Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】beingの省略された分詞構文, 長い文, 省略, 関係代名詞の非制限用法, 準否定語など(ナスカの地上絵)

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このエントリは、2020年10月にアップしたものの再掲である。

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今回も前々回前回の続きで、新たに発見されたナスカの地上絵についての英語の報道記事を読んでみよう。

前回 は、下記記事の書き出しのパラグラフをじっくりと読んでみた。全部を読んでも、350ワード程度なので、分量的にはすぐに読み終わるのだが、英語の文章によくあることとして、書き出しのパラグラフは情報が妙にてんこ盛りになっていて、英語を母語としない立場ではかなり読みづらい。実際、限られた文字数に情報をてんこ盛りにするときによくあるように《挿入》や《後置修飾》などで文の構造も取りにくくなっていたので、そのパラグラフだけで当ブログの4000字を使い果たしてしまう勢いだったのだが、その先は話が具体的になり、普通に読めるので、速度を上げて読んでいけるだろう。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

記事の真ん中近くのセクション:  

f:id:nofrills:20201021140652j:plain

https://www.theguardian.com/world/2020/oct/18/huge-cat-found-etched-desert-nazca-lines-peru

キャプチャ画像内の最初のパラグラフは、冒頭が切れてしまっているが: 

A Unesco world heritage site since 1994, the Nazca Lines, which are made up of hundreds of geometric and zoomorphic images, were created by removing rocks and earth to reveal the contrasting materials below. They lie 250 miles (400km) south of Lima and cover about 450 sq km (175 sq miles) of Peru’s arid coastal plain.

第一文は文の構造が取れただろうか。主語はどれで、動詞はどれだろうか。

まず、文頭の "A Unesco world heritage site since 1994" は名詞句だから、これが主語だろうと考えるかもしれないが、そうするとその直後の "the Nazca Lines" が宙に浮いてしまうことになる。こういう場合はだいたいは《分詞構文》だ。

分詞構文で、文頭のbeingはたいがい省略される。わかりやすいのは過去分詞が出てくる場合で、これは《過去分詞で始まる分詞構文》になる。

  普通に接続詞を使った文:

  When it is seen from above, the island looks like a question mark. 

  接続詞を使わず、分詞構文にした形: 

  Being seen from above, the island looks like a question mark. 

  Beingが省略された形: 

  Seen from above, the island looks like a question mark. 

  (上から見ると、その島は疑問符のように見える)

これが、過去分詞ではなく形容詞や名詞の場合にも、同じようにbeingが省略されると、下記のように、いきなり形容詞で始まったり、名詞句がぽつんと宙に浮いているようになっていたりする。

  普通に接続詞を使った文:

  Because she is a capable lawyer, Ruth is ready to take up the difficult case.  

  接続詞を使わず、分詞構文にした形: 

  Being a capable lawyer, Ruth is ready to take up the difficult case.  

  Beingが省略された形: 

  A capable lawyer, Ruth is ready to take up the difficult case.  

  (有能な弁護士なので、ルースはその難しい案件を今にも引き受けることができる態勢だ)

このような分詞構文の例は、江川泰一郎『英文法解説』では「解釈上beingを補える例」と解説されている (p. 231)。 

英文法解説

英文法解説

 

というわけで、今回の実例のこの文は下記の青字のようにbeingを補うとわかりやすいかもしれない。そうすると、分詞構文の部分 ("since 1994" まで) の構造がすっきりして見えるだろう。さらにその後ろ、コンマとコンマで挟まれた部分は《挿入》なので、カッコに入れてみよう。

Being a Unesco world heritage site since 1994, / the Nazca Lines ( , which are made up of hundreds of geometric and zoomorphic images, ) were created by removing rocks and earth to reveal the contrasting materials below.

こうすると、文全体の構造も見えるだろう。主語は "the Nazca Lines" で、述語動詞は "were created" だ。

Being a Unesco world heritage site since 1994, / the Nazca Lines ( , which are made up of hundreds of geometric and zoomorphic images, ) were created by removing rocks and earth to reveal the contrasting materials below.

カッコでくくった挿入の部分は、《関係代名詞の非制限用法》になっている。《be made up of ~》は「~でできている、~で構成されている」。ここまでの文意は、「1994年以降ユネスコ世界遺産に指定されているが、ナスカの地上絵は、何百点もの幾何学的な模様や動物をかたどった図形から成り立っており……」。

述語動詞からあとの部分はそのまま素直に読めるだろう。"by removing" は《前置詞+動名詞》、"to reveal" は《不定詞の副詞的用法》だ。意味は「岩石や土をどかし、その下にある対照的な(色の)素材を表出させることによってつくられた」。

 

写真を挟んで次の部分:

“The figure was scarcely visible and was about to disappear because it’s situated on quite a steep slope that’s prone to the effects of natural erosion,” Peru’s culture ministry said in a statement this week.

ペルーの文化庁の声明を英文で紹介しているが、太字にした "scarcely" は《準否定語》と呼ばれる語のひとつで、「ほとんど~ない」の意味。下線で示した《be about to do ~》は「今にも~しそうになっている」。つまりここは「その図形はほとんど視認できず、消えかけていた」。

becauseの後は、"that’s prone to ..." のthatは《関係代名詞》。それに続く《be prone to ~》(このtoはto不定詞のtoではなく前置詞のtoなので、直後に名詞がくることに注意*1)。意味は「自然の浸食の影響を受けやすい、かなり急峻な斜面に位置しているので」。

 

この猫の絵は、研究者たちがほかの地上絵を見渡せる眺望の開けた丘の上に行く道を整備しているときに存在に気付いたのだという。ほとんど消えかかっていたが、有名な地上絵よりもさらに古いもので、まだほかにも気づかれぬままそこにある古い地上絵が眠っているのではないかと言われている。また何年か後に、新たな地上絵が発見されて世界的なニュースになるのかもしれない。この短い記事の最後のほうには、次のような記述がある。

Isla said between 80 and 100 new figures had emerged over recent years in the Nazca and Palpa valleys, all of which predated the Nazca culture (AD200-700).

近年、80点~100点の地上絵が新たに表出しており、そのすべてがナスカ文明より古いものだという。

教科書が書き換えられることになるのかもしれないね。

 

※4000字

 

サムネイル用画像 via いらすとや: 

f:id:nofrills:20201019175622p:plain

https://www.irasutoya.com/2020/10/blog-post_49.html

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 

  

*1:ただしproneを使った構文には、《be prone to do ~》とto不定詞がくるものもあるので、なかなかややこしい。意味が大きく変わるわけではないからあまり気にする必要はないのかもしれないが、それでも自分で英文を書くときは混同しないようにしておかねばならない。

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