Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

分詞構文など(レバノンで、イスラエルの攻撃の標的にされて殺された女子大学生とそのご家族のこと)

ドナルド・トランプの大変に下品な言葉遣いでのネタニヤフ罵倒を取り上げたエントリで、「追記」としてネタニヤフからの反応(とされるもの)を書き添えた際に、たまたま、レバノンにおいてイスラエルが国際人道法などガン無視して行い続けている蛮行に尊い命を奪われた若い女性のことに言及したら、ブコメでそれに反応をいただいた。

 

私自身は、残念なことに、こういう話にもう慣れてしまっていていちいち反応しないところまで来ているが、普通に考えれば、下品な言葉遣いなどはどうでもいいので*1、そんな時間があるのならばこういう話を取り上げなければならないのだろう。

 

■目次■

 

レバノン南部、ある女子大学生とその家族の爆殺

トランプとネタニヤフの電話会談のあとで、イスラエルがレバノン南部で行った攻撃で、若い女性が殺された。巻き込まれたのではなく、彼女が乗っていた車が標的とされて爆殺された。彼女が標的だったのか同乗者か、あるいは何か別な事情なのかは私にはわからない。彼女の死は、もはや報道機関のニュースフィードに乗ることもない、あまたの死/戦争犯罪のひとつに過ぎない。

殺された人はテオドシア(セオドシア)さんという女性で、髪の毛を覆っていない自撮り写真がある。何かを確認するまでもなく、キリスト教徒と考えられる。

殺害が行われたのはレバノン南部のクラヤア。と、ウェブ検索してみるとウィキペディア記事が出てきて、マロン派(マロナイト)の人々が暮らす街であることがわかる。

※上記のサラさんの投稿の時点ではまだ初期段階の情報錯綜があったのだろうと思われるが、のちに細部は修正されている。

 

Twitter/Xを使ってより詳しく調べる

「なぜキリスト教徒の村が攻撃されているのか」を調べようとしても一般人のウェブ検索ではどうにもならないかもしれないが(そもそもレバノンにおいてキリスト教徒も攻撃されているということもあまり報じられていない。今イスラエルがレバノンに対してやってることが「ヒズボラに対する戦争だ」と思い込んでる人には想像もつかないことだろう)、彼女について知りたければ、Twitter/Xだけでもある程度は調べられる。Twitter/Xは自動翻訳が導入されていて言葉の壁はとっぱらわれてるんだから、問題は、手を動かすに足りるほどの関心があるかないかだけだ。

https://x.com/search?q=Theodosia&src=typed_query&f=top

↑この検索結果で彼女のフルネームがわかるので、精度を高めるためにフルネームで検索するのが常道。

https://x.com/search?q=Theodosia%20Karam&src=typed_query

 

※今、Twitter/Xの検索は何かが変わったようでめちゃくちゃになっているが、少なくとも私が検索したときには、Theodosia Karamさんのお名前での検索は普通にできている。

 

現地英語メディアのフィード

彼女の殺害について、より詳しいことがわかるフィードを拾っておこう。まず、現地メディアAl Mayadeenの英語版のフィード。このメディアはヒズボラと関係が深いのだが、それを念頭に置いて見る分には大丈夫だ*2

全文: 

While returning from university, the vehicle of Theodosia Karam from the town of Qlayaa was targeted by the Israeli occupation, resulting in her martyrdom along with her father, physician James Karam, and her brother Tony, in a drone strike on the Nabatieh–Khardali road, South Lebanon, on June 1.

This is one of many attacks "Israel" carried out recently, deliberately targeting civilians in Lebanon, killing women and children. 

Just this morning, Lebanon's Civil Defense announced that six martyrs and three injured were recovered from under the rubble of a building targeted by "Israel" in South Lebanon.

英文法解説

※「人の不幸を伝える文を素材にするのは不謹慎」と怒る人がいるかもしれないが、本エントリははてブでの反応を受けて「レバノンでの民間人爆殺」の事案をより詳しく知るためにはどうするかということを書くのが目的であり、なおかつ当ブログは英文法のブログなので英文法解説をやる。

第1文: 

While returning from university, the vehicle of Theodosia Karam from the town of Qlayaa was targeted by the Israeli occupation, resulting in her martyrdom along with her father, physician James Karam, and her brother Tony, in a drone strike on the Nabatieh–Khardali road, South Lebanon, on June 1.

書き出し、 "While returning from university" は「大学からの帰途」の意味。whileは《接続詞》でこの部分は《接続詞+現在分詞》の形の《分詞構文》と考えられる*3

そのあと、太字にした "resulting" までの部分が主文で、 "resulting" は現在分詞で《分詞構文》。

言っていることは、

  • 6月1日、テオドニア・カラムさんを乗せた車が、大学からの帰途、クラヤアの街でイスラエル占領軍に標的とされた
  • この攻撃により、テオドニアさんと、父親で内科医のジェイムズ・カラムさん、兄(弟)のトニーさんが亡くなった*4
  • 攻撃はドローンによるものだった
  • 攻撃場所はレバノン南部の Nabatieh–Khardali roadであった

これだけの情報量をぎゅぎゅっと詰め込んだのが、上記の文である。なお、「亡くなった」ことについてmartyrdomという単語を使っており、これは多くイスラム教の宗教的な概念として解説されるが、実際には宗教の区別なく使われているようで、キリスト教徒であるカラムさんご一家についてもmartyrと位置付けられている。(ご本人たちのコミュニティがそのような言葉を使うかどうかはまた別の問題かもしれない。)

第2文: 

This is one of many attacks "Israel" carried out recently, deliberately targeting civilians in Lebanon, killing women and children. 

《one of + 複数形》は多くの場合 "one of the popular authors" のようにtheを伴うが、ここではmanyが使われているのでtheは出てこない。

Israelに引用符がつけられて「所謂イスラエル」「イスラエルと称するもの」と表記されるのは、「アクシス・オヴ・レジスタンス」を自称する陣営などで広く採用されている表記法。私はこの「アクシスなんちゃら」には与しないが、Israelに引用符をつける流儀にはシンパシーを感じ始めている。

下線を施した2つの-ing形について、現在分詞か動名詞かなどを問うことはあまり意味のあることではないだろうが、問われたら答えられるようにしておかないと、日本語母語話者にとってはこの構文が自分で使えるものにはならないので重要。"targeting" は先行する "many attacks" を修飾する現在分詞だろうし、 "killing" は《結果》を表す《分詞構文》。「これは、レバノンにおいて意図的に民間人を標的とし、結果、女性や子供を殺している、所謂イスラエルが最近おこなっている多くの攻撃のひとつである」と直訳される。こんな不格好な日本語では「翻訳」としては通用しないとされてきたが、今は通用している(機械翻訳の訳文でOKということになっているので)。

第3文: 

Just this morning, Lebanon's Civil Defense announced that six martyrs and three injured were recovered from under the rubble of a building targeted by "Israel" in South Lebanon.

太字にした "targeted" は《過去分詞》で直前の "a building" を修飾。「レバノン南部で所謂イスラエルによって標的とされた建物のがれきの下から、死者6人、負傷者3人が救出されたと、レバノンの民間防衛隊が今朝、発表したばかりである」が文意。

「民間(市民)防衛隊」Civil Defenseはそういう用語なのだが、活動内容は「消防・救急隊」のそれに相当する。場合によっては「隊」ではなく「団」かもしれない。

 

テオドシアさんについて、アラビア語の投稿(Twitter/Xで自動的に英語にしてくれている文面)

もうひとつ、別のフィードを見ておこう。これは元がアラビア語なのだが、私の手元では英語で表示されている(Twitter/Xの言語をEnglishに設定してあるので)。

 

https://x.com/Rulaelhalabi/status/2062240231022358671

文法解説は省略。殺害の数日前、テオドシアさんはおそらくテレビの討論番組か何かで、安全が確保されない状況なので、大学の試験をリモートにすべきとの意見を教育省に対して述べていた(埋め込まれている4コマの左上)。

右上は追悼写真で、お父さんのジェイムスさんと、テオドシアさん、兄(弟)のトニーさん。イスラエルのいつものやり口から考えて、標的はお父さん(医師)だろう。トニーさんやテオドシアさんも医療方面の人だったのかもしれない。テオドシアさんは大学で白衣で研究室のようなところにいる映像がある。

左下は攻撃された車の残骸と、シヴィル・ディフェンス、赤十字の人々。

右下は葬儀。写真をフルサイズで表示してみてほしい。

 

葬儀

葬儀では、年齢的にテオドシアさん、トニーさんのお母さんと思われる女性が、この受け入れがたい死について、「イエス・キリストは私たちを殺した者たちを赦しなさいとおっしゃられた。けれどこれはあんまりです」と叫んでいる。

 

棺を担った人々が教会に到着したところの映像。銃を担った軍服姿の人もいて、かなりの厳戒態勢だ(同じくキリスト教徒だったパレスチナのヨルダン川西岸地区のジャーナリスト、シリーン・アブ・アクレさんの葬儀は、イスラエルによって妨害された)。

 

テオドシアさんの大学での日常生活

前の記事にも追記したが、テオドシアさんのご学友がネットにアップした大学生活の様子の映像。白衣を着ているので医学部か、実験を伴う理系の学部だろう。「試験を受けていたテオドシア。まさかそれがあなたの最後の試験になるなんて、誰も思ってなかった」

 

試験が終わって、「どうだったー?」「難しかったねー」「私、ヤマ当たった」「えー、いいなー」みたいなたわいのない会話もしただろう。「試験終わったし、お茶飲みに行けるといいんだけどねー」とか。

 

彼女たち一家の街では3月にも殺戮が発生

テオドシアさんご一家の暮らしてきたクラヤア Al-Qlayaaの街では、この3月にもイスラエルによる殺戮が発生している。

On 9 March 2026, Israeli forces killed priest Pierre al-Rahi in the village of Al-Qlayaa in Marjayoun, Southern Lebanon.

An Israeli tank fired twice on a house in the Maronite Christian village of Al-Qlayaa resulting in the death of al-Rahi as well as four other people being injured. The killing was condemned by Catholics.

 

Since the start of the 2026 Lebanon war, thousands of residents from Southern Lebanon have fled the region. However, many of the Christians of the area, including the residents of Al-Qlayaa refused to leave despite warnings from Israel to do so.

The day before the attack, Rahi spoke to the French news channel France24 stating: “We are forced to stay despite the danger, when we defend our land, and we do so peacefully. None of us carries weapons. All of us carry peace and goodness and love".

That same day a Christian man, Sami Ghafari, was killed by an Israeli airstrike while in the garden of his home. His brother, Father Maroun Ghafari, is the parish priest of Aalma ash-Shaab and like al-Rahi encouraged Christians not to evacuate their villages and instead defend them.

 

On 9 March 2026 around 2 P.M., an Israeli Merkava tank struck a house on the eastern edge of Al-Qlayya, injuring the owner and his wife. Father Pierre and ten other men rushed to the house to help and another shell hit the house, wounding Rahi and four others. Rahi and the others were rushed to a local hospital but he did not survive, dying before reaching the hospital door.

Killing of Pierre al-Rahi - Wikipedia

つまり、イスラエルがそんな権限などありはしないのに住民に退避せよと言っていて、住民はそれを拒絶している(ほかに行くところなどない)という文脈がある街だ。しかもキリスト教徒のコミュニティ。

そこに3月上旬、イスラエルの空爆があり、キリスト教徒の男性が自宅庭で殺された。殺された男性の兄弟は神父で、イスラエルの言うとおりに退避などせずに、自分の街にい続けることで街を守ろうと呼び掛けていた。

そして3月9日の未明、メルカバ戦車が街の東の端にある家屋を砲撃して、家主夫妻が負傷。負傷者を救出しようとピエール神父らそこにかけつけたところに2度目の攻撃(イスラエルのダブルタップ攻撃。もはや誰も驚かないよね。シリアでアサドやロシア軍がやってたときは声を限りに非難してたであろう西洋の人たちももう何も言わない。完全に常態化されているので)。これによってピエール神父らは負傷し、病院に搬送されたが到着する前に神父はこと切れた。

 

こういうことが「ヒズボラ対策」の名のもとにおこなわれている。レバノンで。あの内戦の経験があるレバノンで。

 

……ということが起きているわけです。ドナルド・トランプの卑語など、どうでもいい話です。トランプとネタニヤフの喧嘩などしょせん(日本語の俗語でいう)プロレスに過ぎない。そこに関心を向けさせるAxiosなんざに踊らされててどうするって話です。(Axiosがどう、という話は前のエントリにちゃんと書いてあります。ブコメでの反応もありました。) 

 

でも仮定法は大事です。

hoarding-examples.hatenablog.jp

以下、印刷して持って歩いてるとまあまあ反応があるプラカ。プラカやバナーなどとしてのご利用は非営利を前提にご自由にお使いください。上半分の赤いところは、確か2024年ですが、ガザ地区出身で今は国連で働いている人がツイートしていた画像。下の黒いところはその対訳(拙訳)。

 

 

*1:ましてや、assとassholeの区別もしない人々の対応などしなくてもよいんでは、とも。

*2:ただしこのメディアがヒズボラ系だということを隠蔽して語る立場を取る人たちには要注意。日本語圏にもいるよ。

*3:beforeなど接続詞でもあり前置詞でもありうるものなら、《接続詞+現在分詞》か《前置詞+動名詞》かの判断は難しいが、そもそもそこはたぶん判断する必要はないし、今どき、その判断を迫る設問もないだろう。whileは前置詞の用法はない……はず。

*4:JamesもTonyもクリスチャンの名前である。

ジェノサイドが実況され続けてくるガザ地区から届いた仮定法過去完了の例文

"You'd be in prison if it weren't for me." という例文を取り上げた昨日のエントリ、はてブで上位に表示されていた影響もあり、閲覧数が多くなっている。ブコメも多くいただいており、その中に英語の「仮定法」についてのものが少なくない。私は元々「仮定法ハンター」と異名を取る(取ってない)ほどの例文収集家だが、おかげさまでそれに輪をかけるようにして目が「仮定法」に最適化されてしまった。もはや仮定法スポッターである。

そんな今日のことだ。いつものようにガザ地区から直送されてくる英語の投稿の中に、「それ」はあった。投稿の主は、非常に厳しい状況にあるガザ地区北部でテントを拠点に無料診療所を開設し、自宅を失った人々に医療を提供しているエジディーン医師。2023年10月7日の直前に、留学先から戻ったばかりの若い医師で、これからばりばり働くぞと意気込んでいたところ、すべてを奪われたのだが、そこで折れずに無料診療所を立ち上げて組織化し、現在はHOPEという名称のNGOとしていて、内科や外科、皮膚科といった部門にとどまらず、歯科診療所も設けているし、遠隔診療も手掛けている。運営費は世界から集まった寄付金なので、お志がおありの方はNGOのサイトからご寄付いただきたい。

彼の英文は、エドワード・サイードが指摘していた「外国語として英語を学んだアラビア語母語話者のクセの強い英語」なのかもしれないが、独特のうねりがある。読んでるとぐるんぐるん回される感覚になる。なので体力が弱っているときは読めなかったりもするのだが、読む価値は十二分にあるので、英語が読める方はアクセスしてみていただきたい。

https://x.com/ezzingaza/

また、彼のツイートは、かなりきれいに編集された形だが(うねりが抑えられている。いいシャンプーを使った日のくせ毛のように)、1冊の本にまとめられている。電子書籍で手軽に買えるので、ぜひ読んでみていただきたい。

 

さて、今日見つけた「それ」はこれである。

https://x.com/ezzingaza/status/2061901968281641073

スクショ内の3パラグラフ目: 

Had our timing been slightly different, had we stopped for a few extra minutes, had we taken another route, perhaps this post would never have been written.

