Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

仮定法過去, 仮定法過去完了, if節のない仮定法(政治家たちに民主主義を守る気があるのならば……)

今回の実例は、英国の総選挙前の論説記事から。

英国の総選挙については、前回少し書いたので、文脈的なことはそちらをご参照のほど(情報量として全然足りていないが)。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

この論説記事を書いたニック・コーエンについてはウィキペディアを参照。ガーディアンの日曜版であるオブザーヴァーをはじめとする多くの媒体に論説文を書いている政治コラムニストで、2003年のイラク戦争支持、2011年のリビア介入支持、2012年のシリア介入支持(シリアは実際に介入は行われなかった)のスタンス、つまり、2000年代に短期間だけ盛り上がった「人道的軍事介入」のイデオロギーの賛同者でそれを喧伝してきた書き手のひとりだが、「人道的軍事介入」があっと言う間に廃れたあとはそのテーマでこの人が書いた文は見なくなった。元々はそのような国際関係方面の人ではなくオックスフォード大学でPPEというバックグラウンドの人だ。

ちなみに、名字の「コーエン」はユダヤ系の名だが(そのことについては先日少し書いた)、ニック・コーエンの母親はユダヤ人ではないので彼はユダヤ人と見なされる立場にはなく、また信仰の点でもユダヤ人(ユダヤ教徒)ではない(無神論者である)という。ソースは上述のウィキペディア

 

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仮定法過去(もしも保守党が本気でNHSに金をかけたいと思っているのなら……)

今回の実例はTwitterから。

英国では今週の木曜日、12月12日が総選挙の投開票日である。12日の朝から夜まで投票が行われ、即日開票となり、だいたいの議席が確定するのは翌13日(金)の見込みである。

今回、なぜこんな変な時期*1に総選挙になっているのかということは、書くならこのブログではなく本家のブログに書く話だから、そこは割愛する。

その選挙の投票日を前に、いろんな言葉が報道機関のサイトやTwitterなどを飛び交っているのだが、英国の今の保守党(現在の政権党)の嘘つきっぷりと卑怯者っぷりは日本の現在の政権与党もビックリのレベルで*2、保守党批判の論理的で鋭い発言が多い。

今回の実例はそういった発言から。

 

*1:通例、英国ではこの時期は基本的にクリスマス・ムード一色だ。ちなみに「クリスマス」といっても宗教色はもはやさほど濃くなくて、全体的には年に一度、人にカードを送ったり、プレゼントを用意したり、家族・親族が集まる機会、という感じ。日本でのお盆のほうがまだ宗教っぽいというケースも少なくないだろう。

*2:それでも、英国のほうが締めるべきところは締めているから、まだ日本よりましだと思うけど……とかいうことを書いてると突撃されそうだから書くのやめとく。

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仮定法過去完了(ifの省略)(引退を賭けた試合に勝利したボクサー)

今回の実例はTwitterから。

現地時間で2019年12月7日(土)の夜、サウジアラビアでボクシングのWBAスーパー・IBFWBO世界ヘビー級タイトルマッチが行われ、アントニー(アンソニー)・ジョシュアが勝利した。

www.afpbb.com

私は詳しくないのだが、この試合は「因縁の一戦」として注目されていて(6月に試合が行われてルイスが勝利し、今回ジョシュアが王座奪還をかけて再試合を行ったという次第)、試合中も試合後もUKのTwitterではずっと関連のハッシュタグがTrendsに入っていた。ジョシュアは英国生まれで子供時代を両親のルーツのあるナイジェリアで過ごし、11歳からずっと英国に暮らしてきたという背景があり、英国のみならずナイジェリアでも大きな注目を集めていた。

というわけで今回の実例: 

 

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call + O + C, each + 単数形(世界で最も危険な鳥)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップロードしたものの再掲である。ここで確認しているのは非常に基本的な文法項目だが、自由英作文となるとこれが使えないケースが案外多い。改めて確認し、使いたいときに使えるよう練習しておきたい項目である。

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今回の実例は、範囲としては「中学英語」になる。簡単な項目だが、こういった基本の確認はないがしろにせずにやっていきたい。

記事はこちら。掲載はガーディアンだが、中身はAP (Associated Press) の配信記事である(ガーディアンの記者が取材して書いているわけではない): 

www.theguardian.com

 

