Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

#ガザ投稿翻訳 「パレスチナの人々の人権を擁護することは、ハマス支持者であることを意味しない」(エリック・カントナ)、ほか、サッカー界から。

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

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ハッシュタグ「#ガザ投稿翻訳」を立ち上げて数日が経過した。参照数などを確認する手立てはないが、ハッシュタグなしでばらばらにやっているよりは確実に多くの目に触れるようにできていると思う。

いつもなら、ハッシュタグは情報の共有のためにあるという前提で、ハッシュタグのない投稿にタグだけつけて引用リツイートすることも多いが(例えばESAT-Jに関しては多くの人がそうやって共有を広げてきた)、今回はそれはしていない。タグをつけるかつけないかは投稿者にお任せしたい。ガザからの、またはガザに関する投稿を日本語化している方は、共有の範囲を広げるため、よろしければハッシュタグをお使いください、という感じでこのあともやっていきたい。(なお、当方はハッシュタグの言い出しっぺではありますが、「こういうツイートや記事があります」ということをお知らせいただいても、ただ流すわけにはいかず、こちらも確認しなければならないし、自分の関心事のほかにそれについて私が書かなきゃと思い続けなければならないことは実際ものすごい心理的な負担になるので、そのツイートや記事を見つけた方がご自由にハッシュタグをお使いください。あなたが見つけたものは、あなたが投稿しなければそれで終わり、ということでよろしくお願いします。)

さて、10月17日の火曜日、私の見ているTwitter/Xの画面の右サイドバーに、Eric Cantonaという文字列が表示されていた。何気なく見てみた私は、襟を正さずにはいられなかった。

Twitterは使っていないエリック・カントナInstagramに画像で投稿したメッセージが、画像でバズっていたのである。

https://www.instagram.com/p/Cyfjx1qNFjG/

テキスト化すると: 

Defending the human rights of Palestinians does not mean you are pro-Hamas.

Saying "Free Palestine" does not mean you are anti- Semitic or "want all the Jews gone."

"Free Palestine" means free Palestinians from the Israeli occupation that's been robbing them their basic human rights for 75 years.

"Free Palestine" means stop caging 2.3 million Palestinians in the world's largest open air prison, half of whom are children.

"Free Palestine" means end the apartheid imposed by the Israeli government.

"Free Palestine" means give the Palestinians control over the basic infrastructure in their land.

びしっと襟を立てて*1日本語化したのが、下記である。

https://twitter.com/nofrills/status/1714272291214029215

テキスト化: 

パレスチナの人々の人権を擁護することは、ハマス支持者であることを意味しない。

パレスチナを解放せよ」と口にすることは、反ユダヤ主義者であることや、「すべてのユダヤ人に消え去ってほしいと思っている」ことを意味しない。

パレスチナを解放せよ」とは、75年間にわたってパレスチナの人々の基本的人権を奪い続けてきたイスラエルの占領から、パレスチナの人々を解放することを意味する。

パレスチナを解放せよ」とは、世界最大の屋根なし監獄*2に230万におよぶパレスチナ人(その半分は子供である)を閉じ込めるのをやめることを意味する。

パレスチナを解放せよ」とは、イスラエル政府によって実施されているアパルトヘイト政策を終わらせることを意味する。

パレスチナを解放せよ」とは、パレスチナの人々の土地の基本的なインフラに関する管理権を、パレスチナ人に与えることを意味する。

当たり前のことしか言っていないのだが、今はこの当たり前のことを明確に言語化すること、それを広く共有することが何よりも重要だ。というか、そこまで追い詰められている。考えてみてほしい。「物を盗んではいけません」「人を殺してはいけません」とわざわざ大声で叫ばねばならない世の中を。