《ifの省略》によって《倒置》が生じた《仮定法過去完了》の文である。省略と倒置のない形にすると: 

If our timing had been slightly different, if we had stopped for a few extra minutes, if we had taken another route, perhaps this post would never have been written.

住んでいる場所のすぐ近くに空爆があり、2人が殺され、12人が負傷させられた、という報告に続き、「自分たちもその場所にいることがある」と述べたあと、「ほんの少しだけタイミングがずれていたら、あと何分かその場所にい続けていたとしたら、別な通り道を通っていたら」と仮定し、「この投稿は書かれることはなかったかもしれない」と結んでいる。

ここで「私は死んでいたかもしれない」とか「それは私だったかもしれない」とかではなく、「この投稿は書かれることはなかったかもしれない」。この書きかた、この視点、この《読者》との関係性への間接的言及――イスラエルによって標的とされて殺害されたジャーナリストのアカウントから、没後12時間後くらいに流れてくる「この投稿をあなたがご覧になっているとしたら、それは私が死んでいることを意味します」といった、タイマーでセットされた投稿を連想させる――、これがエジディーン医師の英文の特徴だ。何気ない一言が、読者の心をゆさぶる。それが連鎖していく。

かなりとんでもない書き手である。

この日の投稿全文を読めば、それがわかるだろう*1

例文として検討した仮定法のところ以外にも、英文法・英語表現上のポイントはたくさん入っているので、ぜひ全文をお読みいただければと思う。

そして、ガザからの叫びに耳を傾けていただければ、と。「翻訳フィルター」なしで。

 

 

*1:これも仮定法で表せるな……。

「貴様、誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ」を、仮定法で表しなさい。

■目次■

 

【本編】

まさかこんな実例がニュースで流れてくるとは思っていなかったし、ましてやそれが米大統領の発言ということは、10年くらい前までは想定もされないことだっただろう。私が学校で英語を学んでいたころは「イギリス英語にキングズ・イングリッシュがあり、アメリカ英語にはプレジデンツ・イングリッシュ (President's English) がある」と言われて、JFKの演説などがありがたがられていたものだが、あのころの先生方がご存命だったら、今頃目を白黒させているに違いない。

 

何の話かというと、はてブでも話題になっている件である。まずCNN: 

b.hatena.ne.jp

記事より: 

トランプ氏は時折、相手をののしる表現を使い、計画されていた攻勢への不満を伝えた。……

ホワイトハウスは、電話会談の険悪な雰囲気についてコメントしなかった。この件については、米メディアのアクシオスが先に報じていた。

こんな調子で「相手をののしる表現」は直接は書かれていない。お上品であらせられる。

 

 他方、CNNに先行するアクシオス報道(後述)を参照しているTBS: 

b.hatena.ne.jp記事より: 

イスラエルによるレバノンへの攻撃をめぐり、アメリカのトランプ大統領が「誰もがあなたを憎んでいる」などとネタニヤフ首相を激しく非難したと報じられました。

……

激怒したトランプ大統領は「一体何をやっているんだ」とネタニヤフ首相を問い詰めたほか、「私がいなければあなたは投獄されていただろう。今や誰もがあなたを憎んでいる。そのせいで誰もがイスラエルを憎んでいる」などと述べたということです。

テレビで米大統領のスピーチなどを流すときに同時通訳者さんがこういうふうに日本語にしてるよね、という印象を受ける日本語である。つまり、メディアの制約の中で何とか処理しているのであろうという「激怒」の言葉。

原文はこんなおとなしいものじゃないんですけどね。

 

 続いて毎日新聞。これもアクシオスを参照している: 

b.hatena.ne.jp

記事より: 

米ニュースサイト「アクシオス」によると、トランプ氏は電話協議でネタニヤフ氏を「今や誰もがお前を嫌っている」「完全に狂っている」「俺がいなければお前は刑務所に入っていた」などと罵倒し、強い不満をあらわにしたという。

 二人称を「お前」としていて、かなりトーンがアレな感じになってきたけど、これもまだ、日本の大手メディアで許されている表現で最大限過激にしてみましたという感じで、原文のニュアンスとは違う。

 

だって原文、到底メディアに掲載できない表現なんですもの。放送だったら、例の親子喧嘩みたいに、「ピー」音がかぶされっぱなし。記事書いた人の投稿:  

 文法屋的にはここ。

《仮定法》の定番構文っすね。時制としては仮定法過去。

You'd be in prison if it weren't for me.

《if it weren't for ~》で」「~がなければ、~がなかったら」。直訳すれば「私がいなければ、あなたは刑務所の中にいるだろう」。

けど全体の口調としては、「いったい何のつもりだよ。頭おかしいだろ、貴様。誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ。こっちが貴様のケツ持ってやってっからって調子乗んな。貴様にはもう味方なんざいない。貴様のおかげで、イスラエルは誰からも好かれなくなってんぞ」くらいか。

 

【追記】英文法・語法的にはもう1つ。

Trump lit into Netanyahu

litはlightの過去形。light into ~は「~をどやしつける、~を一喝する」といった意味のアメリカ英語(たぶん俗語)。

 

アクシオスの記事はこちら。読むにはメールアドレスの登録(無料ニューズレターの受信)が必要です。

www.axios.com 

トランプとネタニヤフの電話会談の内情を知る人のうち2人に話を聞いているようで、その2人ともがトランプがFワードで罵倒していたと記者に語っており、その文言はMarc Caputo記者がツイートしている通り。

もう1人、記事にクレジットのあるBarak Ravid記者はイスラエル人で、昔ハアレツで仕事してて、そのあとイスラエルのテレビで仕事してたんだけどネタニヤフのご機嫌を損ねてクビになり、米国のベテランのジャーナリストが立ち上げた新興メディア、アクシオスに入ったという経歴の持ち主。私はハアレツにいたときから彼のTwitterをフォローしていたけど、気づいたらアメリカに行っててびっくりした。ちなみに徴兵されてたときは例の8200部隊にいた。そういう事情もあるんだろうけれど、「匿名の情報筋」頼りの彼の報道記事はあまり高くは評価されていない。今回のこの記事も「匿名の情報筋」の記事。

だから記事自体は、センセーショナルな発言(というかガサツな発言)を看板にしたクリック稼ぎと見た方がいいのかもしれないけど、さくっと "Israel no longer plans to strike Hezbollah targets in Beirut, an Israeli official told Axios." とかいう情報(どう解釈したらいいんだ、この否定文)も入っているので一応真面目に見ておいた方がいいのかもしれません。

 

【おまけ】

 

【追記: はてブ】

はてブ、ありがとうございます。トップページのかなりの部分がトランプの罵倒で埋められている……。

 

ブコメへの返信: 

「I'm saving your ass.」アメリカ人的には刑務所に入る=肛門が犯される、なんかな。

最初にどういう文脈で使われだしたかは私は知らないんですが(「遡ったら最初はシェイクスピアだった」ということもあり得る)、assは「人」のことを下品に描写する表現で、直接的に「お尻、ケツ」を言っているわけではないです。英語で、(意図的に)下品で粗野にした言い方で、「剛毅な人物、痛快な人物、快傑」のことをbadassって言いますよね、あのassです。

 

 ケツ持ち(saving your ass)って日本語でも英語でも意味が大体同じなのがびっくり

英語でも日本語でも謂れ・語源を確認する必要はあるのですが、英語に関しては上記のような次第で、両言語で意味がだいたい同じなのは、偶然のような気がします。こういう偶然があるからおもしろい。しかし私、日本語の「ケツを持つ」という表現をいったいどこで覚えたんだろう……ヤクザ映画の類かも(英語圏のギャング映画・西部劇の吹き替え翻訳を含む)。

 

8200部隊ってあのAIと電子戦の部隊か

です。 https://en.wikipedia.org/wiki/Unit_8200

現在進行形でその問題が起きてて、相互フォローの人が巻き込まれていて大変だったんです。(;_;) 

ちなみにバラク・ラヴィドさんは: https://en.wikipedia.org/wiki/Barak_Ravid

彼の経歴・職歴を一瞥すればわかる通り、米国とイスラエルの関係は「AIPACがー」では片付かないくらいですね。Unit 8200上がりは米国の大学にもIT企業にも入ってますし。

 

真面目に翻訳するときのニュアンスとして、ヤンキーもののマンガのノリじゃないと適切ではないということなのでしょうか?

そもそもFワードてんこもりなので、真面目に翻訳するなら、基本的に粗暴な言い方にするのが定石ですね……。あと、ドナルド・トランプの場合(日本語の俗語で言う)「ヤンキーもの」というより、やくざ・マフィアものかと。『アウトレイジ』の「バカヤロウ」調というか。

www.youtube.com

こっちも読んでね

みなさまがたにおかれましては、こんな『アウトレイジ』みたいなのではなく、ちゃんとやってる翻訳も見ていただけますと幸甚です。

note.com

note.com

さらに輪をかけて真面目に、なおかつ友人たちの手も煩わせて作っているこちらもお願いします。

nofrills.base.shop

ちなみにトランプのFワード連発にネタニヤフがどう答えたかというと……

こういうことらしいです。

"Netanyahu told the American President to go to hell"

おまえら2人~連絡ゥー船に乗れーーーーー!!!!! (地獄への)

 

【さらに追記: 並んだ並んだあかしろきいろ】

 

毎日新聞さん、ちーっす(購読者)

 

【翌日追記: ブコメへのお返事など】

AxiosってUnit 8200上がりが記者やってんのwwwwwwwwwwww そりゃすぐ情報出てくる訳だわ

あそこはそういうウェブ媒体。英文法に興味がない方も、今日はこれだけは覚えて帰ってください。

 

以前は放送局がトランプ大統領の発言を吹替えて報じる際にはジャイアンのような声で元発言に近い翻訳だったのが、ある頃からどの局もソフトな翻訳で物静かな男性の声に変わった気がする。(略)

(「自慢」とかじゃなくて単に事実として)うちにテレビがないので、こういう視点はなかった! ありがとうございます。そういえば、2024年の大統領選でまだバイデンが二期目に挑むという段階だったときの日本のニュースでの吹き替えが、在日外国人の英語話者の間で話題というかネタになってました。バイデンが「正義の味方」の声で、トランプが「悪役」の声だ、と。

 

トランプ発言は内容より「べらんめえ口調」が本体。かつての格調高い大統領英語を嫌う赤首層を狙ってTVショウで磨いてきた演技だから。S.BegleyやT.Markmanが指摘したように、90年代までのトランプ語法は流麗精緻な正統派。

映画『ホーム・アローン』にカメオ出演したときは、「上品な物腰の紳士」でしたよね。実際にはあの頃、ジェフリー・エプスタインと懇意にしていたのですが。

 

NHKのアナウンサーが真面目な顔して原文ママ訳で伝えたら視聴者は白目むきそうだなとは思った良記事

おほめにあずかり恐縮です。CNNが、情報源から伝えられている発言そのものを記事に掲載せずに、「相手をののしる表現」と丸めてるのはこういう事情かと。

 

 

『どう解釈したらいいんだ、この否定文』はThe other sideを読むとネタニヤフの発言として「ヒズボラが攻撃してこないかぎりベイルートは攻撃しないよ!(でも南レバノンでの作戦は続けるよ!)」と書いてて分かってやってる感

 

The other sideというのは記事の下の方にあるコーナーで、そこには確かにそう書いてあるのですが、問題の否定文を含むパラグラフ全体が "Israel no longer plans to strike Hezbollah targets in Beirut, an Israeli official told Axios." であることと、レバノン政府(ヒズボラではなく政府)との関係を考えると、いろいろ……。レバノン南部が今最大の注視を必要としていることは確かです。

ベイルートはこれがあります。

 

 

実際に言ったセリフを別の仮定法でパラフレーズしなさい:(1) Had I not helped you, you'd be sitting behind bars. (2) But for my help, you'd be sitting in a cell. これだと下品さ/頭悪さが 3 割減になっちゃうけど…

 

帰結節までパラフレーズされててすごい! 

(1) Had I not helped you は《ifの省略》とそれに伴う《倒置》が生じている形で、元はIf I had not helped youと読み解くと納得できると思います。実際にはHad I not... の省略&倒置の形でよく接する構文。

(2) But for ~は、私は高校のときはIf it were not for ~(ifの省略と倒置があればWere it not for ~)と単純に置き換えられると習いました。ついでに、Without ~も同じ。空所補充問題ならカッコの数で考えろ、と。これを踏まえて、空所補充問題は1問15秒以内でこなすという無駄な訓練もしてました。そのころ覚えた例文: 

  If it were not for your help, I would fail. 

  Were it not for your help, I would fail. 

  But for your help, I would fail. 

  Without your help, I would fail. 

  (あなたのご助力なしでは、私は失敗するでしょう)

 

一般教書演説の言葉選びからして、妙に俗っぽいというか格調をどこかに置き忘れてきたような印象を与えるんだよな

大統領がトランプでなければ、一般教書演説はチェックして、英語教材のネタを集めるものなのですが……(仮定法)

 

べ、勉強になるなぁ(ウソツケ

マジレスすると、米大統領の下品な発言はわざわざ探す必要はないかもしれないけれどたまたま遭遇した場合は勉強の素材として消費して、自分のために使えるものは使った方がいいです。これでも一応、英語は英語。それもいわゆる「生きた英語」。「こんな口の利き方をする奴と遭遇したら、関わり合いになる前に全力で逃げる」という指標にも。

 

日常で使える英会話だなあ(棒

使っちゃいけません(真顔)

 

でもこの品性下劣な俗っぽい言い方がトランプ支持者には受けてるってことなんだよね。

「俺たちの」感があると言いますけどね。「下劣」かどうかは別として庶民と同じ口の利き方をするという選択を戦略としている政治家は日本にもいますね。名古屋の河村氏とか、もう故人ですが東京には「寅さん」みたいなしゃべり方の民主党の国会議員がいた。

 

このforはなんなのってchatgptに聞いたら慣用表現です意味はないですって

Were it not for ~の構文・慣用表現で「意味がない」のはitの方ですね。このforは《原因・理由》を表すforです。『ジーニアス英和辞典』(第6版)のforの項では20番目に上げられている語義(812ページの右列一番下)。

ChatGPTもそのほかのLLM/AIも、英文法の質問を日本語でするとめちゃくちゃな答えが返ってくることがまあまあ多いです。おおもとの教師データが貧弱だったんじゃないかと思う。江川とか安藤とか安井とかの定番を食わせてないのかも。英語圏の英文法解説はFowlerなどが著作権失効で元々フリーな状態でウェブにあるので、それを参照しているんだと思うけど、LLM/AIに英語で英文法の質問をすると普通に文法書みたいな答えが返ってきます。

 

今回の発言が本当なのかは未確定だけど、以前アメリカのニュースで「これからトランプ大統領の言葉が流れますが不適切な表現を含むので留意ください」と前置きしてたのは笑った。

配慮があってすばらしいですね。前置きがあれば、子供がいる場では音声ミュートにできますし。

 

日本の報道では翻訳フィルターで大変マイルドな表現になっております

俗に「翻訳フィルター」と呼ばれているものは、この場合は実際には「報道機関の用語基準フィルター」であることにご留意ください。

より一般的な「翻訳フィルター」には、「女は常に《だわ・のよ》でしゃべる」というのがあります。例えばカズオ・イシグロの『遠い山なみの光』の翻訳は、素晴らしい翻訳家による1980年代の訳業なのですが、昭和30年ごろの長崎のうどん屋のおばちゃん(映画で柴田理恵が演じていた役)までも「だわ・のよ」。東京から来た佐知子(二階堂ふみ)の山の手言葉との違いは原作(英語)でもわからないので、これは映画が映画にしかできないことをしててすごいという面もあるのですが。

 

"I'm saving your ass." これはprisonを踏まえての一言だから、『ケツ持ってやってる』よりももっと下品な感じだと思う。

ご自身でご自由におやりください。

 

