今回の実例は、少し前にも言及した英国の「ウィンドラッシュ・スキャンダル」について、担当省庁である内務省の報告書についての報道記事から。
その報告書は正式に公表されたものではなく、放送局の「チャンネル4」にリークされたもので、ガーディアンなど紙メディア(新聞)もチャンネル4の後追いで報道をしている。この記事はその1本だ。
Theresa May introduced a series of hostile environment policies, under which she sought to make life intolerable for people who had illegally entered the UK, in a bid to cut inward immigration numbers during her time as home secretary.
まず、太字にした部分は《前置詞+関係代名詞》になっている。ちなみにここでは関係代名詞は、コンマを伴った非制限用法(継続用法)だ。
この部分を解析すると次のようになるということを確認しておきたい。
Theresa May introduced a series of hostile environment policies, under which she sought to make life intolerable for people...
→ Theresa May introduced a series of hostile environment policies. She sought to make life intolerable for people... under the policies.
また、上記実例の部分で、下線で示した《in a bid to do ~》は非常によく用いられる熟語表現で、「~しようとして」の意味。「内務大臣としての任期中、英国に入ってくる移民の数を削減しようとして」という意味になる。
さて、順番が前後するが、今回見ている部分で最も重要なのは下記の部分だ:
..., under which she sought to make life intolerable for people who had illegally entered the UK
下線で示した部分は、《make + O + C》の形。「Oをにする」の意味である。したがって今回の実例の文は、「その法律のもとで、彼女は、英国に不法な形で入った人々にとって、生活を耐え難いものにしようとした」。
……と聞けば、「何も問題ないじゃないか」「これまでが甘すぎたんだろう」と思われるかもしれない。だがそうではない。問題はある。それもとても大きな問題が――メイのこの政策で「生活を耐え難いものに」された人々の多くが、そもそも「不法入国者」ではなかったのだ*1。そのことは記事のこのあとの部分に書かれている。読みづらい文ではないので、各自ご一読されたい。
*1:おそらくイメージとは異なり、英国での行政的な事務手続きはたいていの場合、かなりぐだぐだである。いかにぐだぐだであるかは居住経験者なら知っているし、体験記の書物にも書かれているし、今では多くのブログなどで記録・発信されている。