今回の実例は、Brexitに関する政府の文書のリーク報道から。
「リーク報道」は、"leaked document" などリークであることを明示した文言が入っている場合もあるが、そうでないこともある。今回の記事は後者で、リード文(見出しの下、記事本文の前にある、記事概要を示した短い文)で "Exclusive" (「独占」)とあり、記事本文で "papers seen by the Guardian" という表現が出てくることから「リーク」と判断される。
記事はこちら。
記事本文の最初の文:
The UK is currently less able to cope with a hard Brexit than it was in the spring
lessはmoreの反対で、「より少なく~」という意味を表す。これを《劣勢比較》または《劣等比較》という。
以前も解説したが、 次のような例文をみると分かりやすいだろう。
This smartphone is less expensive than that one.
(このスマートフォンはあちらのほど高価ではない)
今しがた「lessはmoreの反対」と書いたばかりだが、lessの使い方で注意が必要なのは、「より多く~」の意味を表す普通の比較級ではmoreを使わず形容詞の語尾に -er をつける語でも、劣勢比較のときは《less + 原級》になるということだ。
Osaka is hotter than Tokyo.
→ Tokyo is less hot than Osaka.
(大阪は東京より暑い/東京は大阪ほど暑くない)
今回実例として見ている文で用いられているableは、-erをつけて比較級を作る形容詞だが、lessを伴う場合はそのまま原級で用いられるわけだ。
She was chosen because she was abler than others.
(彼女はほかの人々より能力が高かったので選ばれた)
There were many candidates who were less able than her.
(彼女より能力の低い候補者が大勢いた)
今回実例として見た文は「英国は、現在では、春の時点よりも、ハード・ブレグジットに対応する能力が低くなっている」という意味である。
さて、この記事、見出しは次のようになっている。
UK less able to cope with hard Brexit than it was in spring, say officials
これは報道記事の見出しで「be動詞は省略する」というルールがあるからで、それを補って普通の文にすると下記のようになる:
UK is less able to cope with hard Brexit than it was in spring, say officials
ただこの見出し、もっと省略できるところがあるのに省略していないのは、あえてそうしているのか、うっかりこうしてしまったのかはわからない。省略できるものは全部省略すると、下記のようになるはずだ(追加で省略する部分を薄い灰色で示しておく)。
UK less able to cope with hard Brexit than it was in spring, say officials