Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【ボキャビル】festive, gesture, hirsute (クリスマスに、どう見ても〇〇〇な銀行強盗)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、クリスマス・シーズンの珍ニュースから。

クリスマスが商業イベントのひとつに過ぎないような扱いの日本では、12月24日のクリスマス・イヴがメインの日で、クリスマス・デーの25日まではスーパーマーケットなどで売られているような大量生産のお菓子やパンなどでも緑と赤のクリスマス仕様のパッケージのものが並べられているものの、26日になるとそういった商品は棚から姿を消し、店内のクリスマス・ツリーなどのデコレーションも撤去されて、日本のお正月のための商品や飾りつけ(門松や鏡餅や、羽子板と奴凧のガーランドなど)にとって代わられる。住宅街でも、26日以降もクリスマス・ツリーやサンタの人形が飾られていたら「だらしない」と陰口をたたかれるとか(知人談)。

一方、キリスト教西方教会東方教会ではまた微妙に違う)では、クリスマスの終わりは年をまたいで、宗教的には「公現祭」と呼ぶ日で、だいたい1月6日くらい(詳細はリンク先参照)。ツリーなどはそのころまで飾っておく。最近日本にも「アドベント・カレンダーというイベント」として入ってきたが、クリスマス・シーズンの始まり*1である「アドベント」が11月下旬から12月初旬なので、シーズンはおよそ1か月かそこら、続くことになる。

先日、ディケンズに関連する記事を取り上げたときも少し触れたと思うが、この間、特にクリスマス・デーが近づいた日々は「心を穏やかにし、他人に親切にする」ということが習慣づいており、チャリティの募金が大々的に行われ、英語圏の新聞や雑誌には「人生や家族をめぐるちょっといい話」の記事や随筆が掲載される。それらの記事や随筆は、ディケンズの『クリスマス・キャロル』で偏屈で自分のことしか考えていないスクルージを改心させた3人の幽霊のような役割を果たす(はずだ)。

だから今年も、トランプ弾劾(米)だとか、嘘に満ちたジョンソン政権(英)だとか、原野・森林の火災(豪)などいろいろあるけれども、そういったことを一瞬だけ忘れて、より人間らしいことを考える時間を読者に与える記事が、BBCなどにも出るだろうと思っていた。実際、出てるんだけどね。これ(北アイルランド紛争関連)とか、これ(ベツレヘムで羊を飼って暮らしているベドウィンの人々とクリスチャン)とか。

だが、それらの記事より、ある意味、目立っていた記事があった。この時期、この写真は、インパクトがあまりに強い。

www.bbc.com

この記事を読み終わったとき、私は「その名を用いることなく、いかにこの事件を描写できるかということに果敢に挑んだ秀作記事。最後の1文によってもたらされるカタルシスに読者は圧倒されるであろう」とツイートしたスマホの画面におさまってしまうくらいの短い記事なので、みなさん、どうか読んでいただきたい。

*1:宗教的に言えば、イエス・キリストの誕生を待ち(アドベント)、迎え(クリスマス)、広く知らしめる(公現祭)のがクリスマス・シーズンである。

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to不定詞の形容詞的用法, 言い換え, 言い足し, make + O + 動詞の原形(使役動詞), begin -ing, 挿入など(バンクシーが表現するキリスト降誕とイスラエルの違法な壁)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、正体を明かさず活動しているアーティストが、国際法に違反したコンクリート壁に分断されたキリスト生誕の町に捧げた作品についての記事から。

意外と知られていないかもしれないが、イエス・キリストが生まれたという町、ベツレヘムは、パレスチナにある。ヨルダン川西岸地区だ。そしてヨルダン川西岸地区は、ガザ地区のように完全に包囲・封鎖はされていないにせよ、イスラエルによって、かなりひどいとしか言いようのない形でいろんな方向で制限を受けている(などという表現では全然足りていないのだが)。パレスチナというとイスラム教というイメージがあるかもしれないが、それはイメージだけで、キリスト教徒のパレスチナ人も少なくない。日本のように宣教師がやってきて布教したのではない。元々、イエス・キリストはこの土地の人だったのだから。

ベツレヘムのクリスマス・イヴについては、数年前に現地報告を記録したページを作成した。

matome.naver.jp

 