エリック・カントナは1980年代から90年代にかけて活躍した欧州サッカー界の大スターのひとりで、フランス人である。イングランド、特にマンチェスター・ユナイテッド在籍時の記憶が人々の間で鮮明なフットボーラーで、引退後は映画俳優もしている「セレブ」だが、時事的・政治的発言でもしばしば注目されている。イスラエルの対パレスチナ政策については昨日今日発言を始めたわけではない。例えば、美談になりやすいときだけ「フットボール・コミュニティ」が立ち現われがちな中で、2012年にガザの海岸でサッカーをしていた少年たちがイスラエル軍に撃ち殺された(このときもイスラエル軍は当初関与を否定していたはずである)ことについて「フットボール・コミュニティ」として黙っていられないとしてはっきりと意見を表明したフットボーラーのひとりがカントナだった。

フランスの首都パリでは、10月7日のハマスによるイスラエル攻撃を受けてイスラエルによる対ガザ戦争が始まってから、パレスチナ支持・連帯のデモが禁止されていたそうだが(一方でイスラエル支持・連帯のそれは禁止されていない)*3、そんなふうに国全体が政府主導で一気にイスラエル側に傾いた中でのカントナのこの英語での発言は、瞬く間に、非常に多くの注目を集めた。私が見た範囲では、単に「カントナがこう投稿した」というフィードが多く、続いて「よく言った」と賛同・称賛する発言が並び、否定的なものは私は見ていないが(そこまでチェックしている時間が惜しかったというのが正直なところ)、たぶん否定的な声もすごいたくさんあると思う。

1966年生まれのカントナは、母方の祖父がスペインからフランスに来た人だ。それもただの「移民」ではなく、1939年にフランコ将軍に対して戦った共和派で、戦闘で負傷して治療のためフランスに脱したという経緯である。今回のInstagram投稿をツイートする人たちにもそのことを引き合いに出す人がいたが、こういうのが欧州大陸で共有されている記憶・歴史の一部、アメリカが「世界の警察」としてデカいツラをし始める以前の歴史の継承である。

 

さて、サッカー界ではカントナのこの発言以外にも少し動きがあることが報じられている。というより、フランスのような歴史を有する国でさえも、「民主主義」の名のもとで「デモ禁止」などということがしれっと行われているときに、発言することの難しさが伝えられているのだが……。

www.middleeasteye.net

これは、英国拠点で中東(広義)についてのニュースや分析を扱うオンラインメディア、Middle East Eyeのフランス語版に掲載された記事の英訳で、フランスのフットボール界で発言した選手たちがどのような反応にさらされているかをまとめている。ジダンデサイーテュラムの時代のキラキラしたフランスは幻だったのかと思ってしまうほどの内容だ。

例えばカリム・ベンゼマは「女性や子供にも容赦なくくわえられる不正義の爆撃にまたもやさらされているガザ住民のために祈りを」とツイートして、右翼政治家の怒りを買ったばかりか、テレビで内務大臣によって「同胞団シンパ」よばわりまでされているらしい。

市街地爆撃どころか、救急車爆撃や病院爆撃や学校爆撃を放置し、それを「不正義」と批判する側を「テロリスト呼ばわり」するのが、フランスのメインストリームになっているという事実は、10月7日の凶行、いわゆる「ハマスノバンコウ」(あの日、一斉に沸き起こったあの非日常的な言葉は一種の呪文だったと思っている。人々が口々に叫び、そう言わない人を「なぜ言わないのか」と非難した光景は、小説『虐殺器官』のラスト近く、「虐殺の深層文法は、あっという間にアメリカ全土を覆いつくした」という文を思わせた)以上に恐ろしい。特に、ロシアのプロパガンダのやり口をほぼ揶揄するかのようにニヤニヤ見ていたアメリカのメディアが、ロシアと同じやり口をとっているときには、本当にホラーである。

ウクライナに関する鈴猫団(ベリングキャット)の調査報道ってのは例えば下記(これらの記事を書いたOleksiy Kuzmenkoさんは、ここ数年は鈴猫団では書いてないみたい。別なところで書いているようなので、Twitterからたどるといい): 

www.bellingcat.com

www.bellingcat.com

(ロシアが言ってた「ウクライナはナチ」っていうのは「デマ」だというのは、こういった勢力が政治的意思決定にかかわっていたわけではないということ。ただし西側の公式筋ではないにしても大手企業などがこういった勢力を支援していたことは忘れてはならない)

