Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

形式主語の構文, 付帯状況のwith, 【ボキャビル】bring home, translate A into Bなど(大量死の中、メディアにできること)

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今回の実例はTwitterから。

米国では、新型コロナウイルスによる死者数が10万人に迫っている。ここまで数が増えると、報道上では「ただの数字」になってしまう。5月24日のニューヨーク・タイムズ (NYT) は、それに抵抗するような紙面構成をした。

「計算できない喪失」として一面に並べられているのは、新型コロナウイルスで亡くなった10万人近い人々のごく一部――わずか1パーセント――である1000人のお名前と、その人がどういう人であったかを一言で描写する短いフレーズである。劇作家やミュージシャン、ジャーナリストのような著名な人もいれば、看護師、医師といった医療従事者もいるが、大半は市井の一般人である。「子供思いの父親」、「腕利きの刑事」、「動物好き」、「ホロコーストの生き残り」、「退役軍人」、「専業主婦」、「GMで30年以上働いた」といったフレーズが並んでいる。実際に紙のNYTを買った人は、この名前とその人についての描写が4ページにわたっていると報告している。

大量死が起きているときに単なる数字にされてしまう死者に、ひとりひとり、名前と年齢はもちろん、その人がどういう人であったのかを語ることで「顔」を与えるということは、例えばパレスチナ(特にガザ地区)に対するイスラエルの攻撃に際して、またシリア内戦で、あるいは西洋諸国でのテロ攻撃において、NGOや報道機関がやってきたことである。私が毎日チェックしている英ガーディアンでも、亡くなった人についての人となりを伝える記事がよく出ている。だが、NYTのこの「紙」、伝統的な「新聞紙」を使った見せ方は際立っている。この紙面は、24日、英語圏でとても大きな関心と注目を集めた。

オンライン版も、紙とはまた違った見せ方で、大きなインパクトがある。

1000人のお名前とその人についての描写を見ながら最後までスクロールし終わるには、1時間半では足りなかった。何かについて「わずか1パーセント」という認識をするとき、それが実際の世界に占めているのはこういうことなのだ。

科学専門誌Scienceに書く仕事もしている分子生物学者のKai Kupfershmidtさんは、次のように述べている。

 

最初の文: 

The @nytimes has translated its stunning frontpage into a similarly devastating online graphic.

《translate A into B》は、多くの場合、言語について用いられ、「AをBに翻訳する」という意味になるが、この場合、「AをBに移し替える」、「AをBの形にする」といった意味だ。「NYTは(紙での)一面を、それと同様に深い衝撃を与えるようなオンラインの図像に移し替えている」という意味である。

 

次の文: 

It’s hard to bring home the scale of this tragedy, particularly with so many people actively working to keep it from view.

太字で示した部分は《it is ~ to do ...》の形、つまり《形式主語》の構文だ。特に解説はいらないだろう。

下線で示した "bring home ~" はイディオムで、「~を強く思い知らせる」といった意味。Cambridge辞書の定義がわかりやすい。

to make someone understand something much more clearly than they did before, especially something unpleasant:

https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/bring-sth-home-to-sb

青字で示した部分は、《付帯状況のwith》と現在分詞の構文で、「~が…している状態で」。朱字で示した《keep A from B》 は「AをBから妨げる」で、ここでは特に "keep A from view" の形で「Aを視界から遠ざけておく、Aを見えないようにする」。

よってこの文は、「この悲劇の規模を本当の意味で悟るのは難しい。特にこれほどに多くの人々がそれ(悲劇の規模)を見えないようにしておくために積極的に動いているのだから」といった意味になる。

 

次回はこのNYTのインタラクティヴの画面を見てみよう。

 

f:id:nofrills:20200525115334j:plain

https://twitter.com/nytimes/status/1264427825639063553

 

 

ことばを使うということについて、鈍感極まりない科学者があまりにも多いときに(日本語圏において、彼ら・彼女らの多くは「理系だから」を言い訳にし、それで自分の鈍感さが正当化されると思っている)、イタリアの科学者で小説家のパオロ・ジョルダーノのことばは一縷の希望の光となる。いや、なりうる。よい本である。

コロナの時代の僕ら

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