Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

豆の種類についてウィキペディアで調べる, 形容詞化した名詞が単数形になることについて(ちょっと退屈していた人が手掛けたとても重要な作業)

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今日は共通テスト当日なので、息抜き的なものを。受験されてきたみなさんはお疲れさまでした。明日もまだ理数の試験があるので、今日はリラックスして寝ましょう。

先日、Twitterの画面を眺めていたら、こんなのが流れてきた。ツイート主は理系(漁業科学)の研究者だ。

"bean" はbeenの洒落で、何もなければ "I've been a bit bored" と言うべきところを、今回のネタにひっかけて "I've bean ..." としている。

また、ここにある "a bit" は、日本語の「ちょっと」にとてもよく似ていて、文字通りにとらえれば「少し」なのだが、必ずしも「少量」とか「軽微」を意味するとは限らない。「ちょっと問題がありまして」の「ちょっと」は、軽微な問題が生じたときよりもむしろ、生じた問題が日程や計画全体に大きな影響をもたらすことが予想されるときによく用いられる。ここでは「ちょっと退屈していたので」というのが直訳だが、その「ちょっと」の中身は……ツイートされている写真を見ればわかるだろう。

よっぽど、やることなくてヒマだったんだな、としか言いようがない。見ればオーストラリアの方なので、COVIDによる行動制限のせいかもしれない。

「これが重要なことだと感じられるので」と続いているのは、くだらないことをやってしまったときの言い訳の定番。試験前になると部屋の模様替えをしてしまったりするときなどにも使う。

で、スミスさんは何をしているかというと、同じ「4種類の豆のミックス」*1の缶詰を2種、中身を全部お皿にあけて、それぞれ、何豆がどのくらい入っているかを数えている。ヒマなんだな。ひょっとしたら大事な発表の前とかかもしれないけど。

最初の写真のは、缶の左肩にあるマークから、オーストラリアのWoolworthsというスーパーのオリジナルブランドのものだということがわかるのだが、これはひよこ豆がやたらと多くて、レッドキドニービーンズが少ない。

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https://twitter.com/jjames_smith/status/1479551429282914306

メーカーのサイトを見てみると、中身は: 

Four Bean Mix (60%) (Chickpeas, Red Kidney Beans, Green Baby Lima Beans, Borlotti Beans), Water, Antioxidant (Ascorbic Acid), Firming Agent (Calcium Chloride)

と記載されている。

"Green Baby Lima Beans" は、Lima beanという豆が熟さないうちに収穫したもので(だからgreenだし、babyなのだ)、日本語では「ライマメ」と呼ばれるそうだ。くったくたに茹で倒してあるから色が抜けちゃってるけど、これは写真の一番右の列にある豆である。

"Borlotti Beans" は、ウィキペディアを見てみたが、ぱっと見ただけでは何を言っているのかわからなかった。別名が多すぎるのである。

The borlotti bean is a variety of common bean (Phaseolus vulgaris) first bred in Colombia as the cargamanto. It is also known as the cranberry bean, Roman bean, romano bean (not to be confused with the Italian flat bean, a green bean also called "romano bean"), saluggia bean, gadhra bean or rosecoco bean. The bean is a medium to large tan or hazelnut-colored bean splashed or streaked with red, magenta or black.  

Saluggia beans are regional, a borlotti bean named after Saluggia in northern Italy for marketing purposes and where they have been grown since the early 1900s.

en.wikipedia.org

要は「common beanの一種」なのだが、この "common bean" というのが日本語にはない概念で、なじみがないから難しい。学名ではPhaseolus vulgarisといい、日本語では「インゲンマメ」である。しかし、うちらが日本で「インゲン(マメ)」と呼んでいるのは、実がごくごく若いうちに豆ではなくむしろサヤを食べる品種の「サヤインゲン」で、豆として収穫される品種のPhaseolus vulgarisは、「白いんげん豆」を除いては、「金時豆」、「うずら豆」、「虎豆」など、「インゲン」だとわからない名称になる。ちなみに「金時豆」は「赤インゲンマメ」で、英語でいうred kidney beanと同じものだ。白インゲンマメは、日本では白あんの材料として知られるが、英国では例のbaked beansの材料になる。

なんで時間かけてこんなことを書いてるのかわかんなくなってきたが、というわけで、スミスさんが全部あけてみたウールワースの「4種類の豆」の缶詰で、ひよこ豆に次いで2番目に数・量が多いBorlotti Beansは、「白インゲンマメ」である。

さて、スミスさんの2枚目の写真:

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https://twitter.com/jjames_smith/status/1479551429282914306

 

こちらは、缶のラベルにANNALISAとあるのでそれを手掛かりにウェブ検索で調べると、ラベルのデザインが違うが、イタリアのメーカーの製品が見つかる。さっき見たウールワースのサイト内で検索してみると同じラベルの缶詰が見つかるので、スミスさんが買ったのはこの缶詰だと思われるが、ここにも「イタリア製」とあるので、このラベルはオーストラリア向けのデザインなのだろう。

ウールワースプライベートブランドのほうは "no added salt" (食塩無添加)とあったが、こちらはラベル下部にある原材料 (Ingredients) のところにsaltもsugarもあるので、特に健康重視の人向けではなく一般的な製品であることがわかるが、缶の一番上に書かれている "BPA FREE" は「ビスフェノールAを含んでいません」なので、「食の安全」の方面への気配りは行き届いていますよと強調していることは確かだ。