見出しにある "cassowary" は、日本語にすると「ヒクイドリ」。「世界で一番危険な鳥」として日本語圏でもかなり広く知られており、ネット検索すると、興味をそそるようにまとめられたウェブページなどがたくさん見つかるので、記事を読む前に予備知識を入れておきたいという場合は、検索してみてほしい。

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過去完了の受動態、so ~ that ... 構文(パリ、ノートルダム大聖堂の火災で崩落した尖塔と屋根について)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップロードしたものの再掲である(昨日に続き)。2019年の10大ニュースに入るような火災の報道記事が素材だが、この火災自体についてその後わかったことについてアップデートはしていないので、その点、お含みおきいただきたいと思う。

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今回の実例も、昨日のと同じ、パリのノートルダム大聖堂の火災を報じる記事から。

www.theguardian.com

ガーディアンはこの火災を、live-blogの形式で、情報が入ってくる都度伝えていたのだが、昨日と今日参照する報道記事は、その都度報道を踏まえて紙面に掲載する形でまとめた大きな記事で、たいへんに分量があるし、情報量も多い。

その中から、今回崩落した尖塔や、ほとんど消失した屋根についての説明の部分を見てみよう。

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分詞構文, やや長い文, 倒置, those + 形容詞, among(中村哲さんと5人のアフガニスタン人の殺害)

 

今回の実例も前回と同じトピックで、ただし個人のツイートではなく報道記事から。

アフガニスタン中村哲さんの車が何者かに銃撃されて、車の中の人たちが殺されてしまったことは、世界中で報じられた。そのことはすでに日本語でも「世界が悼む」調で報じられているが、英語圏のトーンは「中村さんが殺された」ことを強調しつつ、そこだけに話を持っていっていない。「全部で6人が殺された」ことを見出しで大きく取り上げているものが多い。「1人の日本人と、5人のアフガニスタン人」という語り方だ。

それは単に英語圏のメディアが日本でもアフガニスタンでもないからで、殺害されたのが、例えば1人の英国人と5人のアフガニスタン人だった場合は英国のメディアはその「1人の英国人」を中心に据えるだろう。

だから今回、日本のメディアが「中村哲さんが殺された」ことにスポットライトを当てて「ほかに5人が死んだ」ということは、今のところほとんど書き添えるような形でしか言及していないとしても、それ自体は特に例外的なことではない。

その上であえて書くが、私はこの悲報にショックを受けているときに英語圏の報道記事の見出しを見て、何というか、距離を取ることができたように感じている。

というわけで今回の実例は、そういった英語圏の報道記事のひとつから。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

リード文がこの内容というのはこの際どうでもいいことで(こういうときに、当該国の政治トップの発言をメディアが大きく取り上げるのは、形式的なことだからね)、まずは見どころは見出しだ。直訳すれば、「日本の支援組織の長が、アフガニスタンでの攻撃で死亡した6人の中にいる」。

記事自体は淡々と事実を述べるもので、報道記事としては平易な英語で書かれており、高校の英語教科書で中村さんの活動について書いてあった章とあまり変わらない程度の難易度なので(単語は少し難しいかもしれないので辞書は必須)、ぜひ、ご自身で全文をお読みいただきたいと思う。

 

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祈願文, can not do ~ enough, thank〈人〉for 〈物事〉(「中村さん、ごめんなさい」――アフガニスタンに命の水をもたらした人)

今回の実例は……といつもの書き出しで書き始めるのもつらい。中村哲さんが殺されてしまった。

中村哲さんについては私がここで説明するまでもないだろう。今20代以下の人の多くは「英語の教科書で、アフガニスタンでの井戸掘りや用水路づくりの仕事が紹介されていた、日本の偉人」として認識しているだろう。 

アフガンに命の水を

アフガンに命の水を

 
天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

  • 作者:中村 哲
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2013/10/24
  • メディア: 単行本
 

 

中村さんは医師。1980年代からパキスタンで医療活動に従事したあと、90年代にアフガニスタンでの活動を始めた。「人が生きていくこと」の根本を追求した中村さんの活動は医療にとどまらず、「水」をめぐる途方もないプロジェクトの実行へとつながっていった。ウィキペディアでも概略はつかめるので、教科書で中村さんの活動について読んだわけでもなく、名前だけぼんやりと知っているとか、軍事的親米の人たちが声高に批判してみせているので認識しているとかいう方は、一通り目を通していただければと思う。

ja.wikipedia.org

 