 こういうのってなんで文面まで漏れるんだ?それはともかく原文味わい深いな。

電話のあちら側かこちら側かはわかりませんが、電話会談の場にいるスタッフからAxiosへのリークですね。意図的なものでしょう。"one thing we should remember from the Biden years is that the "POTUS swore at Netanyahu" news cycle is often followed, some days or weeks later, by Netanyahu finding a way to continue doing the thing that prompted the call in the first place." というカールストロムさん(ジャーナリスト)の下記の指摘は、本当にその通りだと思います。

 

追記の、レバノンで殺された方の日常の写真が悲しい。

そこを見ていただいていたことに感謝します。セオドシア・カラムさん。お名前からキリスト教徒だと思います。髪も覆っていないし。大学でお友達ときゃっきゃうふふしている映像もあります。白衣着てるから実験系の学部でしょうか。魚や鳥は料理シーンにも見えるけど。

 

今の学生は、実際使われてる生きた英語を教材にできるのはいい時代?だよね。

1998年に、型落ちになってて手取り1か月分もあれば買えるようになっていたWindows95でネットにつないでからずっと、これ言いっぱなしです。

 

「テメェ誰のおかげでムショ行き免れてると思ってんだ!俺だろうが!あぁん!?」ぐらいかな、貴様では綺麗すぎる。と思って追記見たら、確かにこれアウトレイジだわ。タケシで再生余裕。

本当に「全員悪人」ですし。トランプ、ネタニヤフだけでなく、英首相スターマー、フランス大統領マクロン、ドイツ首相ショルツ(当時)および同外相ベアボック(当時)、などなど。この悪人の輪の外に、ロシアのプーやら中国のプーさんやらの悪人もいる。

 

こんな「会話」が漏れてきてるのは、記事が脚色してるのかトランプサイドが穴漏れ放題なのかどっちなんじゃろか

脚色しているとしたら「記事」の段階ではなく情報源の段階からでしょう。あと、穴漏れ放題なのはトランプサイドとは限らない。電話の反対側かもしれない。アクシオスですし。

 

アイ・ウィッシュ・アイ・ワー・ア・バード。

イフ・アイ・ワー・ア・バード、アイ・クド・フライ。

(「ぬるぽ」「ガッ」くらいのやりとり)

https://www.youtube.com/watch?v=XIotLREauPg

 

……というあたりで時間切れです。ブコメありがとうございました。

 

 

【追記: 6月4日(天安門事件の日)】

ブクマが300件を超えましたが(うちブコメつきのが85件)、私が見る限り、ここまで、ass = 「ロバ」の指摘なし! ゼロ! 「ケツ」ばっかり! ひどいときは「ケツの穴」との解釈!! 「教師が英語をしゃべれない」と教師いじめに邁進してきた日本の英語教育は、実のところ、一体何に失敗してるんでしょうね。

さすがに数百件もブクマがあれば、1件くらい指摘があるだろうと思ってた……

 

earlier this monthは「今月初め」ではない。(アーセナル、CL決勝直前)

よく誤訳されている、earlier this month[year, week, etc] というフレーズについて、一発で理解できそうな例が流れてきた。特にガナサポであれば、理解した瞬間に頭の中でアンリが美しいステップを刻み、知識が足先で*1ふわりと踊らされてゴールネットを揺らすであろう。

第2文。

Victory in Budapest would also see them complete a league and cup double, having secured the Premier League title earlier this month

おや。earlier this monthにだけ目を奪われて気づかなかったけど、この文、てんこ盛りじゃんね。

Victory in Budapest would also see them complete a league and cup double

下線部のwouldは《仮定法》ですね。というのは主語の "victory in Budapest" というのは実際に起きたことではなく、これから起きるかもしれないこと(起きると仮定されること)で、全体として「それが起きた場合はこうなるだろう」という意味。《if節のない仮定法》です。

太字で示した部分は、《感覚動詞+O+動詞の原形》の形。

そしてこのseeがまた、日本における英語学習界隈で言うところの「生きた英語」というか「ネイティブらしい表現」というか。

解説するのは面倒、というか、このエントリはearlier this monthについてだけ書くつもり、つまり10分くらいで書き終える予定で書き始めているので、あとから発見したseeに時間かけられないから、各自で辞書でご確認いただきたい。「seeなんて簡単な単語、辞書なんて引くわけないじゃん」という方こそ辞書引いてほしい。どの辞書であっても、かなり後ろの方に示されている語義に「~を引き起こす」的なものがあるはずだ。そのseeである。

つまりこの文は「ブダペストで勝利した場合は、アーセナルはリーグとカップの二冠達成となる」といった意味。

 

後半。

having secured the Premier League title earlier this month

にょほー。下線部は《完了分詞構文》。「詰め込み教育にNO!」的なことで「ゆとり教育」導入となったときに、「悪しき受験英語」としてまっさきにやり玉に挙げられた「ネイティブは使わない複雑な英文法」とされた文法項目の代表格ですが(私は当時、そういう主張の煽動文を読んで呆れて物も言えなくなった)、この通り、普通にばりばり使われます。さすがにこれが「実際には使われない」という認識は今は消滅している、というかなかったことにされているはず。

そして本題の earlier this month. これは、非常に頻繁に「今月初め」と誤訳されるのだが(Yahoo! Japanに配信されている「海外メディア」日本語版の翻訳記事などでも散見される)、「今月初め」ならばearlierと比較級にする必要はない。これが比較級になっているのは、「今の時点より早い時点」を言うためで、つまりearlier this monthは「今月の、今の時点より早い時点」、すなわち「今月これまでに」。日本語ではこういうときは普通単に「今月」と言う。

これはmonthでなく、weekやyearなどほかの単位でも同じである。

下記2文を比べてみてほしい。

  The suspect was arrested early this month. 

  (その容疑者は、今月初めに逮捕された)

  Charged with murder earlier this month, he will make a court appearance on Friday. 

  (今月殺人罪で起訴されており、彼は金曜日に出廷の予定である)

 

というわけであの有名ガナサポの一言。

 

あと、キア・スターマー英首相もグナなので、日曜日は英国政治は何も動かないと思われ(政敵もみな気を使って、試合に集中させてくれるはず)。次期労働党党首の座を狙っているアンディ・バーナムは熱烈なエバトニアンで、以前、労働党の若手ホープだったときにメディアの一問一答インタビューで「英国首相として国を率いるか、監督としてエバトンを率いるか、あなたならどっち」という質問に「エバトン監督!」と即答して、そばにいたブレーンに咳払いされていた。

だから何、って話なんだけどね。ユスフ・イスラム/キャット・スティーヴンスが述べているようなことにこそ政治家は動くべきなのだが、スターマーもバーナムもこれには関心を持っていない。スターマーに至っては、旧ユーゴに関してのクロアチアのジェノサイド裁判でクロアチア側弁護団の一員だったようなプロなんだけどね。

*1:決して神の手ではなく。

「水分補給を忘れずに」の自然な英語表現が、ロンドンのデモ現場に登場した(5月第1木曜の地方選から、16日の極右デモまで)

2026年5月の英国の選挙

「リフォームUK」のバカ勝ち

例年通り、5月第1木曜日(今年は7日)におこなわれた地方選挙で、10年前のEU残留可否を問うレファレンダムで「EU離脱」が選ばれるうえで決定的な役割を果たしたUKIPの党首、ナイジェル・ファラージが、UKIPを捨てて自分で立ち上げた新政党、リフォームUK(Reform UK, 以下RFUK)がめっちゃバカ勝ちした、ということは日本語圏でもニュースになっていた。リンクは探すのが面倒なので貼らない。

他方、開票が済んだ瞬間にボロボロとボロが出てきて、「本当は当選するつもりもなく立候補してたんで(名前だけ貸してたんで)当選しちゃっても困る」と言っていきなり辞職する人が出たり、むき出しの人種差別がわかってさしものRFUKも党員資格停止せざるを得ない人(以前から知られていたナチス支持者、元BNPなど含む)が何人も出たり、当選したとたんに離党して別の政党に行ったりする人が続出していて、圧倒的カオスである。通例、英国の政治的カオスは、深刻でありつつ、どこかLサイズのポップコーンを抱えて眺めていたくなるような要素があるものだが(テリーザ・メイのときのDUPの扱いとか)、RFUKのはさすがにポップコーン気分とはほど遠い。ある程度慣れてても、絵面がひどいからね。

 

とはいえ、そういうのは千数百人もの当選者の中の数十人なので、目立たないっちゃー目立たない。目立ちはしないが、事実として記憶に刻んでおく必要はある。

 

英国での5月第1木曜日の選挙、今年はウェールズとスコットランドの自治議会とイングランド各地方議会

英国では毎年この時期に何らかの選挙がおこなわれる。国政選挙(つまり国会議員の選挙で、英国は上下両院から成る二院制だが上院は「貴族院」であるため選挙をせず、下院こと「庶民院」のみが選挙で議員を選ぶ。これが「民主主義の母国」ってドヤってるんだからわけわかんない)、つまり英国会の下院の改選も基本的に任期を迎えた年の5月の第1木曜日におこなわれることになっている。ただ、イギリスの憲法は文章になっていないし、議会の「任期」などあってないようなもので、そのときどきの判断で議会が解散されて総選挙になるのが常だが(なので日本の「七条解散」を英国向けに説明するときには情報量を詰め込まなければならなくなる)、今年の5月はその国政選挙はなく、イングランドの地方議会(市議会など)の一部と、1990年代末から自治がスタートしているスコットランドとウェールズの地方議会の選挙がおこなわれた。あと、補選はあったかもしれないがそこまでは見ていない。

ウェールズ、スコットランド、および今回選挙がなかった北アイルランド

個人的に最も大きいと思ったのがウェールズ自治議会の選挙結果で、これまでずっと労働党が掌握していた議会を、ウェールズ・ナショナリズムの政党プライド・カムリ (Plaid Cymru) が初めて制した。ウェールズ自治政府をPCが取ったのである。

スコットランドは、これまで通りスコットランド・ナショナリズムのSNPが、議席数は減らして単独過半数はとれずにいるが、最大政党として自治政府を担うことになった。

これに加えて、来年選挙を控えている北アイルランドの自治政府が、前回選挙でシン・フェインが最大政党となっているため、英国、つまりグレート・ブリテンおよび北アイルランド連合王国を構成する4つの地方というか「ネイション」のうち、自治議会を有する3つが、中央(ロンドン)からの距離を取って自治を求めるナショナリストが制するところとなった。中央との結びつきを強めようという勢力が少数派になっているのである。これはでかい。

んでもって、選挙結果が出た直後に、これらのうちで最強と思われる北アイルランドのシン・フェインが(自分たちは今回の選挙はなかったにもかかわらず)表にでてきて、「ケルト同盟」を言い出している。

(これは個人的にはポップコーン案件なんで、ゆっくり拝見することにします)

 

イングランド地方議会

今回RFUKが大量に議席を獲得したのはイングランド各地の地方議会(市議会、町議会など)で、RFUKは国政選挙に向けてのターゲット選挙区で思っていた通りの結果を出し、議会を掌握した(議会の与党となった)ようだ。それを図示したのが下記のマップだ。このマップを見てRFUKが掌握した地方議会の数を数えて「たいしたことない」って言ってる人がいたが、冗談・皮肉で言ってるのでなければ、過剰に楽観的だと思う。そもそも今回選挙がおこなわれたのは全部の地方議会ではなく一部だし、このマップを見たら、10年前のBrexitを決めたレファレンダムの開票をリアルタイムで見てた人は、あのときの記憶がよみがえるだろう。この地域の人たち、Brexitで「だまされた」と思ってないんだね。

ほか、この選挙についてはウィキペディア参照。こういうののサムネイルでファラージの顔が出てくるようになったんですよ。

en.wikipedia.orgあと、Twitter/Xでスレッド投稿もしてある。

 

5月16日(土)のロンドンのデモ

さて、16日(土)、英国の首都ロンドンで、2つのまったく別々のデモがおこなわれた。これが、本当に交わることもなさそうな団体2つだったらまあそこまででもないのだろうが、政治的にガッチガチに対立している陣営2つなので、Twitter/Xで感じられる限り、事前の雰囲気はめっちゃくちゃぴりぴりしていた。

が、16日になってみればさほどでもなかった。警察が徹底して、両者が交わらないようにエリアを分けていたようだ。あと、余談ながら同じ日に北西部のウェンブリーではサッカーのFAカップの決勝があって、ロンドンのチェルシーとマンチェスター・シティが対戦していた(勝ったのはシティ)。警察、大変な一日だな……。

「ナクバの日」を記念するパレスチナ連帯のデモはハロッズなどのある高級エリア

一方のデモ、パレスチナの「ナクバの日」(15日)を記念するパレスチナ連帯・支持デモは、ナイツブリッジなどの高級エリアでおこなわれた。暴れて沿道の商店を破壊したりするような参加者がいるという判断が警察の側になかったのだろう。私もどこでやるかは把握してなかったので、ハロッズの前を進むデモ隊の映像(下記。パレスチナ支持を訴えるユダヤ人の隊)を見たときは目が点になった。

BBC記事によると、 "The ... pro-Palestinian march, marking Nakba Day, started in Kensington before heading to Waterloo Place via Piccadilly." つまりケンジントンから出発してピカディリーを経由してウォータールー・プレイス、というコースだったそうだ。暴れ隊がいるデモならこんなコースは通させないだろう。

こちらのデモから。上空はヘリ飛んでますね。

『コモン・センス』のトマス・ペインの肖像画を掲げているTom London氏は、イスラエルによるジェノサイドを厳しく批判している英国のユダヤ人のひとり。

アンドルー・ファインスタインさんもイスラエルによるジェノサイドを厳しく批判している英国のユダヤ人のひとり。

"Genocide: It's only complicated if you're implicated." このimplicateは「悪事の当事者となっている」というような意味で、「自身が関わっているからこそ、ジェノサイドは複雑な背景があるなどと言えるのだ」という主張。押韻を利用してこんなにコンパクトにかっこよく表現できていいなあ。

 

ヤックスレイ=レノンらのデモはいつもの国会らへんのルート

他方、RFUK支持者も大勢いると思われる「ユナイト・ザ・キングダム」デモ(あの層を相手に、現状the United Kingdomである国についてUnite the Kingdomというスローガンをブチ上げたのは、天才的と言っていいと思う。悪知恵の働くのがいるんだね、的に*1)のほうは、政治的デモでよく使うコースだ。BBC記事によると、 "Protesters attending the Unite the Kingdom march gathered in Kingsway, before heading to Whitehall and a rally in Parliament Square." 

「ユナイト・ザ・キングダム」デモの主催は、元EDLのスティーヴン・ヤックスレイ=レノン(芸名「トミー・ロビンソン」)で、こっちはこんな様子だったとのこと。

こっちはあんまりまともに見る気がしないし、私のフィルターバブルの中にも入ってこないからこんな程度で。フィルターバブル内に入ってきてるだけでも、英国の旗以外にイランの王党派の旗(真ん中に獅子がいるデザイン)やイスラエルの旗があって、「極右」観がアップデートされていない方は混乱なさるだろうと思うが、今の欧米の「極右」はイスラエルを断固支持している。というか元から極右はそう。自分たちの街・国からユダヤ人が出ていくことを支持しているので(それが「ユダヤ人排斥」というナラティヴを得るか「ユダヤ人国家設立」というナラティヴを得るかの問題)。

あ、あとBBC記事でここおもしろかった。He = Stephen Yaxley-Lennon.

He also led protesters in a chant of support for technology billionaire Elon Musk, the world's richest person.

