Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】仮定法におけるif節のifの省略と、倒置(ジョン・ル・カレを追悼するジョン・バンヴィルの言葉)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、亡くなったジョン・ル・カレを偲ぶ作家や映画監督、俳優らの声を集めた記事から。メンツが豪華すぎててくらくらくる記事で、ゆっくり読んでいきたい。記事はこちら: 

www.theguardian.com

ここに言葉を寄せているのは、15人の作家や脚本家、映画監督や俳優、法律家といった人たちで*1、それぞれの知るジョン・ル・カレ、あるいはそれぞれにとってのジョン・ル・カレについて、自由に言葉を綴っている。

今回はまず一番上に掲載されている作家のジョン・バンヴィルの言葉から。バンヴィルはアイルランドの作家だが、ジョン・ル・カレも父親*2アイルランドにルーツがあったので、可能ならばと移住を検討していたという*3

というところで今回の実例: 

*1:クレジット表記をコピペすると、John Banville, Tom Stoppard, Charlotte Philby, Margaret Atwood, Philippe Sands, Tomas Alfredson, Susanna White, Hossein Amini, John Boorman, Ralph Fiennes, Bonnie Greer, Ian Rankin, Kit de Waal, Holly Watt and Adrian McKintyで、実に豪華である。

*2:この父親という人が非常にとんでもない人物で、そのことをル・カレ本人が書いたのが『地下道の鳩』の33章である。

*3:アイルランドでは国外生まれ・国外在住の人であっても親がアイリッシュであれば国籍取得が可能である

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【再掲】《譲歩》のas, 形容詞+ as + S + V, neither (ジョン・ル・カレ死去)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

今朝起きたら、ジョン・ル・カレが亡くなっていた。89歳だったという。年齢が年齢だし……とも思いはするが、何より、Brexitを見届けることなく逝ってしまわれたかという気持ちでしばらくぼーっとしてしまった。

ル・カレはときどきガーディアンで発言していたりもして、今朝のガーディアンはこの訃報をトップニュースとしていた。少し時間が経過したあとのPC版のキャプチャ: 

f:id:nofrills:20201214190258p:plain

数か月前に、現在のウルスラ・フォンデアライデン氏が就任するまで欧州理事会議長EUの大統領のような存在)だったドナルド・トゥスク氏が、次のようなル・カレの言葉を引用して追悼している。

ル・カレのこのことばは、今年2月1日付でガーディアンに掲載されたスピーチの一節だが、掲載期限切れ(著作権上の問題)で現在ガーディアンのサイトで読むことはできない。アーカイヴでは確認できる。 このスピーチは「オロフ・パルメ賞」授賞式でのもので、この賞は1986年に暗殺されたスウェーデンのパルメ首相を記念し、民主主義や人権のために尽力した人の功績をたたえて授与される。ガーディアンに掲載されたこのスピーチを読んで初めて私はパルメ首相という人がどういう人だったのかを具体的に知ったのだが、この暗殺が未解決であること(長い歳月のあとにようやく突き止められた容疑者が死亡しており、今年6月に捜査は打ち切られた)も含めて、実にル・カレ的である。なお、受賞についての記事はこちらで、1月30日に行われた授賞式にはル・カレはストックホルムに出向いていたということもわかる。そのころはまだ、新型コロナウイルスによる影響はほとんど出ていなかった。別世界のようだが。

訃報を受けて多くの作家がTwitterで発言しているが、エイドリアン・マッキンティのこのツイート: 

カジュアルな表記になっていて読みづらい点を標準的な表記にしてみると: 

If you've never read John Le Carre, who sadly passed away yesterday, Tinker Tailor Soldier Spy is the place to start. 

As good as the BBC TV & recent film adaptation is, neither comes close to capturing the brilliance of this book. Quite simply the greatest spy novel ever written...

第一文は特に問題ないだろう。《関係代名詞》のwhoを用いて「昨日残念なことに亡くなったジョン・ル・カレ(の作品)を読んだことがなければ、『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』が最初の一冊だ」と述べている。

難しいのは第二文だ。これは《譲歩》の構文で、下記のような例文で学習するasが使われている。主語はhe, 動詞はisで、youngは補語である。

  Young as he is, he is rich. 

