このエントリは、2021年2月にアップしたものの再掲である。
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今回の実例はTwitterから。
前置きなしでいきなり行こう。ツイート本文中の "Sicknick" は人名(姓)で、1月6日のワシントンDCでの暴動(議事堂襲撃)の際に暴徒に消火器で頭を殴られ、翌日息を引き取った警官、ブライアン・シクニックさんのことである。12日に故郷で葬儀が執り行われたこの殉職警官の遺灰が議事堂に迎えられて安置され、彼を国家としてたたえる行事が現地2月2日(大まかに、日本では3日)から始まった。そのタイミングでのツイートである。
This isn’t complicated. If Trump hadn’t tried to overthrow the government, Officer Sicknick would be alive. If Republican elected officials had simply accepted a not close presidential race, Officer Sicknick would be alive. Vote to convict. https://t.co/iiRlHM8Biz
— stuart stevens (@stuartpstevens) 2021年2月3日
@stuartpstevensさんのこのツイートは、シクニックさんの遺灰を迎える準備が整った議事堂の様子を伝える地元TV局記者の映像ツイートに対するリプライというか補足のような引用リツイートである。
見ただけでわかると思うが、《仮定法》である。
以下、2文続けて引用するので少し分量が多くなるが、行数が多いとうまく読めないという方は1文ずつばらばらにして紙にでも書き出してみてほしい。
If Trump hadn’t tried to overthrow the government, Officer Sicknick would be alive. If Republican elected officials had simply accepted a not close presidential race, Officer Sicknick would be alive.
ほぼ同じ形の文を2度繰り返すことで《強調》の気持ちがよく伝わってくるこの悲痛な文面は、過去において共和党の大統領選挙で5度にわたって仕事をしてきたというスチュワート・スティーヴンス氏によるもので、ツイート全体の趣旨としては共和党の議員への呼びかけである。
上記引用部分で太字で示した部分が《仮定法》だ。条件節(if節)が《仮定法過去完了》で、帰結節(主節)が《仮定法過去》になっている。「もしあのときに~であったならば、今…だろう」という時間差のあることを言うときの形だ。
If I had studied harder when young, I would be a doctor now.
(もし若いころにもっと一生懸命に勉強していたら、今頃は医者をしていたのに)
引用文中、下線で示した "elected" は、この仮定法の嵐に紛れて仮定法に関係した過去分詞のように見えてしまうかもしれないが、これは《過去分詞》で《形容詞》のように使われるelectedである。意味は「選挙で選ばれた」。つまりこの文脈では、上院議員や下院議員について使う形容詞である。"elected officials" で「選挙で選ばれた(議席を持っている)役職者」といった意味になる。
スティーヴンス氏の文面は、「もしもトランプが政府を転覆しようとしていなかったならば、警官のシクニック氏は(今も)生きているだろう。もしも選挙で選ばれた共和党の役職者(議会共和党の幹部)が、単に、僅差などではなかった大統領選(の結果)を受け入れていたならば、シクニック氏は(今も)生きているだろう」。
シクニックさんを殴った人物が誰か、どういう状況で殴られたのかといったことは、まだ捜査中で、はっきりとはしていないようだ。
※1800字
サムネ:
参考書: