イスラエルによるガザ攻撃、というより「ガザ・ジェノサイド」は終わる気配などまったくないが、「停戦 ceasefire」を求める声はやんでいない。
というより、「停戦 ceasefire」を求める声はやんでいないが、イスラエルによるガザ攻撃(というより「ガザ・ジェノサイド」)は終わる気配などまったくない、と書くべきだろうか。
そんなことで悩んで数分が流れていったが、目薬をさしても肩のストレッチをしてもどっちがよりよいという結論が出なかったので、両方書いておく。自分のブログだからそこは好きにしてよいだろう。
ともあれ、そのようにして続いている「停戦 ceasefire」を求める声――「昨年10月に始まったときには、まさか、夏になっても同じことを言い続けているとは思ってませんでしたよね」と言いつつ、続いて発されている声――に便乗して、というかその中に入り込むようにして、ただただ「ユダヤ人」を排斥したい勢力の声が発せられていることは、決して軽視されるべきことではないと思う。
といっても、私が見ているのは、英国の労働党でジェレミー・コービンを排斥したときに行われたキャンペーンのスローガンのようなものだった「左派の側の反ユダヤ主義」ではない。もっとド直球の反ユダヤ主義、「極右の反ユダヤ主義」、もっと言えばネオナチの発言だ。
紛争に際してよく言われる言葉に、 "The enemy of my enemy is my friend." というものがある。「敵の敵は味方」という意味だ。例えば1980年代において英米と対立していたリビアのカダフィ大佐は、英国を攻撃していたIRAを支援し、武器や訓練施設を提供した。リビアの独裁者がIRAの理念をまったく無視していたとは思えないが、かといってその理念(アイルランドの統一の回復)ゆえに支援していたとは思えない。
今般のガザ・ジェノサイドでは、「私の敵」がシオニストであるとして、シオニスト批判者はすべて「私の敵の敵」になり、したがって「私の味方」である、という単純でわかりやすい《構図》(マスコミ用語)に自分たちを当てはめたいのだろう、ガチの極右勢力がかなり活発に草の根で発言をしており(例えばアンドルー・テイト*1)、私もTwitter/Xでときどきそういうのに遭遇する。
遭遇したところで、そもそも見たくもないものだから、単に画面をそっと閉じることがほとんどだが(ついでにミュートしたりブロックしたりするくらいのこともする)、「Jan6」と称される米議会襲撃事件で議事堂に乱入した暴徒が身につけていたりした極右のシンボルについて常識的なことを書いたら予想外にも大きな反応があったことなども思い出し、この分野について日本語で書いておくことは意味のないことではないのだから、と、特に書きたくもないトピックについて書いておこうと決意した。
以下、今日、今から数時間前に実際にTwitter/Xで遭遇した「パレスチナを支持する西洋の極右」の実例の記録である。
パレスチナ支援活動参加者各位におかれては、くれぐれもご注意いただきたい。
【目次】
遭遇した実例について
どこでどういうものに遭遇したか
まずは私がどういうものにどういう状況(文脈)で遭遇したかをご覧いただきたい。遭遇した状況のスマホでのスクリーンレコーディングを下に貼り付けよう。ほんの数秒の動画である。
遭遇場所はガザからの報告をおこなっているオンライン・メディア、というよりSNSのメディア、Times of Gazaのツイートのリプライの中である。
BREAKING | At least 24 killed and 47 injured in an lsraeli airstrike in Rafah
— TIMES OF GAZA (@Timesofgaza) 2024年6月21日
遭遇したものの詳細
その、本当に苦心惨憺して何とか現地から情報を出している現地メディアの投稿に便乗するようにして投稿されているのが下記キャプチャで示すものだ。「拡散」にならないよう、URLは当ブログのテクストではなく、画像内に文字入れする形で示す(ALTテキストにも手動で入れておく)。また、メインの画像内にもウォーターマーク的にURLを入れておく(画像単独で流用されることをなるべく避けるため)。
かっこいいデザインでメッセージは共感できるし、シンプルだから、うっかり拡散してしまいそうになるかもしれない。
だが、見た瞬間に「これはだめ」と判断できるはずだ。少なくとも「民間人への攻撃」を問題視している人ならば。
埋め込まれているシンボリズム
どうしてそう判断できるか。
「シオニズムは倒れねばならない」「おまえらのやったことは世界が目撃している」という、テクストそれ自体としてはまっとうなテクストの後ろにある赤い下向きの三角形 (inverted red triangle) が根拠だ。
