発せられていることは、決して軽視されるべきことではないと思う。

といっても、私が見ているのは、英国の労働党ジェレミー・コービンを排斥したときに行われたキャンペーンのスローガンのようなものだった「左派の側の反ユダヤ主義」ではない。もっとド直球の反ユダヤ主義、「極右の反ユダヤ主義」、もっと言えばネオナチの発言だ。

紛争に際してよく言われる言葉に、 "The enemy of my enemy is my friend." というものがある。「敵の敵は味方」という意味だ。例えば1980年代において英米と対立していたリビアカダフィ大佐は、英国を攻撃していたIRAを支援し、武器や訓練施設を提供した。リビアの独裁者がIRAの理念をまったく無視していたとは思えないが、かといってその理念(アイルランドの統一の回復)ゆえに支援していたとは思えない。

今般のガザ・ジェノサイドでは、「私の敵」がシオニストであるとして、シオニスト批判者はすべて「私の敵の敵」になり、したがって「私の味方」である、という単純でわかりやすい《構図》(マスコミ用語)に自分たちを当てはめたいのだろう、ガチの極右勢力がかなり活発に草の根で発言をしており(例えばアンドルー・テイト*1)、私もTwitter/Xでときどきそういうのに遭遇する。

遭遇したところで、そもそも見たくもないものだから、単に画面をそっと閉じることがほとんどだが(ついでにミュートしたりブロックしたりするくらいのこともする)、「Jan6」と称される米議会襲撃事件で議事堂に乱入した暴徒が身につけていたりした極右のシンボルについて常識的なことを書いたら予想外にも大きな反応があったことなども思い出し、この分野について日本語で書いておくことは意味のないことではないのだから、と、特に書きたくもないトピックについて書いておこうと決意した。

以下、今日、今から数時間前に実際にTwitter/Xで遭遇した「パレスチナを支持する西洋の極右」の実例の記録である。

パレスチナ支援活動参加者各位におかれては、くれぐれもご注意いただきたい。

【目次】

  • 遭遇した実例について
    • どこでどういうものに遭遇したか
    • 遭遇したものの詳細
    • 埋め込まれているシンボリズム
    • 当該アカウントはどういうアカウントか
  • 追記(7月9日)
    • また別の例
    • 不快極まりない反ユダヤ主義言説
      • 図像と色
      • 「アマレク」言説
      • 「アマレク」とは
      • 当該の映像について
      • 当該のアカウントについて

 

*1:

https://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Tate#Views_and_influence 'In November (2023) he accused Israel of "genociding" Palestinians and claimed that the Hamas attack on Israel was as "an eye for an eye".'

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Twitter/Xでアンケートをやっている件で、英文解説をしておきます。 #ガザ市民のための声翻訳

ふとした思い付きで、Twitter/Xで、4月3日の18時過ぎから、下記のアンケートを実施しています。4日の18時過ぎまでご回答いただけるようになっているので、Twitter/Xのアカウントをお持ちの方は、ご協力いただけると嬉しいです。「何のための調査」といったこと、というか調査の目的は特にありません。何となくの思い付きです。現時点で表示回数が1100回程度、回答数は130件程度です。

ここでは「読む」の内容を、「英文を自力で読める」「英文を日本語にできる(翻訳できる*1)」と定義し、なおかつ「どうしてそのような日本語になるのか(そのような解釈になるのか)を(文法的に)説明できる」ということも範疇に入れてあり、それらはわりと細かく分けて選択肢にしてありますが、「読めない」は4番目の選択肢の「上記以外」にまとめてしまってあります。これは、私のツイート/投稿がリーチする範囲が「読める」人たちに偏っていると思われるためで、選択肢を6つくらい設定できたら「読めない」方面ももう少し細分化していたと思います。

で、「自力で読めるし、日本語にできる」という点について、ただこの英文をぽーんと投げておいただけでは「間違いのない解釈(読解)ができているかどうか」という点について疑問を残したままになってしまうかもしれないので、これまた思い付きで、こちらで補足しておくことにしました。