中村さんは、長年の活動により、ほんの2か月前にアフガニスタンの「名誉国民」になったばかりだった。「名誉国民」なのでもう外国人として滞在許可を得たり滞在ビザを延長したりする必要なく、いつでも好きなときに行けるようになった、その矢先の卑劣な暴力だ。

中村さんの殺害を受けて、Twitterではアフガニスタンの人々からたくさんの言葉が捧げられている。ごく一部だが、拾えるものは拾って記録した。

matome.naver.jp

すべてが中村さんを賞賛する内容だが、意図的に編集してこういうふうにしたわけではなく、本当に批判することばはほとんどなかった――「ほとんどなかった」というのは、1件だけ見たからだが、その1件は明らかにその筋*1なので無視するのが当然と思われた。

 

今回の実例は、こういった言葉の中から。ツイート主はアフガニスタンの外交官である。

 

*1:それがどの筋なのかを書くことは、私は避けねばならない事情があるので(脅迫を受けている。詳細は本家ブログを掘ってね)、曖昧な記述になることはご容赦いただきたい。

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過去分詞単独での後置修飾(精神疾患と凶悪犯罪)

今回の実例は、いつもの「大学受験生向け」という枠を取っ払って、ちょっと例外的な実例のメモとして。

数日前まで日本語版電子書籍がセールで安くなっていたサイモン・ウィンチェスターの『博士と狂人』は、19世紀末から20世紀はじめの英国での一大事業であったThe Oxford English Dictionary (OED) を作った重要人物である言語学者(博士)と、OEDの編集方針に応じて内容を作り上げる作業に協力した精神病院入院患者にして博学なボランティア(狂人)の実話を核に、辞書を作ること、英語とはどのような言語であるかということを、辞書好きのジャーナリストが史料を集め読み解いて丹念に解き、わかりやすく綴った一冊である。メル・ギブソンショーン・ペンで映画化されているが、ブログに書いたように、日本で見られるようになるのかどうかはわからない。それどころか、アラブや欧州の一部地域ではすでにロードショーが行われているものの、米国では限定公開の状態だし、物語の舞台である英国でもまだ公開されていない(権利周りでもめたせいだろう)。 

 

この驚くべき実話の「狂人」とは、おそらく戦争体験が引き金のひとつとなって精神病を発症し、療養のために赴いたロンドンで妄想のために殺人を犯して、生涯を精神病院で過ごすことになったアメリカ人である。

彼、ウィリアム・チェスター・マイナーは19世紀という時代にスリランカに赴いていた米国の福音主義者の夫婦の間に生まれ、長じて米国に戻り、勉強を重ねて医師となったあと、南北戦争を戦っていた北軍に入り、軍医として悲惨な戦場を経験した。彼は医師として本来すべきではないことを上官の命令に従って実行した。そして精神的に崩壊して除隊となり、以後は元軍人として自身の病を癒しながら暮らしていくはずだった。しかし、彼は戦場でやらされたことが原因で大変な妄想を抱くようになっており(この部分、「ネタバレ防止」のためにぼやかして書いているけど、19世紀の歴史に興味がある人にはとても興味深いと思う)、その妄想ゆえに、ロンドンのテムズ川南岸のランベス地区(当時はロンドンに組み込まれていなかった)で、単なる通りすがりの労働者を殺めてしまった。そして殺人罪で裁かれることになったのだが、裁判では最終的に「精神疾患のため罪には問えない(無罪)」と判断され、その後生涯を、当時新築の精神病院の閉鎖病棟の中で、厳重な管理と監視のもとに置かれて、過ごすことになった。

マイナーは元々非常なインテリで、妄想が起きなければ、非常に頼りになる知識人だった。そのため、OEDをつくるという途方もない仕事をしていた言語学者のジェイムズ・マレー博士に協力していくことになる――という『博士と狂人』は、サクサクと読み進めておもしろく、深く読み込んでまた面白い本である。原著の出版が今から20年ほど前で、当時はインターネットも言語学におけるコンピューターの活用もまだまだささやかなものだったのだが、そのような技術とその利用が今のようになると想定されていたら、もっと違う切り口もあったかもしれないと思ったりもするが、ことばを使う誰もが一度は読む価値がある本だと思う。

 

という次第で、セールの機会に電子書籍版を購入して読み直しているのだが(紙よりも細かい読みができる……というか、紙だと読み飛ばしてしまうところが多い本だと思う)、つい昨日、この「狂人」を思い起こさずにはいられない記事を読んだ。

www.theguardian.com

 