イギリスのブリストル出身のアーティスト、Banksy(バンクシー)については、近年、東京など日本でもその「作品」をめぐる狂騒曲が繰り広げられ、メディアも大騒ぎするようになってきたので、説明は不要だろう。アーティストとしての芸名からおそらくBanksさんという名字ではないかと言われてはいるが*1、彼は顔も本名も生年月日も明かしていない。男性であることはわかっている。1990年代から都市の壁などにステンシルとスプレー缶で「作品」を描いてきたグラフィティ・アーティストだが、そのウィットに富んだ作品が町の風景の中で抜群の存在感を放ち、2000年を過ぎてどんどん注目されるようになって、ここ10年くらいは完全に「大物アーティスト」のようになって、作品はオークションハウスで取り扱われ、ものすごい額で落札されるなどしてはBBC Newsで報じられている。元々は街角の落書き小僧だったのに、今ではエスタブリッシュメントが「彼は経済的価値を持った存在だ」と認めている。

彼は一貫して「抵抗」、「異議申し立て」をベースにした作品を描き続けている。下記の作品集 "Wall and Piece" は比較的早い時期の作品の集大成と呼べるものだが(日本語版が出たのは遅かったが、原著は2007年)、この書籍タイトルは "Wall and Peace" のもじりである。 

Wall and Piece【日本語版】

Wall and Piece【日本語版】

 

この作品集が出されたころにwallとpeaceと言えば、即座に連想されたのが、イスラエルヨルダン川西岸地区パレスチナ自治区)内に食い込む形で無理やり建設した分離壁である。この「分離壁 separation wall」(国際司法裁判所の用語)は、英語圏のメディアの多くは「分離バリア separation barrier」と呼んでいるが、barrierも結局はwallと同じことだし、本稿での訳語は「分離壁」に統一する。ちなみに当事者のイスラエルはこれを「フェンス」と呼んでいる。そういったことは英語版ウィキペディアで確認できるので、各自ご参照いただきたい。これが「フェンス」と呼べるものかどうかは、どう見ても微妙なところだ。

イスラエルとしては、このwall/barrier/fenceは、「イスラエルの平和 (peace) を守るため」のものだが、その説明を額面通りに受け取ることはとても難しい。まともに地図を見ることができる人なら誰もが、「いや、その説明はおかしい」と言わざるを得ないような場所に作られているのだ。実際、国際司法裁判所は2004年にこの壁について「違法」と判断している(ただしこの判断は法的拘束力はないので、それから15年を経過した今も壁がそのままだ)。

この壁に、Banksyは絵を描いた。2005年、今から14年も前のことだ(→当時の拙ブログ記事)。

Près de Qalandia

 

パレスチナに対する彼の関心は一過性のものではない。2007年には、やはりベツレヘムに、現在でも観光資源となっている一群のミューラル(壁画)を描いていった。2015年2月には、イスラエルによる大規模な攻撃を受けたばかりでめちゃくちゃに破壊されていたガザ地区に入り、がれきと化してしまった家屋の壁にかわいい子猫の絵を描くなどした。「普段はパレスチナに無関心な世界の人々も、猫が描いてあれば見るんでしょ」という主旨でもあり、猫が好きなパレスチナの人々(特に子供たち)への贈り物でもあった。

そして2017年3月には、ベツレヘムの、分離壁からわずか数メートルのところにある建物を(ウォルドーフ・ホテルならぬ)「ウォールド・オフ・ホテル Walled Off Hotel」として改装・開業。このホテルには世界中からBanksy好きが訪れ、それによって壁に分断され経済的に発展する余地すらも奪われているベツレヘムの町に、キリスト教聖地巡礼とはまた違った層の観光客を呼び込み、同時にこの町のさらされている苦境を多くの人に知らしめている。

matome.naver.jp

そして2019年のクリスマス、Banksyはこの壁際のホテルに、新たな作品を設置した。今回は立体作品で、クリスマスの時期の伝統的なモチーフを扱っている。イエス・キリストの降誕(英語ではThe nativity of Jesus Christ)だ。

キリストの降誕の場面は、視覚芸術では、聖母マリアとその夫のヨゼフ、かいば桶に寝かされた幼子イエス、動物たち(ロバとウシ)によって描かれるというお約束がある。これに加えて、神の子の誕生を告げる星(「ベツレヘムの星」。この星に導かれて東方の三賢者がイエスの元にやってきた。クリスマス・ツリーのてっぺんに飾るのもこの星)と天使もよく描かれる。今回のBanksyの作品もこの伝統にのっとっている。ただし、マリアとヨゼフとイエスがいるのは小屋の中ではなくあの分離壁の前で、3人の上にあるのは輝く星ではなく、星のような形をした砲弾痕だ。壁には消えかかった文字で、「愛」「平和」という言葉が、英語とフランス語で書かれている。作品のタイトルは、The Star of Bethlehem(ベツレヘムの星)ならぬ、The Scar of Bethlehem(ベツレヘムの傷痕)。

 