これが何なのかは、 "inverted red triangle" で画像検索やウェブ検索をすればわかると思う*2。
その検索ノウハウを説明している暇はないのでそこはすっとばして先に行くが、これはアル=カッサム旅団(つまりハマスの武装勢力)が攻撃目標につけている目印である。ウィキペディアを参照されたい。
Times of Gazaの投稿に対するリプライの中に私が見たStutter Proudlyというアカウントは、シオニズムに対する激しい非難の言葉とともに、そのハマスが使う標的の目印を掲示している。これはおそらく、「ハマスとの連帯」を示す意図だろう。
そしてそれは、単にハマスの思想に共鳴してのものではなかろう。そうではなく「敵の敵は味方」なのだろう。
なぜなら、このアカウント、ガチだからだ。
(あと、スマホの画面でなくPCの大きな画面で見てはじめて気づいたが、背景にblack sunが仕込んであるようだ。)
当該アカウントはどういうアカウントか
当該の投稿を見てすぐに、プロフィールを参照してみた。その画面が下記である。
ヘッダー画像やbio欄などは普通のTwitterユーザーっぽいのだが、固定ツイがいきなり激やばである。というか、これを読んで「激やば」と思う人はヲチャくらいかもしれないが、こんなものを単に書くだけでなく、わざわざ固定しておくということ自体が「激やば」であることは、わりと広く納得していただけるのではないかと思う。
ついでなので、もう少し広い範囲のスクショもとってみた。「激やば」であることはおわかりいただけるだろう。(スクショをとるソフトウェアの限界で、右端の「新規投稿」のボタンが大量に表示されているが、それは気にしないでいただきたい。)
なお、固定ツイートに添えられている画像(昔の新聞のスキャン)自体は、何らおかしなものではない(捏造などではなく真正なものである)。問題はそれへの言及の文脈だ。
……と、遭遇した実例についてここまで整理しながら記録してきたが、残念ながら書き終える前に出かける時間になってしまった。帰宅してから(余裕があれば)仕上げに入るつもりである。→結局仕上げることはなかった。といっても、書くべき情報はここまでですべて書いてあるので、いわゆる「いかがでしたかブログ」における最後の「いかがでしたか」が欠落している、という程度である。
その間、私は外出しながら、「ナチスはよいこともした」という言説について考えていると思う。
追記(7月9日)
また別の例
ガザ地区内部からのツイートを見ているときに、さらにまた、別な事例に遭遇した。
2週間前に「パレスチナ支援の中に紛れ込んでいる極右」のことをブログに書いたが(このスレッドの一番上)、今また、よりによってムハンマド氏へのリプライに、めちゃくちゃ強烈なのがあった。
— nofrills 🍉 #ガザ市民の声翻訳 (旧 #ガザ投稿翻訳)発起人 (@nofrills) July 8, 2024
日本語圏でパレスチナ支援をやってる方々で、特にああいうのに免疫のない若い世代の方は気を付けて下さい
以下、かなり強烈なので、免疫のない方はご注意いただきたい(強烈すぎるところは画像にボカシを入れておく。そうじゃないとこのブログのこのエントリが反ユダヤ主義をもろに拡散することになってしまう)。上記の「Stutterなんとか」というアカウントはまだ「鬱屈を抱えていた人が極右思想に触れて解放されちゃったのだろうな」という雰囲気だが、今回のはガチの活動家だ。
「拡散」の踏み台にされたパレスチナ人
当該の投稿がリプライとしてつけられた元の投稿の主、ムハンマド氏は、今般のジェノサイドで職場を破壊された学校の先生で、「見事な英語を使うガザの人」のひとりだ。2010年12月からTwitterを使っていて、私は2012年のガザ攻撃のときに作ったリストに彼を入れてあるのだが、たぶんその前からフォローはしていたのではないかと思う。当時、彼はまだ学生(大学生)だったと記憶している。ガザ地区南部のハンユニスの人で、ジェノサイドが始まって数か月のうちに、自分の手で時間をかけて作っていた完成間近の自宅を破壊された。また、今般のジェノサイドで本人が書いていたので知ったのだが、実家はかなりの大地主で広い農地を持っている(その農地と農業施設は、先月、完全に破壊された)。幼い子供たちの父親で、何人かの若者たちの兄である(弟さんたちも今般のジェノサイドに際して英語でTwitter/Xのアカウントを立ち上げ、身の回りのことを報告している)。また、Care For Gazaという組織の支援活動者でもあり、今般のガザ・ジェノサイドでは紙おむつや赤ちゃんのミルク、缶詰やパンなどの食料を、自宅を追われた避難民に配っている。
We delivered diapers and baby food to displaced families again.
