Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

辞書

【小ネタ】翻訳はただ言葉と言葉を置き換えればよいわけではない。例えばprisonは「刑務所」なのか。車のvanはどういう車両で、それは日本語の「バン」で表せるのか。

10日ほど前のことだが、ロンドンで「脱獄」が発生した。調理担当という作業を割り当てられていた被収容者が、食材を運び込んでくる車両の下に潜り込んで、そのまま敷地外に脱出した。つまり、ちょっとありえないくらいあっさりとした脱獄であった。古めの翻…

人は、翻訳作業で辞書を引くとき、いったい何を求めて辞書を引くのか: releaseというシンプルな語のひとつの事例

4今回は、「翻訳とはどういう作業であるか(さほど単純な作業ではない)」を説明する一助となれば、という主旨。 どの言語圏でもおそらくそうだと思うのだが、世間一般では「英語ができれば母語から英語に翻訳でき、英語から母語に翻訳できる」と思っている…

英単語の語源を確認するためのたったひとつの冴えたやりかた

英単語の語源を確認したい? 語源で単語を解説する英語学習本がいっぱいあって、どれがいいのかわからない? ネット検索をしても情報量が多すぎる? 今回は、そんなときに参照すべき情報源について。PCでもスマホでもタブレットでも、ブラウザが使えてネット接…

【語彙メモ】TLDR(またはTL;DR)

今回は語彙メモ。 TLDRという英語表現がある。より正式に書けばTL;DRとセミコロンを使う。「正式に」と書いたが、この表現自体が実は正式なものではない。ネットスラングだ。 これはあるフレーズの単語の頭文字を取った略語だから全部大文字で書かれるのが本…

自動詞のmake(「猫のラリー」さんの投稿)

今回の実例は、Twitterから。 次のツイート本文を読んで意味が取れるだろうか。 I make a good ornament(Photo @PoliticalPics) pic.twitter.com/JDKmzP26ed — Larry the Cat (@Number10cat) 2022年11月14日 「猫のラリー」さんが、何か細工物をして、オーナ…

前置詞+関係代名詞, 関係副詞, 代名詞のthose, too ~ to do ...構文, など(コウビルド英英辞典のコリンズ社が選んだ「今年のことば」より、warm bankについて)

今回は前回の続きで、『コウビルド英英辞典』のコリンズが選んだ「今年のことば」についてのコリンズのブログから。 前置きなどは前回のエントリを参照されたい。 前回は、2022年を表すいくつかのことばの中からトップに選ばれた permacrisis (permanent の…

辞書とはどのようなもので、どのように作られるものか, 付帯状況のwith, 省略, 言い換えなど(OED入りしたsqueaky bum timeというフレーズの由来)

今回は、イランの抗議行動のことや北アイルランドのセンサスのことや、イーロン・マスクという個人がTwitterを所有することに関する懸念を表明する人権団体の記事についてなど、頭の中と手元で準備していたものを後回しにして、ばかみたいだけど、中学レベル…

【再掲】時制の使い方, 疑問詞節, not only A but B, as well as ~, wrongという単語の意味, など(東日本大震災: wrongnessという感覚)

このエントリは、2021年3月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回は、前回(3月11日付)の続き。背景説明などは前回のエントリを参照されたい。 実例として参照するのはこちら、日本外国特派員協会 (The Foreign Correspondents' Club of J…

「暑さによるレールの変形」を英語でどう言うか(欧州を襲うとんでもない熱波でイングランドでも40度超)

今回の実例は、「これって英語で何て言うの?」というトピック。 日本でもある程度は報じられていると思うが、欧州を大変な熱波が襲っている。 かつて、欧州では気温が30度にもなれば「大変な熱波」と言われていたものだが、近年では30度に達することは珍しく…

【再掲】論説文のスタイル, 抽象名詞であるはずのものに複数形のsがつくとき, 付帯状況のwith(パンデミックと人権: 国連事務総長の主張)

このエントリは、2021年2月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回の実例は、国連のアントニオ・グテーレス(グテレス)事務総長の文章から。 本題に入る前に、そのグテーレス事務総長へのインタビューを行うに際し、毎日新聞が読者から事務…