この「新作」のことは、21日から22日に各メディアで一斉に記事になった。今回実例として見るのはガーディアンの記事。記事はこちら: 

www.theguardian.com

*1:英語圏では語尾に-yまたは-ieをつけて愛称化する習慣がある。Charles→Charlie, Steve→Stevie, Giggs→Giggsyなど。

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《目的》を表す表現いろいろ: so as not to do ~, in order not to do[to not do] ~, to do ~(トロント車暴走テロで被告に有罪)

今回の実例は、前回の関連。

なお、前回書いたことについて、英語表現ではなく内容面での疑問があれば、まずは前回示した報道記事をご参照いただきたい。それでも解決しなければ、各自、検索エンジンなどを活用して、知りたいことが書かれている報道記事が見つかるまでがんばってほしい(一番確実なのは裁判所の文書だが、法的文書はいちいち細かく書いてあって長いし、用語も難しい。そういった難しい部分を一般人にもわかるように書き直し、文脈まで書き添えてくれているのが現地の報道記事だ)。当ブログはあくまでも英語表現についてのブログなので、内容の細かいところにまでは立ち入らないということはご理解いただきたい。

さて、今回はその英語表現について。前回の書いたように、判事は被告人に法的責任能力があったと判断して「有罪」と結論したが、それを告げる際に被告人の名前を出すということをしなかった。判事は、「被告人は自分の名前を世間に知らしめたかったのであのような凶行に及んだ」と結論付け、有罪を告げるにあたってその目的を果たしてしまわないようにしたのである。そのことが、英語で端的にどう表現されているかをTwitterから見ていこう。

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John Doeは「名無し」の意味(カナダ、トロント車暴走テロの被告に有罪が言い渡された)

今回の実例は、文法というより語法というかボキャブラリーに関するもの。

2018年4月23日、月曜日のランチタイムが終わったころの時間に、カナダの大都市トロントで、オフィス街の道路をヴァンが暴走して歩道を歩いていた歩行者に突っ込み、10人の尊い命が奪われ、16人が負傷した。これは機械的な原因や人為ミスが原因の「車の暴走」ではなく、「車を武器としてそこを歩いている人々を殺傷するための攻撃」だった。

当時イスラム主義武装勢力の共感者が、そういう方法での攻撃を世界のあちこちで行っていて、まだ死傷者数も確定せず、逮捕された容疑者の身元もわかっていない段階で、Twitterなどでは「またイスラム過激派のテロか」という感想というか感情の言葉みたいなのがいろいろ出ていたのだが、イスラム過激派のやり口とはいろいろ違うところもあり、当時既に増加していた極右過激派のテロではないかということも取り沙汰されていた(トロントは多文化都市で、特に東アジア系の移民が多いことで有名だ)。

しかしその後、本人のFacebookの投稿などから判明した事実は、逮捕時に警察と対峙したときに「撃てよ、俺の頭を撃ちぬけよ」と挑発していた容疑者の男はイスラム過激派でも極右活動家でもなく、女性との関係を作りたいのに作れないことで女性一般と社会を恨み、殺意を抱いていた人物だった。いわゆる「インセル」である。

インセル」であることが無差別に人を殺す動機となりうることを世界に示したのは、2014年5月の米カリフォルニア州での無差別連続殺傷事件だったが(加害者は死亡)、この異様な事件は単発の特異なケースとして終わるのではなく、ひそかに世界各地に共感者を増やしていた。そのあらわれのひとつが2018年4月のトロントでの車暴走攻撃だったわけだ。この攻撃について、詳細は、ウィキペディア参照(日本語版では立項すらされていない。これは立項しておく価値があると思うけれど、立項したらたぶんネット上の日本語圏で攻撃されるから私はやらない*1): 

en.wikipedia.org

さて、今日またこの事件がニュースに出ていたのは、この事件の加害者を被告(被告人)とする裁判で、判事(裁判長)が「有罪」との結論を示したためである。量刑が出るにはまだ少し日数がかかるが、法廷での「被告人は自身の行為の結果を理解することはできなかった(法的責任能力はなかった)」という弁護側の主張は認められないという結論が出たのである。

www.theguardian.com

判決を示すにあたり、判事は特筆に値する行動をとった。被告人の名前を一切出さなかったのである。それは「被告人の人権に配慮したため」とかそういうことでは全然なく、「悪名を高めることを欲している被告人に、その望みをかなえさせないため」という理由のことでだった。

*1:2014年のカリフォルニア州での事件について最初に「NAVERまとめ」を利用して書いたんだけど、そのときにいろいろあったんですよ。記述の根拠を示して説明したら、身の危険を感じるほどにエスカレートすることはなかったけれど。

