Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

地名の表し方、分詞の後置修飾、to不定詞の形容詞的用法、同格、one of the + 複数形、関係代名詞の非制限用法【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。事件・事故があった場合の報道記事で、事実を淡々と伝えるというスタイルの文章だ。このタイプの文章にはなるべく多く接して読みなれておきたい。

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今回の実例は、ブラジルで原子力発電所に向かうウラン燃料を積んだ車が、途中で銃撃を受けたという、ちょっとびっくりしてしまうようなニュースから。

どういうことがあったのかは、各自記事全文をご参照いただきたいが、手短に言うと、ウラン燃料を乗せた車が原発に向かうルートが、ドラッグ・ギャングが支配する地域を通るため、途中でギャングの銃撃に巻き込まれた(ドンパチやっていたギャングが、車両警備の警官の多さに慌てて、警官に向けて撃った)ということだ。運ばれているウラン自体は自然界に存在する形のままなので(未濃縮)、仮に外部に出ても危険はなかっただろうと当局は説明している。

www.bbc.com

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等位接続詞but, 【ボキャビル】give ~ credit, think+O+C, manage to do ~, など(Brexit合意成立で真顔のジョーク)

今回の実例はTwitterから。

日本時間で17日夜、「延々と交渉が行われたあとで、英国のEU離脱に関する英国とEUの間の合意が成立した」というニュースが流れてきた。2016年のレファレンダム(国民投票)以降のニュースを追ってきた人は、そこで、「おお、やりましたね!」的に反応することはない。英国政府とEUの間で合意が成立するまでも大変なことは大変だが(主に英国の政権を担っている保守党の党内事情と、英国会下院で保守党が数を維持するために頼りにしている北アイルランドDUPが原因で)、もっと大変なのはその先、つまり英国会で採決にかける段階だということは、ニュースを見てきた人ならだれもが知っている。

しかも、今回ボリス・ジョンソン首相が最終的にはDUPを無視する形で取り付けた合意は、テリーザ・メイ前首相が欧州大陸から英国に持ち帰った合意案 (Withdrawal Agreement: WA) が3度にわたって議会で否決されるうえで大きな問題となっていたいわゆる「バックストップ (backstop)」(アイルランド島にあるボーダーに関する措置の一部で、万が一の場合の保険のようなもの……EU離脱強硬派はこの保険のようなものが抜け穴として利用されると主張し、受け入れることを拒否していた)を取り除くことには成功したが、強硬派(の少なくとも一部)にとっては「バックストップ」よりもっと悪い条件を設定している。

これが笑わずにいられようか。いや、できない。(反語)

私などは、あまりニュースを見ていると頭がおかしくなってしまうほどすべてが捻転しまくっていて、実際のところ、お布団かぶって寝てしまいたい。寒いし。いやほんと、東京は30度か18度かみたいな天候で参りますよね。

と、そんなこんなで、ネットの向こうから何かが漂ってきているかのようで、ニュースを見ているだけのこちらも妙な具合になってきて、紅茶とルイボスティーを飲みながら、何を見てもゲタゲタと笑えてしまってしかたがない。あちらの「とんでもないニュースによるハイ」な気分がうつってしまったようだ。

というわけで、今日の実例には何か解説記事を選ぼうと思っていたのだが、記事ががんがん書き換わってしまってあとあとまで参照できるテクストとして定まらないので、報道機関の記事は諦めた。代わりに、Twitter上を飛び交っていた英国伝統の「真顔で言うジョーク」から。

 

デイヴさんのこのツイートは、《等位接続詞》のbutで3つの項目(文)がつながれていて、3つ目の項目が「オチ」になっているジョークである。

《等位接続詞》で3つの項目を並べる場合、接続詞は2番目と3番目の間に置かれる。1番目と2番目の間にはコンマを置く。接続詞の前のコンマは、このように文をつなげる場合は置くのが普通だが、単語を並べるときは置かないこともある。

  I like dogs, so does my wife, but our son is allergic to dogs. 

  (私は犬が好きだし、妻もそうなのですが、息子が犬アレルギーで)

 

最初の文: 

We should give Boris Johnson some credit

このcredit、およびgive ~ credit (= give credit to ~) という熟語については少し前に取り上げたので、そちらを参照されたい。

hoarding-examples.hatenablog.jp

 

2番目の文: 

no one thought it possible

主語を "no one" にした全否定の文。「だれも~ない」という意味になる。

《think + O + C》は「OをCだと思う〔考える〕」の意味で、Cにはこの実例のように形容詞が来ることが多いので、be動詞が抜けているようにも見えるかもしれない。

  I thought the movie interesting. 

