Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

英文を頭から読んで書いてあることを書いてある通りに読む練習, 同格, 挿入, be expected to do ~, 付帯状況のwithなど(英国のロックダウンの見通し)

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今回の実例は、英国政府の医療顧問団上層部の発言から。

英国政府は3月23日(月)にレストラン、パブなどの閉鎖(日本語ではおそらく「営業自粛」と位置付けられるもの)を経て「不要不急」の外出の禁止に踏み切り、以降、いわゆる「ロックダウン lockdown」の状態にある*1。日本時間で24日早朝のブルームバーグ報道: 

英国は23日夜から全国的なロックダウンに入る。ジョンソン首相が国民向けのテレビ演説で発表した。新型コロナウイルスの感染が拡大する中、不要不急の移動を全て禁じ、住民は自宅から出ないよう命じられた。

期間は少なくとも3週間で、警察には人々の集まりを解散させたり違反者に罰金を科したりする権限が与えられる。

生活必需品以外の店舗や遊び場、図書館、信仰の場所も閉鎖される。必需品の買い物や治療を受けるためなどを目的とする外出は認められる。

政府は3週間後にこうした措置を緩和できるかどうか検証する。

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-23/Q7NYY4T0AFB401

それから1週間が経過しようというタイミングで、政府の医療顧問団副チーフであるジェニー・ハリーズ博士が、英首相官邸が毎日行っている記者会見で、「行動制限は6か月にわたって続く可能性がある」と語った。それを伝える記事が下記である。

www.theguardian.com

 

今回実例として見るのは、その後、事態がさらに進展したときに書かれた記事。ハリーズ博士の発言についてのこちらの記事での記述が、「書いてあることを、書いてある順番で、書いてある通りに読む」ことの練習台として、とてもよいものだと思ったので、それを見ていきたい。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

 実例として見るのは記事の少し下の方から: 

f:id:nofrills:20200331111501p:plain

2020年3月29日, the Guardian/Observer

Jenny Harries, deputy chief medical officer, said fatalities were expected to increase. With Britain beginning its second full week under effective lockdown, she indicated that normal life was not likely to resume for three to six months – and “it is plausible it could go further than that”, she cautioned.

 最初の文は簡単。

Jenny Harries, deputy chief medical officer, said fatalities were expected to increase.

下線部分は、当ブログで何度も取り上げているコンマで挟んだ《挿入》で、《同格》の表現。

  Ken Shimura, a member of the Drifters, was one of the most popular comedians in Japan. 

  (ザ・ドリフターズの一員の志村けんは、日本で最も人気の高いコメディアンのひとりであった)

太字で示した《be expected to do ~》は「(主語は)~することが予期される」、つまり「~することになる」という意味。

したがってこの文は、「政府医療顧問副チーフのジェニー・ハリーズ(博士)は、死者数は増加することが予期されると述べた」の意味。

 

その次の文が本題。この英文を頭から読んで書いてあることを書いてある通りに読む(返り読みをしないで正確に読み取る)練習をしよう: 

With Britain beginning its second full week under effective lockdown, she indicated that normal life was not likely to resume for three to six months – and “it is plausible it could go further than that”, she cautioned.

太字で示したのは《付帯状況のwith + 現在分詞》の形で、下線を引いた部分全体がその句である。With ~ -ing... の形は「~が…している状態で」の意味だが、ここでは-ingの現在分詞は「~している」という進行中の動作を表すというより、現在進行形にある《近い未来(近未来)》を表す用法だ。

したがって、この句は直訳すれば「英国が、事実上のロックダウンの元での2週目を始めようとしている状態で」。実際に読んで頭の中で言語処理をするとこういう直訳的な日本語は出てこないのだが(慣れている人なら、これは一気に読んで、頭の中で自然と「英国が事実上のロックダウンとなって2週目に入ろうとするなか」などと日本語化されるはず)。

 

さて、次は文の本体(主文)の部分。スラッシュを入れながら見ていこう。

[she indicated / that normal life was not likely to resume for three to six months – and “it is plausible it could go further than that”, she cautioned.