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報道記事の見出しの現在形は、常に過去のことを表す、とは限らない(タイガー・ウッズ選手の事故)

今回の実例は、報道記事の見出し。

先週のことだが、アメリカのプロゴルファー、タイガー・ウッズ選手が、自分で車を運転中に事故ったというニュースがあった。車は横転して大破し、ご本人は両脚に大けがを負ったが、幸い、生命に別条はなかった。

this.kiji.is

この事故の第一報は私は見ていないのだが、ウッズ選手のけがの程度がはっきりしていない段階での報道はBBC Newsのフィードで見ていた。最初はよくわからなかったが、救急隊・消防隊が、横転した車のフロントガラス*1を割るか何かして、車の中の何か(シートベルトか何か)を切断して救出し(このことが、"be cut free from the vehicle" という英語表現で表されていた)、そのまま病院に搬送して即手術となったということが、英国のBBC Newsのウェブ版でもほぼリアルタイムで報じられていた。そのときの映像

www.bbc.com

そのころに見た記事の見出しが下記だ。(なお、以下キャプチャ画像は、写真はモザイクをかけてマスクする加工を施してある。)

f:id:nofrills:20210303181259j:plain

https://www.bbc.com/news

"Woods has surgery after car crash" と現在形である。

英語の報道記事では、過去のこと、既に起きたことを表すときに現在形を用いるという原則がある。対するに、未来のこと、まだ起きていないが起きる予定であることを表すにはto不定詞を用いる。

例えば、先日NASAの火星探査車が無事に火星に降り立ったが、それについては、「今日これから、着陸する(見込みである)」というときは、"NASA rover Perseverance to land on Mars today" と表し、無事に着陸が成功した後での報道では " NASA rover Perseverance lands safely on Mars"*2 となる。

この原則で考えると、"Woods has surgery after car crash" は手術が完了したときに使う見出しだということになるが、実はそうとは限らない。「手術を受ける」というのは「火星に降り立つ」のように一瞬・短時間で終わることではなく、ある程度の長さを前提とすることで、手術中である場合にもこのように現在形で表されるからだ。

ウッズ選手のこのケースでは、実際、手術中の段階でこういう見出しになっていた。

*1:広く知られていることだが「フロントガラス」は和製英語で日本でしか通じない。英語圏ではwindscreen (UK) またはwindshield (US) と表す。どちらも「風よけ」「風防」の意味だ。

*2:英文出典: https://www.mercurynews.com/2021/02/18/nasa-rover-perseverance-lands-safely-on-mars/ 

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「~かもしれない」のcould, so that ~構文など(イエメンからの映像報告: 学校が破壊されても子供たちは学ぶことをやめない)

今回の実例は、ぜひ見ていただきたい映像報告から。

アラビア半島は、大部分がサウジアラビアだが、一番南側の端に細いベルト状に2つの国が並んでいる。東半分がオマーン、西半分がイエメンだ。

f:id:nofrills:20210302152632j:plain

https://www.cia.gov/the-world-factbook/static/d937425c0adb3b0638bc7a988de89e74/middle_east_pol-1.jpg

今から約10年前、チュニジアでの民衆の行動の末、2011年1月に大統領が退陣・国外逃亡に追い込まれたあとで、中東の独裁者に対する民衆の抗議・民主化要求の行動はエジプト、バーレーンリビア、シリアなど中東・北アフリカ各国に広まっていったのだが、その中で最も早く抗議行動が組織されたのがイエメンだった。だがチュニジアやエジプトのようには事態は進まず、同年末に当時の大統領(長期政権の独裁者)が退陣したものの、その退陣した独裁者が国内の反政府勢力と結んで、後継の大統領の政権を攻撃するというめちゃくちゃな事態となり、そして武装勢力を手先とする国の思惑などもあり、「独裁者への退陣要求と政治の民主化要求」から始まった騒乱は、何年かの間に近隣の大国の代理戦争と化し、イエメンは昔から英国との関係がいろんな意味で深かったのだが、現代社会の超大国である米国も英国も、それら近隣の大国との関係などいわゆる「大人の事情」的なことがあって、そしてイエメンの状況はとてもひどいのだが、シリア内戦ほどにも取り沙汰されなくなってしまった。

どのくらいひどいかというと、このくらいである。80年代であればポップスターが出てきてチャリティ・ソングによる連帯運動を組織していただろう。

"wipe out ~" は、1語ずつ丁寧に見ていくと、「wipeして、~をoutの状態にする」ということ。"wipe"は「ワイプ」というカタカナ語になっているが「ぬぐう、ふく」の意味。「outの状態」とは「その場から消えた状態」のことで、つまり "wipe out ~" は「~を完全にぬぐい去ってしまう」だ。

