Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

仮定法過去(もしも保守党が本気でNHSに金をかけたいと思っているのなら……)【再掲】

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このエントリは、2019年12月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterから。

英国では今週の木曜日、12月12日が総選挙の投開票日である。12日の朝から夜まで投票が行われ、即日開票となり、だいたいの議席が確定するのは翌13日(金)の見込みである。

今回、なぜこんな変な時期*1に総選挙になっているのかということは、書くならこのブログではなく本家のブログに書く話だから、そこは割愛する。

その選挙の投票日を前に、いろんな言葉が報道機関のサイトやTwitterなどを飛び交っているのだが、英国の今の保守党(現在の政権党)の嘘つきっぷりと卑怯者っぷりは日本の現在の政権与党もビックリのレベルで*2、保守党批判の論理的で鋭い発言が多い。

今回の実例はそういった発言から。

 

このツイートで参照されているのは、イングランド北部の都市リーズの病院で起きていることを、地元紙ヨークシャー・イヴニング・ポストが報じた記事である。肺炎の疑いがある4歳の子供が、救急車で病院に搬送されたものの、その病院が、人員不足で診る人がおらず、資金不足でまともなベッドなどもあてがうことができず、コートを敷いた床の上に寝かせられている。

英国の病院でこういう問題が起きているというのは、新しいニュースではない。2010年にデイヴィッド・キャメロンの保守党がニック・クレッグのLibDemsと連立して政権を作る前から、つまりトニー・ブレアゴードン・ブラウンと続いた労働党政権のころから、病院に救急搬送されてもすぐに診てもらえないという問題はあった。しかし、キャメロン、テリーザ・メイボリス・ジョンソンと9年間続いてきた保守党政権は、この問題を解決しようとしなかった。それがこのツイートの文脈だ。

 

ツイート最後の文: 

If they really wanted to, they'd have done it by now.

これは《仮定法過去》の文だが、帰結節が《助動詞+have+過去分詞》で一見仮定法過去完了のそれのように見える。これはわりと珍しい例で、帰結節が元々完了時制(この場合現在完了)であるためにこのようになっていると考えられる。つまり下記のようなことだ: 

直説法: Because they don't really want to, they have not done it by now.

仮定法: If they really wanted to, they'd have done it by now.

 

ツイート主のレイチェル・クラークさんは、Twitterユーザー名(アカウント名)を見ればわかる通り医師で、専門は緩和医療 (palliative care)。ツイート文中にあるNHSは、当ブログでこれまでにも何度か出てきているのだが、英国の国民健康保険 (the National Health Service) のこと。英国は国民皆保険で、保険適用の医療はいくつかの例外を除いては自己負担ゼロで受けられるので、風邪も出産もガンの治療も基本的には「無料」である。しかしそのNHSが国家予算削減で大変なことになっている上に、先日取り上げたジョン・メイジャーの発言にもあるように、たぶん、「利潤を生みだす何か」として扱われることになっていく。レイチェルさんはここでfundという語を用いているが、このままボリス・ジョンソンの保守党の政権が続けば、そのfundがinvestに取って代わられる可能性が高い(それに問題を感じない人たちが首相をやっていたり閣僚をやっていたりしている)。

ちなみに今でも(というかずっと以前から)、お金のたっぷりある人はNHSの病院ではなく、私営 (private) の病院にかかっている。だからお金持ちにはNHSの惨状はほとんど関係ない。

 

レイチェル・クラークさんの上記の発言とほぼ同じ発言を、ジャーナリストのガヴィン・エズラーさんもしていた。帰結節が完了形であることまで同じなので、こちらは解説なしで単にツイートを貼り付けておくだけにしよう。

 

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2019年12月9日、Twitter @doctor_oxford

 

参考書:  

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

 
英文法解説

英文法解説

  • 作者:江川 泰一郎
  • 出版社/メーカー: 金子書房
  • 発売日: 1991/06/01
  • メディア: 単行本
 

 

*1:通例、英国ではこの時期は基本的にクリスマス・ムード一色だ。ちなみに「クリスマス」といっても宗教色はもはやさほど濃くなくて、全体的には年に一度、人にカードを送ったり、プレゼントを用意したり、家族・親族が集まる機会、という感じ。日本でのお盆のほうがまだ宗教っぽいというケースも少なくないだろう。

*2:それでも、英国のほうが締めるべきところは締めているから、まだ日本よりましだと思うけど……とかいうことを書いてると突撃されそうだから書くのやめとく。

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