今回の実例は、Twitterから。
新型コロナウイルスについて、ワクチンを接種したあとに感染する、いわゆる「ブレイクスルー感染」が、日本のテレビなどでもセンセーショナルに取り上げられているようだ。
今はみなさん「ブレイクスルー感染」と言っているが(たとえば忽那賢志医師も)、翻訳者の松丸ひとみさんが調べられたように、日本語には「打ち抜き感染」という用語がある。なぜそれが今回のパンデミックに際して使われていないのかはわからないが。
新型コロナとワクチンの文脈でよく見るようになったbreakthrough infection、日本語はブレイクスルー感染で定着したかと思ったけど、打ち抜き感染という日本語があったのね。なんでもかんでもカタカナで済ます風潮どうにかならんかな。
— 松丸さとみ📕8月5日発売『LISTEN』 (@sugarbeat_jp) 2021年7月9日
打ち抜き感染 - Wikipedia https://t.co/2h0i0eMPOo
ブレイクスルー感染については、メディアが大騒ぎしているからといって過大評価すべきではないようだが、もちろん無視もできない。米国や英国からは、ファイザーやモデルナ、アストラゼネカの2度接種するタイプのワクチンを2度接種しているのに感染した、というツイートがときどき流れてくる。ワクチンができる前の「COVIDにかかった」「検査陽性出た」のツイートに比べれば全然頻度が少ないのだが、全く見ないわけではない。
というわけで、今回の実例はそのようにブレイクスルー感染したという報告のツイートから。ツイート主は米国のジョージタウン大学で北米の歴史を教えているアダム・ロスマンさん。
My wife, our 10-year-old daughter, and I all have Covid. My wife and I are breakthrough cases. We're not in the hospital, but it's no picnic either. Be careful out there, friends.
— Adam Rothman (@arothmanhistory) 2021年7月20日
このツイートを一読しただけで、必要な情報が読み取れているかどうかを確認してほしい。
まず、ロスマンさんの家族は、ご本人とお連れ合いと10歳の娘さんの3人で、全員、コロナにかかってしまった。
ご本人とお連れ合いはワクチン接種済みであるにもかかわらず感染した(ブレイクスルー感染)。ここで、"My wife and I are breakthrough cases." と、《人(人称代名詞)+be動詞+case(s)》という表現が使えることを頭に入れておきたい。この《人+be動詞~》の形は、意外と難しい。定食屋で注文するときの日本語の構文「ぼくはウナギだ」(私はウナギ定食を注文する)を「ウナギ文」というが*1、「妻と僕はブレイクスルー感染だ」も「ウナギ文」の一種だろう。そしてここではこれが "I am[we are] ~" の形で表されている。一方、「ウナギ文」を英語にするときには "I am ~" の形は使わないと口を酸っぱくして言われる。この辺、実際にどうなのか、私もまだはっきりイメージできるわけではない。
それから、次の情報として、一家の3人は入院には至っていないが、"it's no picnic" であると。これはこのまま「使えるフレーズ」として覚えてしまってよい。「決して楽しくはない」という意味で、「かなりつらい」ということを述べるときの婉曲表現だ。
そしてここで、否定文について使う「~もまた」のeitherが出てきていることにも注目したい。
最後、"Be careful out there, friends." の "out there" は、口語英語の表現で、こういうのはどんなに一生懸命「受験英語」をやったところでわからないかもしれないが(実際、私は昔、これがわからなかった)、こういうのがわからないことで、「受験英語」ができない人からバカにされるいわれはない。この文は「みなさんもお気をつけて」の意味で "out there" は筆者から離れた場所のことを漠然と言っているだけで、特に具体的な意味があるわけではない。
今回、短いし、解説もあっさりしているがこれでおしまい。
※1900字