その前にある "could" は仮定法が元となった言い方で「~するかもしれない」ということを表す。このcouldは、無視できないレベルで危機が深刻であるという場合によく用いられる。「戦争と飢餓が、イエメン人の次の世代を一掃してしまうかもしれない」ということである。詳細な内容はリンク先の記事をご覧いただきたい。

こういうときに何かをできるはずの国連も、手をこまねいているわけではないが、ほとんど何もできない状態で、各国からの支援も減額されていて、グテレス事務総長が次のように「落胆した」という発言をTwitterでしているくらいである。

米拠点の難民等支援団体「インターナショナル・レスキュー」 のトップを務めるデイヴィッド・ミリバンドも、次のように述べているが、イエメンがなぜこうなっているのかということでの重要な要素(サウジアラビアという存在)についての言及はない。

英国政府の支援減額については下記記事など。

www.bbc.com

さて、そういう状況の中、BBCの取材陣がイエメン南部の街、タイズに入っている。ここは対立する両勢力が向かい合う最前線となったため、破壊の程度が著しい。BBCのオーラ・ゲリン記者は戦場からの報道、特に戦場に暮らす民間人・一般市民についての報道をよくしている記者だが、今回はタイズの学校を取材している。

「学校」、というか……。

報告は、4分足らずの映像だ。記者は英語で語り、取材されている児童らはアラビア語で話しているが、全編にわたって英語字幕(アラビア語の部分は英訳の字幕)が表示されるので、聞き取りができなくても内容の把握は問題なくできるはずだ。ぜひ、全部を見てみていただきたい。

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"You can't stop" のcanは、《許可》のcanか? (Daft Punkのダンスナンバー)

今回の実例は、見た瞬間に思わず「?」となった訳文から。

先週のニュースだが、世界的に大売れに売れて完全に定番化していた音楽の作り手、Daft Punkが解散した。Daft Punkはフランスのミュージシャン2人組*1。そういった背景についてはウィキペディアの例えば「フレンチ・ハウス」といった項目を参照していただくのがよいかもしれないが、彼らが売れたのは「フランス人だから」といったこと(一種の珍しさ)ゆえではなく、第一に、楽曲が多くの人の心をとらえるものだったからだ。そもそも、彼らの楽曲の曲名も、曲が「歌モノ」である場合の歌詞も、フランス語でなく英語だったから、クラブなどで彼らの曲を耳にして「いいな」と思ったとしても、それだけでは彼らがフランス人であることを知ることはできなかった。そもそもDaft Punkというユニット名も、人を食ったような英語である。Daftは「バカな、間抜けな」の意味の形容詞、Punkはまあpunkなのだが、語義としては「役立たず」みたいなけなし言葉だ。

当ブログは彼らの音楽については扱わない(音楽的なこと・文化的なこと・時代的なことについては、例えば、沢田太陽さんのこの文章などをご参照いただきたい)。当ブログで扱うのは、その彼らの解散を報じるニュースにあった訳文である。個人的に「?」となってしまい、その後しばし考えた。

*1:ロボットだから「2人」というのはおかしいかもしれないが、ここでは「人」扱いしておく。

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紛らわしいthatの用法, 感覚動詞+O+動詞の原形, 前置詞+動名詞, want to do ..., want ~ -ing, want ~ to do ... (アーセナル新任監督、ミケル・アルテタの抱負)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、スポーツのチームで、新任の監督が抱負を語ったという記事から。

アーセナルFCは、20年以上チームを率いたアーセン・ヴェンゲル監督が退任したあとを受けたウナイ・エメリ監督のもとでぐだぐだになってしまい、サポーターからの「エメリ辞めろ」のコールが日に日に高まる中で、クラブのフロントも11月の終わりについにエメリの解任を決断、後任が決まるまでの臨時の監督に、エメリのアシスタント・コーチで、かつてアーセナルで活躍したプレイヤーでもあるフレドリック・ユングベリが任命され、一方で正式な後任監督の人選が続けられた。その結果、最終的に監督になったのは、同じくかつてアーセナルで活躍したプレイヤーであるミケル・アルテタ

アルテタはバスク出身で、プレイヤーとしてはイングランドでの経験が最も長い。2005年から11年をエヴァトンで過ごし、11年から16年をアーセナルで過ごして現役を引退。その後はマンチェスター・シティでアシスタント・コーチを務めていた。アルテタは実はヴェンゲルが退任したあとの後任に取りざたされていたのだが、そのときは経験のなさからか登用されず、すでにパリ・サンジェルマンなどでたっぷり実績を積んでいたエメリが選ばれていた。そのエメリがチームをまとめることができず、ぐだぐだになってしまったアーセナルを何とかできるのは、アーセナルをよく知るアルテタだと期待されての人選と思われる。