— Care For Gaza (@CareForGaza) June 30, 2024
Thank you for your endless support.
Contribute using any of the methods below:
Gofundme:https://t.co/rlGWiofJTp
PayPal:https://t.co/YsYldqxBIC
USDT - TRC20
TGiGVfRrq6rhJXZHKPuTYuFuHjrkrnEqZm
BITCOIN… pic.twitter.com/fMd1153Vgi
We have been delivering food to the refugees today in Gaza 🙏 pic.twitter.com/RCVNPuYUqn
— Muhammad Smiry 🇵🇸 (@MuhammadSmiry) May 27, 2024
このように立派な活動をしていて、Twitter歴も長く、見事な英語で「世界」にリーチできるから、ムハンマド氏には840,000人を軽く上回るフォロワーがいる。
不快極まりない反ユダヤ主義言説
図像と色
そんな彼の投稿のリプライにべたっと貼り付けられていたのが、下記の不快極まりないヘイト言説・ヘイト画像だ。ボカシをかけてあるが、それは、これが極右界隈で古くからある反ユダヤ主義の典型的な画像(戯画化された「ユダヤ人」)だからである。ついでに言えば、ここで用いられている色(黄色)も反ユダヤ主義の典型だ。
私はこれを見た瞬間に「無理」ってなった。
当該アカウントがここで貼り付けているのは75分近くもある映像(動画)で、興味本位であっても、「論破」してやるつもりであっても、絶対に見てはならない。ネット上には、興味本位で何となく、あるいはツッコミを入れて楽しむつもりで、(反ユダヤ主義に限らず)過激派の映像を見ているうちに取り込まれてしまった人の話はあふれている。「自分は大丈夫」と思っていても、それはただの根拠のない自信にすぎない。私が聞いた中で一番すごかったのは、普通に常識的な環境で過ごしてきた人が、YouTubeで「地球は平らである」説のビデオを見て、「地球は平らである」と本気で信じるようになった、というエピソードである。「地球は平らではない」ということはいくら何でも常識すぎて、YouTube見たくらいで「平らである」と信じてしまうなどということはありえないと思うかもしれないが、実際にはそんなことまでありえるのだ。
「アマレク」言説
この映像に表示されている "You are Amalek" という文言は、おそらくこの映像のタイトルだと思われるが(私も映像は再生ボタンを押していないからはっきりとはわからない)、これは、今般のジェノサイドの初期段階から、イスラエル政府が(ヘブライ語で)自国民に対して「われわれが今対峙しているのは、Amalekである」というメッセージを、下記のように繰り返し発していること*3、そしてそれが浸透していることを参照している。
🚨Netanyahu is now going fully genocidal; calling Palestinians "Amalek" & citing the bible to justify their destruction!
— Muhammad Shehada (@muhammadshehad2) October 28, 2023
The bible called to "utterly destroy all that Amalek have, & spare them not; but slay both man & WOMAN, INFANT & suckling, ox & sheep, camel & donkey"! (1/2) pic.twitter.com/VqmZ9XcX5w
Israeli minister in defence and finance minister Smotrich tonight:
— Younis Tirawi | يونس (@ytirawi) April 29, 2024
“Moments before redemption, we must not hesitate. We must destroy Rafah, Nusseirat, & Dir al-Balah 'wipe out the memory of Amalek! …There's no half- measure. Rafah, Dir al-Balah Nusseirat absolute destruction!” pic.twitter.com/RVq8z9Nkle
it ok to call it genocide - now?
— Abier (@abierkhatib) July 5, 2024
They are killing Palestinians as a token of love for their wives and mothers.
Israeli soldier records himself blowing up buildings for his wife saying "to wipe off the memory of Amalek" and "take revenge of the gentiles" pic.twitter.com/W7a1YaqcXP
「アマレク」とは
Amalek(アマレク)とは:
Amalek is described in the Hebrew Bible as the enemy nation of the Israelites.