  (彼は若くはあるけれども、裕福である)

この《形容詞+ as + S + V》 の形だが、元々は《as +形容詞+ as + S + V》 の形で、『ジーニアス英和辞典 第5版』では「《主に米》では今でもこの形で使う」と説明されている(p. 121)。 ちなみにツイート主のマッキンティは北アイルランド出身で米国在住の作家である。

ジーニアス英和辞典 第5版

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  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: 単行本
 

 

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本日もまた休載

休載します。アルジャジーラ・イングリッシュのウェブストリームで、イスラエルに殺害されたジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレさんのご葬儀を見ていました。とんでもない光景が展開していました。正直、英文法どころではないです。私は英文法に(あるいは「英文法*だけ*に」)興味がある人にもこういうことを知ってもらいたい、そのうえで英語を勉強・研究したり、教材に使う素材を選んだりしてもらいたいと思ってはいるのですが、今日は無理です。

キリスト教イスラム教も区別なく、「パレスチナ」としてまとまられては困るのですよ、イスラエルとしては。「宗教の違いによる争いだから、しかたがない」という《ナラティヴ》を作っているわけですから。それにホイホイ乗っかってるのが、日本を含む世界の多くの国々のメインストリームのメディア。

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本日も休載

引き続き、言葉が出てこないので休載します。過去記事再掲という手もありますが、今、私の言葉が出なくなっている原因のあの出来事、というかあの殺人、あの戦争犯罪行為を書かずに英文法、というのは違和感ありすぎて無理。

(NYTは中東に関してはクズだけどゴミではない。そこがポイント)

犯罪で殺された人について "We will remember them" とは言わないっすからね。"Justice must be done" ですからね。必要なのは「心に刻む」ことではなく、犯罪の証拠。

 

 

本日休載

言葉が出なくなっているので、本日休載します。

本日未明にはBellingcatでほんの少しだけボランティアをしていたりするので(読み返さずに投稿しているので文法ミスがありますが): 

よろしければTwitterの本日分のログをご覧ください。

https://twilog.org/nofrills/date-220511/asc

「投票所でマスクを装着すること」は "to wear masks to polling stations" か "to wear masks at polling stations" か

今回の実例は、報道記事から。

日本語でもいくらかは報道されているようだが*1、5月の第一木曜日(今年の場合は5日)、英国各地で恒例の地方選*2が行われ、その中に北アイルランド自治議会 (the Northern Ireland Assembly) の議員選も含まれていた。

北アイルランド自治議会について、基本的な情報は英語版ウィキペディアを参照されたい。日本語版の記事もあるが、どういう理由でか、1998年の和平合意(ベルファスト合意、もしくはグッドフライデー合意; 以降「GFA」)でのシステムである現在の自治議会 (Assembly) と、北アイルランド紛争中の1972年に停止された、1921年北アイルランド成立時からの自治議会 (the Parliament of Northern Ireland) とを同一のページで扱っていて、非常に微妙な感じなので、お勧めしない。

en.wikipedia.org

ちなみに議会のシンボルマークの青いお花は、亜麻(リネン)。そう、「アイリッシュ・リネン」である。かつてリネンはアルスターの主要産業だったが、これは紛争でのあの「プロテスタントか、カトリックか」という対立構造を思わせない数少ない地域のシンボルだから、GFA後の議会を表象するものとして選ばれた。

アルスターのリネンの伝統は今も残ってはいるが、製品を見るとMade in Chinaになっていたりもする。

閑話休題

今回みる記事はこちら、投票日前日に出たもので、当日の注意事項についての短い記事だ: 

www.bbc.co.uk

そう、現地からの報道写真などではもはや誰もマスクを着けていないのであるが、今はまだ新型コロナウイルスパンデミックの真っただ中であり、マスクという簡単な装具は、このウイルスによる感染を防ぐために大いに効果がある。日本で暮らしているうちらにとっては当たり前のこれが、元からマスクなんてものに反感のようなものを抱いている欧米各国では、ワクチンの普及と同時に忘れ去られた感がある*3

そんななか、北アイルランドでは、選挙管理委員会が「投票所へお越しの際は、どうかみなさん、マスクを装着してきてください」と呼びかけている、というのがこの報道のメインの内容である。