ブラケット*2で囲んだ部分と、そのあと、ダッシュを使って補足されている部分とに分かれているが、これも書いてある順番で書いてある通りに読んで意味を把握していく。

"She indicated that ..." は「彼女は…ということを示した」。

その「…ということ」の内容が「通常の生活は戻ってきそうにない」(《be likely to do ~》は「~しそうである」、resumeは自動詞で「戻る」。この程度の単語は辞書を見なくてもわかるようにしておきたい)、「3から6か月の間は」。

 

ダッシュを挟んだあとの部分:

 – and “it is plausible it could go further than that”, she cautioned.

これは、《形式主語のit》の構文で、真主語はthat節でそのthatがスラッシュを置いたところで省略されているのだが(そのくらいのことはこの英文を見た瞬間に判断できるようにしておきたい)、書いてある順番で読むので、まずは「…がplausibleである/それを超えていくということが」という骨格をつかむ。

"plausible" は少し難しい単語かもしれないが、「妥当である、ありそうだ、現実味がある」といった意味で、この形式主語の構文で使われているのによく遭遇する。大学入試では、長文問題で学術研究について扱った記事が使われているときに、「研究チームリーダーの〇〇教授は、it is plausible that ... と述べている」といった形で出てくることがある。必須とまでは言えないが、知っておいた方がよい単語だ。

that節の内容、"it could go further than that" の "could" は(時制の一致でcanがcouldになっているのではなく)《仮定法》だ。「~ということもありうる」といった婉曲な表現である。

"go further than ~" は「~を超えていく」。ここではロックダウンの期間がそれを超えて続くということを言っている。furtherはfarの比較級で、far《物理的な距離》ではなく《程度》を表すときに用いる。

というわけでこの部分の意味は、「(ロックダウンの期間は)それ(3~6か月)を超えて続くこともあり得るというのが、妥当なところです」となる。断言を避けた慎重な物言いであるが、読む分には特に難しくはないだろう。(原文の意味を崩さず壊さず何も取り除かずにまともな日本語に翻訳するのは結構大変かもしれない。)

 

今回見たこの記事は、英国で医師が死に始めていることを伝えている。欧州では各国で、医療従事者に十分な装備がないことが問題になっているが*3、英国も例外ではなく、医療現場からは必要な装備を求める声が上がっている。

https://www.theguardian.com/world/2020/mar/29/worrying-event-deaths-of-nhs-doctors-from-covid-19-stark-reminder-of-pandemic

 

日本はまだ、こういう状況を「対岸の火事」として眺めているように私には見えるが、実はそうではなくて、医療従事者が使う装備はもうたっぷり準備されていて、医者も看護師も技師も誰もウイルスに倒れることなく治療を続けられる体制が整えられているのかもしれない。そうであることを願ってはいるが、そうであるという根拠は得られない。

何しろ、早くも2月上旬の時点で「患者を増やすな、医療崩壊する」とヒステリックに叫ばれていた一方で、東京でもばたばたと人が死に始めている3月下旬に自民党の偉い国会議員たちが、大挙してはるばる沖縄を訪問して「濃厚接触」しているのがこの国の現実である。

とか書いてると「アベさんだってスガさんだって、現場で頑張ってるんだ!」と叫んで殴り掛かってくる人がいるというのがplausibleな想定になるのがTwitterなのだが。

 

参考書:  

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英文法解説

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ロイヤル英文法―徹底例解
 

 

*1:「ロックダウン lockdown」という用語はなかなか面倒な用語である。

https://english-vocab-covid-19.memo.wiki/d/%a5%ed%a5%c3%a5%af%a5%c0%a5%a6%a5%f3%a1%a2%b3%b0%bd%d0%a4%ce%b6%d8%bb%df%a1%a6%c0%a9%b8%c2%a1%ca%a1%a2%c5%d4%bb%d4%c9%f5%ba%bf%a1%cb%3a%20lockdown を参照していただきたい。

*2:[~~] のカッコを「ブラケット」と呼ぶ。

*3:今回の疫病は広がり方が早く、範囲も広いので、準備が追い付かない。通常なら、例えばアフリカのサブサハラで発生した疫病のための装備は、中国や欧州で生産して供給するということができるのだが、今回は全世界で起きているから回らない。これが「グローバル・パンデミック」の恐ろしさかと震撼としている。

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