つまり「ヘブライ語聖書*4において、イスラエル民族の敵である民族とされる者たち」のことである。ど真ん中の宗教である。
そしてイスラエルの場合にややこしいのが、「聖書」は学校で「宗教」の授業ではなく「歴史」の授業で扱われている(ダニー・ネフセタイさんの講演より)ということである。日本でいえば、イザナギ・イザナミ伝説を「日本史」で教えるようなものか。ありえねぇ。ありえないんだけど、実際にそういうことが行われている。日本だって森氏が表明していたような「ニッポンは神の国」というのが本気で追求されたらやばい。
余談だが、欧米のキリスト教世界の今般のガザ・ジェノサイドの反応の多くは、人々が「そっか、アマレクなのか、じゃあ仕方がないよね。殲滅しないと」と思っているのだとしたら、わりと簡単に説明がつくと思う。つまり(キリスト教でいう新旧の)聖書は現実を記録したものであるという信念が共有されているのなら。だが、実際にはそんなに単純な話ではないだろう。
当該の映像について
ともあれ、当該の映像について、"You are Amalek" という文字列でウェブ検索したら、検索結果の画面だけでだいたいどういうものかはわかった。
検索結果の1番目に、この映像がどこにアップロードされているか(どのプラットフォームで共有されているか)が示されている。Rumbleである。はい、解散。
RumbleのほかにOdyseeというサイトにもアップロードされていることが確認できたが、これも(技術的に目新しいことをやっていてその点で注目されることがあるようだが)Rumbleと同様、「言論の自由」という口実で人種主義や極右思想を拡散したい人たちが集うプラットフォームである。
このビデオについては、私はこれ以上突っ込んでいくつもりはない。時間の無駄だ。
繰り返しになるが、この映像は興味本位であっても、「論破」してやるつもりであっても、絶対に見てはならない。簡単に取り込まれるよ。特に、「パレスチナについてこれまで何も知らなかった」という罪悪感を抱えつつ、ガザ地区でのすさまじい破壊と殺戮の映像に心を痛めている人は、近寄ってはならない。怒りやら情けなさやらの感情に身を任せてTwitterやってるうちに、別の誰かのプロパガンダを拡散するようになっちゃった人は実際にいるよ。私や私の直接の知り合いが大丈夫なのは、それぞれそれなりにベースがあるからだ。怒りなどの感情だけに駆られてはいない。
当該のアカウントについて
さて、よりによってムハンマド氏の投稿に寄生してこういう映像を拡散しようとしているのはどこのどんな人物なのか。
さすがにこの映像は「ヘイト」として通報しとかないと、と思って個別ページにアクセスしたときに、プロフィールを読むことになったのだが、「やっぱり」っていうのと「唖然とする」っていうのとが一緒になって襲ってくるような内容だった。アカウント名もアレだが(自分でtrollって言ってるうえに、Officialまでついてて、trademarkも自称している)プロフィールとして記載されていることが。
「4年間バンされてて、昔のアカウントは使えなくなって、新しいアカウントは2023年11月に取得」ということから、ジャック・ドーシーの時代にアカウントを恒久停止され、イーロン・マスクのもとで再取得したと判断できる。
さらにもろもろてんこ盛りで「元左翼です」(すごいありがち)とか「WokeではなくAwakeです」とか「有害な男性 (toxic male) ですが何か」とか「言葉より行動」というラテン語を座右の銘にしているっぽいとか、1語ごとにお腹いっぱいになる。締めがSave The Childrenというのは有名なNGOのことではなく、「ピザゲート」のことだろう(このアカウントの中の人はアメリカ人であるらしい)。
「ピザゲート Pizzagate」と言っても、今、パレスチナ連帯行動で街頭に出ているお若い方々には通じないかもしれない。2016年だから、もう8年も前のことだ。だが、こんなものを解説している時間は私にはないので、リンクだけはっておく。
ピザゲートは、2016年アメリカ合衆国大統領選挙の期間中に広まった、民主党のヒラリー・クリントン候補陣営の関係者が人身売買や児童性的虐待に関与しているという陰謀論である。
これの(ありもしない)「児童性的虐待」を問題化する陰謀論者が #SaveTheChildren というのを標語のようにしている。