*1:私は日本語の報道はチェックしていない。現地報道だけで情報は十分だし、Twitterを見ていれば各政党や当選した議員、落選した候補者はもちろん、政治活動家の発言などもたっぷり入ってくるので、むしろ情報過多になっている。その上、北アイルランドの政治についての日本語報道は、紛争が終わったあと著しく質的に残念なことになっており、「IRA北アイルランドの独立を目指した組織」だとかいった誤情報が書かれていたり(実際には「アイルランドの統一」を目指している)、ユニオニスト/ロイヤリスト側についての知識が前提とされていないので、北アイルランドといえば「IRAの政治部門とされるシン・フェイン党」で騒ぎすぎていて、読んだらツッコミを入れざるを得ないし、何というか、うん、それを読むための時間はおやつを食べるなり何なりして過ごしたいっていうか。

*2:特に「統一地方選」と呼べるものではない。ただ、英国では慣例として、毎年5月の第一木曜日は地方選なり総選挙なりの投票日になっている。

*3:先日、ウェブで中継していた米国の音楽フェス(コーチェラ)でも、観客の中にマスクをしている人はほぼ皆無だった。

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【再掲】-ing形, let + O + 動詞の原形, など(新型コロナウイルスのワクチン接種開始、イングランドの現場からの声)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回も引き続き、イングランドでの新型コロナウイルスのワクチン接種初日の報告の文面を見ていこう。

北東部の都市ニューカッスルからは: 

-ing形が3つも入っているが、それぞれ、現在分詞なのか動名詞なのかわかるだろうか。

最初の-ing形、"we are making history" の "making" は現在分詞だ。これは《be + 現在分詞》の進行形の一部となっている。

2番目の "by vaccinating" と3番目の "for letting" はそれぞれ《前置詞+動名詞》である。

このツイートにはほかにも文法上の注目点がある。まず、自分で何か英語で書くときには必須の《one of the + 複数形》が、 "one of the first patients in the world" の部分にある。

それから、「~について…に感謝する」は通常は《thank ... for ~》という形なのだが、もう少しフレンドリーな感じというか「感謝します」というより「ありがとうございます」という語感にしたいときは、thank youを成句っぽく使って、《thank you to ... for ~》とする。ここではその形で、「シュクラ先生ご夫妻、~してくださってありがとうございます」の意味になっている。

その「~してくださって」の部分が、"for letting us capture this significant moment in history" なのだが、ここで使われているのが《let + O + 動詞の原形》(「Oに~させる」)だ。letは、誰かのやりたいようにさせるときに用いる使役動詞で、ここでは「歴史におけるこの重大な瞬間をとらえる」ことは「私たち」が望んでいたこと(望ましいこと)だという文脈がある。同じ使役動詞でも「Oに無理やり(強制して)~させる」場合に用いるmakeとは意味合いが違うので注意しよう。

さて、このシュクラ医師ご夫妻のコメントも、NHSイングランドのアカウントで紹介されている。 

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【再掲】前置詞のasと接続詞のas, 感情の原因・理由を表すthat節/to不定詞, 接触節, 現在完了進行形など(ワクチン接種初日のロンドンの病院から)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回もまた、前々回前回に引き続き、イングランドでの新型コロナウイルスのワクチン接種開始についてのNHS (National Health Service) のツイートを読んでいこう。

ワクチン接種最初の1人は、12月8日の朝6時台にイングランド中部の都市コヴェントリーの病院で注射を打ってもらったマーガレット・キーナンさんで、その後さらに2人が同じ病院で接種を受けたが、同じ日のうちにイングランドの各都市で次々と対象者に接種が行われ、各地のNHSから報告が上げられた。

こちらは首都ロンドン南部のクロイドンから: 

この "as" は接続詞か前置詞か、すぐに判断できただろうか。

ここでは、asに続く部分に動詞がない、つまり《as + S + V》の構造になっていない(節を従えていない)ので、これは前置詞である。そして前置詞のasの意味は「~として」。だからここは「ジョージ・ダイアーさんが、ロンドンで最初に接種を受けた人々のひとりとして、歴史を作った」という意味になる。

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【再掲】感情の原因・理由を表すto不定詞, to不定詞の意味上の主語, 未来進行形など(ワクチン接種の2人目はウィリアム・シェイクスピアさん、81歳)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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前回述べたように、英国の各地域(イングランドウェールズスコットランド北アイルランド)で、新型コロナワクチンの接種が開始された。