Tens of thousands join rival protests in London

イーロン・マスクの肩書www 

「俺らの生活が悪いのは移民のせい」デモの主催者が、富を自分らに集中させまくっている富裕層の中でも一番の人物をたたえているわけ。ばかばかしい。

 

で、これらのデモで逮捕者が何人か出たとBBC報道にはあるのだが、どっちにあったのかなー、っていうかね。パレスチナ連帯はひどく弾圧されていて、今の英国は、特定の文言のプラカードを持っていたら逮捕事由になるというところまで来ているのでよくわかんないけど、デモ隊が通り過ぎた後が、飲み捨てられた缶などのゴミだらけになるのが常なのは今は「ユナイト・ザ・キングダム」になってる陣営の方。

あと、上で述べたように前から知られていたナチス支持者を当選させてしまったRFUK支持者は「ユナイト・ザ・キングダム」に参加してる。でもスターマー首相を含むメインストリームの政治家や体制によって「反ユダヤ主義」で非難されているのはパレスチナ連帯のほう。

《事実》が意味を奪われていくなかで、それでも私たちは事実を支持し続けるよりない。というか「事実」というものは人が支持しようがしまいがそこにあるものであったはず。これが壊されたのが10年前、2016年のことで、当時post-truthという言葉で語られたことは今は無標になっている。つまりそれが当たり前になっている。

ドナルド・トランプの嘘(事実でないこと)を指摘する者も、イスラエル政府のそれにはほっかむりしていたりする。何かのハードルが、著しく下がっている。

 

言葉のメモ

さて、これらの16日のデモについてTwitter/Xに流れてきた言葉のなかから、いくつかメモをしておこうと思う。

「アメリカ化」を批判的に言う

まずはジャーナリストのバリー・マローンさんの言葉。ユニオン・フラッグ(ユニオン・ジャック)を背負うなどした「ユナイト・ザ・キングダム」参加者が、木で作られた十字架(キリスト教のシンボル)を手にしていく様子の現場映像(日本の文化の中にいる私としては「またぐなよ」と思うんだけど)についてこう述べている。

米国に見られる熱狂的なキリスト教(プロテスタント)は、歴史的経緯はどうであれ、今の英国では「アメリカ的なもの」として距離をとって眺められている。教義というより形式的なことで、壇上の説法者が何かを叫んで会衆が泣いたり失神したりするようなのもそうだし、もっと穏やかな、ハリーとメガンの結婚式で披露されたようなアメリカ式のゴスペルのようなものも、王室メンバーを含め王室の結婚式に参列するような方々には相当な異物だったこことはあの結婚式の現場で明らかだった(ウィリアム王子に至っては、アメリカ側の見せ場で下を向いて笑いをこらえていたほどだ)。十字架を掲げて行進するというのもそう(実際には英国にもいるけどね……ガイ・フォークスの日になると出てくるよ。ロンドンじゃないけど)。

そういう「アメリカ的なキリスト教のありかた(利用されかた)」についてマローンさんは一言、 "Yankification" 「ヤンキー化」と言っている。

この「ヤンキー」は日本の俗語のそれ(気志團の人のようななりをした人やそういう行動様式の人を言うもの)ではなく、野球のニューヨーク・ヤンキースの名称の元となった「ヤンキー」の拡大的な意味である。

ヤンキーは、アメリカ合衆国北東部に住む白人に対する俗称である。アメリカ国外においては南部を含むアメリカ人全体に対する俗称、または蔑称。

ヤンキー - Wikipedia

Yankificationという語には、Americanizationという語とは違うニュアンスがある。それはYankeeという語に含まれる語感ゆえである。うちら的には、お寿司が魔改造されているのはAmericanizationというよりYankificationと言った方が近いのかな、的な。

あと、英国、特にイングランドにおける宗教というものは、キリスト教以外の宗教を持ち込むまでもなく、白人のキリスト教に限ってもさほど単純ではなく(イギリス史を少しでもかじった人ならお判りいただけると思う……)、宗教的熱狂がこういうふうに利用されているのが本当に「アメリカ的」と言えるのかどうかということはあるが、イギリスの人々が「こんなの、私の知っているイギリスではない」と感じるような「キリスト教」の在り方が現実になっているというのは、ちょっと心に留めておいてもよさそうな気がする。

というか、イギリスの人々が「こんなの、私の知っているイギリスではない」と感じている/感じさせられているということが、21世紀の重要な要素だが……好景気とロンドン五輪前の建設ラッシュで、当時EUに入ってほどないポーランドなど東欧からの建設労働者があちこちに集住するようになっていて、住宅街の人が「英語じゃない言語でしゃべっている集団がいる。こんなの、私の知っているイギリスではない」と感じて、どぶ板選挙運動中のゴードン・ブラウンに食って掛かっていたころから。

 

「水分補給はしっかりしようね」の英語表現

夏場の気温がこれまでにないくらい高くなっているのは日本だけではなく、20世紀に出た旅行ガイドをみれば「夏も冷房要らずの気候」「半袖だけでは肌寒く感じられることも少なくないので薄手のカーディガンが必要」などと解説されていた英国でも、30度を上回ることはもう普通になっていて、熱中症にならないように水分補給をしましょうという呼びかけは、日常生活の中に定着しているようだ。

日本語でも「水分補給」などという重苦しい漢字4字の語が、建設現場や倉庫などに貼られた標語ポスターなどではなく、また医療現場などでもなく、空調の利いたオフィスのような場所でも日常会話で「スイブンホキュウ」という音声となって発されるのが当たり前の語になったのはここ10年か15年くらいのことだろう。

さて、これを英語で言いたいときにどうするか。機械翻訳・AI翻訳や辞書を使わずに、自分の知ってる英語だけで言えと言われたら、 "Drink water." と言う人が多いだろう。あるいは "Drink some water." とか "Drink water properly." といったように修飾語を使って表現する人もいるかもしれない。

これでももちろん通じる(通じなくはない)のだけど、もっと標語っぽいというか、「水分補給」に近い語感がある表現がある。

それが、「ユナイト・ザ・キングダム」のデモの現場に登場した。「登場した」というよりぶっこまれた。

Led By Donkeysという集団の活動は、以前にもこのブログで触れたことがあったと思う。Brexit推進陣営の嘘のことばを、いちいち読まなければならない文章ではなく、見ればわかるようにデザインして(ツイッターのスクショだったりするのだが)広告掲示板に掲げたりしてきた集団だ。最初は紙に印刷したものを媒体としていたが、ほどなくビデオも媒体となり、人の目を引き付ける映像が、トラックに搭載された大型スクリーンに表示されたり、街の建物に投影されたり、ドーヴァーの白い崖に投影されたりしている。

今回はトラック搭載のスクリーンが登場した。

最初は、ユニオン・フラッグにUNITE THE KINGDOMという文字が入ったディスプレイとして、参加者の記念撮影スポットとなっていた大型スクリーンだが: 

https://x.com/ByDonkeys/status/2055692134095667421

10分後に様子が変わる。人々の様子も変わる。

https://x.com/ByDonkeys/status/2055692134095667421

このように、IMMIGRATION MAKES BRITAIN BRILLIANTと表示された(BRILLIANTはご丁寧にレッド、ホワイト、ブルーで点滅する)画面に続いて、英国を素晴らしいものにしてきた移民たち(歌手ジョージ・マイケル……彼の作ったヒット曲がバックに流れている、陸上競技モー・ファラー、歌手デュア・リパなど)が次々と画面に現れる。やがて、「やられた」と気づいた者がトラックによじ上って配線を何とかしようとしたらしい。そして警察の出番。

画面はフレディ・マーキュリーだね

その後も、Wake me up before you go-go♪ と音楽が流れ、「移民」たちが画面を躍動する中、「みんな移民じゃないですか We're all immigrants」の言葉に続けて、エリザベス2世を皮切りに(現王室はドイツ系である)次々と、「誰もが知るイギリス人だが、実は移民」という人たちが出てくる。アメリカ人やアイルランド人を入れたら確かにこうなる……例えば画面に出てくる中でも最も「英国人」らしい英国人であるウィンストン・チャーチルはお母さんがアメリカ人だし、幼少期はアイルランドで過ごしている。デモ主催者のヤックスレイ=レノンも両親の一方はアイリッシュだし、RFUKのナイジェル・ファラージはカトリック教会の弾圧を逃れてイングランドに亡命したフランスのユグノーの難民の家系だ(そしてBrexitを推進しておきながら自身は母方の家系を利用して取得したアイルランドのパスポートを持ち欧州大陸にも足場を確保していた)。Led By Donkeysは、今の極右陣営が言ってる「移民」はそういう移民ではない(有色人種やイスラム教、ヒンズー教、シク教など異教徒のことを言っている)ということをわかっていてこれをやっている。このころには警察がスクリーンの前に入って、デモ隊とスクリーンの間に壁を作っている。鉄壁のディフェンスである。

https://x.com/ByDonkeys/status/2055692134095667421

そしてデモ参加者たちが騒然とする中、「移民」たちに満たされた画面が切り替わって初期のユニオンフラッグになり、そこにそのメッセージが表示される。

https://x.com/ByDonkeys/status/2055692134095667421

"Stay hydrated." 「水分補給を忘れずに」である。参加者の服装を見るに、この日のロンドンはあまり気温が上がらなかったようだが、5月のこの時期は暑くなることも考えられるわけで、「ちゃんとお水飲んでね」という思いやりの一言を映像に仕込んでいたLed By Donkeysは優しい。

このフレーズについては、英会話情報サイトに何人かの講師が投稿したものが一覧になっているので、それをリンクしておこう。

eikaiwa.dmm.comここに書かれていることを総合すると、 "Drink water." でも通じなくはないけれど、hydrateを使うほうがより自然、ということになろうか。

っていうと日本の人からは「hydrateなんて、そんなむずかしい単語、知らないし、わかりません!」って反発・拒否されるんだよね。あなたにとって難しかろうが何だろうが、現地ではそれが自然だっていうことなんだけど……。「それが自然な英語表現」と言われたらそれで覚えるっていうことの積み重ねっすよ。しかもたった2音節の単語を「むずかしい」って……総理大臣の名字が4音節もあるのに連呼できるんだったら2音節は楽勝。

hydrateという単語についてはDictionary.comを見ておくとよいです。読み方はカタカナで示すなら「ハイドレイト」。

www.dictionary.com

語源(語幹といったほうがわかりやすいか)はhydro-(カタカナで「ハイドロ」)で、これは「水」の意味。というともうカタカナ語で日本語に入ってることに気づかれるかと。土を使わず水と「ハイドロボール」を使った栽培方法を意味する「ハイドロカルチャー」や、ポケモンに出てくる「ハイドロポンプ」など。

 

 

 

 

*1:このUnite the Kingdomという名称の前に、北米のUnite the Rightという運動があったが。

「文脈がすべてである」という命題(引用元確認の必要性)と、今どき、「和訳」を焦点化するというナンセンス

 

とても読みづらい英文が話題になっていた

はてブのトップページにアクセスしてみたら、匿名ダイアリーの次の記事が話題になっていた

anond.hatelabo.jpだらだらと長くなっていて、構造的にも非常に読みづらい英文で、しかもイディオム入りの文である。これを「和訳」できるかできないかでマウントを取る、あるいは世を憂えてみせる、という発想自体が、ラサール石井が当選後に開口一番仮想敵としてぶち上げた界隈めいていて、なかなかほほえましい*1

誰もソースを確認していないようである

で、ブコメをざっと見たところ、誰も「ソースは?」という指摘をしていない。ソースを提示している人もいないようだった(私がブコメを非表示にしているユーザーさんが書いているかもしれないが)。

この文の読みにくさは、「あ、あれかな」と思わせる性質のものだが、誰もそれを確認していないらしい。

なぜソース確認が重要なのか(「文脈」というもの)

こういう読みづらい文に接したとき、うちらが第一にやるのはソースの確認、つまり文脈の確認である。多くの文は単独の存在としてではなく文脈の中で書かれ、文脈全体の中ではじめて意味を成す――というか、「はっきりした像を結ぶ」――ものである。

例えば小説の書き出しで「海を見ていた」とあるとき、読者はそれ単体で意味が取れた気になるかもしれないが、実は単体では意味はなさないように書かれている――海を見ていたのが誰なのかが書かれていないし、その他の状況なども何も書かれていない。それは意図的なライティングのテクニックで、次に関心をつなげ、先を読ませるための文体だ。すぐ後に「ふと、冷たい風の気配を感じた。エリザベスは立ち上がり、スカートから砂をはたき落とすと、徐々に暗くなっていく空のもと、海に背を向けて歩き出した。あれからもう2年になる」*2みたいに続いているのを読んで、読者ははじめて、「エリザベスという人が海を見ていたんだな」と理解し、同時に「日没まで思索にふけっていたのだろうか」「何か思い詰めていたのだろうか」「2年前に何があったのだろう」などと関心を掻き立てられて、先を読む。

この「先を読む」という行為を引き起こすために、冒頭ではあえて漠然とした記述でぼんやりとしたことを書く、というテクニックは、小説だけでなく報道媒体の特集記事のようなものでもよく用いられる(報道の中でも、何がどこで起きたのかといった情報、所謂「5W1H」の情報を伝えることが目的の文は、該当しない。「〇〇高速道路で車6台が絡む玉突き事故発生、通行止め」ということを伝えるべきときに、悠長に「ゆるい左カーブが続く道、ドライバーは一瞬夢の境地に至ることもあろう」などと記事を書き出しているヒマはない。ただし「〇〇高速道路の△△インター付近で続発する交通事故、対策は」といった解説記事ならば、このような書き出しもありうる)。

私がこのような書きかたの最初の遭遇例として覚えているのは、スポーツの試合の分析記事で、文頭が「競技場は静まり返っていた」から始まり、延々と誰かの心理描写や情景描写が続いていて、どっちが勝ったのかさえ、しばらくははっきりとわからないというものだ(日本でもNUMBERの記事などであるかもしれない)。3パラグラフほど読んでようやく、話が具体的に見えてくる。読者をそのくらいの力で引き込もうとする、ドラマチックな文体である(が、英文のスタイルに慣れていないと読みにくくてしょうがない)。

なので、うちらはこういう意味の取りづらい文に単体で遭遇したときは、まずはそれがどういう文脈で書かれているのか、どういう文章のどの位置にある文なのかを確認する。翻訳界隈で言う「文脈がすべてである Context is everything」はそれ自体が多義的で、ひとつの語についても言うが(単語の「意味」というか訳語の確定にも文脈が必要である。英語のsolutionが「解決策」なのか「溶液」なのかは文脈がないと確定されない)、このように、書き手がどういう意図・テクニックでその文を書いているかということについても言う。

この文のソース(引用元)

というわけで、件の文の一部、 "The guy whose actual paid job it is to try to get those in power" をコピペして、引用符付きでウェブ検索に投げてみた。私はオールドスクールなのでこういうときは普通にウェブ検索を使う。

一発である。イランの政治家の発言(の英訳)のソースを探すとかいう大変なことをやることも多い立場からすると、本当に朝飯前だ。

というわけで当該の文のソースはこちら

time.comそして出現箇所は、案の定、文頭。

https://time.com/5932014/donald-trump-christian-supporters/

《文脈の力》で読解する

話は、この次のパラグラフ(第2パラグラフ)でいきなり具体化する。

“If you can defend this, you can defend anything,” wrote Russell Moore, a theologian who is also the president of the Ethics and Religious Liberty Commission (ERLC) of the Southern Baptist Convention (SBC), in an excoriating editorial to his fellow evangelicals about the breach of the Capitol. 