というわけで、とにかく期待がものすごいふくらんでいるのだが、その期待をふくらませているのは第一に(サポーター以前に)スポーツ・ジャーナリズムである。今回の記事はそういうコンテクストの中にある記事だ。こちら: 

www.theguardian.com

「チームを一つに団結させていく」ということを表すためには、"will not tolerate dissenters" という表現は、なかなか、刺激的である。記事本文(アルテタの発言が多く紹介されている)には "dissenter" という単語は入っていないようだから、これはアルテタ本人の言葉ではなく、見出しを書いた人がブチ上げた「派手で人目をひく見出し」にすぎないのだろう。こういう見出しづくりは、スポーツ新聞の類(タブロイド)でなくてもよく行われる。にしても、ちょっと過激すぎると思うが……。

 

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【ボキャビル】apologise for ~, 過去分詞単独での後置修飾, 動名詞の意味上の主語, 未来完了など(落選議員の泣きっ面に蜂)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、12月13日の総選挙で残念ながら議席を失った議員が見舞われた悲劇についての報道記事より。

イギリスの国会議事堂は、観光ガイドブックの表紙にもなっている例の時計塔(ビッグ・ベンの塔)の横に広がっている豪奢な建物で、あの中には上院と下院の議場やロビーはもちろん、国王のためのスペースがあったり、議員や秘書・職員のための図書・資料室や食堂やバーがあったりするのだが、そういった「みんなで使うスペース」の他に、各議員のオフィスもある。

それらオフィスは2人で1部屋を使うこともある。そうして「オフィスメイト」になった議員同士として有名なのがトニー・ブレアゴードン・ブラウンである。この話を書き始めると長くなるので端折るが、ブレアとブラウンの物語をスティーヴン・フリアーズが映像化したThe Dealでは、2人の友情とライバル関係の始まりの場となるこのオフィスから物語が始まる。


The Deal (Stephen Frears)

これはセットで撮影されていると思うが、実際の議員のオフィスも、こんな感じの狭苦しいスペースだそうで、そこに各議員が書籍やら書類やら、パソコンやら何やら、議員としての仕事に必要なものを持ち込んでいる。替えのスーツやネクタイなどを置いている人もいる。

 

今回の記事は、13日の総選挙で議席を失った(元)議員が、そのようにしてオフィスに置いてあった私物が、勝手に処分されてしまっていたというあまりに気の毒な件についての報道記事である。記事はこちら: 

www.theguardian.com

見出しにある "incinerate" という単語は、大学受験生は覚えておかなくてよいが(長文に出てきたら語注を付けるレベルの語)、「~を焼却処分する」という意味。はてなブログでURLを埋め込むとこの見出しで表示されるが、実際にリンクをクリックすると "incinerated" ではなく "destroyed" と書かれていると思う。英検1級を受験する人はここでこの2つの語をほぼ同義の類義語として覚えてしまえばよいボキャビルになるだろう。

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やや長い文、助動詞+have+過去分詞、関係代名詞、など(チャールズ・ディケンズ、生涯最後のクリスマスに届かなかった七面鳥)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、クリスマス前の「小ネタ」系記事から。

チャールズ・ディケンズという名前は日本でもよく知られている。19世紀ヴィクトリア朝の英国を代表する小説家のひとりだ。当時の超売れっ子の流行作家で、ものすごい多作なのだが、中でも『クリスマス・キャロル』『オリヴァー・ツイスト』、『二都物語』、『大いなる遺産』といった作品は20世紀、に複数回映画化されていて、本を読まない人でも話を知っていることが多い。現地(英国)では「教科書に必ず載っている文豪」という存在なので、誰もが一度は何かしら作品を読んだことがある。日本で言えば夏目漱石と言われることもあるが、実際に作品に接する機会の多さでは宮沢賢治みたいな存在じゃないかと思う。いや、実際にはそれ以上で、アートフル・ドジャーやフェイギンやスクルージといった登場人物がその小説の外で認識されるくらい、常套句を用いれば「国民に親しまれている」作家だ。当然、とっくの昔に著作権は失効しているから、作品はネットで自由に読めるようになっている(下記、プロジェクト・グーテンベルクへのリンク参照)。何か読むものを探しているという方は見てみるとよいと思う。19世紀の英語は、勝手にイメージするほど古臭いものではない。

www.gutenberg.org

 

