Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

「~かもしれない」のcould, so that ~構文など(イエメンからの映像報告: 学校が破壊されても子供たちは学ぶことをやめない)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

今回の実例は、ぜひ見ていただきたい映像報告から。

アラビア半島は、大部分がサウジアラビアだが、一番南側の端に細いベルト状に2つの国が並んでいる。東半分がオマーン、西半分がイエメンだ。

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https://www.cia.gov/the-world-factbook/static/d937425c0adb3b0638bc7a988de89e74/middle_east_pol-1.jpg

今から約10年前、チュニジアでの民衆の行動の末、2011年1月に大統領が退陣・国外逃亡に追い込まれたあとで、中東の独裁者に対する民衆の抗議・民主化要求の行動はエジプト、バーレーンリビア、シリアなど中東・北アフリカ各国に広まっていったのだが、その中で最も早く抗議行動が組織されたのがイエメンだった。だがチュニジアやエジプトのようには事態は進まず、同年末に当時の大統領(長期政権の独裁者)が退陣したものの、その退陣した独裁者が国内の反政府勢力と結んで、後継の大統領の政権を攻撃するというめちゃくちゃな事態となり、そして武装勢力を手先とする国の思惑などもあり、「独裁者への退陣要求と政治の民主化要求」から始まった騒乱は、何年かの間に近隣の大国の代理戦争と化し、イエメンは昔から英国との関係がいろんな意味で深かったのだが、現代社会の超大国である米国も英国も、それら近隣の大国との関係などいわゆる「大人の事情」的なことがあって、そしてイエメンの状況はとてもひどいのだが、シリア内戦ほどにも取り沙汰されなくなってしまった。

どのくらいひどいかというと、このくらいである。80年代であればポップスターが出てきてチャリティ・ソングによる連帯運動を組織していただろう。

"wipe out ~" は、1語ずつ丁寧に見ていくと、「wipeして、~をoutの状態にする」ということ。"wipe"は「ワイプ」というカタカナ語になっているが「ぬぐう、ふく」の意味。「outの状態」とは「その場から消えた状態」のことで、つまり "wipe out ~" は「~を完全にぬぐい去ってしまう」だ。

その前にある "could" は仮定法が元となった言い方で「~するかもしれない」ということを表す。このcouldは、無視できないレベルで危機が深刻であるという場合によく用いられる。「戦争と飢餓が、イエメン人の次の世代を一掃してしまうかもしれない」ということである。詳細な内容はリンク先の記事をご覧いただきたい。

こういうときに何かをできるはずの国連も、手をこまねいているわけではないが、ほとんど何もできない状態で、各国からの支援も減額されていて、グテレス事務総長が次のように「落胆した」という発言をTwitterでしているくらいである。

米拠点の難民等支援団体「インターナショナル・レスキュー」 のトップを務めるデイヴィッド・ミリバンドも、次のように述べているが、イエメンがなぜこうなっているのかということでの重要な要素(サウジアラビアという存在)についての言及はない。

英国政府の支援減額については下記記事など。

www.bbc.com

さて、そういう状況の中、BBCの取材陣がイエメン南部の街、タイズに入っている。ここは対立する両勢力が向かい合う最前線となったため、破壊の程度が著しい。BBCのオーラ・ゲリン記者は戦場からの報道、特に戦場に暮らす民間人・一般市民についての報道をよくしている記者だが、今回はタイズの学校を取材している。

「学校」、というか……。

報告は、4分足らずの映像だ。記者は英語で語り、取材されている児童らはアラビア語で話しているが、全編にわたって英語字幕(アラビア語の部分は英訳の字幕)が表示されるので、聞き取りができなくても内容の把握は問題なくできるはずだ。ぜひ、全部を見てみていただきたい。

 

ツイート本文、書き出し部分の "against all odds" は熟語で、「多大な困難にもかかわらず」の意味。「どんなに困難であろうとも学び続ける子供たち」といった意味である。 

2016年に武装勢力が占拠して拠点としたために、今では建物の骨格しか残っていないような状態のタイズのこの学校では、教員は無給の状態で、ときどき学校に来られないことがある。そんなときに教員に代わって授業を行うのが、学校で一番成績のよいアフメド・ラギーブだ。彼は9歳で、生まれつき目が見えない。その彼に、オーラ・ゲリン記者が話を聞いている。将来は学校の先生になりたいという彼は、今欲しいものについて語る。「新しい学校が欲しいです。椅子やドアや窓、黒板に電灯に蓄電器。ちゃんと使えるやつを。一番上の階の床が抜けているのを作り直してもらいたいし、風や日差しをさえぎるドアもつけてほしい。窓も欲しいです。じゃないと雨が防げないので」。

インタビュー中も、少し離れたところから乾いた発砲音が聞こえてくる。そのたびにアフメドが首をすくめ「ひぃ」と小さく悲鳴をあげる。

子供たちは学ぶ意欲に満ち溢れ、校長のジャミーラ・アル=ワフィさんは「校舎がこんな状態でも学校は続けていかねば、1世代丸ごとが失われてしまう」と語る。

映像最後のアフメドと妹のファティマ(彼女も目が不自由である)の下校風景の映像は、一度見たら忘れられないだろう。

これが映画だったら感動できた。

そういう報道の映像だ。

細かい文法ポイントは、《so that ~》だとか《受動態》だとかいろいろあるのだが、そういうのの解説によってこの映像を見るということを阻害したくないので、今回は文法解説はやめておこう。大まかな内容だけ、上に書いたので、英語の読解の能力的に不安がある方は、それを参考にしていただきたい。読解は余裕という方は、ただそのまま映像を見ていただきたい。

 

オーラ・ゲリン記者のこの映像のツイートには、イングランドの小学校の校長先生から次のような反応が寄せられている。

 というわけで、イエメンの学校について、ゲリン記者のアカウントを見ておくとよいかもしれない。

彼女はBBC Newsの記者だから、BBC Newsに記事が出るのが普通だと思うのだが、どうもBBC Newsはイエメンの惨状については熱意を失っているようで、ゲリン記者のこの報告も付属の記事なしで映像のみがサイトに置かれていて、しかもトップページからの導線がない。BBC Newsのトップにはこの映像報告の影も形もなく、っていうかこういうことよりもレディガガの飼い犬のことのほうが重要であるかのように見えている。あれはあれでひどい話なんだけど、なんていうのか、「何がニュースなのか」という問題からBBCが逃げているように見える。サウジアラビアが絡むとこれだ。

BBC Newsには、Yemen crisisという特設コーナーがあるのだが、人が編集している部分は2019年5月を最後に更新すらされていない。今では機械的な自動フィードが "Latest updates" として淡々と追加されているだけだ。おそらく、このページはほとんど読まれてもいないだろう。

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https://www.bbc.com/news/world-middle-east-48433977

 サムネ: 

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https://twitter.com/OrlaGuerin/status/1366442435652579331