今回の実例は、前回(先週末)見たのと同じ学術的な報告書から。
出典は同じで下記のPDF:
https://www.bennettinstitute.cam.ac.uk/media/uploads/files/DemocracyReport2020.pdf
見るページも前回と同じ。
第3パラグラフの第2文:
The year that marks the beginning of the so-called “global democratic recession” is also the high point for global satisfaction with democracy, with just 38.7% of citizens dissatisfied in that year.
太字にした "that" は《関係代名詞》の主格で、そのあとの "marks" は動詞で「今年で~周年となる」といったことを言うときに使う。このmarkは英和辞典(例えば下記)ではなかなか「これ」という訳語が見当たらないかもしれないが、実用の英語では非常によく見る用法なので覚えておくとよい。
This year marks the 10th anniversary of his death.
(今年は彼の死から10年目の節目の年だ)
その関係代名詞のthatの先行詞である "The year" が文の主語で、述語動詞は下線で示したisである。よってここまでで、「いわゆる『全地球規模の民主主義の後退』の始まりとなったこの年は、~である」の意味。
so-calledは「いわゆる」の意味だが、ここでは「世間ではそう言うよね」的な揶揄みたいな含みというより、学術上の用語を紹介するためのクッション言葉と考えてよいだろう。"global democratic recession" という表現は、それを「学術用語」だと知らない人が見たら、ちょっと反発を覚えても不思議ではないような表現だ。この用語については、Googleの検索結果を英語に絞り込んだうえでGoogle検索してみるといろいろわかる。
isの後ろを見てみると:
... is also the high point for global satisfaction with democracy, with just 38.7% of citizens dissatisfied in that year.
satisfaction with ~は「~に満足していること、~への満足」の意味。前置詞のwithに注意しよう。名詞のsatisfactionだけでなく動詞のsatisfyでも同じくwithを用いる。
He was satisfied with the results.
(彼は結果に満足していた)
その後、太字で示した "with" は《付帯状況のwith》で、ここでは《with + ~ + 過去分詞》の形になっている。「~が…された状態で」が基本の意味だ。
She was sitting there with her arms folded.
(彼女は腕を組んでそこに座っていた)
※「腕」は「組まれた」状態になっているということに注意。
この実例の場合は、「その年には、市民のうちわずか38.7%だけが不満足な状態で」と直訳できる。
文全体としては、「いわゆる『全地球規模の民主主義の後退』の始まりとなったこの年は、民主主義に不満足だったのは市民のうちわずか38.7%だけで、全地球規模の民主主義に対する満足が最高点に達した年でもあった」という意味になる。
次の文:
Since then, the proportion of “dissatisfied” citizens has risen by almost one-fifth of the population (+18.8%).
これは非常に素直な《現在完了》の文。解釈には一切支障はないだろうが、自分で書くときにこういう表現が使えるかどうかは、解釈できるかどうか(読めるかどうか)とは別の話だ。特にアカデミック英語では絶対的に必要になる表現なので、書くときに使えるようにしておきたい。
ただし大学受験でよくある「下記のグラフからわかることを英語で説明せよ」という自由英作文問題では、グラフにまとめられていることは既に過去に起きたことなので、時制は現在や現在完了ではなく過去を用いることが基本となる。
例えば何かのグラフで、2015年から19年までの間に件数が5から10に増加したことが示されている場合、The number has risen from five to ten in less than five years. とするより The number rose from five to ten in less than five years. とする方がよい。
次回はさらにこの続きをみていこう。
参考書: