Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

日本の選挙に関するBBC Newsのニュースクリップで、リスニング(聞き取り)の練習をして、投票に行こう。

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今回は、イレギュラーなんだけど、Twitterで「リスニングの教材になる」と話題のものがあるのでそちらについて。

2021年10月31日はハロウィーン*1だなんだと浮かれている向きもあるが、総選挙の投票日である。有権者は、朝7時から夜8時までの間に、ぜひ投票に行こう。

「総選挙」は、2010年代の芸能界の話題集めの手法の呼称とされてしまってずいぶん安っぽく響くようになったが、衆議院の議員全員(「総」)を選ぶ選挙のことである衆議院は、参議院とは違って、選挙するときは基本的に全員を選ぶので(議員が欠けた場合の補欠選挙を除く)、自然、衆議院の選挙は「衆議院議員総選挙」となり、略して「総選挙」と呼ばれる(参議院の選挙は「総選挙」ではない)。

衆議院の総選挙は、芸能界などのいわゆる「総選挙」とは違って、1位とか2位とか順位付けするためのものではなく、自分の住んでいる地域の代表者を、「小選挙区」と「比例代表区」の2人、選ぶことになっている。だから、投票所で渡されることになる投票用紙は2枚だ。このうち、「比例代表区」は候補者個人ではなく政党に投票する。つまり、選挙区ごとに街かどに立っているポスター掲示板に貼られている候補者の名前を書く投票用紙は1枚で、もう1枚は政党名を書くことになる。

……と説明するとめんどくさそうに思われるだろうが、実際に投票所に行けば「小選挙区」と「比例代表区」は別の段階で、どちらか一方の投票用紙を受け取って、用紙に名前(候補者名または政党名)を記入して投票箱に入れたら、もう片方の投票用紙を受け取り……というふうに進む。全部誘導してくれるから、手続きはスムーズで、コンビニのスペースの狭いレジで会計してもらって大慌てで袋詰めする方が大変なくらいだ。

候補者名も暗記しておく必要はなく、用紙に記入するブースの中に候補者名・政党名一覧が掲示してあるので、うろ覚えだったら、それを見て書けばよい。あんまりぐちゃぐちゃだと判読に支障があるかもしれないが、達筆かどうかも関係ない。日常で書類を書くときくらいの丁寧さでよい。消しゴムはないので、一度書いたらそれっきりである。

投票所は、近場の公立の学校などが指定されているはずで、事前に自治体から自宅に郵送されてきている「選挙のお知らせ」(「案内状」など別の呼び方をする自治体もある)を持っていけば、あとは何もわからなくても係の人が案内してくれるので心配ない。「選挙のお知らせ」は下記のようなもの(東京都北区の例)。

この「お知らせ」は、持っていくとスムーズに事が進むという便利な紙で、万が一紛失してしまっていても本人確認さえできれば投票できるから、当日、いきなり手ぶらで投票所に行っても大丈夫といえば大丈夫である。まあでも、ごちゃごちゃするのが面倒だから、「お知らせ」がある人は持っていくことに越したことはない。

さらに言うと、衆議院議員選挙のときには一緒に、「最高裁判所の裁判官に対する国民審査」も行われる。これは、最高裁判所の裁判官(判事)について、主権者たる国民が、最高裁で仕事をする適正があるかどうかをその人の過去の法的判断を根拠に判断する、というシステムで、不適格な裁判官がいないかどうかをチェックできる唯一の機会である。なお、裁判官は何かについて法律・憲法に照らして問題がないかどうかを判断するのが仕事で、主権者たる国民はその仕事がちゃんとなされているかどうかをチェックするのであり、裁判官個人のパーソナルな思想や信仰などは問題とはしないことになっている。

これが意外と難しい上に、「政局」ばかりネタにしがちなマスコミもあまり重視しないのだが(それでもここ10年くらいは、前よりずいぶん情報が増えてきた)、例えば婚姻(結婚)に際して夫婦が別々の姓を持ち続けることを選択できるようにする(選択的夫婦別姓)仕組みを整えていく必要があるかどうかという点で、今のまま(強制的同姓*2)で憲法上問題がない、つまり「現行の制度は合憲である」と考える裁判官と、これは憲法上問題である、つまり「現行の制度は違憲である」と考える裁判官がいる。その判断について、主権者たる国民が「いや、あんたの判断はおかしい」と思ったときに、その裁判官の名前のところに「×」の印をつける(「×」以外は書いてはならない)。

最高裁判事の国民審査に関しては、判断の根拠となる情報はTwitterでもけっこう流れているから、チェックして、必要な情報は紙にメモって持参するといいと思う(覚えきれないからね)。例えば下記: 

※「なんとなくその場でスマホ検索しづらい」のではなく、投票所ではスマホ使えないと思います……カメラも禁止。投票所の外なら大丈夫(投票所の看板とかは撮影してもよい)。