  = I thought the movie was interesting. 

  (私はその映画は面白いと思った)

この文は、文意をまとめると、「だれもそれを可能だとは思わなかった」ということになる。

 

3番目の文(ジョークの「オチ」): 

but he has managed to negotiate a #BrexitDeal even worse than Theresa May's

ハッシュタグの "#BrexitDeal" はちょっと見づらいので普通に書き直すと: 

but he has managed to negotiate a Brexit deal even worse than Theresa May's

《manage to do ~》は「なんとかして~する」とか「~をやりおおせる」といった意味合い。実際に用いられる場合は辞書で見る以上に表情豊かなフレーズなので、問題集などで見かけたら注意を払ってみてほしい。英語が楽しくなると思う。

 

"even worse" のevenは副詞で、ここでは比較級を強めて「いっそう~、なお~」といった意味を表す。うまく訳出できないことも多いevenなので、英文和訳に出てきたら何が何でも日本語にすることを考えるより、意味合いを込めた日本語になるよう訳文単位で考える方がよい(時間のかけ方という点でも、良い結果になるという点でも)。

また、ここでは "a Brexit deal" と "even worse" の間に《関係代名詞+be動詞》が省略されていると考えると、文意が取りやすい。つまり: 

  a Brexit deal that is even worse than Theresa May's

このような《関係代名詞+be動詞の省略》は、下記のような分詞の後置修飾の形を思い浮かべると納得しやすいだろう。

  I know the boy who is riding a bike over there. 

  = I know the boy riding a bike over there. 

  (あそこで自転車に乗っている男の子を私は知っています)

 

この文の最後、"Theresa May's"  の後ろには、Brexit dealが省略されている。

 

というわけで、デイヴさんのツイート全体の意味は、「ジョンソンはほめたたえて然るべきだろう。だれもそんなことが可能だとは考えていなかったが、彼は見事にやり遂げたのだ、テリーザ・メイの取り付けた合意よりもさらにひどい合意を交渉するという偉業を」といった感じになる。

f:id:nofrills:20191018112913p:plain

Brexit賛成であれ反対であれ、「何だよこの合意内容は、ひどいな」という感想が人々の間でわっと出たときに「いや、これってすごくないか」と言えば「え?」と注目される。そうやって注目させておいて、「だれがこのようなことを成し遂げられようか、こんなひどいことを」というオチをつける、という形の、いわば形としてはベタベタのジョークなのだが、Twitterの短い文できれいにまとまっていて、秀逸だと思う。

イギリス人はこういうことを真顔で言うので、いろいろとわかりづらいのだが。

 

 

イギリス紳士のユーモア (講談社学術文庫)

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イギリス人のユーモア―日本人には思いつかない

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イギリス人に学べ! 英語のジョーク

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ジョークで楽しむ英文法再入門

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stay in touch with ~, 等位接続詞and, 名詞節のif節, rely upon ~の受け身の形, など(シリア北部からの米軍の撤退)

今回の実例は、非常にハードな内容の記事から。

今月上旬、日本でのメインのニュースがスポーツ(ラグビー)と台風19号の進路に集中していたころ、シリアの一番北、トルコとの国境ではとんでもない事態が展開していた。

この経緯について知らないという方には、ジャーナリストの黒井文太郎さんによる下記記事をおすすめしたい。

(6日に)トランプ大統領が撤退を発表した後、米軍はまず国境の2拠点から特殊部隊50人を撤退。その動きを受けて、トルコ軍は同9日にさっそく本格的な侵攻作戦に着手した。シリア北東部を支配するクルド人主体の武装勢力シリア民主軍(SDF)」は反撃したものの、両者の戦力には大きな差があり、トルコ軍が戦況を優勢に進めている。

米軍に全面撤退命令が下された13日、SDFは従来緊張関係にあったシリアのアサド政権軍を受け入れ、協力することで合意したと発表した。アサド政権軍はすかさずシリア北東部への移動を開始、翌14日には要衝の町マンビジに入った。

SDFとしては、それまで同盟関係にあった米軍に「見捨てられた」以上、トルコ軍の侵攻を食い止めるには他の勢力に頼るしかない。言ってみれば、米軍撤退がアサド政権軍の進出という結果を生んだわけだ。

https://www.businessinsider.jp/post-200679

www.businessinsider.jp

 