「USBメモリー」を英語でどう表すか(尼崎市での住民個人情報記載記録媒体紛失事案)

今回の実例は、小ネタ。 暑すぎて何もできず、前回(昨日)のエントリもまだ未完成のままなのだが、そちらは明日以降……。 先週、日本で大注目となったとんでもないニュースは、英語圏でも「珍ニュース」的な位置づけで取り上げられている。「酔っぱらって前…

直説法と仮定法の違い, 形容詞を用いた筆者の判断の共有, 肯定文のなかのany, ネットでサクッと検索するととんでもない誤訳をやらかす例など(ブラジルで殺害されたジャーナリストと専門家)

今回の実例は、前回みたのと同じ、ブラジルでの環境保護活動を標的としていると思われる殺人事件についての記事から。文脈などは前回のエントリをご参照のほど。 ところで、前回のエントリのTwitterフィードと前後して、2016年(6年前)にホンジュラスで起き…

【再掲】いただいたブコメから、有益な追加情報ならびに参考書& "if awkward" について調べてわかったこと

このエントリは、2020年11月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回も引き続き変則的に。 一昨日11月18日のエントリは、はてなブ…

【再掲】日本語ウィキペディアを手掛かりに英語の報道記事を探す方法、Google翻訳は辞書の代わりにはならないということ(ナスカの地上絵)

このエントリは、2020年10月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回の実例は、辞書を引くということについて。 新たにナスカの地上絵が発見されたというニュースは、日本語でも大きく伝えられているので、ご存じの方が多いだろう。 ペルーの…

【再掲】日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(序)

このエントリは、2020年10月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回は「実例を検討する」というより、日本国の首相が世界に開かれたTwitterに英語で投稿した文面について。これについて「意味は通る」と強弁する人たちが少なくないが、普通…

【再掲】文頭の "Put another way" は何なのか、構造から読み解いてみよう(急逝したデヴィッド・グレーバーの2015年の文章より)

このエントリは、2020年9月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回の実例は、急逝が伝えられたデイヴィッド・グレーバーの文章から。 グレーバーは人類学の分野の学者だが、それ以上に、人類学をベースにした現代の私たちが生きる社会の分析…

【再掲】「~に賛成して、~を支持して」の意味の前置詞for("Women for Trump" という表現)

このエントリは、2020年8月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回の実例は、少々変則的に。 昨日(8月25日)、日本のテレビのワイドショーでの米大統領選特集で、"WOMEN FOR TRUMP" を「トランプのための女性たち」と紹介していたという話…

【再掲】black cat appreciation dayは「黒猫の良さを認識する日(黒猫鑑賞デー)」。このappreciationは「感謝」ではありません。

このエントリは、2020年8月にアップしたものの再掲である。 ----------------- 今回は、いつもとは少々違った感じで。 手元にある英和辞典で、appreciationという単語を引いてみてほしい。《意味》がたくさんあって、どれが《正しい意味》(つまり、自分が今…

英語での略語について(IT分野の "pen test" は筆記用具の書き味とは関係ない)

今回の実例は、少しイレギュラーな感じになるが、略語について。 日本語でも英語でも、頻繁に使われる語がある程度の長さがあるときは、何らかの形で省略された「略語」として日常の会話や新聞記事などに出てくることが多い。 例えば「東京証券取引所」は「…

譲歩の副詞節 whether A or B (OEDに新たに26の韓国由来の言葉が収録された)

今回の実例は、ニュースについての解説記事から。 BBC Newsのウェブサイトを見ていると、ときどき、見出しの下*1に "Newsbeat" と書かれた記事に行き当たる(BBC News日本語版はこういう区分を消してしまっているので、日本語版をいくら眺めてもわからないと…

時制の使い方, 疑問詞節, not only A but B, as well as ~, wrongという単語の意味, など(東日本大震災: wrongnessという感覚)

