Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【翻訳・英文和訳・訳読】

とんでもないものが翻訳されて青天の霹靂。ハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を、少なくとも私は、終わりにせざるを得ないことについて(次のハッシュタグもあるよ)

このブログの管理画面にアクセスするのも久しぶりである。12月のうちに、時制の使い方がとても興味深い英文の実例に遭遇したので、それについて書くつもりだったが、なんだかんだと書かずに1月も終わろうとしている。 さて、今回は当ブログのテーマである英…

ハッシュタグ「 #ガザ投稿翻訳 」は、第一義的に、ガザ地区の人々に、自分たちの投稿が読まれていることを伝えるためにやってる。でもその意味は?

Twitter/Xのハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を始めてしばらく経った。ハッシュタグがないよりは多くの人の目に触れていると思うし、ここ数日で作業をやってくれる方も増えた(こちらからはお声がけはしていないが、自主的にやり始めてくださる方が増えている…

イスラエル政府の言うような "human animals" なんかじゃない。彼ら・彼女らの言葉を伝える翻訳ハッシュタグ

【「日本国際ボランティアセンター (JVC)」さんの緊急支援要請】 ガザ地区での活動実績がしっかりしている日本のNGOです https://www.ngo-jvc.net/news/news/202310_gaza.html 起きたことに、衝撃を受けすぎて、言葉にならない、ということは、日常にあふれ…

人は、翻訳作業で辞書を引くとき、いったい何を求めて辞書を引くのか: releaseというシンプルな語のひとつの事例

4今回は、「翻訳とはどういう作業であるか(さほど単純な作業ではない)」を説明する一助となれば、という主旨。 どの言語圏でもおそらくそうだと思うのだが、世間一般では「英語ができれば母語から英語に翻訳でき、英語から母語に翻訳できる」と思っている…

howeverによる譲歩の構文, as such, 前置詞のcome, 助動詞+受動態, など(聖書の英国手話への翻訳プロジェクト)

今回の実例は、報道機関の特集記事より。 日本のメディアでもそうだが、報道機関が流す日々のニュースでは、毎日の大きな出来事の事実関係を伝えるもののほか、その時々の社会的な関心事や、「関心事」とまではなっていなくても多くの人々に共有されておいて…

単語は中学レベルの基本語で簡単で文意も取りやすそうなのに、実は意外と難しい文の例(サッカーW杯、グループEで日本が首位)

今回の実例は、Twitterから。 今日は元々は、あるレセプションの場で明らかになった英王室の中に根強くあるレイシズム(人種主義、人種差別)についてのことばを見ていこうと下準備はしていたのだが、いかにも気が重くてうーむと思っていたところ、今朝方、…

英語の文章の論理構造と日本語の抄訳の問題, 故人について書くときの過去形(エリザベス女王の死去とロイヤル・ワラント: 御用達マーク)

今日は休日なので、本来過去記事を再掲するのだが、今週は前半で再掲のストックが切れてしまっているのもあって、軽く書くことにした。 というかTwitterで連ツイしようと思って書き始めたのだが、連ツイよりブログの方が書きやすいと気づいた。 さて、今日、…

【再掲】"on her way into the abbey" を「アベイへ赴く途中の路上で」と解釈してしまう程度の英語力で、翻訳などしないでほしい。たとえウィキペディアであろうとも。

このエントリは、2021年4月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回は、少し変則的に、英語で書かれていることを書いてある通りに読み取ること、余計なものを付け足して解釈しないことについて。「たかが前置詞、されど前置詞」という話でも…

本日、ウィキペディア翻訳作業中につき、ブログはお休みします。

今回は、予定を変更して休載します。 昼間、TBSラジオの荻上チキさん(はてな古参には「トラカレさん」のほうがなじみ深いだろう)の番組を聞いていて、これはやっとかないとなと思ったウィキペディアの翻訳をやっているので、ブログを書いてる時間がなくな…

「これを英語でどう言うか」がわからないとき、自分で考えずに、常に #機械翻訳 に頼ってはならない理由。

今回は前回のエントリの続きで、翻訳者は翻訳するときに具体的にどんなことをしているのかという説明を書こうと思っていたのだけど、激務後の言語野の疲労がまだ残っていて、前回のエントリを書いたあとが続かず、何もまともな文章にならない感じなので、別…

日本語で書かれたものを英語に翻訳するとき、翻訳者の頭の中でどんな作業が行われているのか (1)

今回はいつもと趣向を変えて、「日本語を英語に翻訳する」という作業では具体的にどういうことをするのか、ということを書いておきたい。あくまでも私の場合はこうだ、ということであり、誰もがこうしているというわけではない(そもそも翻訳という作業は、…

日本語で「Twitter Pro」とされているものは、英語では "Twitter for Professionals" (職業人のためのツイッター)である件。

今回の実例は、Twitterから。といってもいつものように誰かがTwitterに投稿した文面ではなく、Twitter社が提供しているサービス名について。 Twitterで、新機能「Twitter Pro」が導入されたということが、昨日(11月3日)から話題になってきた。どういうふう…

英語と日本語の書き方の違いを感じる(パキスタンの国境の都市、ペシャワールは気温が高い)

今回の実例は、報道記事から。 「実例」というより「文例」というべきか。 「9-11から20年」の余波の中にまだいて、9月11日になる前に読んでいた記事でスクリーンショットを撮ってあるものをどうしようかなと思っているのだが(20年目で、改めて人々の心身が…