より簡単にまとめると、シリア北部のクルド人支配地域にはこれまで米軍がいわばお目付け役的な立場で駐留していたが(武器も米国によって供給されている)、トランプが米軍を撤退させると言い出してそれを実行してしまったので、クルド人だけが残された。そのクルド人を標的に、トルコが攻撃を開始した。困ったクルド人は、これまでもいわば戦術としてときどき手を組んできた相手であるアサド政権と結んだ。これに伴い、アサド政権の後ろ盾となっているロシアの武装勢力(民間軍事企業)がクルド人支配地域に入った。つまり、アメリカがいなくなってロシアが入ったのだ。

と一気に書いてしまったが、「で、そのクルド人って?」という解説は本稿の一番下に置いておく(長くなるので)。

 

今回参照する記事は、その米軍の撤退について、昨年12月にトランプ政権の「対イスイス団(国際)連合特使」のポストを辞したブレット・マクガーク氏が語ったことを、米オンライン・メディアのThe Daily Beastがまとめた記事である。

www.thedailybeast.com

The Daily Beastは2008年にスタートしたオンライン・ニュースサイト。ただでさえ人の入れ替わりが激しい米メディア界にあっても非常に動きの激しいメディアで、一時はビュー数さえ稼げたらいいんだという方針だったようだが、あるとき気づいたら、かつてWIREDの安全保障・軍事コーナー "Danger Room" をやっていたノア・シャクトマンが編集長になっててびっくりした。彼が編集長なら軍事系の記事は読みごたえのあるものが多い。今回の記事は、WIRED時代にシャクトマンと一緒にやってて、その後ガーディアンでエドワード・スノーデンが暴露した監視システムPRISMについての調査報道を行ったスペンサ・アッカーマンと、ベテラン記者のクリストファー・ディッキーが書いている。

内容は難しいかもしれないし、語彙は高度だが、英語は読みやすい。

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【ボキャビル】the be all and end all, 冠詞を手掛かりにわけのわからない文を読む, 強意の助動詞 (異国で嵐の中に家族を残してキャンプ地に移動したイングランド代表)

今回の実例も引き続きラグビーW杯関連の記事から。

前回のエントリでも少し書いたが、イングランドは12日(土)に予定されていたプールステージ(プールC)最終戦(対フランス、横浜)が台風19号のために中止となった。次の試合は19日(土)、大分で行われるオーストラリアの試合である(ここでのソースはウィキペディア)。

12日のイングランドとフランスの試合が中止されることは10日(木)には決定されており、イングランド代表はその日のうちに九州に移動、以降はトーナメントに向けて宮崎のキャンプ地で練習の日々だそうだが、実は12日の横浜での試合のために、あるいは大会期間中ずっと、家族・親族が来日していた選手たちがいたという。家族らは宮崎には同行せず、つまり選手たちはどえらい規模の台風がやってくるという関東地方に大切な人たちを置いていくことになった。

今回の記事は、そういう事情で、父親(元トンガ代表のラグビープレイヤー)や親戚を、何がどうなるかわからない状況に残して、チームメイトたちと一緒に宮崎に行ったビリー・ヴニポラ選手*1の話を記事にしたものである。

www.theguardian.com

*1:名前のカタカナ表記は https://teamrugby.jp/worldcup/japan2019/feature/players-22 を参照した。

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仮定法過去完了, ifの省略と倒置, it's ~ for ... to do --とthere is/are ~の構文(ラグビーW杯、スコットランドの言い分)

まず、台風19号で被害をこうむられた方々にお見舞い申し上げます。あまりに巨大な台風で、滞在時間も長く、翌日の台風一過の青空のもとでもまだまだ被害が次々と伝えられていて、自分の近隣には被害はなかったのですが、自然の猛威に震撼としています。「自然の猛威」というより、「地球温暖化の猛威」と言うべきかもしれませんが。

さて、というところで今日の実例。

ラグビーのワールドカップは、台風19号(Typhoon Hagibis)の直撃のため、12日(土)に横浜で行われる予定だったイングランド対フランスの試合と、豊田で予定されていたニュージーランド対イタリアの試合の中止を11日には決定、台風が去った後の13日(日)の試合も、実施するかどうかは台風被害の様子を見てから判断すると発表していました。

これにすさまじい反発を示したのがスコットランド(のラグビー協会。スコットランド自体が反発したわけではありません)。13日、グループステージ……って言わないんだっけ、ラグビーは……プールステージ最終戦となる日本との試合が流れたら、確実にトーナメント進出ができなくなるので、試合ができなくなることはスコットランドにとっては非常に深刻な問題。一方で、12日に試合中止となったイタリアは勝てばまだ上に行けたかもしれず不満があったそうですがイングランド、フランス、ニュージーランドは既にトーナメント進出が決まっていて、スコットランドのような反発は出ませんでした。そもそも理由が台風だし。