つまり、はてな匿名ダイアリーで取り上げられていた読みにくい文の "the guy whose actual paid job it is to try to get those in power to think about a higher power" は、"Russell Moore, a theologian who is also the president of the Ethics and Religious Liberty Commission (ERLC) of the Southern Baptist Convention (SBC)" である。これでもまだ長いと思うなら、"Russell Moore, a theologian who is also the president of the Ethics and Religious Liberty Commission (ERLC) of the Southern Baptist Convention (SBC)" というように、関係代名詞以降の部分をワンランク下げるようにして読むとよい。

慣用表現だって読解できる

また、件の読みにくい文の "got about as ticked off as a polite Southern gentleman of faith is allowed to get" の部分、これはイディオム(慣用表現)が入っていて、それを知らなければわからないのだが、それも読解は可能だ。これは、受験でいえば東大など国立難関二次対策などでよく練習させられるあれである。

まず、"a polite Southern gentleman of faith" が "the guy whose actual paid job it is to try to get those in power to think about a higher power" とイコールであるということは、翻訳をやるくらいの人なら、匿名ダイアリーのエントリを読んだ段階で一目瞭然だと思うが(これが一目瞭然でない人は翻訳に手を出す前にやるべきことが山ほどある)、これは第2パラグラフに名前が出てくるRussell Moore氏のことである。

そして、この人が "If you can defend this, you can defend anything"(第2パラグラフ)と述べているということが、 "got about as ticked off"(第1パラグラフ)と表されている。

この ticked off というのが、見るからに慣用表現で、それを知らなければ意味が取れないという性質のものだが、"If you can defend this, you can defend anything" という実際の発言が読めれば、何となくであっても意味は取れるだろう。これが《文脈の力》である。難関国公立受験生はこの力を鍛えておくように指導されるだろう。

"If you can defend this, you can defend anything" (「これを擁護できるのなら、何だって擁護できる」)は、つまり "You can't defend this" (「こればかりはどうやったって擁護できない」)という意味で、つまり、発言者は「これ」に対して大変否定的な見解を抱いているし、憤慨している。(「これ」が何かは匿名ダイアリーの筆者が省いて引用したところにJan. 6と書かれていることで判断できるし、2021年1月に常識的な範囲でニュースを追っていた人ならば、記事の日付――Jan 21, 2021――でも、2021年1月6日のことであろうと察しをつけることはできよう。「1月6日」とは何かということは、この記事を読む人には社会的な一般常識と想定されている。東日本大震災をリアルに知るうちらの「3月11日」みたいな日付である。)

その憤慨が ticked off という慣用表現で表されている。

仮にこの慣用表現の意味を知らなくても、このようにして読み解くことが要求されるのは辞書が使えない場合に限られる、今ならAIもある、と余裕ぶっかましたくなるかもしれないが、実際のコミュニケーションのスピードのなかで辞書を引いているヒマがないときやAIが使えないとき、あるいはAIが幻覚を見てらりらりしているときのことを想定すれば、余裕ぶっかましてもいいけど損するのは自分だと知っておいてもいいかなと思う。

ちなみに英和辞典で確認するとこう

ejje.weblio.jp

まだ問題は残る

ここまでこぎつけてもまだ問題は残っている。当該の文(第1パラグラフの文)の述語動詞である "got about" である。get aboutは慣用表現で「歩き回る」といった意味があり、「世俗権力者により高位の力について考えさせることが仕事の人」がget aboutするのだから、「東奔西走するのかな」と読み解くだろう。だがそれだと詰む。

見やすさのために、もう一度件の箇所を示す。ticked offはangryと置き換えてもよいのでそうしておこうか。

the guy ... got about as angry as a polite Southern gentleman of faith is allowed to get.

と、見えてくるものがあるはずだ。

これは、got aboutというつながりではなく、got / about as ~ as ... というつながりではないか、と。

つまり、

He got as angry as a gentleman is allowed to get

にaboutが入り込んで、

He got about as angry as a gentleman is allowed to get

となっている。表現を少しやわらげるための語句で(日本語ならば語尾で調節するような性質の表現)、あえていえば意味は「およそ~」のaboutだろうが、訳出は無理にしなくてもいい。ソースをたどって少し真面目に検討すると、同一文で匿名ダイアリーの筆者が引用していないところにperhapsがあるので、それとの呼応とも考えられる。「断言しきらない」ようにする書きかたというか、そういうの。これは私は自分では使ってないので(使いこなせないから)ぼやっとしか説明できなくて済みません。

 

んで、こういう性質の英文について、「和訳」を焦点化している匿名ダイアリーの筆者は、何を考えてるんだ、と私は思うんですよ。大学受験においてすら、「和訳するための英文解釈」の時代ではもうないわけです。

 

なお、当該の記事は、トピック(Jan6の暴動・クーデター企図と福音派)について関心がある方は全文読む価値があるかもしれませんが、私は関心がないので第2パラグラフまででストップ。(この先に何が書かれているかは私は把握していません。)

 

以下、当該文の対訳例と追加の文法解説を有料でつけておくので、本記事が役立ったと思われたらご購入いただけると幸いです。

*1:ネタでやって、釣ってるんだと思うけどね。最近「英語学習」をせずにすむたった一つのさえたやり方として「AI」を持ち出すというのが定着しているので、それの観測かな、と思ったり。でも、医者、弁護士からエンジニア、デザイナー、画家に至るまで、ガザのTwitterユーザーたちがなぜあれほどのリーチを持っているかというと、あの人たちがちゃんとした英語を自分で書けるからなんだよね。日本についてはその点は絶対楽観できない。多くの場合、インテリでもちゃんとした英語は書けないから。

*2:これは今思いついたもので、何からの引用でもない。勝手に続き作ってくれてもかまいません。

この続きを読むには
購入して全文を読む

were to do ~の仮定法でのifの省略と倒置、挿入、イディオム(ホロコーストという過去の現実と、現在を、イスラエルの中から)

ホロコーストを記念する(「記憶に刻む」と言った方がいいかもしれない)ための日は、いくつかある。ホロコーストで殺された人々、特にユダヤ人の逮捕・移送・殺戮が行われた各国でのものもあるが、大きなのは2つ。

1つは国連の「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー」で毎年1月27日、これは国際的な追悼と記念の日で、欧州とイスラエルの各国首脳も参列して大々的な式典が行われ、BBCなどで中継される。

もう1つはイスラエルの公休日になっている「ヨム・ハショア」でユダヤ暦のニサン月の27日。ウィキペディア日本語版では2024年までしかリストアップされていないが*1、2026年の今年は4月14日だった。その日、私がいつも見ている画面には、イスラエル国内から、この日のことを伝える言葉が流れてきていた――いくつかは最初から英語で書かれ、いくつかは現地語(ヘブライ語)の投稿がGrokによって自動的に英語で表示されている状態で*2、私がフォローしている範囲内のこととて、そのいずれもが、ホロコーストを利用して正当化されているイスラエルの拡張主義やアパルトヘイトを批判するものだった。その投稿のひとつが、国際法と人道支援の専門家で法律家(弁護士)であるイタイ・エプシュタインさんによるものだった。

というか、その投稿には、最近当ブログでよくメモっている類の、ウェブ検索などでは簡単には見つけられない英文法の実例が含まれていた。それに気づいたときの私の投稿: 

というわけでその投稿: 

実例が含まれている部分は下の方にあって、最初の画面には表示されていない。

*1:誰も見ていないんですかね……。

*2:私はTwitter/Xの設定言語を「英語」にしてあって、使っている端末の設定が「日本語」だが、この3月のGrok翻訳の訳文の自動的な表示の導入によって、自分の画面では日本語と英語以外の言語は自動的に英語で表示されるようになった。といっても今、自動的に置換されて流れてくるのは、ヘブライ語とアラビア語ばかりで、韓国語やインドネシア語などアジアの言葉や、フランス語やスペイン語など欧州の言葉がどうなるのかはまだ確認できていない。

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「持ってる」を英語で言うと(米副大統領の悪運)

今日はもうひとつ、興味深い実例を見かけたのでメモしておく。

日本語の俗語表現で、「持ってる」というのがある。「あの人がやるといつもいい結果になる」といった文脈で用いられる表現で、「2000年代初めごろから、スポーツ選手などが使い始めて広まった」(小学館デジタル大辞泉)とのことだ。逆の意味で「持ってる」こともある(つまり、いつもよくない結果になる場合)。

それに相当する表現が、向こうから勝手に流れてきた。こういう面白い用例に出会えることが増えていることについてはトランプ政権に感謝すべきかもしれないが、この政権が殺している人の命や、この政権のために破壊されている国際秩序や環境といったものに比べたら、そんなポジティヴな点は微々たるもの、パソコンのスクリーンについているホコリの繊維1本くらいかもしれない。

J. D. ヴァンス米副大統領が、フランシスコ教皇に会いに行ったら教皇は亡くなり、イランとの交渉をおこなったら交渉が決裂。ハンガリーの選挙でオルバンの応援に行ったらオルバン大敗。「この人は、持ってるね」という投稿である。その表現が: 

Man’s got a streak.

"'s got" はhas gotの省略形で意味はhasと同じ。"a streak" は「ひとつの筋、流れ」という意味で(streakは、飛行機雲を数えるときに使う)、a streak of good luckといえば「強運が続くこと」という意味になる。

あと、この文のように、主語で無冠詞のmanが使われる例はまれに遭遇するが、辞書を引いても「人というものは」の意味のmanのほかは、特に何も載っていないので解説ができない。個人的には、口語でなおかつ口頭での表現で、This man’s got... のthisが省略されている(わかりきっているものとして落とされている)のだろうと思うが、確証はない。

一応、ウェブ検索結果: 

https://duckduckgo.com/?t=ffab&q=%22man%27s+got%22&ia=web

というわけで、アメリカの人々が世界のために考えてくれている。

「(ハンガリーの)次はどこに送ればいいですかね?」

 

そんなことより、まずは自国内でその問題を何とか……お願いします。

 

 

"the house that Jack built" 式の言葉遊び、など(ホルムズ海峡封鎖に関するトランプ発言をめぐり)

難読英文の例をお探しの英語教育界隈のみなさま、こんにちは。Twitter/Xですばらしい例が、ホルムズ海峡(概念)のほうからどんぶらこどんぶらこと流れてきたので、シェアします。

"This is the house that Jack built" が、《関係代名詞のthat》が連なる形で、どんどん長くなるマザー・グースの童謡があります。

This is the farmer sowing his corn,
that kept the cock that crowed in the morn,
that waked the priest all shaven and shorn,
that married the man all tattered and torn,
that kissed the maiden all forlorn,
that milked the cow with the crumpled horn,
that tossed the dog,
that worried the cat,
that killed the rat,
that ate the malt
that lay in the house that Jack built.

つみあげうた - Wikipedia

どういうことかというと: 

This is the house that Jack built.

  ↓
This is the malt that lay in the house that Jack built. 

  ↓
This is the rat that ate the malt that lay in the house that Jack built. 

  ↓
This is the cat that killed the rat that ate the malt that lay in the house that Jack built. 

  ↓
This is the dog that worried the cat that killed the rat that ate the malt that lay in the house that Jack built. 

  ↓
...... 

という具合です*1

うちら外国語としての英語を習得しなければならない(ならなかった)立場では、これは頭が大混乱してわけわかんなくなる苦行の英文かもしれませんが(英語を勉強として習う立場では、英文がどんどん長くなるのはこういう仕組みなんだということがよくわかる例文ではあります)、英語母語話者の子供たちにとっては同じ言葉が繰り返されてお話が展開していくという楽しい言葉遊び、くすくすと笑えるようなものです。

このような「同じ言葉の繰り返し」は、早口でばーっと語られるコメディのセリフなどによくあると思われますが、文字で見ることはあまりありません。たぶん、文字にならないジャンルの言葉なのだと思います。

そういう例が、ホルムズ海峡(概念)のほうからどんぶらこどんぶらこと流れてきたのです。

投稿主のクリス・マーテンソンさんは、Peak Prosperityという運動体を創設し運営している方で、開発や環境保護、エネルギー問題といったテーマを主に扱い、経済という側面から検討を加えている。つまり、エネルギー問題に詳しい方で、その観点からホルムズ海峡(概念ではない)の事態を見守っておられる。

そのマーテンソンさんの、トランプが……えっと、何を発言したんだっけ、ああそうか、「アメリカがホルムズ海峡を封鎖する」という発言をおこなったあとのこの一言。

A blockade to block the blockade that's blocking the Strait that wasn't blocked before being blocked due to war of choice launched by Trump. 

分解しないと読み解けない(笑)。

A blockade to block the blockade 「封鎖を阻止する(ための)封鎖」

A blockade to block the blockade that's blocking the Strait 「(ホルムズ)海峡を封鎖している封鎖を阻止する(ための)封鎖」

A blockade to block the blockade that's blocking the Strait [ that wasn't blocked before being blocked due to war of choice launched by Trump ] 「トランプによって始められた(必要に迫られてではなく)選択としての戦争が原因で封鎖されている(ホルムズ)海峡を封鎖している封鎖を阻止する(ための)封鎖」

 

筆者は、この「つみ上げ歌」みたいな長い一言に、トランプ文体で "Strategery!" 「戦略!」と付け加えて、投稿を結んでいます。

この strategery という単語も見慣れないのですが、覚える必要はゼロ。言語能力に疑問符がつくジョージ・W・ブッシュが大統領選挙前の討論でなした発言を、コメディアンがネタにしたものなので。

 

なお、この投稿に対してのリプライで、「また思い付きで過激発言してるよね」という発言に、マーテンソンさんは次のように応じています。

辛辣。

これ↓もリプから。めっちゃ笑った。ソースはこちら

ダチョウ倶楽部か(笑)

「ここは俺が海峡封鎖するか」

「やだやだ、ぼくがやる」

「どうぞどうぞ」

 

どう転んでもお笑いにしかならなくて困惑。

 

トランプ・ネタついでに、もう少しメモ: 

「こいつらに比べたらずっとまともな自殺カルトがいくつもあるよね」。同感です。

 

 

*1:今はCtrl+C, Ctrl+Vでするする書けるけど、手書きしていたころは大変な苦行だったはず。私はやったことないけど。

「どこの何とはあえて言わないが」という文脈で用いられる不定冠詞のa(トランプの「文明が滅びる」発言は原文で見ないと読み誤るかも)

米国とイランは停戦で合意したそうだ。こないだアフガニスタンをボムっていたパキスタンが停戦交渉の仲介役となったというのだから、もう本当にわけがわからないが*1、ともあれ条件付きの2週間の停戦は合意されたし、その宣言もあった。なお、パキスタン首相は「レバノンも含めて停戦」と言っているが、イスラエルは「それはない」と明言している*2。停戦発効前からもうぶっこわれている。

www.aljazeera.com

問題は、ほぼだれも、この「停戦」を真に受けていないということである。

そりゃそうだ。「停戦」の看板をかかげながら攻撃を続行するのが昨今のあの人たちの流儀。イスラエルに関してはガザでの「停戦 ceasefire」は "You cease, we fire" (そっちは停止、こっちは攻撃)の意味だと言われているくらいで、今もまだ「テントに爆撃があり、病院に死傷者が運び込まれた」といったことが、現地にいるツイ友たちから連日投稿されてくるのが現実だ。

言葉が意味を失い、信用も失った世界。 You can have my absence of faith. 

 

ともあれ、この「停戦合意が宣言された」というニュースの前日にあったのが、ドナルド・トランプによる「ひとつの文明の徹底壊滅」発言である。この人物の大げさな発言など、YouTubeのインフルエンサーの大げさな動画タイトルと同じくらいに受け取っておけばいいと個人的には思うのだが、問題はこの人物がいわゆる「核のボタン」を握っているということで、こんなのはハッタリにすぎないと広く了解されていたとしても、「これじゃあイランが核武装してもしょうがないよね」「近隣のインドもパキスタンもNPT体制の外で核武装してるしね」「何より最大の敵であるイスラエルがね」というふうに展開することは、止めようがないだろう。

さて、このトランプ発言だが、英語での発言をプロが解釈して日本語化しちゃってあるものだけを見て済ませるのはもったいないというレベルで教材にしやすいものだった*3。トランプの発言が教材になるなどということは(皮肉でなければ)稀有なことなので、ちょっと書き留めておきたい。

トランプの元発言は下記の通り: 

“A whole civilisation*4 will die tonight, never to be brought back again. I don’t want that to happen, but it probably will,” Trump wrote on his Truth Social platform.

https://www.aljazeera.com/news/2026/4/7/trump-on-iran-a-whole-civilisation-will-die-tonight

《不定冠詞のa》は、「特にどれと特定しないものに用いる」と教えられるだろう。私もそう教えている。よくある、というか一般的な用例が、初出個所では不定冠詞のa, 次は定冠詞のthe、というものだ。中学レベルの例文を使うと: 

   I bought a car. The car is white. 