ちなみに「ピザゲート」については、日本のジャーナリストが「Qアノン」について突っ込んだ取材をまとめた一冊にも出てくる。
さらに言えば、「事実 fact」ではなく「真実 truth」を強調する人々がアレだということを私が知ったのは、2001年9月11日の米同時多発テロ事件をめぐる陰謀論言説*5に接したときである。大学受験の英語でも、大学で使っていた学問的な英語でも、factとtruthの違いについて、あれほど明確に意識させてはくれなかった。何なら日本語の「事実」と「真実」(というより「真相」か)の違いについて意識するようになったのも英語経由だ。
陰謀論を唱える人々は、「同時多発テロ事件についての政府発表や大手マスコミの報道は、truthを隠蔽している。truthは隠されている」と主張し、Trutherと呼ばれた(どうでもいいが、この用語法は、「何でも-erをつけるのは、安室奈美恵のファンを『アムラー』、マヨネーズを何にでもかける人を『マヨラー』と称するといった例に見られるような、和製英語ではないんだ。ネイティヴも言うんだ」という驚きを英語教育界隈にもたらした)。
当該アカウントが使っている "Truth" は、こういった文脈での語である。
なお、今、本稿を書くために当該アカウントを見てみたら、ヒトラー賞賛の投稿と、ホロコースト否認の投稿があった。
ふわっとした「ナチスはよいこともしたんじゃないか」論どころではない。
どう見てもネオナチです、ありがとうございました。「ネオ」じゃなくて普通に「ナチ」かもしれないけど。
とにもかくにも、ムハンマド氏に近寄るんじゃねぇ(怒)
下記の本(自叙伝)、邦題が「ネオナチ」ってなってるんだけど、この人、「ネオ」じゃない「ナチ」だったんだよね。出版社の意向で邦題はこうなったっぽいけど、本の中では彼女自身のことは「ナチ」って書いてあります。
ドイツにいる外国人が多いといって、私の仲間はいっそう激しく騒ぐようになり、イスラム教徒を追い回していた。いつのころからかユダヤ人の世界征服陰謀説はほとんど話題にならなくなり、代わってモスクとイスラム教徒のことでもちきりになった。私たちの敵は代わっていたのだ。突然ドイツのイスラム化が恐怖のシナリオになった。私は正真正銘の右翼だったにもかかわらず、このパニックやヒステリーは決して実感として理解できなかった。……
私が激しく攻撃したのは、小児性愛者たちだった。「児童虐待者には死を」と書いたTシャツを着て堂々と学校に行ったし、ショッピングモールも歩いた。新たな事件が報道されるとすぐ、私たちは私的制裁をするよう要求した。……
――ハイディ・ベネケンシュタイン(平野卿子訳)『ネオナチの少女』筑摩書房、2019年、pp. 124-125
*1:
https://en.wikipedia.org/wiki/Andrew_Tate#Views_and_influence 'In November (2023) he accused Israel of "genociding" Palestinians and claimed that the Hamas attack on Israel was as "an eye for an eye".'
*2:ちなみに、私が知ったのは、Twitter/Xにガザから投稿される市民の声に対しイスラエル国内から、またイスラエル国外のシオニストたちからぶつけられる無根拠な言いがかりを何となく眺めていたときである。そういったシオニストたちがこの「赤い下向きの三角形」を問題視していたことがきっかけで少し調べてみて知った(私がただ自分のフィルターバブルの中に流れてくる情報しか見ていなかったら、このことは知らなかったに違いない。
*3:余談だが、2023年10月にこの言説が伝えられたとき、日本語圏ではパレスチナのことは全然知られていなくて、例のよくある「ややこしい宗教紛争でしょ?」という思い込みを解くべく、識者・ジャーナリストが「宗教問題ではありません。植民地主義です」という基本中の基本の説明を一生懸命にしていたのだが、そこにイスラエル政府からこのような、ど真ん中の「宗教」の言辞が飛んできたわけだ。私は知らない間柄でもないという関係の人たちに「今回ばかりは、正面から『宗教』の要素に言及しないと、説明できないですよ」とお伝えしたのだが、特に直接の反応はなかった。
*5:これも、2024年の今、パレスチナ連帯の行動で街頭に出ている若い世代の人たちは知らないだろう。知らないと取り込まれる危険があるのだが……。