イングランド、デヴォン州のアレクサンダー・ルイス=ランウェルは、パブリック・スクールで教育を受けたような人物だが、今年2月8日の朝、農場の動物たちを勝手に外に出しているところを現行犯逮捕された。このとき本人が精神鑑定を拒否し、自分は自傷も他傷もしないと主張していたのだが、母親は警察に電話をして、他に行くところのない人間なので拘置しておいてほしいと告げた。

彼は拘置施設内で暴れ、施設の房を破壊した。農場からの動物の強奪と警察施設破壊で起訴され、その後、9日の早朝に保釈となった。

その7時間後、彼は鋸で83歳の男性を襲い、また逮捕された。このとき彼の留置を調べた警官は「釈放されれば公衆にとって深刻な危険を及ぼす可能性がある」としており、被害者の83歳男性も外に出さないようにしてほしいと述べていた。2度にわたる警察での拘束中に、5人の医療専門家(医師)が彼を診たが、即座に何かしなければならないほど状態が悪いとは結論されず、正式な精神鑑定は実施されなかった。検察も、この襲撃事件で起訴に足るほど十分な証拠がないと結論し、2月10日の朝9時半ごろに保釈となった。

同日昼の12時半には、アレクサンダー・ルイス=ランウェルはデヴォンからエクセターに移動していた。彼は、ある家の前で足を止めた。家の玄関ドアには、この家の住民が80歳であることがわかるようなメモがあり、ここで妄想が炸裂し、どういうわけか、この家の住民である老人は25年前に女の子を誘拐して、地下室に監禁していると思い込んだ。ルイス=ランウェルはこの家に乱入し、住民をとんかちで撲殺した。

それから3時間もしないうちに、エクセターの別の地域で84歳の双子の兄弟が暮らす家に来たルイス=ランウェルは、納屋から鋤を持ち出して家に入り、2人の住民を撲殺した。この高齢の兄弟が児童虐待と拷問をしていると信じ込んでいたためだった。

この日の夜はルイス=ランウェルは野宿し、翌朝の5時、今度はあるホテルのナイトポーターを襲った。この襲撃では相手は死なず、警察が呼ばれ、その結果、ルイス=ランウェルは逮捕された。彼自身は妄想の中で、自分の行動は警察に許可されており(なぜならこの数日前に警察から保釈されているので)、警察は自分の応援にかけつけたと信じていたようだ。

この3人の殺害について、今回、法廷は「精神疾患(妄想型統合失調症)のため無罪」と判断したが、警備の厳重な精神病院への入院が命じられた。

 

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「史上最多〇度目」の表し方, 報道記事の見出し(2019年のバロンドール)

今回の実例は、サッカーのバロンドールのニュースから。

バロンドール」はサッカーの最優秀選手に与えられる賞で、サッカーを専門とするジャーナリストたちの投票で決定される。フランスのサッカー専門誌が創設した賞で、名称はフランス語のBallon d'Or(「黄金のボール」の意味)である。

その賞の受賞者が、日本時間で今朝がた、発表された。すでに日本語でも報道が出ている。

www.soccerdigestweb.com

www.soccer-king.jp

こういった報道でよく使われる「史上最多〇度目」の英語での表し方を、今回は見てみよう。記事はこちら: 

www.bbc.com

 

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《否定》の意味合いの同等比較 (as ~ as ...) (英国の国民健康保険は危険にさらされている)

今回の実例は、TV番組での元政治家の発言から。

中曽根康弘元首相が101歳で他界した。この人といえば国鉄民営化とか労組つぶしとかいろいろあるのだが、私にとって最も鮮明に記憶に残っているのは「ロン・ヤス外交」とプラザ合意だ。それぞれの説明はここではしない。

日本から見ると「ロン・ヤス外交」史観になってしまい、そういうナラティヴ(語り口)は避けられないのだが、世界的に見ればあの時代は「ロン」こと米国のロナルド・レーガン大統領と、「マギー」として知られる英国のマーガレット・サッチャー首相の時代で、この人たちは現在に至る新自由主義の時代と社会と世界を作った人たちだ。