「車を買った。白い車だ」という意味だが、直訳すれば「一台の車を買った。その車は白い」となる。初出の箇所では、発話者が話をしている相手はこの「車」について何も知らない。だから発話者は不定冠詞を使う。2番目に出てくるところでは、話をしている相手は「この人が買った車」だということを了解している。だから発話者は定冠詞を使う。

これが基本的なaとtheの用法だ。

 

では今回のトランプの「文明殲滅」発言はどうか。この場合、トランプが念頭に置いている「文明」はすでに特定されている。トランプの発言を聞いている(読んでいる)人々にとってもその「文明」は「どこかにあるひとつの文明」ではなく「特定の文明」、というか日本語では「某文明」と表されるであろうものだということを知っている。だからここでは、王道の英文ライティングならば、定冠詞のtheを使うべきところかもしれない。

だが実際にはそうではなく、aが用いられている。

これは「どこの文明とはあえて言わないが、ひとつの文明が」という意味で意図的に用いられている不定冠詞で、脅迫的な文脈がある。

小説などであると思うが、「おたくのお嬢さん、かわいい盛りですね。おいくつでしたかね。3歳? ほう、それは目の中に入れても痛くないでしょうね。ところで、そちらさんがこちらの言うことを聞かないんなら、どこのどの子とは言いませんけど、3歳くらいのお子さんが……」というような脅迫の文脈である。

マフィア映画などを掘ればこの不定冠詞の用例はたくさん出てくるのかもしれないが、私ではすぐには用例が思いつかない。というか自分で書けって言われたら、"The civilisation in the whole will die..." といったように書くような気がする。最初から定冠詞を使って「あの文明は」という形で。

 

で、この原文( "A whole civilisation will die tonight" )を読まないと、あるいはこの不定冠詞のaが読み解けないと、トランプ発言は「世界全体の文明というものが丸ごと滅びる」という意味だと受け取ってしまうかもしれない。実際、はてブなどでもそうとらえている方がおられるのだが、それは間違いである。

 

これは確かにわかりづらい。アルジャジーラ・イングリッシュのlive blogでの扱いがわかりやすかったので、スクショでメモっておいた。

https://1-e8259.azureedge.net/news/liveblog/2026/4/7/iran-war-live-trump-warns-of-devastating-attacks-as-deal-deadline-nears

リード文の2番目でトランプの元発言、 A whole civilisation will die tonight” が紹介されているが、見出し*5は "Trump says Iran ‘civilisation will die’..." となっている。AJEの見出しを書いた人がトランプ発言を文脈づけて解説を補った形の見出しである。

AJEと同じような解釈・解説をしている大手メディアは他にも多くある。例えば英BBC: 

Trump condemned over threat that Iran's 'civilisation will die'

https://www.bbc.com/news/articles/cwyk7xgkzvzo

米ABC:

Trump, hours until deadline, threatens Iran's 'whole civilization will die tonight'

https://abcnews.com/Politics/trump-hours-deadline-threatens-irans-civilization-die-tonight/story?id=131797915

米NYT: 

With Threat to Wipe Out Iran’s Civilization, Trump’s Rhetoric Goes Beyond Bluster

https://www.nytimes.com/2026/04/07/us/politics/trump-iran-civilization-threat.html

 

冠詞の話をするとほぼ必ず「そんな細かいことはどうでもいい」という反応が返ってくる。最近ネットで見かけた「AIで英語学習」と銘打った英会話教材の宣伝ビデオでは、人気俳優が不定冠詞を全部抜かしてある変な「英語もどき」でスマホに向かって話しかけて「赤ちゃんみたいに話せば楽しい」という方向でアピールしていた。その英語で実際に乗り切れるとしたら、それは話者が彼で、彼がどういう人か知っている人が話の相手になっているという個々の人間関係がある場合だ(例えば商店の客と店主、といったものでも)。また、会話ではこれでいいんだと言い張るならば、それが会話だからだと反論しておく。「あの人気俳優が書いた」という文脈もなしに、どこの誰とも知れない人物が書いた冠詞の欠落した英文もどきを読まされる人は、「どんなバカがこれを書いたのか」いう疑問が先に立って、書いてある内容が頭に入ってこない状態になるだろう。日本語でたとえていえば、A4にびっしりと書かれている報告書が、全部ひらがな、というようなものだ。読むのが大変で内容が頭に入らないだろう。それが許容されるのは、例えば『アルジャーノンに花束を』のチャーリィの場合くらいだ。

とはいえ、私自身、不定冠詞や定冠詞について「そんな細かいこと」扱いができるほど自然に使えたらいいなと思っている。だが実際には、冠詞というものを持たない言語を母語とし、それによって思考し思考を言語化し記述することが当たり前の身には、aもtheも「そんな細かいこと」には絶対になりえない。英語以外の言語も(かじる程度でも)学ぶと、これの意味がよくわかると思う。

 

ついでに、civilisation (civilization) という語について。「文明」は基本的には抽象名詞だが、トランプ発言で不定冠詞をつけている、つまり可算名詞として扱っているのは、それが「個別の文明」を言っているからである。「文明が滅びる」という日本語から、全世界の人類の文明が瓦解することを想起してしまうのは、「文明」という日本語を抽象名詞で読解してしまっているからだ。

これについて江川『英文法解説』では、beauty, kindness, surprise, death, failure, diappointment, democracy, delicacy, experienceといった語を例に解説している (pp. 5-6)。これを読むと読まないとでは大きな違いがあるので、少しでも英語をまじめに習得しようとしている人は、必ず見ておいていただきたい。また、翻訳をしたい人ならば「言われなくても当然習得済み」のレベル(大学受験レベル、と位置付けられているもの)で、翻訳者を名乗った瞬間に誰も教えてくれなくなるくらいの基礎中の基礎である。

 

 =-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=

 

花吹雪舞う道を歩きながら、「第二次大戦後の世界は、こういう事態を避けるべく『国際秩序』を構築してきたはずだが」と思ったら、とんでもない無常観につつまれて、古文の教科書に出てくる人物のごとく、はらはらと涙をこぼしたくなった。こぼしてないけど。

「ナチスという絶対悪」にすべてをおっかぶせた「世界」(つまり西洋世界)のフィクションは、たったひとりの「気のふれた人物」(エルバラダイらがmadmanと評価している)とその取り巻きによって、あっというまに解体されてしまった。そのあとに現れるのは、ガチもんの「ナチスはよいこともした」論者だろう。

 

イラン攻撃のかげで、米国ではJan6(2021年1月6日のワシントンDCでの内乱/クーデター未遂)関係者の無罪化が進められてもいる。というかこれは、イラン攻撃より前にあった既定路線だろう。

The Supreme Court on Monday cleared the way for President Donald Trump’s administration to drop the government’s criminal case against Steve Bannon, a former White House adviser convicted in 2022 of defying a subpoena from lawmakers investigating the January 6, 2021, Capitol riot.

The Supreme Court’s decision follows a move by federal prosecutors in February to drop the indictment brought during President Joe Biden’s administration. Both the Justice Department and Bannon had asked the high court to toss out an appeals court ruling upholding the conviction and send the case back to a trial court so that the original charges against him could be dismissed. 

https://edition.cnn.com/2026/04/06/politics/supreme-court-bannon-case

 

「エプスタイン・ファイルを隠蔽するためなら何でもやるトランプ」と騒がれているし、その側面はきっとあるのだろうが、それよりもっと大きなのが、アメリカ合衆国という国の在り方を完全に変えようとしていることだろう。Jan6暴動の無罪化・正当化はその始まりだと思う。

 

*1:アラブ諸国は仲介はできる立場にはないし、NATO加盟国もそうだし、イスラエルが嚙んでるので単純な二国間の事態ではないし……ということを考えると、「なるほど」感はあるが。

*2:イスラエルでは反戦運動がかなり盛り上がっているようで、ネタニヤフは相当追い込まれていることは確実。この期に及んでもまだ国外脱出せずにイスラエル国内で頑張っている反戦運動の牽引役がこの規模で存在するということは、うちらは認識しておくべきだろう。パレスチナ支援の気持ちからだろうが、イスラエルという国丸ごとを「悪者」扱いし、国家と国民ひとりひとりの区別をつけることを拒絶する言説が、街頭行動の現場にはあるし――個人的に、たまりかねてカチコミかけたことは一度ではないのだが。うちらだって「どんなに声を上げたって無力」ということはいろいろあるのに、「今イスラエルには、ネタニヤフ批判者は一人も残っていません。残っていたら止めているはずです」みたいな大げさな発言が許容されちゃうというのは、殲滅の許容の下準備でなければ、心底理解不能。

*3:実際、「ソース原文見よう思ったらキャッキャ言うニュースばっかで全然見つからんし」とおっしゃっている方も。

*4:アルジャジーラ・イングリッシュの報道が「元はイギリスの大手報道機関の人たちが作ったもの」というのが如実に現れている綴りでおもしろい。米語ならcivilizationって書く。余談だが、「非米」のあらわれとしての英国式綴りというのは実際にある(私も「非米」明示の目的もあって、ほぼ常に英国式で書いてる)。けれど実際の「大英帝国」という歴史的経緯を踏まえれば、それが非常に屈折したものであることも留意が必要。

*5:当該記事はライヴ・ブログであるため、その後見出しは書き換えられており、現在はこれと同じ見出しは確認できなくなっている。

BBC Newsが合衆国大統領の下品な発言を喜んでいるので、BBC Newsのアプリを見えないところに追いやった

スマートフォンを使うようになってからずっと、ロックを解除して最初に目に入るところには、BBC Newsのアプリを置いてあった*1。一応「イギリス好き」だし、「さて、ニュースをチェックするかー」って思ったときにぱっとアクセスできるようにしてあるのが、BBC Newsだったのである。

さっきそれを解除した。BBC Newsに呆れかえる局面を通り越して、不快感を抱くようになったからである。BBCの美しいロゴは自分の日常生活の一部と思えるほどに好きだったのだが、もうなるべく視界に入れたくない。

 

現在、この位置には(いったんReutersを置いたんだけどそれを取りやめて)アルジャジーラ・イングリッシュ (AJE) が鎮座している*2

 

なぜこんなにBBCへの気持ちが変わったのか。すでにガザ・ジェノサイドで気持ちは離れていたが*3、記事を見るたびに「批判的な私」としてふるまうのも嫌になるほど気持ちが離れてしまったのは、BBC Newsの耐え難い幼稚性のせいである。

 

この「幼稚性」とは何か。

*1:どうでもいいことだが、2段目は無印やダイソーなど買い物系のアプリや電子書籍のアプリとSNS、3段目は電卓やマイクブロッカー、辞書など実用系を中心に並べてある。以上、全部はあけっぴろげにしないけれど概要は開示しておくので、ネットストーカーは詮索しなくていいよ。

*2:ちなみに、アルジャジーラのアラビア語版と英語版は成り立ちが別で、AJEが2006年11月に発足した際に報道の現場で番組作りをしていたジャーナリストたちの多くは、BBCなど英大手メディアから引き抜かれた調査報道等のジャーナリストだ。

*3:なお、ガザ・ジェノサイドでは、自分の価値観の一部を担っていたと言っても過言ではな英ガーディアンを、2023年10月の段階で消している。アプリ削除はもちろん、ブラウザのクイックアクセスからも消したのは、あのメディアがシオニストであるばかりか、ジェノサイド否認のプロパガンダ機関だからである――ガーディアンがシオニストであることはずっと知っていたし、そのうえで「多様な意見」の場として反シオニズムの発言も多く掲載していることや、記者ひとりひとりは必ずしもシオニズムの言説・ナラティヴの担い手ではないということはわかっていたし、それをレスペクトしていたんだが、ジェノサイド否認のナラティヴ(「自衛権を有するパレスチナなど存在しない」という《物語》を含む)で、愛想が尽きたというより嫌悪感をおぼえるようになった。

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助動詞のmay, いろいろなif節、ifの省略と倒置、「現実味のcould」かもしれないもの、など(ドイツの兵役をめぐる法改定)

ぼーっと新着ニュース記事を眺めていたらまたウェブ検索では探せない文法事項の実例を見かけたので、メモっておこう。

記事はこちら

www.bbc.com

内容を要約すれば、ドイツでは、17歳から45歳(いわゆる「戦闘年齢」)の男子に対し、3か月以上海外(国外)に滞在する場合は、軍の許可が必要になる見込み、ということだ(見出しにある「長期間の滞在」は「3か月以上」で、これは旅行業界の概念でも「え」って感じなのではないか。6か月以上ならわかるけど……)。センセーショナルに煽り立てることが活動の一部の収益目当てのインフルエンサーなどなら「ドイツ、徴兵制復活か?!」みたいな見出しを立てそうな話である。

なお、記事を一読した限り、見出しで "German males under 45 may need military approval" と言っていることの根拠は、よほどよく読まないとわからないかもしれない。記事本文でも、第1パラグラフで "German males aged between 17 and 45 may need to seek approval" と書いてある一方で、第3パラグラフでは "In a statement sent to the BBC, a defence ministry spokesman confirmed that males aged 17 and older were required to obtain prior approval for stays abroad lasting longer than three months." と、ドイツ軍からのステートメントを根拠として、許可取得は義務であることが明示されている。これを読む限り「許可を得ることが必要になるかもしれない」という話ではなさそうだ。この点、記事の先を読むと一応読み取れるようにはなっているが、あからさまに「パニックを引き起こさないための文体」で、なんだかなあと思う。

英語の実例としてみるのは第8パラグラフから先: 

https://www.bbc.com/news/articles/cvg3nr83xyvo

The legal basis for the requirement lies in Germany's 1956 Conscription Act, which has been amended several times, most recently last December.

このlieを使えるようにしないとね。lie in ~で「~にある」の意味。the basisとの共起に注目。

次。

Prior to the latest amendment, the obligation to report extended stays abroad applied only if Germany was in a state of national defence or mobilisation. 

これはこれで1文だが、ぱっと読んで述語が見つかっただろうか。

カッコなどを使って構造を示すと(文頭の "Prior to the latest amendment" は文の構造からは外して考えてよい): 

(Prior to the latest amendment,) the obligation ( to report extended stays abroad ) applied ( only if Germany was in a state of national defence or mobilisation ). 

……となり、主語は "the obligation", 述語は "applied" である。このapplyは自動詞で、日本語にすれば「(主語が)適用される」の意味。カッコに入れた "to report extended stays abroad" は主語の  "the obligation" を修飾/説明する句で、全体で「長期間の外国滞在を報告する義務」。末尾の "only if Germany was in a state of national defence or mobilisation" は「ドイツが国家防衛もしくは動員の状態にある場合に限って」で、これが、記事見出しや冒頭で "may need" とmayが用いられている根拠だろう。

日本語でいえば「有事の場合に限り、国民は~しなければならない」みたいなことで、「有事の場合に限り」が重要で、要は「国民は~しなければならない場合もある」と言い換えられる、という理屈だ。

なお、《if only ~》は「~しさえすれば」として暗記している人も多いと思うが、ここではその訳語で考えると意味がわからなくなるだろう。「~した場合に限り」などと、訳語を言い換えられるよう日本語力を鍛えておくことも重要である。

 

で、ドイツ国防省では「同様の決まりは冷戦中もあったので、あんまり違いはないですね」的なことを言っているようだが、冷戦中のドイツは東西分断国家で、互いに敵としあっていて徴兵制もあったので(今も朝鮮半島ではその状態だが)、違いはありまくりだ。国防省がそう言って「パニック予防」を図っているということ自体が、アレだなと思う。

 

次。パラグラフをひとつ飛ばして、

In December, the German parliament voted to introduce voluntary military service, meaning that from January all 18-year-olds would be sent a questionnaire asking if they were interested in joining the armed forces.

