Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

to不定詞の否定形(マイクロソフト社の「エイプリルフール終了のお知らせ」)

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今日は4月1日で、4月1日といえば、世界的に、何が冗談・嘘で何がそうでないかを判別しなければならないスリルとサスペンスの日だが、今回の実例は、米国拠点のテクノロジー系ニュースサイト、The Vergeの記事から。

「エイプリルフール」は日本でも2000年代に普及して、ネットでは企業などの冗談が競い合うように出るようになったが(ここ数年は下火になってきたように思う)、英語圏ではもっと早くから、大手報道機関が大真面目なトーンで「冗談ニュース」を報道するということが行われてきていた。中でも名作として語り継がれているものに、「さて、スイスでは今年もスパゲッティの収穫が最盛期を迎えています」(1957年、英BBC)や、「知る人ぞ知る魅惑のリゾート・アイランド、サン・セリフ島」(1977年、英ガーディアン)などがある。(ここで「おい、あれがないぞ」と思った方は、当エントリの最後をご参照のほど。)

インターネット普及後は大手IT企業が率先して「冗談」を披露しており、Googleマップパックマンのゲームになって人々を喜ばせるなどしてきたが、毎年毎年やり続けることによる問題も生じている。

そして今年2019年、ついにIT業界大手のマイクロソフト社が、「エイプリルフール終了のお知らせ」を出した。The Vergeはその内部文書を入手し、いち早くそれを報道したメディアである。記事は下記: 

www.theverge.com

 

f:id:nofrills:20190330135634j:plain

2019年3月28日、The Verge

上記キャプチャ画像内のパラグラフに、《to不定詞の否定形》が2か所含まれている。そして、それぞれ形が違っている。

Microsoft’s marketing chief Chris Capossela has warned all employees to not participate in the process of annoying hoaxes on Monday. ... He encourages all teams inside Microsoft not to do any public-facing April Fools’ Day stunts.

おわかりだろうか。最初の《to不定詞の否定形》は、《to not + 動詞の原形》の形で、2番目のは《not to + 動詞の原形》の形になっている。「文法的には、2番目の形が正しい形である」とされる。

  The doctor told me not to eat after ten. 

  (医者は私に、10時以降はものを食べないようにと言った)

 

1番目の形、つまりnotがtoの後に置かれる形は、文法的には誤用(誤り)とされている。中学校や高校の試験でそう解答したら点数はもらえないだろう。しかし、実際にはこの形はそこそこよく見る。

これについて、米国の有名な辞書、Merriam-Websterのサイトでは、下記のように「分割不定詞」として説明している。「分割不定詞は好まれないことが多いが、実際には口頭や格式張らない文書類では分割不定詞はしばしば用いられているし、正式な文書でも見られる」といった説明だ。

Some people—grammarians and English teachers, for example—say that "to" must always be next to the verb it goes with, and words like "not" should not split it from the verb. When this happens, as in "to not run," it is called a split infinitive. However, in speech, informal writing, and even in formal writing, infinitive forms of verbs are often split, and they are split by more adverbs than just "not."

learnersdictionary.com

 

上記のThe Vergeの記事には、マイクロソフト社の内部文書の文面も掲載されているのだが、そこでも《to not + 動詞の原形》の形が見られる。この文書は会社のお偉いさんから社員たちにあてた業務上の連絡事項の文書で、「正式な文書」と言えるだろう。

Considering the headwinds the tech industry is facing today, I’m asking all teams at Microsoft to not do any public-facing April Fools’ Day stunts.

 「こんにち、テック産業が逆風にさらされていることを考え、私からは当社従業員のみなさんに、世間一般に開かれた形でのエイプリルフールの悪ふざけはやらないよう、要請します」といった意味。(社内で社員の間での冗談までは制限しようとしていない。)

 

というわけで、今年はマイクロソフト社からはエイプリルフールのネタ企画は出ない。過去にどのようなものがあったかは、2015年の記事だが、こちらのまとめを参照。

 

Googleは毎年すごいが(ウィキペディアのリストが圧巻である)、上記のThe Vergeの記事にあるように、悪ふざけが過ぎてユーザーに実害を与えてしまったこともあった。今年はどんなのなのか、この記事を書いている時点ではまだわからないが(当ブログは数日前に記事を書いて予約投稿するという形で運営している)。

 

ちなみに個人的にはエイプリルフールはもうおなかいっぱいで、「空飛ぶペンギンたち」レベルのが出てきてくれないと食指が動かない。

2008年、BBC:  

 

メイキング:  

 

 

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