 

さて、カリム・ベンゼマは現在サウジアラビアのクラブに所属しているのだが、そのサウジアラビアの媒体Arab Newsが下記のような記事を出しているということを、 @yumikotamaruさんからうかがった

www.arabnews.com

私はドイツのリーグについても、バイエルン・ミュンヘンについても、このモロッコのプレイヤーについても何も知らない。モロッコといえばこないだのカタールでのワールドカップで大躍進していたが、それも見ていないので(ボイコットしていたので)、このプレイヤーが国際舞台で知られた存在なのかどうかもわからない。名前のカタカナ表記すらわからない*4。そういうことを調べている余裕はないので、記事リンクだけで済ませてしまうことをご容赦いただきたい。

ただモロッコは、サウジアラビアと同じく、最近イスラエルとの国交が正常化されているし(この「国交正常化」というのも専門用語なので、ご注意願いたい)、このプレイヤーは発言によって難しい立場に置かれているのではないかという気もする。元々、モロッコは民主主義国というより王国で、発言の自由というのはないわけではないにせよさほど幅広いわけでもないということをぼんやり知っている。フランスのような国でああなっているときに、そういう国で何がどうなっているのかは全然わからない。

ロッコ以上に明らかに独裁体制なのがエジプトで、現在のシシ大統領が軍事クーデターで政権を奪取してからは、2011年の「革命」の中心地となったタハリール広場を潰したり、集会を禁止したりということが行われているが、そのエジプトの大スターは赤新月経由でガザ支援のためにお金を寄付したそうだ。サラーがエジプト赤新月に寄付をしたのは今回が初めてとのこと。

www.arabnews.com

問題は、現状、赤新月への寄付がどの程度現地に届くのかということだが、それについてはこの記事には記載がない。

ガザ地区南端のラファ検問所を挟んでガザ地区と接しているエジプトは、この紛争には非常に近い立場にある。検問所を開いて支援物資を入れるかどうかといったことだけではない。イスラエルの政治家などは、ガザ地区から退避した人はエジプトのシナイ半島にテント村を作ってそこに住めばいいなどと、事実上「追い出し」を認める内容の発言をしている。

一方、エジプトは今日20日の金曜日を「怒りの日」と位置付け(2011年の動乱を見ていた人にはおなじみの「怒りの日」)、大統領府がこんな呼びかけをおこなっているという。

グレッグ・カールストロムさんは2011年の動乱も伝えていた中東専門のジャーナリストで、今は英Economistで書いている。「怒りの日」のことが気になる方は、Twitterでこの人をフォローしておくと情報が早くて正確でよいと思う。(この人だけではないけれど。)

 

 

 

以下はカントナの投稿の英文法解説。日本語化という作業で見たポイントはここだ、みたいな話で、あまり細かなところまでは立ち入らない、というか立ち入っている時間的な余裕がないことをお断りしておきたい(すみません)。英文を自分で読んでみるときの補助として、また投げ銭として、ご利用ください(いつもありがとうございます)。

*1:というか元々襟の立ったスタンドカラーの部屋着だったんですが……寒いので、フリースの。

*2:ガザ地区を "the world's largest open air prison" 「世界最大の屋根のない監獄」と呼ぶのは一種の定型表現化したスローガンのようなものだが、そこに閉じ込められているのは罪を犯した囚人ではないので「監獄 prison」と呼ぶのはおかしいという指摘もあり、「強制収容所 concentration camp」と位置付ける人たちもいる。ただし「強制収容所」という語がユダヤ人にとってはトリガーワードとして機能するという難しさもある。もちろん、「強制収容所」はユダヤ人だけが経験したものではないのだが……。

*3:ただ、19日にはその禁止令の解除という法的判断が出て、夜にはかなり大規模なパレスチナ支持・連帯デモが行われたそうである。See https://twitter.com/camomille0206/status/1715119519465632226

*4:一般の人なら、ローマ字読みを基本にしてカタカナにするが、著名人の場合、日本で一般的な表記を調べないとカタカナで書けない。

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