新自由主義(ネオ・リベラリズム)」*1についてもここでは説明はしないが(そんなことをしていたら書き終わらないからだ)、かなり雑に要点だけいえば「改革」の美名のもと、「効率」などの美点を賞揚しながら国有財産を私有化し、人々の暮らしと生命の基盤となる社会的なインフラ(特に交通、水)をも、少数の誰かにとっての(巨額な)利潤を生みだすものに変えていこうという思想。つまり、現代の当たり前の思想だ。

それが「善」をもたらさないとは言わないが、それは「善」ばかりをもたらすわけではないわけで、いろんな人が「ちょっと待て」と声を上げている(ということは日本語圏ではほとんど知られてないかもしれない)。

15年くらい前まではここで「ちょっと待て」と言っているのは、英国では、たいがい左派だったのだが(極右の反ネオリベという人たちもいなかったわけではないが)、2010年代、特にこの数年は様相が変わってきた。

その変化を引き起こしたのは、2010年に単独過半数が取れなかったくせにリベラル・デモクラッツ (LD) *2と連立することで何とか政権を取ったデイヴィッド・キャメロンが推進した「市場開放」型の政策の数々である。キャメロンのネオリベ政策は非常に苛烈で、「マギーでもここまではやらなかった」というくらいのことをやっているのだが(それが「緊縮財政 austerity」という婉曲な表現で呼ばれている)、キャメロンがEU離脱という非常に複雑な問題の可否を非常に雑なレファレンダムにかけるという愚行のために退陣しなければならなくなったあとを受けたテリーザ・メイも、キャメロンの苛烈な政策を継承していた。メイは退陣する少し前に「緊縮財政はもう終わり」と宣言したが、メイのあとを受けたボリス・ジョンソンも、2010年以降の苛烈な政策で生じた数々の問題は放置する感じである。

これに際し、かつてマーガレット・サッチャーを支持し、「サッチャリズム」と個人名を冠して呼ばれた苛烈なネオリベ政策を推進し、サッチャー退陣後はその政策を継承していた保守党のベテラン政治家たちが、現在の保守党について、公然と異議を唱えるようになってきた。

彼ら保守党の重鎮たちの発言は、Brexitに関して行われるものが多いのだが、それに限らない。特に今は、12月12日投票の下院選挙(総選挙)の選挙運動中だから、Brexit云々は別として、ストレートに現在の保守党、つまりボリス・ジョンソンの保守党に対して批判的な発言となっている。

今回実例として見るのはそのひとつ。とっくの昔に政治の世界から完全に身を引いたが、公的な発言をやめたわけではないジョン・メイジャー元首相の発言だ。

メイジャーはサッチャー政権の閣僚として「小さな政府」への政策を次々と手がけたのち、党内でいろいろあったあとに外相、続いて財務相という超重要なポストに任用され、サッチャー退陣に伴って行われた保守党の党首選挙で党首となった。彼は若く(40代だった)、出世のスピードはとても速かったし、何より、基本的に上流階級のエリートが支配的である保守党においては異色の人物であり*3、たぶん党内では「期待の新星」「階級にこだわらない、新しい時代のニューリーダー」という見方をされていたのではないかと思うが、世間では「greyでdull」と呼ばれ続けていた。それでも一度は総選挙で過半数を取っているのだが(1992年)。

こんなことを書いてると書き終わらない。

そういうバックグラウンドを有するジョン・メイジャーが、現在、ボリス・ジョンソンの保守党がやろうとしていることについて、保守党のマニフェストがローンチされたときに、TVで次のようにコメントした。

 

*1:「ネオなんとか」と呼ばれる思想は、元々の「なんとか」に比べて変質しきっていることが多いが、ネオ・リベラリズムも同様で、元の「リベラリズム」とは別物である。

*2:日本語にすれば「自由民主党」だが、英国のこの党は、内容的に、日本のアレとは全然別なので、同じ呼称で呼ぶことは避けている。

*3:ジョン・メイジャーの出身は下層階級の中の下層階級(親は旅芸人)で、本人もエリートコースとは全然離れたところを歩んできた人である。大学がオックスブリッジではない、というレベルの話ではなく、大学には行ってすらいない。

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consider + O + to do ~, 完了不定詞, to不定詞の受動態, 接続詞のas, stop ~ from -ing(パリ、ノートルダム大聖堂の火災)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップロードしたものの再掲である。2019年の10大ニュースに入るような火災について、火災発生時の報道記事を見ているが、この火災自体についてその後わかったことについてアップデートはしていないので、その点、お含みおきいただきたいと思う。