今回は、開始初日の、イングランドNHS(National Health Service)の告知や接種報告のツイートを見ていこう。

 最初の文に《不定詞の意味上の主語》と《to不定詞》があるのがおわかりだろうか。そう、"for the historic #CovidVaccine to be rolled out ..." だ。さらにここではそれが、《be excited to do ~》の形、つまり《感情の原因・理由を表すto不定詞》になっている。さらにいえば"to be rolled out" は《to不定詞の受動態》である。

"We are beyond excited" のbeyondは「~を超えている」つまり「~どころではない」の意味で、「とんでもなく」くらいの強調の表現。veryよりさらに上の意味合いだ。つまり直訳すると、「明日から、全土で、歴史上画期的な新型コロナウイルスのワクチン(の接種)が順次実施されていくことで、たいへんに気分が上向きになっています」。

そのあと、"We'll be vaccinating people" は《未来進行形》で「~していくことになる」。"wait for the NHS to contact ..." は《wait for ~ to do ...》の形で「~が…するのを待つ」の意味。「この先の何週間・何か月間かにわたってみなさんにワクチンを接種していきます。順番になったらお知らせするためNHSから連絡をしますので、それをお待ちください」の意味。つまり、ワクチン接種の案内が届くまで待っていてくださいという告知だ。

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【再掲】関係代名詞の非制限用法, 年齢の表し方, 接触節, look forward to doingなど(ワクチン接種、最初の1人)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

12月2日に英国(UK)で新型コロナウイルスのワクチンが世界で初めて認可された。このワクチンは米ファイザー社と独バイオンテック社*1が開発したもので、他にも英国のアストラゼネカ社とオックスフォード大学のワクチンや、米モデルナ社のワクチンがすでに実用化されつつあり、治験が最終段階に入っている*2。この3社のワクチンについては、11月17日付のワシントン・ポストのまとめページにある "What will happen next?" と題した図解がわかりやすい。日本語でも同様の記事はあるので、日本語記事を読んで内容を頭に入れてから英語記事を読んでみるということもできるだろう(ただし米国の新聞なので米国の事情についての解説の分量が多い)。

さて、そのファイザー社のワクチン、BNT162b2が、英国で接種開始となった。英国の保健行政はイングランドウェールズスコットランド北アイルランドの4地域で別々に行われるので、英国政府が認可し輸入したワクチンをどのように接種するかは各地域の自治政府イングランドの場合はウエストミンスターの英国政府)が決定して実施する。その接種がいよいよ、12月8日にイングランドから始まった。

ちょうど去年の今頃、中国の武漢で何人かの医師が「どうもすでに知られていた感染症とは違う感染症が広まりつつある」と気づいて、医師同士で情報を共有し始めていた。のちに「新型コロナウイルス」と認められることになるそのウイルスは、瞬く間に世界中で猛威を振るい、それからわずか1年、12月7日までに153.5万人を殺しているのだが、医療現場の医師たちが最初に気づいてからわずか1年の間にワクチンの開発から治験、接種まで実現したのだから、「すごい」としか言いようがない。

というわけで、12月8日、世界で初めて、イングランドの真ん中へんにあるコヴェントリーという都市ファイザー社のワクチンの接種が行われた。その最初の1人が、マーガレット・キーナンさん(90歳)。親しい人々の間では「マギー」と呼ばれている。

イングランド以外の地域ではまた事情が異なるが、イングランドでは、ワクチン接種が最優先されることになったのは新型コロナウイルス以外の病気などで入院中の高齢者で、マーガレット・キーナンさんはその条件にあてはまる1人として選ばれた。彼女のすぐあとに、やはり入院患者のウィリアム・シェイクスピアさん(本当に!)とベティ・ミラーさんが接種を受けた。BBC Newsより引用: 

The 90-year-old was selected as she was in the right age bracket, was an inpatient ready to be discharged and was happy to take all the media attention.
Second in line was 81-year-old William Shakespeare from Warwickshire followed by Betty Miller, also 90.

 この「最初のひとり」となったキーナンさんについて、NHSイングランドイングランドの健保)が紹介しているツイートを見てみよう。

 

最初の部分:

Maggie, who turns 91 next week, said, ...

コンマと "who" で《関係代名詞の非制限用法》だ。情報を後から付け足すために用いられる。ここは「マギーは、来週91歳になるが、次のように述べた」の意味。

年齢を表すときのturnの使い方も覚えておこう。

  My brother turned 35 last month. 

  (兄は先月、35歳になりました)

 

次: 

... 'I feel so privileged. It’s the best early birthday present I could wish for because I can finally look forward to spending time with my family and friends in the New Year after being on my own for most of the year.'