というわけで、例によって前置きが異様に長いのだが(既に3000字)、以下が本題。

「リスニングの教材になる」と話題なのは、BBC Newsの下記の報告だ。日本特派員ノルパート・ウィングフィールド=ヘイズ記者による、3分ほどの映像報告。

www.bbc.com

BBC Newsのサイトのこれ↑は英語音声に英語字幕つきで、BBC News Japanが英語音声で日本語字幕のクリップをTwitterにフィードしている。下記。

リスニングの勉強としては、まずはBBC News Japanの日本語字幕版を、英語を聞き取ることを意識しながら見てみて、その答え合わせとしてBBC Newsのサイトの英語字幕版を見るのがよいだろう。

英語としてはオーソドックスな「イギリス英語」(つまりReceived Pronunciation, RP)で、日本語のカタカナ表記で「キャ」とされる音が「カ」に聞こえる(例えばcastは「キャスト」ではなく「カスト」に聞こえる)点を除いては、特に聞き取りが難しいところはない。あえて言えば、スピードが少々はやく感じられるところか。

出だしの文: 

For all but six of the last 65 years, Japan has been led by the same political party, the LDP

下線で示したところが強めに読まれていて、グレーの文字で示したところはほぼ聞き取れないくらいに弱く曖昧に読まれていることがわかるだろう。これが英語らしいリズムを作っている。聞き取りの練習をする立場から言えば、このリズムに乗って耳がついていけるようにすることが大事だ。

また、出だしの "For all but six of the 65 years" の "but" は、直前の "all" とつながっていて、意外と聞き取りの難所かもしれない。どんな語でも、知らなければ聞き取れないのだが、このbutは、butという単語を知っていても、それだけでは聞き取れない可能性がある。というのは、意味が「しかし」ではないからだ。

この点、日本語字幕を見て、「ああ、あのbutか」と気づいてもらいたいところである。日本語字幕を見ても「あのbut」がピンとこなかったら、辞書を引いてほしい。前置詞のbutである。

  Nobody but you can cast your vote. 

  (あなた以外の誰も、あなたの一票を投じることはできない)

あと、聞き取りの練習として重要なことは、最初の出だしのところが聞き取れなくてもそこで再生を止めてしまわず、一度はそのまま先の方まで聞く、ということである。今回のクリップは3分程度と少し尺があるので、最後まで一気に聞くのはつらいという場合は、セグメント(区切り)ごとに見ていくといいだろう。

この映像は、まず山間部の小さな町のセグメントが0:55まで、その次、記者が山間部の立派な道路を運転して解説するセグメントが1:30まで、がらりと風景が変わって都会(東京)での選挙演説をバックに「野党が多い」「テレビでは与党ばかりを取り上げている」と説明するセグメントがあり(2:08まで)、国際的に有名な渋谷の「あの交差点」での街頭インタビューを含むセグメントがあって、最後の10秒ほどがまとめだ。

1:59のところで、 "Door to door campaigning in Japan is not allowed" と記者は説明しているが、BBCが拠点とする英国では選挙の際は候補者が戸別訪問を行って有権者と直接話をするのが普通のことである。2010年の総選挙のときに当時のゴードン・ブラウン首相が、車の中でマイクを切っていない状態でグチったときの言葉がひどくて、選挙の際に非常なマイナス材料となったが、あれも選挙運動で政治家があちこちの街を回ったときに直接話をした人のひとりについての論評(っていうのかな)の言葉だった。

あと、「小選挙区制」の制度について、記者が何も説明していないのは、英国の制度も同じで、"first past the post" の制度だからだ。これは欧州などからは「前近代的」と嘲笑されている古臭いシステムで、現代的な選挙制度のもとではこんな単純な選出方法は本来ありえないはずなのだが、BBCの記者がそこにツッコミを入れないのは、英国も同じだからである。ついでにいえば、英国は比例代表制を導入することすらしていない(日本は中選挙区制に代えて1994年に導入した)。導入しようとすると「非英国的である un-British」云々といってすさまじい抵抗――徹底的無関心という抵抗――にあう。

BBCのこの映像レポートの内容は、私は「ちょっと単純化しすぎ」と感じたが、日本の事情に全然詳しくない視聴者を対象としたものであることを考えれば、非常に丁寧に伝えてくれていると思った。ただ数字的な裏付けがほしいよね。投票率に言及するだけで、説得力は爆上がりしていただろう。

しかし、情けないよね……ここまで言われてしまうとは。

 

※前置きが長かったとはいえ5000字は長いよね。

 

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https://twitter.com/bbcnewsjapan/status/1454043585322627074

 

 

 

*1:英語ではHalloweenで、綴りがeeになってるところには語強勢(アクセント)が来るという原則通り、これも ween の音節にアクセントがあるので、「ウィ」を強く読まないと英語では通じない。強く発される [i] の母音は日本語母語話者には「イー」と長音のように聞こえるので、カタカナで書くなら「ハロウィーン」とすべきであり、日本のカタカナで定着してしまった「ハロウィン」の文字を、原語をふまえずそのまま日本語として自然な感じで読んで「ハ」を高く(rather than強く)言うと、おそらく英語話者には通じない。

*2:これを「強制」というとまた変なメールが来たりするかもしれんけど。