で、肝心の豆だが、こちらは: 

Butter beans, chick-peas, white beans, red kidney beans

とある。"chick-peas" と "red kidney beans" は何も問題ないんだけど、"butter beans" と  "white beans" はさっきのと違う。

というわけでまたウィキペディア英語版に出かけると、"butter bean" はなくて "butterbean" がある。出ました、英語圏あるある、本来はスペースがないのにスペースを入れた表記で一般化している(あるいはその逆で、本来はスペースがあるのにスペースのない表記が一般化している)。

Butterbean may refer to:  

Lima bean Phaseolus lunatus, an edible legume

Runner bean Phaseolus coccineus, grown both as an edible bean and as an ornamental plant

Lablab known as butter bean in the Caribbean

Butterbean - Wikipedia

というわけで、Butterbeanは、さっき見たLima beanの別名、あるいはRunner beanの別名で、後者は「ベニバナインゲン」で、これの豆は日本では「紫花豆」で、見た目がこんなふうではないので(下記参照)、この缶詰に入っているのはLima beanだろう。

写真では一番右の列のがこのButterbeansである。ウールワースプライベートブランドの缶詰に入っていたのよりかなり大ぶりだが、同じlima beansだ。

もうひとつの "white bean" は、名前見ればだいたいわかると思うんだけど、「シロインゲンマメ」のことで、これもまた別称がやたらと多いのだが、さっき見たウールワースプライベートブランドの缶詰では "Borlotti Bean" と記載されていた豆のことである。

つまり、この2つの缶詰の原材料は、表記は違っても、基本的に同じものだ。ただしライマメは収穫時期が違うか品種が違うのだと思う。

ああ、ややこしい。

というわけで、スミスさんの検証を見る限り、オーストラリアでは、ひよこ豆が好きな人はウールワースのプライベート品、キドニービーンズが好きな人はアンナリサの缶詰を買うとよさそうだ、ということがわかる。ただし、どの缶も同じようなバランスで4種の豆が入っていると仮定すれば、の話だが。

スミスさんのこの投稿はバズり、多くのリプライが寄せられているのだが、その中に、スミスさん以上のヒマ人、いや、猛者がいる。

「貴方の先行研究に触発されました」というジェニー・エドワーズさんは、別なブランドの「4種の豆」の缶を全部あけて、中身を種類分けして、きれいに並べている。

一方で、Mish3091さんはきれいに並べたうえで数えている!! 

このEdgellというブランドは、オーストラリアのブランドで、日本にも輸入されている。サイトには冷凍野菜の紹介しかないけれど。

さらに、「豆数えゲーム」は広がりを見せつつある。

スミスさんは「4種の豆」を使ったが「5種の豆」の缶もあるらしい。

それどころか、水煮になっていなくて乾燥豆の状態だが、「15種の豆」もあるらしい。Plant-basedな食生活を送っている立場では、ひたすらうらやましい。

この「15種の豆」はすでにソートした人がいる。

ミックスビーンズでネタが尽きたら、次はこれだね……

そろそろ「食べ物で遊んじゃいけません」と言われる気がしてきたし(遊んでポイするわけじゃなく、みなさん、召し上がる前に内容物の研究をしているだけですが)、5600字に達しているのでこの辺で。

おっと、待った。これはすごい (via https://twitter.com/DariusGuilford/status/1479621000429858817 )

 
 
 
 
 
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最後に付け足すようになってしまったが、英文法のポイントも少しだけ。「4種の豆のミックス」は four bean mix と呼ばれているが、よりガチガチに規範的にするなら four-bean mix とハイフンを使って複合語にするだろう。

beanは普通に可算名詞だから、スープやサラダなどにどちゃっといっぱい入ってるときはbeansと常に複数形になってるんだけど、ここで単数のbeanなのは、複合語で形容詞化しているからだ。下記の法則と同じ。

  This is food for cats. →普通に名詞のときは複数形

  This is cat food. →名詞 (cat) が形容詞化して別の名詞 (food) を説明するときは単数形

  Kate is forty years old. →普通に補語になってるときは複数形

  Kate is a forty-year-old resident of this affluent area. →形容詞化しているときは単数形

  (ケイトはこの裕福な地域の40歳の住民である)

というわけで、ちょっと無理があるかもしれないけど「4種の豆」で例文を考えると: 

  We cooked four beans

  (豆を4種類*2、調理した)

  We bought two cans of four-bean mix. 

  (4種の豆のミックスを2缶買った)

 

※6400字。なんでこんなネタでこんなに文字数が多くなるのか……。全部読んでくれてありがとう。明日試験の方は、ゆっくりおやすみください。

 

※Annalisaの豆の缶詰も日本で買えるみたい。ただし見つかったのはレンズマメだけ。

ひよこ豆は、缶詰じゃなくて自分で茹でるのがおいしいです。夜、寝る前に鍋に2カップくらい入れて軽く水で流し、たっぷりの水を張って吸水させ(吸水すると豆は大きく膨らむので、あまり一度にたくさん茹でようとすると鍋からあふれますから、そこだけ注意)、翌朝、普通に火をつけて、沸騰したら弱火にして、15分程度茹でるだけ。ビールの泡みたいにもこもこしたアクがかなり出るので、気になる人はすくってください。茹でたてのほくほくのひよこ豆のおいしさたるや……。

 

 

 

*1:ごくありふれた定番品。

*2:豆を4粒だけ調理する、ということはないので、ここは「4種類」。