最初の "I feel (so) privileged." は、何かについて光栄に思っているということを表すときの決まり文句。privilegeは名詞で「特権」、他動詞で「~に特権を与える」の意味で、この他動詞の過去分詞のprivileged(「特権を与えられている」=「特権がある」)が形容詞化している。マギーさんは「一番にワクチンを受けるという特権を与えられたことをたいへん光栄に思っている」と言っているわけだ。

第2文は少々長いが、 頭から読んでいけば構造は取れるだろう。まずは "because" という接続詞があるのでそこで切り、大きく2つに分けておいて、細かいところを見ていこう。

It’s the best early birthday present ( I could wish for ) / because I can finally look forward to spending time ( with my family and friends ) / in the New Year / after being on my own for most of the year.

まずbecauseの前だが、ここは《接触節》で、"It’s the best early birthday present that I could wish for" と、関係代名詞のthat(目的格)を補って考えると意味が取りやすいだろう。節が前置詞で終わっているのが慣れないとわかりづらいかもしれないが、次のような構造になっている。

  It's the best early birthday present.

  I could wish for it. ←このitが関係詞のthatになって2文をつないでいる

後半の "could" は慣用化した仮定法で、「(望めるとしたら)望める」。この部分は「これ(ワクチン接種)は、私が望むことのできる最良の、早い誕生日プレゼントです」と直訳される。「早い誕生日プレゼント」の意味は、文脈をたどり、直前にマギーさんが来週で91歳になると書かれていたことと結び付けて解釈しよう。

次、becauseの後の部分: 

because I can finally look forward to spending time ( with my family and friends ) / in the New Year / after being on my own for most of the year.

ここは長いだけで特に難しくはない。スラッシュを入れた箇所で区切ることができれば意味をとるのは平易である。

太字で示した《look forward to doing》は受験英語ではおなじみの熟語で「~することを楽しみにする」。典型的な例文では現在進行形で使われるが*3、このように進行形でない形もあるということは覚えておこう。

下線で示した部分は《前置詞+動名詞》で、そのあとの "on my own" は「ひとりで」。「年が明けてからのほとんどをひとりでいた後で、新年は家族や友人たちと一緒に時間を過ごすことを、ついに楽しみにできるのだから」がこの部分の直訳である。

マギーさんは、ウイルス禍が始まってから、子供や孫とも会えずにずっとがまんしてきた。その寂しい日々がようやく終わろうとしている。

 

マギーさんが最初の1人に選ばれたのは、年齢や入院などの条件が合致していたほかに、「最初の1人」ということで集まる取材にさらされてもよいという本人の了解があったからだと、別の報道記事に書いてあった。実際、胸にかわいいサンタクロース姿のペンギンがプリントされた明るい青のTシャツを着て、大き目の水玉柄のニットのカーディガンを羽織ったマギーさんは、報道のカメラを通して、会ったこともないイングランドおよびそのほかの地域の英国の人々、そして世界中の人々に、明るい希望のメッセージを発したかったのだろう。ここまで、どんなに不安だったことか。

病棟に戻ったマギーさんを歓迎する病棟スタッフたちの映像: 

 《to不定詞の形容詞的用法》("the first person in the world to receive ...")をお見逃しなく。

 

※英文の貼り付けが多いとはいえ、今回も規定文字数を超えてここまでで5000字以上。こういうふうに長いの書くのは実はかなりつらいので、今後、やり方変えようと思ってます。

 

補足: 

マギーさんに注射を打ったのはこの方、看護師のメイ・パーソンズさん。世界初のコロナワクチン接種者。

マギーさんはイングランド在住だが「イングランド人 English」ではない。だから彼女について "an English woman"と述べているものは、私が見た限りでは見当たらなかった。

 

 

 

f:id:nofrills:20201211171748p:plain

https://twitter.com/NHSEngland/status/1336211829794742272

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

*1:日本語圏では「ビオンテック」というカタカナが当てられているが、ウィキペディアで確認したところドイツ語版でも「バイオンテック」の発音記号が与えられている。

*2:ほかにも、これらとは別に、ロシアや中国でもワクチンの開発・実用化・接種が進められている。日本でも開発が行われている。詳細はNHKのこの記事がわかりやすい。

*3:"I'm looking forward to seeing you." のように。

【再掲】the + 比較級 ~, the + 比較級 ..., 等位接続詞andの作る構造, など(エリオットの語ること)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