そして「英国のメディア」は、実質、「イングランドのメディア」で、普段からスコットランドの扱いは、まあ、何というか、その……。テニスのアンディ・マレーも常に勝てる系のプレイヤーになるまでは「試合に勝てばBritishとしてほめられ、負ければScottishとして相手にもされない」という目にあわされ、「あれはいやだった」とインタビューで語っていたことがあるのですが*1イングランドのメディアは、元から、スコットランド人の不品行が大好物です。「あいつらにはことの道理がわからない」という謎の上から目線でスコットランドを見下すのは、いわば「イングランドしぐさ」です。そして、イングランドは非常に声が大きい。

だからスコットランドのあれは非常に目立った。

私はラグビーは知らないし、今回のワールドカップも特に見てないのですが(テレビがないし……ただしアイルランドはいろいろあるのでTwitterでサポーターのフォローくらいまではしてます)、日々チェックしている英国のメディアでは、スコットランドの反発がスポーツ面のトップニュースの扱いになってはいました(一般ニュースとは別枠で)。

今回、実例として見るのは、そういうときに出ていた英ガーディアンの記事。ただし、見出しの段階から、「スコットランドの言うことにも一理くらいある」というトーンです。そしてそれ自体は、私も「そうですよねー」と思わずにはいられません。

www.theguardian.com

台風シーズンに行う大会で、予定の試合会場が使えなくなった場合の代替の会場が、わずか14マイル(23キロくらい)しか離れていないというのは、確かに、意味わかんないと思います。同じ台風でほぼ同時にやられることはわかりきってる。今回の台風19号はあまりに巨大すぎて基準にならないのですが、横浜が台風にやられて使えなくなった場合の代替会場とするなら、例えば大阪とか新潟くらい離れてないと意味をなさない。

「訴えてやる」云々のスコットランドラグビー協会の反発自体は「お前、それ、言う?」っていう感じの内容だとは思いますが、「14マイルしか離れてないんじゃ代替にならないだろ。大会主催者はなぜそんな案を通せるんだ」というのは、まあ、ごもっともだと思います。

ともあれ、本題へ。

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《同格》のthatの省略、let alone ~ 【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。日本で定番の辞書や文法書では取り上げられていない「《同格》のthatの省略」の実例をたまたま見たので書いたエントリだが、文中にちゃんとした論文へのリンクがあるので、この項目に関心がある方はそちらをご参照いただきたい。

なお、もう1つのトピックのlet alone ~は日本では根拠もなく「そんな堅苦しい表現はネイティブは使わない」的な扱いを受けることがよくあるのだが、全然そんなことはなくて、BBCなどごく一般的な報道記事を毎日読んでいると1週間に1度くらいは遭遇する程度にありふれた表現である(日本語でも「いわずもがな」のようにその形でしか使わない古語や格式張った表現が日常ぽんぽん出てくることを思えば、外国語でもそういうことがあるのは簡単に想像できると思うのだが)。

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今回の実例は、いわゆる「イスラム国(自称)」(以下、「イスイス団」と表記する*1)がシリア国内に有していた支配域を完全に失ったという宣言のあとに続いたニュースから。

シリア内戦は、日本語圏ではかなり雑な説明が横行しているので(その背後には政治的な意図があったりするのだが)、「イスイス団に対して戦っているのは誰か」という基本的な認識もズレてるかもしれないが、ここ数か月の報道*2に出てきていたシリア東部のバグーズ (Baghuz) の方で戦闘をおこなってきたのは、アサド政権(ロシア、イランの支援を受けている)ではなく、元々はシリアでは北東部を拠点としてきたクルド人武装勢力、Syrian Democratic Forces (SDF) である。このSDFにはアメリカの支援がある。

この点、ここで詳細な説明をしているヒマはないが、シリアについては「なんか内戦やってるよねー」程度の認識しかしていない人も、この記事が「クルド人の勢力」の発言をそのまま報じている理由について、上記のような基本的事実をざっくりと把握しておいていただければと思う。

記事はこちら: 

www.bbc.com

*1:ちなみにBBCでは議論と試行錯誤の末、Islamic State groupという表記を採用している。

*2:臨月で難民キャンプに脱出し、出産したが、子供はほんの数日で死んでしまった英国人(正確には、出産前に市民権を剥奪されたので「元英国人」)10代女子の件などが、日本語でもかなり大きく報道されていた。