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今回の実例は、日本時間で今日未明に「速報」で飛び込んできたフランス、パリのノートルダム大聖堂*1の火災のニュースから。

この大聖堂は中世に起源をもつ建物で、燃えている最中は「800年の歴史が失われる」という悲鳴がTwitter上の英語圏を覆っていた。だがメインの構造物は持ちこたえたと消防当局が発表しているし、鎮火した時点でメディアに出ている写真などで確認できる限り、建物の内部への延焼も食い止められているようだ(消防隊のGJ)。

実際、建物自体は石造だが、屋根が木造で、激しく燃えていたのはその木造の構造物だった。高熱にさらされた大聖堂の真ん中らへんにある尖塔(19世紀の大規模修復の際に復元されたもので、「中世からずっとそこにあるもの」ではない)はかなり早い段階で崩落したが、その下の建物自体は残った。

そのことを前提に、今回の実例の部分を見ていこう。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

*1:日本語では「大聖堂」のほか、「ノートルダム寺院」「ノートルダム聖堂」という表現もあるが、カトリック司教座聖堂なので「大聖堂」が適切だろう。

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現在完了の受動態, force ... to do ~, to不定詞の受動態(アジアのステレオタイプ)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップロードしたものの再掲である。きわめて日常的な文だが、中学・高校で習う英文法の項目が次から次へと出てきており、「あの文法項目はこういうふうに使われるんだな」と納得しやすい実例だと思う。どんな文章が出題されるかわからない試験前の不安をしずめるための、これまでやったことのおさらいくらいの気持ちで読んでみるとよいかもしれない。

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今回の実例は、広告と人種(民族)偏見についてのニュース記事から。

最近、日本のネットでドイツの企業の、悪趣味で、なおかつめちゃくちゃな理屈で正当化された広告が「これはひどい」と物議をかもしていたが、同じころ、グローバルに展開するファストフード・チェーンの「バーガーキング」ニュージーランドSNSアカウントにアップされたCMが、見事なまでにやらかしていたことで、ちょっとした騒ぎになっていた。

 

記事はこちら: 

www.theguardian.com

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やや長い文, 接続詞のas, 挿入, stop ~ from -ing (リビア情勢)【再掲】

このエントリは、今年4月にアップロードしたものの再掲である。英語圏Twitterの文字量(280字まで)におさまる程度の「*やや*長い文」で、一読しただけで構造を取れるようにする練習には非常に適している。

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今回の実例は、Twitterから。元から情勢が安定していたとは言えないリビアで、4月上旬に武装組織を率いる将軍が首都に向かって進軍し、急激に緊迫度が増したときのニュース系のフィード。

日本語でもしっかり報道されているので、何が起きているか把握するには日本語の報道を見てみるのがよいだろう。例えば: 

mainichi.jp

 

ツイート主のリーアム・スタックさんは米ニューヨーク・タイムズの記者で、2011年から12年、いわゆる「アラブの春」の時期にエジプトのカイロ支局で中東特派員として仕事をしていた。当然、リビア情勢も詳しく見ており、仕事の場を米国に移したあとも中東情勢を伝えている記者である。

 

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call for ~ to do ..., it's time to do ~, 分割不定詞, call + O + C(「表現の自由」をデマ拡散の言い訳にさせないために)

今回の実例は、前回のと同じ、ADLのイベントで英コメディ俳優のサシャ・バロン・コーエンが行ったスピーチについての記事から。背景情報などは前回書いたので、そちらをご参照いただきたい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

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仮定法過去・過去完了、報道記事の見出し、letとallow、「~年代」の表し方、even ifなど(もしもあの時代にFacebookがあったなら――コメディ俳優が真面目になるとき)

今回の実例は、基本的に「キャラ」としてしか発言しないあるコメディー俳優が、素でおこなったスピーチについての報道記事から。

サシャ(サーシャ)・バロン・コーエンという名前は、日本でも少しは知られているかもしれない。ロンドン出身のコメディー俳優だが、彼の笑いは「悪趣味」とか「露悪」といった方向性の強烈なもので、見ている人が笑いながら「これを笑っている自分って……?」と考え出すような性質の笑いだ。