私自身、ディケンズは、中学・高校のときに日本語訳を学校の図書館で借りて読んでいるのと、映画化作品を何作か見ているだけで、実際のディケンズの文を読んだことはほとんどない。大学受験のときに使った問題集で長文の素材文として使われていたり、大学で読んだ論文に一部抜粋が入っていたりしたので断片的に読んだことはあったが、小説としてディケンズの書いたものをそのまま読むという機会はないままだった。先日、ちょっとしたきっかけがあって『クリスマス・キャロル』を読んでみたのだが、とても読みやすくて楽しめる英文だ。必要があれば日本語訳(多数出版されている)と照らし合わせて読んでみてもよいだろう。寛大さと善行、思いやりという、英語圏での現在の「クリスマス・スピリット」を決定づけたのが、この小説だそうだ。

www.gutenberg.org

 

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

クリスマス・キャロル (新潮文庫)

  • 作者:ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/12/02
  • メディア: 文庫
 
クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

クリスマス・キャロル (光文社古典新訳文庫)

  • 作者:ディケンズ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2006/11/09
  • メディア: 文庫
 

 

というわけで今回の記事はこちら。そのディケンズが、生涯最後となった1869年のクリスマスをどう過ごしたかがわかった、という「小ネタ」記事。長らく忘れ去られていた書簡が再発見されたのだそうだ。

www.theguardian.com

 

この記事は、最初のパラグラフで全体の内容のあらましが書かれ、2番目のパラフラグから後で内容が詳細に説明されている。これが報道記事の標準的なスタイルだ。このスタイルの文章は、出だしのパラグラフを読んでよくわからなくても、そこで止まらずに先に進んで読んでいくと内容がつかめる。

分量がある記事ではないので、全文に目を通していただきたい。

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報道記事の見出し、見出しにおけるto不定詞、分詞構文、to不定詞の形容詞的用法、など(ドナルド・トランプ弾劾)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、つい先ほどのニュースから。

今日2019年12月18日から19日(時差により日付が変わる)に世界的に最も大きな関心を集めているのは、米国議会下院でのトランプ大統領弾劾決議だ。決議は「権力の乱用」と「議会の妨害」の2点について行われ、最終的には2点とも可決された。

最初の「権力乱用」での決議の結果が出たのが日本時間で19日の午前10時半前、続いて「議会妨害」の結果がその20分後くらいに出た。

 

これを伝える英BBC Newsとガーディアンのトップページ(アプリ版)は、11時少し前の時点で、下記のようになっていた*1。 ガーディアンの方に出ているリード文(見出しの下の文)を見ると、この画面は2件目の決議(「議会の妨害」)の投票が進行中の間に作成されている。

f:id:nofrills:20191219113607j:plain

 

*1:米国のメディアは個人的にチェックしていないのだが、もっと大きく扱っているのではないかと思う。

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論説文のスタイル, 抽象名詞であるはずのものに複数形のsがつくとき, 付帯状況のwith(パンデミックと人権: 国連事務総長の主張)

今回の実例は、国連のアントニオ・グテーレス(グテレス)事務総長の文章から。

本題に入る前に、そのグテーレス事務総長へのインタビューを行うに際し、毎日新聞が読者から事務総長への質問を受け付けている。受け付けは今日、2月24日いっぱいまでとなっている。下記リンク先に趣旨説明があり、最後のパラグラフに質問投稿受付フォームおよびLINEアカウントへのリンクがあるので、そちらからご投稿のほど。ちなみに私はこういう内容で投稿した。

コロナ禍を人類は乗り越えることができるのか。偽情報や陰謀論自国第一主義の混沌(こんとん)の中で深まる対立、深刻化する気候変動を解決し、貧困を減らして男女平等も含む「SDGs(持続可能な開発目標)」を達成できるのか――。国連の取り組みが、今、改めて問われています。日本は分担金拠出額3位の主要貢献国。みなさんが国連に持つ関心や懸念などを、ぜひお聞かせください。

mainichi.jp

さて、本題。そのグテーレス事務総長が22日に、パンデミックの中の人権というテーマで、ガーディアンのRights and Freedom(権利と自由)のコーナーに寄稿している(→ archived here)。非常に広い範囲を扱った文章で、内容的には決して読みやすくはないが、構成はかっちりしていて、読む側が「藪から棒に、何の話だ?」と思ったところがあっても、そのあとの部分で丁寧な解説と情報の整理がなされ、そのうえに主張があるという、まさに論説文のお手本のような論説文なので、少々分量が多く感じられるかもしれないが(語数カウンターにかけたところ、790語だった)、ぜひ全文を読んでいただきたいと思う。英語学習という点から得るものが多いはずだ。

www.theguardian.com

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分詞構文、省略語で使うピリオドの有無(英米差)、定冠詞のtheの省略、be known for ~など(パキスタンの元大統領に反逆罪で死刑判決)【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は国際報道の記事から。