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分詞構文、挿入、付帯状況のwithと過去分詞【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。ここでのトピックはテロ攻撃だが、記事のスタイルは事件・事故が発生したことを報じる記事としてオーソドックスなもので、こういった記事を読みなれておくことは、英語で情報収集したい人にとっては必須といえる。特に分詞構文は、実務でこういった記事を読む場合は、いちいち「ああ、これは分詞構文だな」と思っているヒマなどないかもしれないが、分詞構文だということを理解しないと文意が正確にとれない。しっかりと練習しておきたい。

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今回の実例は、ソマリアの首都モガディシュモガディシオ)で発生した、武装勢力アルシャバブ(アッシャバブ)による自爆攻撃についての報道記事から。

 

ソマリアは、アフリカ大陸の東の端でアラビア半島と向かい合う、「アフリカの角(つの)」と呼ばれる地域の中でも一番東にあり、紅海の手前のインド洋に向かってぴょこんと飛び出した部分にある国。西欧列強によるアフリカ分割の時代にイギリスとイタリアの支配下に置かれたが、1960年にいずれも独立して「ソマリア共和国」となった。その後はクーデターや隣国エチオピアとの戦争を経て1988年に内戦が勃発。1990年代には国連PKO多国籍軍が派遣されたが情勢は悪化。2000年代に混乱の中で活動を活発化させてきたのがイスラム主義の勢力、「アルシャバブ」である――というのが非常に簡略化した説明になるが、詳細は既にリンクしてあるウィキペディアなどをご参照いただきたい(日本語でもかなり詳しく書かれている)。アルシャバブアルカイダとつながりを持つ組織で、2013年9月のケニアの首都ナイロビにおけるショッピングモール襲撃、2015年4月のケニア北東部の大学襲撃、2019年1月のナイロビでの商業施設襲撃など、国境を越えてのテロ活動も活発に行っている。

 

この組織は、イスラム教の法の厳格な解釈に基づいた支配をソマリアに打ち立てようとしているのだが*1ソマリア国内では支配域を広げたり縮小させたりし、近年では大都市の拠点からは放逐されているはずなのだが、「常にそこにいる」という状態をずっと維持している。そして2019年3月23日にソマリアの首都で政府機関の建物を襲撃したというのが、今回見るニュースである。

uk.reuters.com

*1:その点は、いわゆる「イスラム国」などと同様である。

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ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れる表現: stop -ing (動名詞), 否定疑問文, 省略, 同等比較【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。「ネタ」を「ネタ」とわからない人にはインターネットを使うのは難しい、という方向性のトピックだが、何かについて「ふざけるな」と言いたい場合に使える英語表現のバリエーションを知るにはけっこうよいエントリなのではないかと思う。

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今回の実例は、やや変則的に、ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れるときの表現を、Twitterから集めてみよう。

 

「ツッコミどころ満載のニュース」というのはこれだ。話題としてはせいぜい「スポーツ新聞の記事」で、「超能力者(自称)が念力でのBrexit阻止を宣言!」といったところか。

www.theguardian.com

 

なお、この記事、日本語圏では「高級紙ガーディアンがこんな記事を……」として広まっている側面もあるようだが、掲載はガーディアンでも記事元はPress Association (PA) という通信社である(ガーディアンの記者が書いた記事ではない)。日本でいうと、大手の新聞が共同通信時事通信の記事を掲載するのと同じ。また、ゲラーが直接この「公開書簡」を送ったのは、ジューイッシュ・テレグラフというロンドン拠点の小さなメディアである。

 

ところでこのおじさん、誰、という人も多いだろう。1970年代の世界的超能力ブームのころ、最も有名な「超能力者(自称)」がこの人、ユリ・ゲラーだった。十八番は「スプーン曲げ」で、念力で(つまり物理的な力を使わずに)金属のスプーンを曲げてみせるという芸だったが、これは本物の奇術師から見れば、「へたくそな手品に『超能力』というレッテルを貼って売り込みに成功しただけのもの」というような代物だったという。私はそういうのにほとんど興味がなかったので、名前とスプーン曲げくらいしか知らないのだが、はまる人はとことんはまっていた。(ここらへんの「超能力ブーム」が入り口となって、のちに精神世界やらオカルトやらにはまっていき、オウム真理教を含む90年代のカルトに引き寄せられていった人も少なくない。)

 