最初はTwitter/Xでツリー形式で続けようとしたのですが、そうすると「問題集の答えを見てから自分でやって、自力でできたと勘違いしてしまう」みたいなことが起こりえるので(学習においてはそれは必ずしも悪いことではありませんが)、場所を分離してこっちでやることにします。

*1:「翻訳」という表現を使ってしまうと解釈の幅が出て「直訳は翻訳かどうか」みたいな疑問が出てきてしまうので、あえて回りくどく「日本語にする」と表現しています。

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とんでもないものが翻訳されて青天の霹靂。ハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を、少なくとも私は、終わりにせざるを得ないことについて(次のハッシュタグもあるよ)

このブログの管理画面にアクセスするのも久しぶりである。12月のうちに、時制の使い方がとても興味深い英文の実例に遭遇したので、それについて書くつもりだったが、なんだかんだと書かずに1月も終わろうとしている。

さて、今回は当ブログのテーマである英語・英文法は扱わない。久々の更新で、英文法目当てにフィード登録してくださっている方をがっかりさせてしまうかもしれないが、現実としては、英文法どころではない状況が2023年10月7日以降、苛烈さを増しながら続いている影響をもろに受けているので、何卒おゆるしいただきたい。

今回は、英語の話ではないが、「翻訳」に関連する話ではある。テクニカルな話ではなくて、実際にやっている翻訳に関連する話である。

【目次】

  • 2023年10月7日
  • パレスチナからの声を日本語にする人々→ハッシュタグの開始
  • でも、あんまり直接的ではない形で、おそらくは善意に基づいて、とんでもない翻訳が行われた
    • 具体的に何があったのか
    • 何がどう「暴走」なのか
  • 私 @nofrills はこのプロジェクトとはまったく無関係
  • 私 @nofrills がよく翻訳しているガザの人たちも、もちろん、このプロジェクトとはまったく無関係
  • このプロジェクトはハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」とは別におこなわれた
  • けれども、ハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」と無縁ではない
    • プロジェクト参加者と @nofrills の接点について
  • というわけで……
    • ブックリスト
  • ※更新履歴
  •  
  • ※デマの流布はやめてください。
    • 「ペガサス」について
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ハッシュタグ「 #ガザ投稿翻訳 」は、第一義的に、ガザ地区の人々に、自分たちの投稿が読まれていることを伝えるためにやってる。でもその意味は?

Twitter/Xのハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を始めてしばらく経った。ハッシュタグがないよりは多くの人の目に触れていると思うし、ここ数日で作業をやってくれる方も増えた(こちらからはお声がけはしていないが、自主的にやり始めてくださる方が増えている)。感謝したい。記録に関しては、ほっとくと誰もやってくれないので、自分でアーカイヴを取った。量が多いのでいくつかに分けて取っていく。今回取ったのはその最初のひとつである。

togetter.com

10月7日のハマスによる攻撃開始直後しばらく吹き荒れた「ハマスの蛮行を非難しないのか」言説の嵐が収まったあと、現在のネットは「イスラエルを支持しない者はテロリストの支持者である」という、ジョージ・W・ブッシュの "Either you are with us, or you're with the terrorists!" というあの悪夢のような、カルトめいた二元論の言葉の変奏に覆いつくされている

GWBの発言当時、日本における「ネイティブの英語」の推進者たちなどは、発言内容以上に、合衆国大統領の発音、特に "terrorist" の発音に目を白黒させていた。「南部訛りは想定外ですね」「どう扱ったらいいんでしょうね、これは」みたいな感じ。そういう態度についてならば、「ペダンティックだ」とかいう評価が出るのは、英語教材屋から見ても当然だ*1

だが、今回ハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を始めたことについて書いた拙ブログ記事について、通りすがりのだれか知らない人から「選民意識」とか言われるのは意味がわからん。エントリをアップして10日もしてからようやく、初めてブコメ見たんだけど(Twitterで手一杯で、ブコメ見ている余裕はなかった)、そういうのがあって、(?_?) という顔になったのだが……。

というか、いつもの「日本における英語使いあるある」か。

*1:ついでにいえばブッシュはディスレクシアの当事者でもあり、言葉に難がある人だったが、それについてあげつらうような態度もあちこちで見た。私にはそれはとても不快だったし、「不快である」ということは当時表明している。

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