2001年から08年の間に意識があった大人なら「むしゃらふだいとうりょう」というフレーズは「ムシャラフ大統領」と即座に認識されるだろう。米同時多発テロからイラク戦争へと突き進んだ時代、国際ニュースで何度も出てきた名前だ。多くの人は、彼がパキスタンの大統領だったということも知っているだろう。

だがそのムシャラフ大統領がどういう人だったか、またいつ「大統領」になり、いつ退陣したのか、その後はどうしていたのかは知らない人がかなり多いんじゃないかと思う。ニュースに出なくなり、言及されることもなくなったからだ。

また、2008年までに国際ニュースをそれなりに熱心に見るという経験がなかった人は、まったく名前を知りもしないかもしれない。2005年ごろに小学生だった男性は「ムシャラフ」という名前が何か強そうだったし、テレビで見た顔が印象的で(「人の好さそうな丸顔なのに眼光だけやたらと鋭い」と)覚えてしまったそうだが。

そういう人でも、今回の記事の中ほどに "At a glance" として箇条書きの簡潔な年表みたいなのが挿入されているので、まずはそこを見ればどういう人なのかがわかるだろう。

記事はこちら: 

www.bbc.com

見出しだけでも十分に衝撃的だと思うが、この報道内容については日本語報道を参照しておくのがよいだろう。

www.jiji.com

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日本語の「仕方がない」を英語でどう表現するか, およびアメリカ英語のAAVEについて

今回の実例は、Twitterから。

現実世界に複数言語話者がいるのだから、Twitterにも複数言語話者がいて、その中には日本語を外国語として習得した人々もいる。そして、英語を母語とする日本語話者の間でときどき、日本で日本語のフレーズの「対訳」としてあらかじめ与えられている英語のフレーズについて、指摘がなされることがある。

今回見るのはそういう例だ――とはいえ、ツイート主がこの直後に「これは冗談だからね」と言っているので、あまり真に受けすぎてもいけないのだが。

まずは文面を虚心坦懐に読んでみよう。

"be played out" はbe outdatedとだいたい同じ意味。この場合のplay out ~は、「outの状態になるまで~をplayする」という意味で、「~をやりつくす、使い果たす」みたいな意味になるわけだが、これが受動態になったものが "be played out" で、「限度まで使い果たされる」、すなわち「もう使えない」から「古びてしまっている」ということだ。

これはよく「ネイティヴらしい」と形容される表現のひとつで、うちら外国語としての英語を使う者にとっては素直にoutdatedという専用の単語を使ってもらったほうがわかりやすい。なお、世間でウケる「英語は中学3年分で大丈夫」みたいな方針の英語学習本は、このplay out ~/be played outみたいなものも「中学レベル」と扱っているので、要注意である。

というわけで、上記@BadForUsさんのツイートの第一文は、「日本語の『仕方がない』を、"it can't be helped" と英語にするのは、古臭い。今はそんな英語を使う人はいない」という意味。

この「仕方がない」= "it can't be helped" の古式ゆかしい対訳ペアは、ずっと昔からあるもので、私もかつてそう教わったことがあるのだが(例えば研究社の新和英中辞典が引けるWeblio辞書のサイトで検索すると、この対訳ペアがあることが確認できる。そして和英辞典に載っていれば多くの「日本語の英訳」の文章に出てくることになり、それを通じて英語圏の日本語学習者が目にすることになる*1)、学校の試験のようなものは別として、会話の際に自分で使ったことはないと思う。その時々の文脈に応じて "No choice." とか "There's nothing we[you] can do about it." とか "That's life." いった表現が自然に出てくるからだ。"It can't be helped." なんて19世紀の上流階級のような言葉遣いは、自然にはできない。

@BadForUsさんのツイートは、ここまでは「冗談」ではない。「冗談」なのは第二文だ。

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as ~ as ..., 《条件》を表す直説法のif節, those who ~, spend ~ -ing, the + 比較級 ~, the + 比較級 ... 【再掲】

このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例も、前回のと同じ、労働党の大惨敗に終わった総選挙の結果を受けて労働党の国会議員であるジェス・フィリップスが書いた論説記事*1から。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

今回見るのは、前回見た部分のすぐ次のところから。

*1:ガーディアンは労働党の新聞だし、こういうのは「論説」ではなく「総括」と言うのかもしれないが、個人的にそういう用語に疎くて使いどころが分かっていないので、その点はご容赦いただければと思う。

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