Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

《結果》を表すto不定詞、to不定詞の否定、報道記事の見出し(DRCからの子供の連れ去り)【再掲】

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このエントリは、2019年8月にアップしたものの再掲である。いわゆる「受験英語」の参考書の例文によく出てくる文言がそのまま、実際の報道記事で見出しとして用いられている例である。

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今回の実例はBBC記事の見出しから。

《to + 動詞の原形》のto不定詞は中学校で習うが、「なんとか用法」という用語も含め、なんかいろいろと情報量が多いので、消化しきれず何となく苦手という意識を持ってしまう人が少なくない。

特に消化しきれなくなるのが《to不定詞の副詞的用法》で、やたらと表すものが多い(意味が多い)。英語について、英文とその意味から入るのではなく、英文法用語から入ってしまうことが習慣化されている人の場合は、よけいに負担感は大きくなるが*1、具体的な文例を見て、ひとつひとつ納得しながら把握してしまうことが重要である。

 

《to不定詞の副詞的用法》で最もよく用いられる(ありふれている)のが、《目的》を表す用法だ。「~するために」という意味になる。

  I woke up at four to catch the first train. 

  (始発電車に乗るために、4時に起きた)

これは文意をはっきりさせるために、in order to do ~やso as to do ~という形になることも多い。見た目は長くなるが、文意は変わらない。

  I woke up at four in order to catch the first train. 

 

次によく遭遇するのが、《感情の原因》を表す用法だ。happyやsadなど《感情》を表す形容詞とともに用いて「~して…だ」という意味になる。

  I was happy to see my childhood friends. 

  (子供時代の友人たちに会って、私はうれしかった)

 

似たようなものに《判断の根拠・理由》を表す用法がある。日本語にすれば《感情の原因》とよく似ていて「~して…だ」となるが、一緒に使う形容詞がlucky, crazyなど、話し手が何かについて「…だ」と判断しているときに用いる。また、形容詞だけでなく、a foolなど名詞が来ることもある。

  I was lucky to get to know the famous writer. 

  (その著名な作家と知り合いになれて、私は幸運だった)

  I was a fool to believe him. 

  (あんな男のことを信じるなんて、私は愚か者だった)

 

そして4番目の用法として重要なのが、今回実例として見る《結果》を表す用法である。「…して、その結果(そして)~する」という意味を表す。この用法は決まりきった例文でしか説明されないことが多いが、実際、英語の文章に出てくるときもだいたい決まりきった形で出てくる。

  I woke up to find it was raining. 

  (目が覚めて、(その結果)雨が降っているのがわかった

  My grandfather lived to be ninety years old. 

  (私の祖父は生きて、その結果、90歳になった=祖父は90歳まで生きた)

 

《to不定詞の副詞的用法》には、これらの4つの用法のほかにも、特定の形容詞とペアになった形(be ready to do ~など)や、《条件》を表す用法などもあるが、長文読解などで特に重要な基礎力となるのはこれらの4つの方法である。まずはこれらを押さえてしまおう。特に今度の冬に受験を控えている人でここがあやふやな人は、夏休みが終わる前にここをしっかり押さえてしまうこと。

 

……と、最初に文法解説をしてしまったが、今回実例として見る記事はこちら: 

www.bbc.com

 

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2019年8月14日、BBC News

この記事の見出し: 

The children sent to a DRC 'holiday camp' never to come back

まず、これは報道記事なので、be動詞が省略されていると考えられる*2。省略を補って普通の文にすると次のようになる。

The children were sent to a DRC 'holiday camp' never to come back

太字にした部分が、《結果》を表すto不定詞だ。

それについては既に上に解説を書いたが、もう一つ解説しておく必要があることがある。それが《to不定詞の否定形》 である。

to不定詞を否定するときは、否定語をtoの前に置く。to knowはnot to knowとするわけだ*3

この否定語はnotだけでなく、強い否定を表すneverでも同じで、to knowはnever to knowという形になる。

 

今回の実例では、《結果》を表すto不定詞が、なおかつ《to不定詞の否定形》になっており、「…して、その結果(そして)~しない」という意味を表している。さらにいえば、否定語がnotではなくneverと強い否定を表しているので、「…して、その結果(そして)、二度と~しない」の意味だ。

The children were sent to a DRC 'holiday camp' never to come back

これは「その子供たちは、DRCの『ホリデー・キャンプ』と称するものに送られ、そして、二度と帰ってこなかった」という意味である。

 

このnever to do ~という形は、《結果》を表すto不定詞ではお約束の形なので、いくつか例文を頭に入れておくとよい。

  My grandfather's elder brother went to war, never to return. 

  (祖父の兄は戦争に行き、二度と帰ってこなかった)

  The boy left his family, never to see them again. 

  (その少年は家族の元を去り、そして二度と家族と会うことはなかった)

 

今回見出しだけ見た記事で報告されているのは、DRC(コンゴ民主共和国)の首都キンシャサから遠く離れた村の子供たちを、「キンシャサでのホリデー・キャンプ」に行くと称して親元から引き離し、そのまま、遠くベルギー(ベルギーはコンゴ旧宗主国である)に連れ去って「親のいない子供」として養子に出してしまうという団体のことである。英語として読みづらい記事ではないので、関心がある方はぜひ、全文を読んでいただきたいと思う。

 

参考書:  

アトラス総合英語 英語のしくみと表現―ATLAS English Grammar and Expressions

アトラス総合英語 英語のしくみと表現―ATLAS English Grammar and Expressions

 
英文法解説

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コンゴについて:  

世界最悪の紛争「コンゴ」 (創成社新書)

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すべては救済のために――デニ・ムクウェゲ自伝

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*1:参考書などで文法用語が目次の項目になっているときに、目次の項目を最初に理解しようとする人がいるが、それは失敗の元。目次の項目は「レッテル」と考え、重要な中身を先に見るようにしよう。調味料のビンに貼ってあるレッテルを見てもどんな味だかわからないときに、ちょっとなめてみるだろう。そういう感覚で、レッテル(項目)はまずぱっと見るだけ見て、深く追求せず、中身(解説されている英文)をちゃんと見るとよい。

*2:あるいは《名詞+過去分詞の後置修飾》で、名詞句だけで見出しにしていると考えることもできるが。

*3:ただし、ここは実際の英語ではかなり揺れていて、to not knowという形が用いられることもある。普通の文法ではto not knowの形は《誤り》とされており、報道記事などではあまり見ることはないが、報道記事で誰かの発言をそのまま紹介する部分や、個人の書くブログ、小説などでは、「よく見る」ほどではないにせよ「まあまあよく見る」ようになっている。「書き言葉」としては誤りとみなされていても、「話し言葉」ではあり、という感じかもしれない。

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