Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

if節のない仮定法, it is ~ for ... to do --,(極右に殺された議員の志を受け継ぐ遺族たちの活動)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。

今回の実例は、3年前のレファレンダム(住民投票)の直前に、反移民の思想にかぶれた極右主義者(ネオナチ)に殺害された国会議員を記念するイベントに際しての、故人の家族の発言から。

2016年6月、英国のEU残留の可否を問うレファレンダムの投票日まであと数日という段階で、自身の選挙区で有権者との面会という、国会議員の仕事として重要なことをしていた労働党所属のジョー・コックス議員(女性)が、車から出たところで男に襲われた。男は自分で加工した武器(刃物と銃)を持っており、議員を惨殺した。逮捕・起訴された男は、法廷ではほぼだんまりを貫いたが、裁判は議員殺害から5か月ほどで結審し、被告は数々の証拠(物証)に基づいて有罪となり、終身刑を宣告された。

www.theguardian.com

 

殺害されたジョー・コックス議員は40代と若く、ご両親もご健在である。ご両親やきょうだい、夫といった近親者は、「人々には相違点より共通点の方が多い (More in common)」「互いを排斥しあうのではなく、尊重しあおう」という議員の志を受け継いで「ジョー・コックス・ファウンデーション」という基金を創設し、移民排斥や社会の分断といった問題と取り組む活動を行っている。

今回、議員殺害から3年を迎えた夏に、彼らは議員の生まれ育った地元(選挙区でもある)のイングランド北部、ヨークシャーの街から、5日間かけて、自転車でロンドンまで行くというチャリティ・ライドを企画・実行した。距離があるだけでなく、途中山越えがあったりして(イングランドは日本に比べれば平坦と言えるかもしれないが、それは「高い山がない」というだけで、地形が真っ平というわけではない)簡単なチャレンジではない上に、ちょうどタイミング的に、イングランド南東部をすさまじい熱波が襲ったときに重なっていて、大変だったようだ。

 

サイクリストの中には殺害されたジョー・コックス議員のお姉さんか妹さんがいて、ゴール地点でご両親に迎えられた。

 

今回実例として見るのは、そのゴール地点での議員のお父さん、ゴードン・レッドビーターさん*1の言葉から。記事はこちら: 

www.theguardian.com

 

 

f:id:nofrills:20190802033609j:plain

2019年7月28日、the Guardian

It would have been easy for us to sit at home and pull the curtains but that is not what Jo would have wanted.

2か所太字にした《would + have + 過去分詞》は、どちらも、《if節のない仮定法(仮定法過去完了)》である。

仮定法は、テキストブックではif節のある形で習うが、実際にはこういった《if節のない仮定法》の形で使われることが非常に多く、実用英語として接する仮定法の大半はif節のない形だと言ってよいだろう。とはいえ、その大部分は単なる《婉曲》の用法で、今回見る実例のような《反実仮想》の仮定法の用法とは少し異なって見えるかもしれない。

ともあれ、《if節のない仮定法》ではwouldやcouldなど助動詞の過去形にその《仮定》の意味・意図が込められているということを把握するのが重要だ。

  Are you going there alone? I wouldn't do that. 

  (あなた、あんなところに1人で行くの? 私だったらそんなことしないよ)

  Even a five-year-old could do it! 

  (5歳児にだってそんなことくらいできるだろうに)

  I wouldn't have done that because I always knew how to make Elizabeth angry. 

  (私だったらそんなことはしなかっただろう。エリザベスを怒らせるにはどうしたらよいかなんてことはわかりきってたんだから)

 

また、この文には《it is ~ for ... to do --》も入っている(isの部分が仮定法過去になっている)。

  

というわけで、今回実例として見ている文の前半: 

It would have been easy for us to sit at home and pull the curtains

これは「私たちが、家でじっとしていてカーテンを閉めておくことは簡単だったでしょう」という意味。

 

後半: 

but that is not what Jo would have wanted.

これは「しかしそんなことは、ジョーが(生きていたら)求めていたであろうことではありません」の意味。

 

このような仮定法の使われ方については、下記のEnglish Journalにわかりやすくまとまっていたので、関心がある方はご参照のほど。電子書籍もあるし、地域の公立図書館にも所蔵があるのではないかと思う。 

 

いつもの参考書: 

 

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

一億人の英文法 ――すべての日本人に贈る「話すため」の英文法(東進ブックス)

 
英文法解説

英文法解説

 
徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 

 

*1:Leadbeaterという姓の読み方は、議員の姉/妹のキムさんが出演したTV番組のクリップ https://www.youtube.com/watch?v=TRzl2aeR9Xc で確認した。

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。