ユリ・ゲラーは現在のイスラエルという国が成立する前に英国の委任統治領だったパレスチナで生まれているが、英国に長く暮らしてきた(2015年にイスラエルに戻っているそうだが)。その家が、テリーザ・メイ首相の選挙区にあり、実際に交流もあったというつながりがあって、上記記事で伝えられているような「公開書簡」に至ったそうだ。

 

なお、彼自身は「超能力者」を自称しているが、客観的には「イリュージョニスト(奇術師)」と位置付けられていることは、上記ガーディアン掲載PA記事でも確認できる。

 

記事自体は読む価値はない。英文法の実例としては、《意思未来のwill》の用例としてわかりやすいとは思うが、その項目を見るためにこの文を読むほどの価値もない。

 

おもしろいのは、ユリ・ゲラーのこの行動に対する人々の反応のほうだから、Twitterを見てみよう。ガーディアンのアカウントでこの記事をフィードするツイートについているリプライから:

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【ボキャビル】earlier this year, ~ times the size (台風19号の接近)

今回の実例はTwitterより。

今週末、東海・関東を直撃すると見られている台風19号は、国際的にはHagibis(ハギビス)という名称で知られているが*1、これが日本だけでなく英語圏でも注目されている。それはなぜかというと、「地球史上最大のなんちゃら」だからではなく、日本ではラグビーのワールドカップやF1(鈴鹿)といった国際的スポーツ大会が行われているからだ。下記は英国の気象庁のツイートで:

これに次のようなリプライがついている。

 

f:id:nofrills:20191011054811p:plainラグビーのワールドカップについて言うと、この台風のおかげで、週末に予定されているグループステージ(って言わないんだっけ、ラグビーの場合)の最後の試合が実施されるかどうかが危ぶまれていて*2、ことと次第によっては決勝トーナメントの様相が変わってくるし、それに応援・観戦のため世界各国から日本を訪れている人々にとってはかなり深刻な話にもなりうる。さらに、グループステージ最終戦を見るために来日する人たちにとっては、日本に到着できるのかどうか、羽田なり関空なりに到着したあとで目的地まで移動できるのかどうかといったことがあるから、自然、関心を集める。というわけで、ラグビーW杯にイングランドウェールズスコットランドアイルランドの4つの代表を出している英国(北アイルランドラグビーでは「アイルランド」として島全体で1つの代表チームを作る)のメディアでは、水曜日以降、この台風についてかなり大きな取り上げ方をしている。木曜日にはついに英国でTwitterのTrendsに "typhoon" というワードが入ったほどだ*3

 

今回の実例は、このように台風19号(ハギビス)を話題としている 英語圏での投稿のひとつ。

ツイート主のポール・グレイソンさんは、元イングランド代表のプレイヤーで、現在は指導者。ワールドカップに際して来日し、BBCで解説などをしている。

そのグレイソンさんが、現在接近中の台風19号(ハギビス)と、約1か月前に千葉県南部にすさまじい爪痕を残していった台風15号(ファクサイ)を比較し、身の安全の確保が第一であると注意を呼び掛けているのがこのツイートだ。

*1:台風の名称については https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/typhoon/1-5.html を参照。

*2:この台風に関心が集まったあとで、12日(土)のイングランド対フランス(横浜)と、ニュージーランド対イタリア(豊田)の試合中止が正式に決定した。

*3:typhoonは「台風」由来で、アジア太平洋地域でしか用いられない言葉なので、欧州で話題になるとしたら甚大な被害を残したあとのことで、今回のように被害がまだ出ていないときにTrendsに入るのはとても珍しい。

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仮定法過去(もしもBrexitが猫ならば)

今回の実例はTwitterから。

Larry the Cat(「猫のラリー」*1)をご存知だろうか。

ロンドンは大都市の例にもれずネズミの問題が深刻である。ロンドン中心部にある首相官邸(ダウニング・ストリート10番地)も例外ではない。首相官邸におけるその問題を解決すべく任命されるのが、「首相官邸ねずみ捕獲長 (the Chief Mouser to the Cabinet Office)」である。これは公職だが、人間はこの任に当たることはできない。猫……いや、猫様専用ポストである。

「ねずみ捕獲長」が最初に首相官邸で任官されたのは1924年、ラムゼー・マクドナルドが首相のときだった。以降、ずっと連続しているわけではないが、合計で12匹の猫様がこのポストに就き、勇猛果敢にねずみと戦ってきた。現在のラリーさんは2011年、デイヴィッド・キャメロン首相のときに連れてこられた、近所の保護動物施設 (Battersea Dogs and Cats Homeという有名な施設) の保護猫*2である。