12月2日、Twitter上の英語圏で「エリオット・ペイジ」という男性 (he)のことが大きな話題になっていた。これまで「エレン・ペイジ」という名前で活動していた女性 (she) の俳優が、自分はトランス(トランスジェンダー)であり、これからは「エリオット」という名前で生きていく、代名詞はheかtheyを使ってほしい、ということをSNSへの投稿で明らかにしたのだった。それを報じるニュース記事などはすっかり「彼」扱いしているのだが、エリオットははっきりと女性から男性になったわけではなく(そういう人は "binary trans" と呼ばれるそうだ)、「代名詞としてはheかtheyを使ってほしい」と言っている*1ことからわかるようにnon-binary(自分を必ずしも男だとか女だとかで規定しない人)なので、ここでは代名詞の「彼」は使わず、「エリオット」を使っていくことにする*2

エリオットはその投稿で、自分の決意までの過程について述べ、それに伴う恐怖心について述べ、トランスジェンダーの人々が置かれている社会的な状況について述べ、自分を支えてくれてきた人々への感謝を言葉にして、「ありのままの自分自身を受け入れる」ということについて語り、トランスの人々に向けたメッセージを綴っている。

この投稿の最後の一段落より: 

I love that I am trans. And I love that I am queer. And the more I hold myself close and fully embrace who I am, the more I dream, the more my heart grows and the more I thrive. 

やたらと "the more" が並んでいるが、「~すればするほどますます…」の意味を表す《the + 比較級 ~, the + 比較級 ...》 の構文で、後半が3つ列挙になっている形である。後半が3つ列挙というのは、この構文を前提として、青字で示した等位接続詞 "and" の接続を見れば判断できる。もしこれが、"the more A, and the more B, the more C and the more D" という形だったら、BとCの間に区切りがあって「Aすればするほど、そしてBすればするほど、ますますCするしDする」という意味になるのだが、この例では朱字で示したandがなく、"the more A, the more B, the more C and the more D" の形なので、AとBの間に区切りがあるとしか解釈できないわけである。

さらにここでの andの接続についての注目点はまだほかにもる。"the more A" のなかにもandが入っているのだ。

*1:要は「sheではない」ということになる。これまで「エレン」は "she" として扱われてきたが、エリオットは「彼女」扱いを拒絶したのだ。

*2:日本語は必ずしも代名詞を使わなくてもよいので、そこらへんは自由だ。その分、英語圏の代名詞をめぐる議論のことがピンときづらいのだが、この世には名詞や形容詞に男性形・女性形のあるスペイン語やイタリア語、フランス語によって世界をどう描写するかが規定されている、英語以上に息苦しい言語圏もあるわけで、想像力は重要である。

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【再掲】見出しや短信における冠詞の省略, to不定詞の形容詞的用法, 付帯状況のwith(英国で新型コロナウイルスのワクチン承認)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、ニュースフィードから。

日本時間で12月2日の午後、英国で新型コロナウイルスのワクチンが承認されたというニュース速報が入ってきた。ちなみに今回承認されたワクチンはこちら、BNT162b2だ。私は英国のBBC Newsとアイルランドアイリッシュ・タイムズ (IT)の速報が届くように設定してあるのだが*1スマホを見ると、下記のような画面になっていた。BBC, ITどちらからも飛んできている。

f:id:nofrills:20201203032119j:plain

このBBC Newsの速報の文言: 

UK becomes first country to approve Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, paving the way for mass immunisation

これは、数時間後にTwitterでフィードされていた文言とほとんど同じである。

見比べてみると、手短に報じている速報のフィードでは冠詞(定冠詞のthe)が省略されていることに気づくだろう。

速報のフィード: UK becomes first country to approve Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, ...

Twitterのフィード: The UK has become the first country in the world to approve the Pfizer/BioNTech coronavirus vaccine, ...