この記事、ここまで個別に見てきていないところでも接続詞の《if》が何度も出てきていて、それぞれがどういう《if》なのかを瞬時で読み取る練習にとてもよい素材文だと思うのだが、このパラグラフの《if》は《名詞節》を導いている。この部分は、「軍隊に加わることに興味があるかどうかを尋ねるアンケート」という意味。

やや余談だが、こういう《be interested in -ing》の用法は、これを「…することに興味がある」という対訳でしか考えることができないと、わかりにくいようだ(いくつもの英語エッセイでこれについて書かれているのを読んだことがある)。例えば "Are you interested in obtaining a review copy of my new book?" といえば、「もしよろしければ、評価用ということで新刊を一部、お送りしましょうか」ということだ。わりとかしこまった言い方になる。

 

次。これが本日のメイン。これがウェブ検索ではまず探せない。

From July 2027, they must also undergo a fitness assessment to determine whether they would be eligible for service should war break out.

太字で示した部分は、《ifの省略》で《倒置》が起きている。

  if war should break out 

  → should war break out

そして、この《should》は、江川泰一郎『英文法解説』で「万一のshould」と説明されているもので(p. 257)、「実現の可能性が少ないという話者の気持ちを表す」のだが、現実には「実現の可能性はさほどないのではないかという希望的観測を表す」ということだったりもする。この文は「2027年7月以降は、万が一戦争が起きた場合に、兵役につくのに適格であるかどうかを決定するための健康検査も受けねばならなくなる」という意味。ここはためらいなくmustが使ってあって味わい深い。

そりゃもう、当局がパニック抑制の文体を使いたがるわけです。

ちなみにこういうときのwarは「戦争」という漠然とした抽象名詞ということで《不可算名詞》。個別の戦争は可算名詞です。つまり、概念上の戦争は不可算名詞で "if war should break out," 過去に起きた実際の戦争は可算名詞で "A war broke out." となる。ウィキペディアの「戦争一覧集」のページ見出しはLists of warsである。

 

そしてその次、「ドイツでは憲法(基本法)により女性については兵役は免除され、志願兵に限られている」という説明。これは冒頭からここまでの前提である "German males aged between 17 and 45" に関しての補足なのだろうけれど、おそらくこれでまた現地版の「女さんはー」という女叩きの光景が展開されるのだろうと思う。(「不公平だ」と思うんなら、叩くんじゃなくて法改正を求めて運動しろ。)

 

キャプチャした部分の最後のところ。

While the plan is for voluntary service, if the security situation worsens or if too few volunteers came forward, a form of compulsory military service could be considered.

これはもう「万一のshould」みたいなものもかなぐり捨て、《直接法のif節》、つまり「単なる条件」で「もしも安全保障状況が悪化したり、志願兵があまりに少ない場合には」と書いたうえで、「徴兵制が検討されることになろう/なるかもしれない」と述べている個所。このcouldは《現実味のcould》(「~になることは確実だ」くらいのニュアンス)なのか、《仮定法のcould》(「~になるかもしれない」くらい)なのかは判断できずにいるが、if節が直接法なので、形式的には《現実味のcould》だろうなと思う。

そう解釈すると、文頭のwhileの節が「一応言っとく」的なものということで、筋が通る。「一応、この計画は(徴兵制ではなく)志願兵に関するものだが、安保をめぐる情勢に変化があった場合、もしくは志願兵が人数的に少なすぎる場合は、徴兵制も検討されることになろう」。

 

ドイツはEUの一員で、シェンゲン協定があるので、EU域内なら特に届け出ることなく住むことができる。これと、兵役に関しての「国外長期滞在届け出義務」みたいなのの導入の間には齟齬が生じる。

実際、長期滞在に許可取りが必要ということが注目されたのはこの金曜日(4月3日)になってからだというし、仮に許可を取らずに3か月外国に滞在したとしても、現状、罰則はないということもこのBBC記事には書かれている。

 

'a friend of mine' 型の表現、完了形の動名詞、have yet to do ~、that節の繰り返し、ずっこけ分詞構文かもしれないもの(パム・ボンディ解任)

米トランプ政権のパム・ボンディ司法長官がクビになったというニュースがトップに来ていたので、リンク先の記事をぼーっと読んでいたら(まともに読もうという気はない)、実例を採取できてしまったのでメモしておく。ほか、ちょっと気になるところも含めて。

 

Bondiの読み方を確認する

「パム・ボンディ」は英語で書けばPam Bondiである。Pamは人名(女性名)のPamelaの愛称で、Bondiはイタリア系の苗字だそうだ。

このBondiについて、以前ボンディ司法長官の言動が何かニュースになったときに日本語圏で「読み方が間違っている、『ボンディ』ではなく『ボンダイ』だ」という主張を見かけた。固有名詞の読み方は人それぞれ・場所それぞれで、「この綴りなら必ずこう読む」ということはない*1

確かに少し前にテロ攻撃があったオーストラリアのビーチはBondiと書いて「ボンダイ」と読む。このように、何通りかの読み方がありうる固有名詞については実際の発音を細かく確認することが必要になる。一般人だと本人に聞かないと100パーセント確実なことはわからないが、ニュースに名前が出てくるような人ならニュース映像で確認すればよい。つまりYouTubeで検索するという手段を使えばよい。

ここで注意が必要なのは、自動読み上げソフトなどで作成されているYouTube動画の音声は、固有名詞の読み方に関してはあてにならない、ということだ。そういうのを引き当ててしまうのを避けるためには、大手報道機関が公式アカウントでアップしているニュースクリップに絞り込んで探せばよい。ニュースなら、冒頭部分で局のアナウンサーが当該人物の名前を読んでいるはずなので、確認には30秒もかからない。

私がさっき調べてみたところ、NBC Newsのクリップが見つかった。冒頭のジングルから最初の挨拶を経てキャスターが何かぺらぺらとしゃべったあと、11秒のところで(カタカナにすれば)「パム・ボンディ」と言っているのが誰でも聞き取れると思う。

www.youtube.comというわけで、ボンディ司法長官の場合、Bondiは間違いなく「ボンディ」である。

 

今回の記事はこちら

さて、記事はこちら

www.bbc.com

BBC Newsは基本的に「ドナルド・トランプ大好き」なメディアなので*2、パム・ボンディ解任のこの記事も、冒頭は「トランプさんがー」の連呼みたいなことになっててよくわからない。トランプの筋の通っていない言動を筋が通っているかのように見せかける仕事は大変ですね、という印象でしかないのだが、もとより、(英文のサンプルを探して)ぼーっと読んでるだけなので内容はどうでもいい。

 

"a friend of mine" 型の表現

最初の実例は、ずーっと下まで進んだところにある次の箇所。

https://www.bbc.com/news/articles/ce843ge47z4o

Another Republican critic of Bondi's, South Carolina representative Nancy Mace, accused her of having "stonewalled every effort to hold the guilty accountable" and "seriously undermined" Trump with her handling of the files. 

英語で「私の友人」と言うとき、次の2通りの表現ができる、ということは多くの人が知っているだろう。

  She's a friend of mine

  She's my friend

どちらも「彼女は私の友人である」、つまり「あの子なら友達だよ」を言う表現だ。「使い分け」に血眼になる系の日本の英語教育では細かいことを言うかもしれないが(「"my friend" というと、その子ひとりしか友達がいないみたいに聞こえて変ですよ」など……私も学校でそう教わっている。笑止)、実際には両者の意味は同じで、ニュアンスだけが異なるのだという。ただし、もとより1人しかいないことが前提とされているときは、"a friend of mine" 型を使うのはおかしいので、She's a girlfriend of mine. とは言わない(girlfriendは通例1人しかない存在なので)。こういうのの使い分けは、使い分けが必要なレベルで英語を使うことになる人は大量の実例に接しているうちに自然と身についていることが多いと思う。

というわけで、上記引用で太字で示した "another Republican critic of Bondi's" だが、これは "a friend of mine" 型の言い方で「また別の、共和党内のボンディ批判者」の意味。同じことを "my friend" 型で表せば、another Bondi's critic in the Republican Party とでもなるだろう。不格好だ。だから "a friend of mine" 型を使っているのだろう。

ここで注意しなければならないのは、another critic of Bondi's であって、another critic of Bondiではない、ということである。"a friend of mine" という表現では、ofの直後は目的格 (me) ではなく、所有代名詞 (mine) を使う、ということと紐づけてしっかり確認しておきたい。ちなみに私はこれをまあまあよく間違える。ごちゃごちゃ書いたものを推敲して書き直したりしているときに落としがちな「アポストロフィ+s」である。

 

完了形の動名詞

ついでに同じパラグラフで実例を見ておくと、下線で示した "accused her of having 'stonewalled ..." は《accuse + 人 + of + doing》の構文と、《完了形の動名詞》の合わせ技。文の述語動詞 (accused) より前に起きたことを言うために、完了形にするのである。「かねがねstonewallしてきたとして彼女を批判した」ということだ。

Stonewallというと、日本語圏では1969年の「ストーンウォール暴動/反乱」で知られている語なので、それを連想してしまうと意味が取れないかもしれないが、ここでは固有名詞ではなく(「ストーンウォール暴動」は、その舞台となったゲイバーの名称にちなんだ言い方)、動詞として使われている。stonewallで「議論を妨害する」「話をさせないようにする」の意味だが(まさに「石で壁を作る」ということ。日本語だと「ケンもホロロ」か)、 "stonewalled every effort to hold the guilty accountable" 「加害者に責任を問おうとする取り組みをすべてstonewallしてきた」というこの実例を見たついでにCambridge辞書を見てみると、これが他動詞として使われる場合、目的語として《人》を取ることもあれば(「誰それの発言を封じる」的な用例)、《物事(議論、など)》を取ることもある(「私の呈した疑問点への回答は拒否された」といった用例)ということがわかった。微妙に英米差もありそうだから、より突っ込みたければコーパスで英米比較するのがよかろう。

ああ、辞書っていいなあ。特にウェブ版はスペースの制限がないからいろいろ載ってる。ここまで気にしなければならないのは、自分で英文を書く人だけだが(翻訳者も含めて……最近の人は辞書ひかずに「翻訳(自認・自称)」してるっぽいけど、翻訳する人は普段から辞書ひきましょうね。湖に優雅に浮かんでる白鳥は、水面下では必死の努力をしているということを忘れずに)。

 

yet to do ~がbe動詞じゃなくてhaveを伴っている……

同じスクショ画面からもうひとつ。

Survivors also told the BBC that Bondi had yet to meet them or respond to their emails about Epstein's wrongdoing, and that the matter had become a political liability for Trump. 

冒頭の "survivors" はジェフリー・エプスタインの被害者たちのことをいう。英語では最近、暴力の「被害者」をvictim扱いせず、「過酷な状況を生き延びた人」と言い表すことが一般化していて、ニュースでもsurvivorを使うことが標準となっている。この2つの表現は意識的に使い分けられているものなので、特に暴力の被害という文脈でものを書くことになれば、違いを認識しておくことは必要だ。こちらが参考になる

survivors.org

本題はそこじゃなくて、that節内。

Bondi had yet to meet them 

これを見て「え、be動詞じゃないの」と思ったあなたは私の友人。調べたんですよ。単にウェブ検索しただけだけど。そしたら英語学習系掲示板の大手のスレッドが出てきて、1つ目の回答は難しすぎて読んでてわかんなくなってきたんだけど(have yet to doはhave to doの意味と誤読される、というのはわかるが、「道義的責任」となるとよくわからない。まだ修行が足りてない。I'm yet to learn...)、2つ目が: 

I would say that in North America the standard usage in the sense of "haven't yet done" is always "have yet to."

In Britain, however, they almost invariably write and say "is yet to." No idea why -- I've lived here 20 years and it still sounds completely wrong to me. After all, the auxiliary for almost any verb in English is "have" not "be."

phrases - "be + yet + to-infinitive" vs "have + yet + to-infinitive" - English Language & Usage Stack Exchange

英米差……!!!!! ひょっとして、おまえか!!! 

 

that節の繰り返し

あと、下線で示した "that" は、tellの目的語のthat節が2つ以上ある場合(that節の繰り返し)、2つ目のthatは省略されない、という例の謎ルールのやつ。これも私、よく間違える。下記で下線で示してある構造に注意。

Survivors also told the BBC that Bondi had yet to meet them or respond to their emails about Epstein's wrongdoing, and that the matter had become a political liability for Trump. 

なお、この記事、英文の形・形式しか見ていないので、内容はわかりません。どうせ支離滅裂でわかんないんだし。トランプに忠誠を尽くしてトランプの名前を隠蔽して資料を公開したらトランプにクビにされたんでしょ。意味不明。そのうえ、ほんとに心底どうでもいい。

 

ずっこけ分詞構文

さて、もう少し下までぼーっと眺めていると、当ブログの隠れヒット・コンテンツ、「ずっこけ分詞構文」が出てきた。が、よく見ると「見かけ上のずっこけ分詞構文」かもしれない。これは故・江川先生にお見せしたいレベルの実例だ。

https://www.bbc.com/news/articles/ce843ge47z4o

スクショで3パラグラフ目: 

Since returning to the White House last year, commentators and political strategists had remarked that Trump's approach in his second term had been more disciplined and less chaotic.

冒頭のsinceについて、ちょっと考えてたらわかんなくなってきたんで的外れなことを言うかもしれないんですが(その場合、コメントでご指摘いただけると幸甚です)、これが前置詞ならば "Since returning to the White House last year" は《前置詞+動名詞》の句になり(その場合「ずっこけ分詞構文」ではない)、sinceが接続詞とすれば、これは《接続詞を加えた分詞構文》(江川泰一郎『英文法解説』p. 345)ということになるはず。

ごちゃごちゃ考える前、一読した段階では私はこれは後者、つまり《接続詞を加えた分詞構文》だと判断していて、それゆえ「ずっこけ分詞構文」と考えた。文の主語である "commentators and political strategists" は、 return to the White Houseしていないので。

return to the White HouseしたのはTrumpで、それはthat節内に出ているのだが、これが単にthat節内の主語ならば、分詞構文が長い文の文頭(主節の前)に出たことによって見かけ上ずっこけてるということになるのだが: 

  He told me that his brother met the gentleman while staying in Paris.

  → While staying in Paris, he told me that his brother met the gentleman. 

ここではthat節内での主語はTrump's approachであり、Trumpではない。

Since returning to the White House last year, commentators and political strategists had remarked that Trump's approach in his second term had been ...