Larry, the Chief Mouser: And Other Official Cats

Larry, the Chief Mouser: And Other Official Cats

 

ラリーさんは仕事はあまりしない。彼が首相官邸の前で寝そべっている横を、ねずみが走り抜けていく光景などが、ニュースの「ちょっと一息」コーナーに出ていたりしたが、元々、狩りをするよりは寝ていたいというタイプの平和的な猫さんのようで、一時は職務から解任され、より好戦的なフレイヤという女子に取って代わられていたこともある。仕事をしないわりには「税金泥棒」とののしられることもなく、人気者の座を確保しきっているようだ。首相官邸前の報道陣にも人気で、よい被写体になっている。

ラリーさんはTwitterでも人気者だ。@Number10catのアカウントは2011年2月から運営されており、現時点で33万人以上にフォローされている。といってもこのアカウントは非公式 (unofficial) で、風刺・時評を目的としたアカウントである。猫視点を借りて首相官邸の中のことを(想像して)語っているあたりは、21世紀英国版『吾輩は猫である』的な感触もあるのだが、そんなことはさておき、このアカウントの発言は単におもしろい。中の人のユーモアのセンスとバランス感覚が絶妙だ。

f:id:nofrills:20191010212725p:plain

 

あまり政治的でない例を挙げておくと、先日、デイヴィッド・キャメロンが回想録を出したのだが、その中でラリーさんのことをこう書いていて: 

f:id:nofrills:20191010022650j:plain

*via https://twitter.com/janemerrick23/status/1174602694838935552

(「ねずみの問題が度を越していたので、バタシーの保護施設にリズ・サッグを遣った。リズは野良猫として保護されていたぽっちゃりした、ラリーという名のトラ猫を連れて帰ってきた。マスコミは『キャメロン家の猫』と言いたがったがそうではなく、『首相官邸ねずみ捕獲長』であった。ラリーはねずみ捕りはあまりしなかったが、見た目はよかった。人なつっこいというわけではなかったが。執務室に入れたラリーが丸くなってるのもよいものだった。たとえ椅子という椅子がすべて白い毛まみれになったとしても」)

これに対して「猫のラリー」のアカウントはこう返していた: 

 (「こんなぶよぶよしたのに、ぽっちゃりとか言われる覚えはないにゃ!」)

 (「確かにラリーは見た目がよいと書いてはいたが、そんなことはいわずもがなではにゃいか」)

 

その「猫のラリー」アカウントが最高のユーモアのセンスを見せるのが、Brexitネタである。というわけで今回の実例: 

 

*1:このように「名前+ the ~」の形で「~の…」の意味となる。例: Johnny the Fox 「キツネのジョニー」 一方で、先日亡くなった「グランピー・キャット Grumpy Cat」の場合は、grumpyは名前ではなく形容詞であり、意味としては「猫のグランピー」ではなく「グランピーな(不機嫌な)猫」である。

*2:英語ではrescue catと言うが、「レスキューする猫」ではなく「レスキューされた猫」である。なぜここでrescueが過去分詞にならないのかといったことを考え出すと英語沼にはまるので、ほどほどにしておこう。

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【英文読解】ノーベル物理学賞の報道

今回は、いつもとは趣向を変えて、「英文読解」をしよう。読んでいただく英文は特に難しくない。センター試験の長文問題と同じくらいの難易度だ。

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仮定法、仮定法過去、if節のない仮定法(Brexit: バルニエEU首席交渉官の発言)

今回の実例は、いよいよ息もつかせぬ展開になってきた(はずの)Brexit関連のニュースから。

Brexitについては英国政府からはEU離脱担当大臣、EUからは首席交渉官が出て、頻繁に話し合いを行っている。英国側の大臣は、EU離脱を決めた2016年6月のレファレンダム以降、現在のバークレー氏で3人目だが、EU側はミシェル・バルニエ氏がずっと継続して首席交渉官の任に当たっている。

1951年生まれのバルニエ氏はフランスの政治家で、フランス国内でも何度か閣僚を務めてきたが、EUでの仕事も多い。EUで仕事をしている政治家の多くと同様英語はぺらぺらなので記者会見やインタビューは英語で応じていることが多い。例えば今年3月のEuronewsのインタビュー番組のクリップが下記。


EU needs to 'learn from Brexit', chief negotiator Michel Barnier tells Euronews

単語単位でときどきフランス語になるし(EUが「イー・ユー」ではなくフランス語の深い「ウー」の音だったり、responsibilityが「レスポンサビリテ」という感じだったり)、決して「ネイティヴっぽい発音」とは言えないかもしれないが、これがEUという国際機関での実務の英語である。