今回は、前回(3月11日付)の続き。背景説明などは前回のエントリを参照されたい。 実例として参照するのはこちら、日本外国特派員協会 (The Foreign Correspondents' Club of Japan: FCCJ) が毎月出している会報 "Number 1 Shimbun" の2021年3月号である: h…

論説文のスタイル, 抽象名詞であるはずのものに複数形のsがつくとき, 付帯状況のwith(パンデミックと人権: 国連事務総長の主張)

今回の実例は、国連のアントニオ・グテーレス(グテレス)事務総長の文章から。 本題に入る前に、そのグテーレス事務総長へのインタビューを行うに際し、毎日新聞が読者から事務総長への質問を受け付けている。受け付けは今日、2月24日いっぱいまでとなって…

いただいたブコメから、有益な追加情報ならびに参考書& "if awkward" について調べてわかったこと

【後日追記】この件についてのエントリはカテゴリでまとめて一覧できるようにしてあります。【追記ここまで】 今回も引き続き変則的に。 一昨日11月18日のエントリは、はてなブックマークで現時点で768件のブクマをいただいています。ブコメは現時点で214件…

【ボキャビル】the be all and end all, 冠詞を手掛かりにわけのわからない文を読む, 強意の助動詞 (異国で嵐の中に家族を残してキャンプ地に移動したイングランド代表)【再掲】

このエントリは、2019年10月にアップしたものの再掲である。文法を押さえてはじめて正確な読解ができる(単語だけ拾って適当に意味を組み立ててはならない)ということを改めて確認していただきたいと思う。 ----------------- 今回の実例も引き続きラグビー…

日本語ウィキペディアを手掛かりに英語の報道記事を探す方法、Google翻訳は辞書の代わりにはならないということ(ナスカの地上絵)

今回の実例は、辞書を引くということについて。 新たにナスカの地上絵が発見されたというニュースは、日本語でも大きく伝えられているので、ご存じの方が多いだろう。 ペルーの文化省は16日、世界遺産の「ナスカの地上絵」の保全作業をしている考古学者らが…

日本語の文を、そのまま逐語的に英語にしただけで、言いたいことが伝わるとは限らない(序)

今回は「実例を検討する」というより、日本国の首相が世界に開かれたTwitterに英語で投稿した文面について。これについて「意味は通る」と強弁する人たちが少なくないが、普通に英語使える人なら「通じてないよ」としか言いようがないはずである。 本題に入…

文頭の "Put another way" は何なのか、構造から読み解いてみよう(急逝したデヴィッド・グレーバーの2015年の文章より)

今回の実例は、急逝が伝えられたデイヴィッド・グレーバーの文章から。 グレーバーは人類学の分野の学者だが、それ以上に、人類学をベースにした現代の私たちが生きる社会の分析や、私たちの意思次第で取り得る方向性についての論述で知られる、英語でいう p…

「~に賛成して、~を支持して」の意味の前置詞for("Women for Trump" という表現)

今回の実例は、少々変則的に。 昨日(8月25日)、日本のテレビのワイドショーでの米大統領選特集で、"WOMEN FOR TRUMP" を「トランプのための女性たち」と紹介していたという話をTwitterで聞いた*1。言うまでもなく、この "for" は「~に賛成して、~を支持…

black cat appreciation dayは「黒猫の良さを認識する日(黒猫鑑賞デー)」。このappreciationは「感謝」ではありません。

今回は、いつもとは少々違った感じで。 手元にある英和辞典で、appreciationという単語を引いてみてほしい。《意味》がたくさんあって、どれが《正しい意味》(つまり、自分が今見ている文に適した語義)なのかが判断できなくなりそうなほどだと感じられるだ…

辞書代わりに機械翻訳を使うべからず: 「退位」の英訳をめぐって/英語がどーたら以前に文字情報として文字を扱う以上、知っておくべき表記ルール【再掲】

このエントリは、2019年5月の連休中にアップしたものの再掲である。たまたま偶然で、再掲のタイミングもお正月休みの最終日と重なったのだが、いつものような文法解説というより読み物になっている。 ---------------------------------- 今回は連休中なので…

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