となると、sinceは前置詞で、Since returning to the White House last yearは《前置詞+動名詞》なのかなと思うのだが、それにしたってreturningという動名詞の意味上の主語 (Trump) が主節の主語 (commentators and political strategists) と一致していないので、破格っちゃー破格ではあるだろう。

何にせよ、ちょっと崩れてておもしろい実例である。

というか、こんな英文を翻訳者が書いたら、チェッカーから何を言われるかわかったもんじゃないかもしれない。「こんなひどい英語を書く奴に翻訳させるな」くらいまで言われそうだ。

 

なお、パム・ボンディ解任については、前島和弘教授の下記解説が腑に落ちた。

「第2次政権の閣僚は、トランプ氏への忠誠心の高い人ばかりを集めたので、ヨイショがうまい一方、能力的には劣るんです。で、そろそろ化けの皮が剥がれてきた。閣僚たちがトランプ氏にとってプラスと思ってやることが、あまりの太鼓持ちで世間に滑稽に映り、一線を越えるとトランプ氏からの評価も下がる。忠臣でも、目立つミスが一定程度重なると、一人ずつ追放されるわけです。悲劇なのか、喜劇なのか」(上智大教授・前嶋和弘氏=現代米国政治)

……

このままでは「そして誰もいなくなった」となりそうだが、「トランプ氏をヨイショする人は次から次へと出てくる。ただ、同じタイプなので、閣僚に就いてもしばらくしたら、また解任となりかねませんが……」(前嶋氏)。

狂乱のトランプ大統領 終わらない米政権の閣僚解任ラッシュで早くも挙がる“次のクビ”候補|日刊ゲンダイDIGITAL

こういう専門家の指摘を読むにつけ、BBC Newsの異様なトランプ推しっぷり(「トランプは特におかしなことはやっていない」という論調)は際立ってくる。何しろ、ここまででスクショした部分に入っていたように「第一期のころの回転ドア状態での解任祭りに比べたら、今はまとも」みたいなことを書いてるんだから(しかもマイケル・「モスコー」・フリンとFBIのコーミーを同列に扱うという恥知らずなスピンまでかまして)。

 

情報の力点を置き、焦点を当てるべきは、トランプが誰を解任するとかいう以前の問題だろうに……

www.businessinsider.jp

米政治ニュースメディアPoliticoによれば、2025年初め、国防長官に就任したばかりのヘグセスは、「lethality(殺傷能力)に関わらない部署はムダ」という考えに基づいて国防総省の民間人保護部門を縮小・解体した。

中東情勢を左右するトランプ腹心、ヘグセス国防長官の「異様さ」を日本人はまだ知らない。米国内の批判“10のポイント” | Business Insider Japan

 

www.sankei.com

米紙ニューヨーク・タイムズが軍関係者の話として伝えたところによると、ヘグセス氏とジョージ氏は、軍内の黒人や女性の人事を巡る意見の相違などが積み重なり、関係が悪化していた。3月末には、トランプ米大統領に影響力を持つとされる女性右派インフルエンサーのローラ・ルーマー氏がSNSで、ヘグセス氏がジョージ氏の解任を検討していると投稿していた。

ヘグセス米国防長官、陸軍トップを解任 任期1年以上残し、人事巡り対立の見方も - 産経ニュース

 

 

 

 

*1:それをネタにしたモンティ・パイソンのスケッチがあるくらいである……ただし非常に微妙な、ブラックジョークを突き抜けてあっち側に行ってるジョークなので閲覧は推奨しない。「ラグジュアリーヤッチト」のスケッチですが。

*2:1度目の大統領選のときに、共和党内予備選の段階で、ただの候補者に過ぎなかったドナルド・トランプの発言を逐一トップニュースにしていたくらい、トランプ推しのメディアである。同様に推してたのが、最も勢いがあった時期のフランスのマリーヌ・ルペンだ。エマニュエル・マクロンが大統領になったときの仏大統領選挙など、BBC Newsが報じたのはルペンの発言ばかりだった。対抗馬だったメランションの発言はちょろっとあったが、マクロンなど、最有力候補だったのに顔と名前すら投票当日まで大きな記事にはならなかったくらい。まともにニュースを追おうと思ったらBBCじゃなくてFTとか見てないとダメ。英文のサンプル集めならFTのペイウォールの向こうまで行かなくてもBBCでいいと思うけど。

becauseの節(従属節)が独立した文のようになっている実例(サッカー、イングランド代表)

3月末に、「サッカーの母国」イングランドの「サッカーの聖地」ウェンブリー・スタジアムで、親善試合とはいえ、イングランド代表が負けるという波乱があった。相手は日本代表だ。

FIFAのあれこれでいろいろばかばかしくなったうえに、ガザ・ジェノサイド以降、完全にサッカーへの関心を失っている私でも、日本では「大金星」とニュースになっていたのは知っている。1998年のワールドカップ(フランス大会)以降しばらく「日本www」と冷笑ぶちかまされてきた末に、ウェンブリーで!!!イングランド代表に!!!!!苦杯を!!!!!!!なめさせてやった!!!!!!!ということには、謎の高笑いで応じるよりないが、何より、ここに至るまで日本のプレイヤーたちが重ねてきた努力、特にあのイングランドに足跡を刻み込むという大変な努力に、敬意を表したい。見事にケリかましてくれました。こちらに、イングランドとドイツのトップリーグでプレイする日本人選手のまとめがある

この試合の数日前に、リヴァプールFCの「エジプトの王」ことモー・サラーが今季限りで退団するというニュースがあって、彼の活躍で「アラブ人フットボーラー」へのイングランドでの認識が改まったのだという分析みたいなのもちらりと聞いていて、これでFIFAが金満体質でなく媚米でなかったらどんなに明るい未来が描けていただろう、みたいなことをちょっと考えている。

というところで、イングランド対日本の親善試合の結果についてのBBC記事

www.bbc.com

ここに、becauseの節が独立した文のようになっている実例があったので、それをメモっておこう。これもまた、ウェブ検索では探せない。当ブログではカテゴリ「単独の文の文頭で用いられるbecause」として管理している。

《単独の文のbecause》は、口語ではもはや特記する必要もないくらいありふれているが、ニュース記事に出てくるのはまだ珍しい。BBCはBBCでもBBC Sportだから、BBC Newsほど型にはまった文面でなくても通るため、これが起きたのだろう。

実例を見る前に、ちょっと説明だけしておこう。

becauseで始まるものは《節》であり、つまり《従属節》である(理由を表す副詞節)。本来、これとは別に、《主節》があってはじめて《文》が成立する。逆に言うと《従属節》だけでは何の話だかわからない。これがオーソドックスでオーセンティックな文法だ。

  Sorry, I'm late because I overslept

  (寝過ごしたから遅れるわ、すまん)

これが、 "Because I overslept" だけでは話がよくわからない*1

 

一方で、《従属節》だけでやりとりが成立することもある。例えば次のように。

  Why are you late? 

  ―― Because I overslept

  (何で遅れてるの?――寝過ごしたから)

 

これが発展というか何かしたのが、書き言葉でのbecause節単独での用法である。正式な文書では見られないが、ブログや小説などでは当たり前に出てくる。ニュースでは用いられないが、スポーツニュースは「事実を正確に伝える」というより「みんなが知ってる事実についてエモーション的な面での整理を行う」的な目的があり、かなりくだけた文体になる。だから、文体にうるさいBBC*2であってもbecause節単独が許容されているのだろう。

というわけで実例: 

https://www.bbc.com/sport/football/articles/c070185ygpno

下から2番目の文(パラグラフ)が今回の実例である。

記事は、今回日本に負けたイングランド代表は、絶対的エースのハリー・ケインが「練習中に違和感があったために」出場していなかった、ということについて、「ワールドカップに向けての実験的な布陣であった」と位置付けている。ケインももう32歳なので、そうそう頼りっぱにしていられない。けれど実際にはケインのいないイングランドは、ひたすらしょっぱい……。

ちなみに、記事を書いたフィル・マクナルティは、日本代表はベタ褒めしている。

Kane did not figure in either the draw against Uruguay or this loss to an impressive Japan, who sit 18th in the Fifa rankings, some 14 places below high-flying England.

この《不定冠詞》の用法も、英文としては参考になるね。

 

あと、マクナルティの文って軽妙洒脱でおしゃれなんだよね。"He was at Wembley but afforded the night off." なんて自分では絶対に書けない。「ウェンブリーに来てはいたが、お休みをもらった形だ」みたいな感じか。うまく日本語にできない。

 

=-=-=-=-=-=-=

ところで、しばらく前にAmazonのアフィリエイトをやめました。これにともない、リンク切れなどご不便をおかけしていることも多々ありますが、なにとぞご了承ください。

25年くらい前、まだniftyの「ホームページ」で自サイトを運営していたころから使ってたんだけど(第一義的に、広告なら書影が使えるので……本来、書影は誰かの著作物なので、読者は自由には使えないんですよ。販促のための広告という目的があれば使える)、そのサイトを閉鎖して何年もたち、今回ついに「サイト情報を更新せよ」という連絡が来てたんだけど、ガザ・ジェノサイドに関連して、これ以上Amazonを使う気になれなくなってて。

自分個人の買い物は、Amazonしか買えるところがないものはAmazonで買うしかないけれど(英語の本の紙版、古書……)、他人に「ここで買いなさい」と言ってるように見えるのは不本意なので。

なお、英語の本の電書は楽天KOBOが代替になります。電書化の時期が、Kindleより少し遅くなることもありますが。あと、KOBOのほうが安いものが多いです。米英のメジャー系だけでなく、アイルランドの出版社の本もKOBOで電書があるものがけっこうあります。

#BDS #EndTheSiege #StopGazaGenocide 

 

【追記(4月4日午後)】

このエントリを書いたあとで当該のBBC Sportの記事に改めてアクセスしてみたら、当該の箇所が従属節になる構造として書き改められていた(下図下線部)。やっぱりBBCのスタイルガイド的には単独のbecauseはダメだったらしい。笑

https://www.bbc.com/sport/football/articles/c070185ygpno

 

*1:読み返してて思ったのだが、「寝過ごしたから」と言われたらだいたい話はわかる、と言われるかもしれない。例文が悪かったかもしれない。「雨が降っていたので」ならどうだろう。「外出をとりやめた」かもしれないし「洗濯ものが干せなかった」かもしれないし「試合が中止になった」かもしれないし「美術館は多くの人でにぎわっていた」かもしれない。いずれにせよ、リアルな言語コミュニケーションの場では文脈というものがあるので、そのおかげで、ほぼ常に「だいたい話はわかる」かもしれない。

*2:BBC Newsには「スタイルガイド」があって、文体がかなり細かく指定されている。

《make + O + C》の《O》が長大で後回しにされている実例、《make + it + C + that節》の構文で例文をAI/LLMに出力させる(元王子の違法行為の疑いと国王の判断)

最新ニュースをチェックしておこうと、ごはん食べながらBBC Newsのサイトを見ていたら、ウェブであれ書籍であれ、何らかのテクストを、どのように検索しても絶対に探し出せない実例に遭遇したので、メモっておく。

 

記事はこちら。どこからか連れてきた年少の女性たちを性の道具として、世界各国の政界・財界・アカデミアの有力者たちと次々とつながっていっていた故ジェフリー・エプスタイン*1とのつながりと、そこで生じた自身の不品行が原因で、2025年秋に王族の称号を剥奪されたアンドルー元王子に、2026年初春に公開された新たな「エプスタイン文書」において、イスラエル当局とのつながりがかなり露骨で(あるにも関わらず大手メディアはそれを無視していて)ロシアとのつながりも考えられているエプスタインに、英国の微妙な情報を流していたという疑いが生じたため、警察が動くことになり、アンドルーの兄であるチャールズ国王がそれに協力すると表明した、という報道記事である。ちなみに、今回のエプスタイン文書に対する英王室の反応は、これが最初のものとなる。

www.bbc.com

 

《make + O + C》の《O》が長大で後回しに

実例の箇所はここ。

https://www.bbc.com/news/articles/cqlgv3z79klo

第2パラグラフより:

The King has made clear, in words and through unprecedented actions, his profound concern at allegations which continue to come to light in respect of Mr Mountbatten-Windsor's conduct 

この文は、SVOCの構文だが、Oがとても長いのでOとCの順番が逆になっている形だ。つまり: 

S = The King

V = has made

C = clear

(M*2 = , in words and through unprecedented actions, )

O = his profound concern at allegations which continue to come to light in respect of Mr Mountbatten-Windsor's conduct 

 

本題は以上。こんなの、どうやって検索したって出てこないでしょ。なのでメモっておいた。

 

あとは余談。

 

 《make + it + C + that節》の構文

《make + O + C》の構文でこういうふうになるときは、仮目的語のitを使い、《make + it + C + that節》の形にするものが、うちらが「受験戦争」の中で習った「受験英語」で頻出の構文としておなじみで、実際にもときどき見かけるものである(が、ラサール石井氏のような人にとっては、排撃すべき古臭い構文なのだろう)。

ときどき見かける構文なのだが、このエントリのために自分で例文を考えるのがめんどくさかったので、AIに投げた。

 

AI/LLMに出力してもらったこの構文の文例

私が使っているのは検索エンジンDuckDuckGo内蔵のDuck AIで、これはAIというかLLM提供者のサイト外でログインすることなく(つまりLLM提供者に履歴を残すことなく)簡易的にAIを利用できるという便利なもので、検索クエリというかプロンプトを書いてEnterキーを押すと、GPTやClaudeやLlamaなどいくつかのLLMのどれかが答えてくれる。どれが出てくるかはやってみるまでわからないので、「今日のLLM占い」みたいな遊びもできる(意味はわからない)。今回は、初手でGPT-4o miniが出た。

GPT-4o mini

[プロンプト] 英語の構文の実例を教えてください。形式目的語を使った、「make it C that節」の構文の実例を3つ、挙げてください。

 
GPT-4o mini

形式目的語を使った「make it C that節」の構文の実例

  1. Make it clear that you understand the instructions.
    (指示を理解していることを明確にする。)

  2. Make it known that the meeting has been rescheduled.
    (会議が再予定されたことを知らせる。)

  3. Make it certain that everyone will be informed about the changes.
    (全員が変更について知らされることを確実にする。)

この構文は、Cの部分が形容詞であり、その後に続くthat節が具体的な内容を示しています。

全部、対訳が変だ。命令文なんだから「明確にするように」「知らせなさい」「確実にしておきなさい」といったように訳されていなければならない。まあ、このLLMの翻訳の品質は常にだいたいこんなもん。

 

Llama 4 Scout

Duck AIではLLMの切り替えもできるので、ついでにLlama 4 Scoutに出力してもらった。

形式目的語を使った「make it C that節」の構文の実例を3つ挙げます。
  • I made it clear that I would not attend the meeting. (私は会議に出席しないことは明らかだと言った)
  • She made it obvious that she was unhappy with the decision. (彼女はその決定に不満であることを明らかにした)
  • He made it plain that he would not tolerate any further delays. (彼はこれ以上の遅延は容認しないことを明らかにした)

対訳の品質は「うーーん」と思ってしまうけれど(この程度でいいんか、翻訳ってものは……)、例文はGPTのよりよい。ストーリーがある。

ちなみに最初の例文は「私は会議には出席しないことを明らかにした」という意味で、読みやすい日本語にするなら「私は会議には出席しないと明言した」「その会議には出ないからねとはっきり言っておいた」くらいの感じだろう。Llamaのは、英文和訳の答案用紙に書かれてきたら、満点は難しいのではないかと思う(採点基準による)。

しかし、3つとも「~ということを明示した」という方向性の例文なのは、退屈だね。もう1個、Claude Haiku 3.5もいってみよう。

 

Claude Haiku 3.5
英語の形式目的語を使った「make it C that節」の構文について、具体的な実例を3つ挙げます:
  1. It is important that we make it clear that everyone understands the new policy. (新しい方針を全員が理解することを明確にすることが重要だ。)
  2. The manager made it evident that the project deadline would not be extended. (マネージャーは、プロジェクトの締め切りが延長されないことを明白にした。)
  3. Scientists made it certain that climate change poses significant risks to our planet. (科学者たちは、気候変動が地球に重大なリスクをもたらすことを確実なものとした。)
(以下、多弁なところは略)

 

AIが出力してくれる例文は、いずれにせよ、「~ということを明示した」という方向性だね。自分でもそれしか思いつかないから、たぶんこの方向性の内容について使われる定番の構文なのだろう。このあとはコーパスとかで調べないと確定できないけど、その時間はないのでここまで。

 

あと、Claudeも対訳の品質はアレです。特に3番の気候変動のはひどい。この日本語を単独で読んで意味が取れる人もいないと思うけど……。 

 

 

*1:Epsteinの英語での実際の発音は「エプステイン」もしくは「エプスティーン」に近い

*2:修飾語句。ここではコンマに挟まれた《挿入》の形。

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