 

さて、今日参照する記事は、10月31日というBrexitの期限まで3週間あまりとなった10月6日の英オブザーヴァー紙(ガーディアンの日曜)に出た記事である。

文脈としては、英ボリス・ジョンソン首相が本気で通すつもりがあるんだかないんだかわからないような案を提示して、「EUの反応待ち」という態度を公にするというパフォーマンスの最中で、誰もかれもが「このままでは合意なんか成立するわけがない」と判断している(が、英国会では「合意なしでの離脱」に歯止めをかける法律、いわゆる「ベン法*1」があるので、Under the so-called Benn Act, if by October 19 the government has not won parliamentary approval for a divorce deal with Brussels or for leaving the EU without a deal, Johnson must request a delay until January 31, 2020. ということになっている)。どちらの側も「合意なしでの離脱」が実際に起きた場合のことを口にしだしており、どちらの側も他方を責めるストーリーを組み立てている。

この記事は、EUの交渉担当者であるバルニエ氏がそれを明言したことを報じる記事で、下記リンクから記事を見ていただければわかるが、「If祭」としか言いようのない "If" 連発の文面になっている。仮定法満載だ。仮定法好きにはたまらない。

www.theguardian.com

この "If" (仮定法)をひとつひとつ、すべて見ていくのは、英語学習の観点から有益なのではないかとは思うが、私もそこまでヒマではないので、1か所、非常に目立っているところだけを見てみようと思う。

*1:「ベン」は法案提出者であるヒラリー・ベン下院議員の名にちなむ。

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【事務的なご連絡】参考書のリンクについて、またご紹介する参考書について(「4技能」云々)

いつも当ブログをご購読・ご閲覧いただき、ありがとうございます。

私個人がずっと前からはてなIDを持っているので、英語の実例を集積するという趣旨のこのブログは「はてなブログ」を利用して運営していますが、この10月1日に「はてなブログ」の利用ガイドラインが下記のように改められました。

staff.hatenablog.com

これに伴い、10月1日以降、各エントリ内におけるAmazon.co.jpへのリンクを停止していましたが、やはり各エントリで参考書・辞書を具体的に示せないのはやりづらいし、お読みになる方の立場からもわかりづらいと思われるので、10月の最初の週末を迎える前に、当該ガイドラインに沿うよう、《当ブログのaboutのページ》を改訂しました。

これにより、以降、各エントリ内での参考書・辞書などのリンクが復活します。

短期間でしたが、リンクがないことで不自由をおかけしていたことについてお詫び申し上げます。

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パンクチュエーション(句読法)、最上級表現【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。パンクチュエーション(句読法)はコンマやピリオド、引用符程度しか習う機会がなく、曖昧なままになっていることが多いのだが、知ってるつもりのコンマの使い方ですら実は曖昧だったりする。機会を見つけて確認しておきたい。

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今回の実例は、アイルランド外務大臣Twitterから。トピックは20日に引き続きパンクチュエーション(句読法)と、最上級表現。

 

 

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素早く読んで内容を把握する練習に好適な文(シアトル・マリナーズのステートメント)、「~の間」を表す表現、和製英語の表現の表し方 【再掲】

このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。ある程度のスピードで英文を読んで、いちいち日本語に訳さなくても内容を正確に把握できるようにしておく必要がある大学受験生には、練習の素材としてとてもよい英文だ。

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今回の実例は、イチロー選手の引退を告知するシアトル・マリナーズの広報の文章。

MLB開幕戦のオークランド・アスレチックスシアトル・マリナーズの第2戦が行われる3月21日の昼間、日本語の報道で「イチロー選手が第一線を退く意向を球団に伝えた」というニュースが流れた。英語ではそれは「第一線を退く」という遠回しな表現ではなく、ド直球で "retire" と伝えられた(NHK共同通信のような日本の報道機関でも、英語では "retire" という単語を使っていた)。 

イチロー選手は8回に交代となり、現役生活に別れを告げた。ダグアウトに戻った彼をチームの皆がハグで迎えた。

そしてマリナーズのブログに、チーム広報からのステートメント掲示された。

marinersblog.mlblogs.com

最初の方は記者会見でのご本人の発言の一部を英訳して掲載しているが、そのあとはイチロー選手がキャリアを通じて残した記録が淡々と並べられたような文面で、分量はあるが英語として難しくはないので、素早く読んで内容を把握する練習に好適である。

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