今回の実例は、つい先ほどのニュースから。
今日2019年12月18日から19日(時差により日付が変わる)に世界的に最も大きな関心を集めているのは、米国議会下院でのトランプ大統領弾劾決議だ。決議は「権力の乱用」と「議会の妨害」の2点について行われ、最終的には2点とも可決された。
最初の「権力乱用」での決議の結果が出たのが日本時間で19日の午前10時半前、続いて「議会妨害」の結果がその20分後くらいに出た。
The House of Representatives just voted to impeach Donald Trump for Article I, Abuse of Power, in connection with the Ukraine scandal. https://t.co/Qrmg5S77jp pic.twitter.com/qImo1EZkic
— Vox (@voxdotcom) 2019年12月19日
Majority of House votes to charge Trump with second impeachment article, obstruction of Congress. Next step: Senate trial https://t.co/lUBgKLq8UF
— Reuters (@Reuters) December 19, 2019
これを伝える英BBC Newsとガーディアンのトップページ(アプリ版)は、11時少し前の時点で、下記のようになっていた*1。 ガーディアンの方に出ているリード文(見出しの下の文)を見ると、この画面は2件目の決議(「議会の妨害」)の投票が進行中の間に作成されている。
BBCもガーディアンも、どちらも "Trump becomes third president to be impeached" という形の見出しを出しているが、ここに含まれているto不定詞は確定的な未来のことをいう。普通の文ならwillを使うところ、見出しではto不定詞になる、と考えておけばだいたい間違いがない。
普通の文: A high-level meeting will be held on Friday.
見出し(例): High-level meeting to be held
(首脳者会談が行われることになっている)
普通の文: The foreign minister will leave for China this evening.
見出し(例): Foreign minister to leave for China
(外相が中国に向けて出発することになっている)
日々ニュースを見ていてよく見かけるのは、刑事裁判で「今日判決(量刑)が言い渡される」というものだ。Google Newsで "to be sentenced" を検索してみたところ、次のような見出しが並んでいた。
続いて報道記事の中身を見ておこう。BBC Newsより:
上に貼りこんだトップページの見出しをクリック/タップするとこの記事が開くのだが、こちらでは見出しは "Trump is impeached, becoming third US president to face Senate trial" となっている。これはタイミングのずれによる。トップページは、上述したように決議の投票が進行中に書かれたもので、こちらの記事は投票が終わって結論が出た後にアップデートされた見出しである。《is + 過去分詞》の受動態は、それが既に為されていることを含意する、ということに注意しておこう。
この見出しの "becoming ..." は《分詞構文》で、and he becomes ... と書き換えることができる(わざわざ書き換えないけど、文意を把握するときにそう考える)。
そのあとの部分は、記事本文の表現とかぶっているので、記事本文の記述で検討しよう。
Donald Trump has become the third US president in history to be impeached by the House of Representatives, setting up a trial in the Senate that will decide whether he remains in office.
太字で示したのは定型表現で、大学入試で自由英作文が課される人は、読んで理解できるようにしておくだけでなく、自分で何かを書くときに自由に使えるようにしておきたい表現のひとつである。
形式化すると《the + 序数詞 + 名詞 + to do ~》と小難しい感じになってしまうが、「~する(した)X番目の…」という意味の定型表現だ。
当ブログでは以前、"the first actor of Arab heritage to win the best actor Oscar" という表現を取り上げたときに解説しているので、そちらをご参照いただきたいと思う。
hoarding-examples.hatenablog.jp
今回の実例、"the third US president in history to be impeached" では、《the + 序数詞 + 名詞 + to do ~》の《to do ~》のところが《to be + 過去分詞》で受動態になっている。「弾劾される史上3人目の米大統領」と直訳される。
上で下線で示した "setting ..." は、これまた分詞構文で、"setting up a trial in the Senate" は「上院における裁判を立ち上げる」と直訳される*2。
そのあとの "that" は《関係代名詞》の主格で、先行詞は "a trial" である。「彼がオフィスに留まるかどうかを決定することになる裁判」と直訳される。
BBC Newsのこの記事はかなり読みやすいので、ニュース記事で英語を勉強しようという人にはよい素材になるだろう。まず日本語の報道で内容を把握しておいてから英語記事を読めば、効果的な学習ができる。大学受験云々関係なく、取り組んでみるとよいのではないかと思う。
日本語の報道の例:
ちなみにトランプ以前に弾劾された2人の大統領は、1868年のアンドルー・ジョンソンと、1998年のビル・クリントンである。私が高校生のときは「米大統領で唯一弾劾されたのはジョンソン」というのが世界史の問題集に出ていたが、クリントン後は「第二次世界大戦までに」などの限定句つきで設問にされるようになった。「唯一弾劾されたのはジョンソン」という問題でのひっかけの選択肢になっていたのがウォーターゲート事件のリチャード・ニクソンだが、ニクソンは弾劾される直前に辞任するという形で不名誉を回避した。ドナルド・トランプが今回弾劾されたのは「ウクライナ疑惑」によるものだが、その前、「ロシア疑惑」でコーミーFBI長官を解任して「トランプという奴はニクソン並みだ」と評されたときに、Twitterでニクソン記念図書館のアカウントが「一緒にするな」と怒っていて、「あのニクソン関係者が呆れるレベルでひどいってどういうことよ」と話題になっていた。
今回はニクソン図書館は「クリスマスですねー」という投稿しかしていない。
#OTD 12/18/1970 David Frost and jazz pianist Billy Taylor performed at the "#Christmas at the White House" event. Shown here: former First Lady Mamie Eisenhower, David Frost, First Lady Pat Nixon, Mr. Frost's mother Mona, and President Nixon. (Image: WHPO-5342-10) pic.twitter.com/vLwcPi2TjZ
— RichardNixonLibrary (@NixonLibrary) 2019年12月18日
参考書:
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- 出版社/メーカー: 朝日出版社
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