このような冠詞の省略は、決まった場合にしか起きない(好き勝手に省略してよいわけではない)。どういうときに起きるかというと、報道記事の見出しや、ここで見ている速報フィードのような短信の場合だ。Twitterでも、以前アルファベットでも投稿上限文字数が140字だったころ*2は、序数詞につくtheなど、形式的なtheは省略されていることがままあった。"the" と書くだけで前後のスペースを含めて5文字も消費してしまうから、使える文字数が少ないときは、けっこうな問題になってしまうのである。

けれども、そのような制限がない場合は、theは省略しない。だから、上記の例でも、文字数にゆとりがあるTwitterのフィードではtheは省略せずに全部書いてあるわけだ。

以下、Twitterの文を実例として、文法的なことを見ていこう。

*1:ガーディアンやロイターやWSJなども入ってくるようにしていた時期もあるが、通知の件数が多すぎるし、米国の報道機関のフィードはアメリカのローカルニュースがうるさいので、BBC NewsとITだけに絞った。BBCは本当に重大なときじゃないとフィード飛んでこない。ITはアイルランドのローカルニュースがとても多いので、一般にはお勧めしない。

*2:2017年にアルファベットの場合は上限が280字に拡大された

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【再掲】the former ~, the latter ... の構造とその応用(アイルランドのラジオと英国のラジオ)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

高校生の人が、「学校などで習うけれど、自分ではうまく使えない」ということで何かちょっと距離を感じてしまう表現に、《the former ~, the latter ...》がある(常にtheをつけて使うことに注意)。これは第一には同じ語の繰り返しを避けるための表現なのだが、ある程度の文脈があるところで2つのものを《対比》するときに使うもので、その《対比》のロジックが作れてないのに言葉だけ使ってみたところでしっくりこない。

例えば、「赤いリンゴと黄色いリンゴを買ってきた」という場合、双方の相違点を述べて《対比》の構造を作るときに《the former ~, the latter ...》を使う。「赤いリンゴは酸味が強く、黄色いリンゴは甘味が強い」とか、「赤いリンゴは長野産で、黄色いのは山形産だ」、「赤いリンゴは自分で食べるため、黄色いリンゴは兄からのリクエストで買った」というような場合だ。

一方で、双方の共通点や類似点を言いたいときには《the former ~, the latter ...》を使うと逆に意味不明になってしまうので使わない方がよい。「赤いリンゴは128円で、黄色いのも同じ値段だった」とか、「赤いリンゴは青森産だが、黄色いのも青森産だ」のような場合だ。

こういう《2つのものの対比》の例をいくつか、自分で考えてみるとよい。練習のためだから、例は何でもいい。2つの正反対のものを並べたり、2つの異なるものを並べたりする構造を、頭の中で10個くらい考えてみよう。「レナは数学が得意で、リナは英語が得点源だ」とか、「コンバースはバスケ部御用達で、プーマはサッカー部御用達だ」とか、「ナイキはアメリカの企業だが、アディダスはドイツだ」とか、「鉛筆で書けば消しゴムで消せるが、ボールペンで書くと消せない」とかいった身近な例でよい。ただしあまりに当たり前すぎること(「夏は暑いが、冬は寒い」のようなもの)はあまり意味をなさないので、少し考えて「夏はアイスクリームが売れるが、冬はカップスープが売れる」のような例を考えてみよう。

何か退屈なことをしているように思われるかもしれないが、日本語でこの《2つのものの対比》を言っているように思われる「が」という接続詞は実はとても曖昧で、何となく「が」を使っているだけで《対比》になると思っていると、英作文をするときにうまくいかなくなる。例えば上のリンゴの例でいうと、赤いリンゴも黄色いリンゴもどちらも香りがよいということを言い表す場合に、日本語では「赤いリンゴは香りがよいが、黄色いリンゴも香りがよい」と言うこともできてしまうのだが、これは《対比》になっていない*1

……というのが前置きで、ここからが本題。この《the former ~, the latter ...》、このように構造をしっかり作ることが前提の表現だから、Twitterのような文字数制限がきつい場ではなかなか使いづらそうに思われるかもしれないが、そんなことはなく、時々見かける。そういうツイートの例: 

 "*a lot*" など、アステリスク (*) で挟んであるのは《強調》の意味。Twitterのように太字にすることができない場でこの方法を覚えておくと何かと便利だ。

*1:こういう「が」は、使わないように指導されることもあるけれども、日常生活ではいくらでも使っている。「BTSが人気だが、BLACKPINKも人気だ」のように。また、「今日は冷え込みがきついが、おでんがよく売れた」というように「が」が「ので」に置き換えられる場合すらある。日本語の「が」は曖昧なのだということは、自覚しておいたほうがよい。でないと、英語での明確な論理構造で使う「が」的なものが十分に身につかない。