彼の「キャラ」には、彼をスターダムに押し上げた「アリ・G」(ブラックカルチャーにかぶれたいい家の子が、西ロンドンのギャングの喋り方や服装を真似て自分もその一員だと思い込んでいる、という設定で、そのキャラのまま、ばかげた偏狭な偏見なども隠そうともせず、各界の名士にインタビューする)、「ブルーノ」(オーストリアのファッション・ジャーナリストでゲイ、という設定で、「ゲイ」のステレオタイプを踏まえたうえでの「お騒がせ」を次々と起こす)、「ボラット」(カザフスタンの記者、という設定で、あちこちで人の神経を逆なでして回る姿が「ドキュメンタリーのモック」、つまり「モッキュメンタリー」の形式で綴られる)といったものがある。詳しくはウィキペディアの彼の項からそれぞれの作品(映画)にリンクがはられているので、そこからご参照されたい。 

アリ・G [DVD]

アリ・G [DVD]

 

どのキャラも「悪趣味」としか言いようがなく、私も最初に「アリ・G」を知ったときは「ついていけない」と思ったし(何本かクリップを見ているうちに笑えるようになったが)、「ボラット」や「ブルーノ」も特に好きではない。

 

サシャ・バロン・コーエンは、どのキャラでも共通して、「信じがたいような偏見を恥ずかしげもなくさらけ出してみせ、それによる相手の反応をみる」という手法を取っている。その偏見の内容には女性差別やLGBTQ差別もあるが、最も強烈なのはユダヤ人差別(反ユダヤ主義)だろう。彼自身、名前を見ればわかると思うが(「コーエン」はユダヤ人の間で非常に一般的な苗字ユダヤ人で、ホロコースト(ショア)を生き延びた人を祖父に持つ。その彼が反ユダヤ主義をそのようにネタにすることは、相手の本音を引き出すための手段であるという。

"Borat essentially works as a tool. By himself being anti-Semitic, he lets people lower their guard and expose their own prejudice", Baron Cohen explains.

https://en.wikipedia.org/wiki/Sacha_Baron_Cohen#Controversies_and_criticism

また、ホロコーストを「語られない何か」にしてしまうことは人々の無関心を呼び、その無関心は将来においてまた同じようなことを引き起こすだろうという危機感を彼は強く抱いている(第二次世界大戦でのホロコーストを可能にしたのは、元々はドイツ国民が人種主義を熱烈に支持したからではなく、「人種主義云々はどうでもいい、とにかく景気をよくしてくれ」みたいな態度だったから、と彼は考えている)。

 

と、そのように中身は至極真面目なのだが、いかんせんコメディー俳優で、常に何かの「キャラ」をかぶって発言している人だ。そういう人が、素で何かを語ることには、本人的には非常に困難を伴う(と、メディアによるプライバシー侵害に関する重要な国会での調査で証言したスティーヴ・クーガンも言っていた)。今回、実例としてみる記事が取り上げているスピーチも、導入部でバロン・コーエンはそう前置きしてから、非常にヘヴィーな話を始めている。

スピーチは11月21日、米ニューヨークのADL (the Anti Defamation League) のイベントで行われた。このスピーチは、現在のデマやヘイトの流布をFacebookTwitter, Google (YouTube) といった巨大プラットフォームが促進しているとはっきり指摘している点で日本語圏でも多少は注目されているが(大手新聞などが取り上げているかどうかは知らない)、それ以上の内容がある。関心がある方は下記にフルの映像とスクリプトがある。25分くらいなので、時間を取って聞いてみてもよいだろう(この人の英語は、多少ロンドン訛りが強く出るところもあるし、ときどき「キャラ」の喋り方をしているところもあるが、基本的に非常に聞き取りやすいので、リスニングの練習にもなる)。

www.youtube.com

スクリプトはこちら: 

https://www.theguardian.com/technology/2019/nov/22/sacha-baron-cohen-facebook-propaganda

 

せっかくのスピーチだし、音声で聞いてみたいが、全部で25分近くあるので全部を聞くのはハードルが高いと思う人もいるかもしれない。その場合、特に注目される部分を切り出して3分半ほどに編集したガーディアンのビデオがあるので、そちらを見ていただければと思う。今回実例として見ている部分は、2分45秒くらいのところから始まっている。

www.youtube.com

 

というわけで、前置きが長くなったが、今回実例として見る記事はこちら(上記スピーチについて紹介する報道記事): 

※記事アップ時、ここに入れてあった参照先記事へのリンクがうまく表示されないようなので、ガーディアンによるTwitterフィードに差し替えました。(27日19時ごろ) 

 

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