日本語では「死にたくない」、英語では "want to live" ~「翻訳」と「ローカリゼーション」

今回の実例は、Twitterから。といっても、いつもとは少し趣向を変えてみる。 アメリカ(主にハリウッド)の映画スターが、日本では独特の人気の出方をすることは、アメリカ人で日本に興味を持っている人々にとっては定番の話題のひとつである。YouTubeなどに…

「『誤訳』とは、原文の語句・構文や意味内容についてのはっきりと誤った解釈に由来するものをいう」(中原道喜)

ここでは唐突に映ると思われるが、ある経緯から、誤訳というものについて書いておきたいと思う。誤訳とは何であり、何ではないのか、ということだ。 さて、「誤訳」とは何であるのか。見ての通り「誤った訳」だ。ではその「誤った」とはどのようなものか。 …

sacrificeの語義は「犠牲を払う」か? (バッハIOC会長発言をめぐって)

今回は、予定を変更して、今ホットな話題について(もう過去の話かもしれないが)。例のIOC会長による「犠牲」発言である。ちなみに原文では "We have to make some sacrifices to make this possible." である。 最初にお断りしておくと、個人的に五輪には…

"on her way into the abbey" を「アベイへ赴く途中の路上で」と解釈してしまう程度の英語力で、翻訳などしないでほしい。たとえウィキペディアであろうとも。

今回は、少し変則的に、英語で書かれていることを書いてある通りに読み取ること、余計なものを付け足して解釈しないことについて。「たかが前置詞、されど前置詞」という話でもある。 前々回の当ブログ記事で、英国のエリザベス女王の配偶者(王配)であるエ…

"You can't stop" のcanは、《許可》のcanか? (Daft Punkのダンスナンバー)

今回の実例は、見た瞬間に思わず「?」となった訳文から。 先週のニュースだが、世界的に大売れに売れて完全に定番化していた音楽の作り手、Daft Punkが解散した。Daft Punkはフランスのミュージシャン2人組*1。そういった背景についてはウィキペディアの例え…

日本語の「仕方がない」を英語でどう表現するか, およびアメリカ英語のAAVEについて

今回の実例は、Twitterから。 現実世界に複数言語話者がいるのだから、Twitterにも複数言語話者がいて、その中には日本語を外国語として習得した人々もいる。そして、英語を母語とする日本語話者の間でときどき、日本で日本語のフレーズの「対訳」としてあら…

patient/patienceは「辛抱」か? ということについて。

今回は、英文法の実例とは違う話。といってもこの件、すでに多くの指摘がなされているし、ジャーナリストの森田浩之さんによるがっつりした検証と論考も出ているので、それらをリンクして終わりにしてしまってもよいくらいだ。 news.yahoo.co.jp 何の話かと…

「~は終わった」を過去時制で表すかどうか(米大統領選挙は終わった)

今回の実例はTwitterから。 日本語では「~た」や「~した」と、《過去》のような形で表すものを英語にするときに、英語では《過去形》を使わないことがある。こういうところでつまづいてしまう人も少なくないのだが(私もかつてはそうだった)、日本語の「…

"pleasant if awkward" の中身は、《譲歩》のif節と《省略》

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回も引き続き11月18日のエントリやそれに続くエントリ群へのブコメへのお返事的なことを。(細かい事実誤認・誤記などはスルーしてます。すみま…

いただいたブコメから、有益な追加情報ならびに参考書& "if awkward" について調べてわかったこと

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回も引き続き変則的に。 一昨日11月18日のエントリは、はてなブックマークで現時点で768件のブクマをいただいています。ブコメは現時点で214件…

昨日のエントリの補足

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回も引き続き変則的に。今日は英文法解説なしです。 時事通信の誤訳について指摘した昨日のエントリは、当ブログには非常に珍しいことに、はて…

《形容詞A if 形容詞B》の構造, awkwardの語義(バラク・オバマの回想録と時事通信の誤訳)

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回の実例は、予定を変更して、今日まさにTwitterで話題になっている件について。 米国のバラク・オバマ前大統領が回想録を出したとかで、今週は…

日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(定型文というものについて、および各国首脳のメッセージ実例)

さて、いよいよ前々回と前回に続いて、「病人へのお見舞いの気持ちを英語で表してみよう」の最終回だ。 こんなことは、すでに何冊も世に出ていて、何なら公共図書館にも必ず置いてあるような英文手紙・メールの文例集を見れば1分もかけずに知ることができる…

日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(時制について)

というわけで前回の続き。 前回は、日本語から英語にするときに、そのまま文法規則に従って英文和訳すれば通じるものと、それでは通じないもの「決まり文句」があるということについて述べた。また、米国のトランプ大統領の新型コロナウイルス感染と入院につ…

not only A but also Bのちょっと変わった形, 先行詞を含む関係代名詞, in terms of ~, 形式主語の構文("Rest in power" というフレーズはどう広まったのか)

今回の実例は、前回の続きで、 "Rest in peace" の代わりに使われる "Rest in power" というフレーズについての解説記事から。 今から20年ほど前にカリフォルニア州オークランドのストリート・アートの界隈で用いられていたのが確認できているというこのフレ…

《訳読》とは何か, be hopeful to do ~(#BLM: 米スポーツ界の動き)付: 例の講座について

今回の実例は、Twitterにアップされた長文投稿から。 今週月曜日(24日)、「日本通訳翻訳フォーラム2020」(#JITF2020) の公開セッションで、第一線の翻訳者4人の方による公開レクチャーがあった*1。大変興味深く勉強になる内容で、2時間じっくり、メモを取…

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