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【再掲】感覚動詞+目的語+原形不定詞, show + O + O, 疑問詞+to不定詞, 慣用表現 larger than lifeなど(目の見えない子犬、ジュード)

このエントリは、2020年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は、Twitterに投稿されている映像から。

米国に、The Dodoというオンライン・メディアがある。名称はもちろんあの絶滅してしまった飛べない鳥にちなんでいる。動物と人間、動物と動物が快適に楽しくともに暮らしていくことを追求するメディアで、「日本のテレビの動物ものの番組(から、何というか「テレビ番組臭さ」を抜いたもの)のような作り」と説明するのが、たぶん一番わかりやすいだろう。自サイトのほか、TwitterFacebookなどのソーシャルメディアで数分の映像をアップするという形で活動している。沿革はウィキペディア英語版に詳しいが、コロンビア大学で動物の倫理と人間との関係について学んだ/研究したイジー・ラーラーさんによって2014年に設立されており、内容的にもただ単に「かわいい動物に癒されましょう」という方向性ではなく、見た人に、動物と人間のかかわりについて考えさせるような内容のものが多い。

とはいえ、どの映像もかわいい動物満載で見れば笑顔になれるし、内容が内容だから子供でも安心して楽しめるし、ツイート本文などに使われている英語は日本では高校2年生レベルの知識があれば十分に読める程度で平易なので、Twitterなどやっている動物好きの方はフォローしてみるとよいのではないかと思う。映像についている音声は、出てくる動物の飼い主さんなどの普通のしゃべりで、聞き取りはかなり難しい場合も少なくないが、幸い、英語字幕を付けてくれているので、聞き取りの練習にもなるだろう(大学受験で必要とされるリスニングのレベルをはるかに超えているが、逆に言えばとても実用的な教材である)。

さて、今回見るのはこちら: 

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【再掲】前置詞のgiven, やや長い文, 形式主語の構文, 進行形の受動態, 完了分詞構文, however, など(ディエゴ・マラドーナの歩み)

このエントリは、2020年11月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は報道記事から。

著名人が亡くなったとき、英語の新聞報道は、大別して3段階で記事が出ることが多い。まずはその著名人が亡くなったということを伝える報道記事が出て、続いて故人の業績や人物像、評価などを綴ったオビチュアリーが出る*1。ものすごく著名な人の場合、そのあとに、各界の反応をまとめた記事や現地からの報告の記事が出る(新聞が紙ではなくネットになって時間的なしばりがゆるくなった今では、オビチュアリーと反応などのまとめ記事には時間差がないことが多いが)。

オビチュアリーは「読み物」的な記事なのでじっくり読ませるタイプの文が多いが、最初の報道記事は亡くなったことを伝えるのが目的なので淡々としている。日本の新聞に掲載される訃報記事の中で特に詳しいものとだいたい似たような感じだ(が、文章量も情報量も、英語での記事のほうがずっと多い)。そこでは、故人の生涯についての説明があっても、あまりドラマチックに書くことはせず、時系列に沿って百科事典的に事実を述べていくスタイルになることが一般的だ。そこで用いられる事実説明の記述は、著名人の場合、あらかじめストックされていることが多い。「著名人の□□氏が、〇月〇日、〇〇で、〇〇のため死去した。〇〇歳だった。□□氏は△△で知られ……」という記述の「〇〇」のところだけあとから埋め、必要ならば適宜加筆を行えば、そのまま記事として出せるものがある、というイメージでよいだろう。

今回の実例は、そのような最初の報道記事から……と言いたいところだが、新聞が紙ではなくネットになってからは、その「最初の報道記事」の文面が固定されないことも多くなっている。まず速報的にストックの文を出して、その後、その新聞の記者が本腰を入れて書いた報道記事と差し替える、ということが、ときどきある。今回もそうなので、私がキャプチャをとった記事のURLをあとから参照しても、実例として見ている英文がない、ということになってしまった。これではソースURLのない怪文書みたいになってしまうではないか。困った困った。

だが落胆するのはまだ早い。同じ文面が別の国の別のメディア(提携メディア)の記事にも見られるので、そちらを見ていただければ英語記事としての真正さはどなたにもご確認いただけるだろう。

というわけで実例。こちら: 

*1:ただし必ずそうというわけではない。オビチュアリーが出ないこともあるし、社交界の名士のような人の場合は報道がなくてオビチュアリーだけのこともある。

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