Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

省略, compel 〈人〉to do ~, 倒置 (イングランドの新型コロナウイルス「第二派」対応策とカオス)

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今回の実例はTwitterから。

欧州では新型コロナウイルスによる感染拡大がまた深刻なことになっている。いわゆる「第二波」だ。

第一波では全土的に一斉に厳しい行動制限(ロックダウン)を導入したイングランド*1は、今回、各地域ごと、感染状況に応じて3段階制 (three tier system) で行動制限を実施する。

 仕組みとしてはスッキリしていそうだが、そこはカオスUK、イングランド内で公選市長*2を置く各自治体との意思疎通がうまくいっていないようだ。特にグレーター・マンチェスターマンチェスターとその郊外部)のアンディ・バーナム市長(労働党)がその点で活発に発言している。バーナムは以前は国会議員で、サッカーのエヴァトンFCの熱烈なサポーターなのだが、国会議員時代にライバルのリヴァプールFCのサポーター96人が死亡した1989年の群衆事故、いわゆる「ヒルズバラ(ヒルズボロ)の悲劇」の真相究明のために大いに尽力したことで知られる。その彼がなぜマンチェスターの市長なのかとかいうことも興味深いのだが、今はそれについて述べている余裕がないのでまたの機会に。

ともあれ、今日15日の朝、バーナム市長が次のようにツイートしているのに気が付いた。

このツイート自体は、コンテクストを知らなくても読むことはできるだろう(コンテクストを知っていれば話がより分かりやすいが)。

最初の文: 

Said I wasn’t going to comment but now feel compelled to do so on the back of this Government briefing.

いきなり "Said" という動詞の過去形で文が始まっているのは、主語が省略されているからだ。この《省略》は日記文や手紙文でよくみられるもので、1人称単数の主語(つまり "I" )を省略する。現在完了の場合は助動詞のhaveもあわせて省略されることが多い。今なら日記などだけでなく、携帯電話のテキストメッセージやSNSの投稿などでもよく見る形だ。

  Met Tom yesterday. 

  = I met Tom yesterday. 

  (昨日、トムと会った)

  Just left the station and got on the bus. It's pouring. 

  = I've just left the station and got on the bus. It's pouring. 

  (今さっき駅から出てバスに乗ったところ。すごい雨が降ってる)

というわけで、"Said I wasn’t going to comment" は "I Said I wasn’t going to comment " ということ。「コメントはしないと言ったが」という意味である。

そのあと:

... but now feel compelled to do so on the back of this Government briefing. 

《feel compelled to do ~》は「~しなければならないように思う」。compelは動詞で、《compel 人 to do ~》で「人に(強いて)~させる」の意味。ケンブリッジ辞書では《force 人to do ~》の意味であると説明されている。

dictionary.cambridge.org

また、 "feel compelled to do so" の "do so" は《代動詞のdo》の表現で、ここではすぐ前にある "comment" を受けている。「そうしなければならないように思うので」は「コメントしなければならないように思うので」ということ。

"on the back of this Government briefing" の《on the back of ~》は「~を背景に」の意味だが、ここでは「政府のブリーフィングを受けて」くらいの意味だろう。

 

バーナム市長のツイートの第二文に関しては、すでにツイートしてあるので、そちらをご参照のほど。

 

※2800字 

 

f:id:nofrills:20201019195457p:plain

https://twitter.com/AndyBurnhamGM/status/1316459803666010118

 

参考書:  

英文法解説

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*1:英国は、保健行政は各自治政府に権限があるので、ウェールズスコットランド北アイルランドはそれぞれ自治議会・自治政府が方針を決めて、それぞれの首相・ファーストミニスターが人々に告知している。イングランド自治政府を持たないので英国会・英国政府がその役を負う。

*2:日本から見たら「市」に選挙で選ばれた「市長」がいるのは当たり前なのだが、イングランドでは公選市長は21世紀になってようやく導入された新しい制度である。その話はまた別の機会に。

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