Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

等位接続詞andによる接続がちょっとややこしい場合、分割不定詞、make + O + C, 関係副詞where ( #WeCareDoYou )

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

今回の実例は、7月16日に英国で話題となったハッシュタグで回覧されていた文書より。 

サッカー、イングランド・プレミアリーグに属するアーセナルの複数のサポーター組織が(普段は意見を戦わせることも多いのだが)一致団結して、オープンレターを連名で出した。

アーセナルに最近何が起きているかは、別に知らなくてもこの文書は読めるのだが、簡単に言うと、クラブの意思決定をする経営陣・上層部(いわゆる「フロント」……英語記事では私が知る限り「フロント」という表現は見かけないのだが、日本語の「フロント」はfront officeの略 であるとのこと*1)がおそろしいほど何もしないというか無能なので、いろいろと起きるべきでないことが起き、起きるべきことが起きていないという状態に業を煮やしたサポーターたちがついに声を上げた、という事態である。

サポーターたちの怒りとフラストレーションは、現在のアーセナルの経営的な部分によって生じ、それに対して向けられている。アーセナルは北ロンドン(イズリントン)のクラブだが、サッカーが「ビジネス」(つまり金を産むもの)として注目されてイングランドのクラブが次々と「外資」の「所有物」となる中で、米国の富豪とウズベキスタンの富豪が大株主となり、2人の間で、および昔からの株主たちの間でクラブの支配権をめぐってちょっといろいろあった挙句、2018年には米国の富豪が「クラブの唯一のオーナー」ということになった。詳しくは英語版ウィキペディアを参照。

この米国の富豪が、スタン・クロンキー (Stan Kroenke((日本語圏ではKroenkeが「クロエンケ」とカタカナ書きされるケースもあるが、「クロンキー」と読む。))) という人で、彼は米国でアメフトやバスケ、アイスホッケー、サッカーなどのプロスポーツチームをいくつも経営するKSE(クロンキー・スポーツ&エンターテイメント)というスポーツ企業の創業者・社長で、ぶっちゃけ、ロンドンのサッカークラブが地元の人々に持つ意味とか伝統とかはどうでもよく、アーセナルは単に世界的にも名の通った「ブランド」であり、持ってるだけでほっといても金が入ってくる便利な存在にすぎないと考えているとしか思えない。優勝トロフィーを獲得しようがしなかろうが、クロンキー氏にとっては別にどうでもいい(どっちにしても儲けは出る)。だから、リーグでの成績を上げようとか、そのためにはどういうことをやっていこうとかいうヴィジョンを、クラブ上層部が持っていそうな感じがしない。

イングランドのクラブの中には、外国人オーナーのもとでうまくいっているところもあるのだが、残念ながらアーセナルはそうではないわけだ。

その問題が積み重なってきたところに、この7月、キャプテンがシーズン前のアメリカ遠征を拒否するというありえない事態まで発生して、サポーターたちもいよいよ黙っていられなくなったのだろう。

サポーター団体が連名で出した文書はこちら: 

画像では読みづらければ、下記のサイトで。 

https://www.wecaredoyou.co.uk/

 

今回はこの文書の一部を実例として見ることにしよう。

当ブログではいつもは新聞記事などプロの書き手による文章を見ているが、この文書はそうではない。新聞記事などに比べて表現・構成がやや粗削りな感じもするが、同時に、非常にナチュラルな感じもする。そういった点からも読んでみることで、英語学習者には得るものがいろいろあるのではないかと思う。

さて、下記キャプチャ画像は上で見たTwitterフィードで4分割されて投稿されていた文面の1枚目、つまり今回の文書の最初の部分である。

f:id:nofrills:20190716064623j:plain

2019年7月16日、Twitter @GoonerFanzine

 

This requires work to strengthen the club’s board and football executive and to once again make Arsenal a place where fans have a real sense of belonging.

 《等位接続詞》のandが2か所あり、一見したところちょっと構造がつかみづらいかもしれない。

andは簡単な単語だが、時として文構造を複雑にしてしまい、場合によっては誤訳・誤解釈の誘因にもなる。正確な読み解き方を会得しておく必要がある。この実例はその確認のためのよい練習台になるだろう。

 

まず基本中の基本を改めて確認しておくが(以前も書いたことがある)、andは同じ性質のものを結ぶ接続詞である。つまり、《名詞 and 名詞》とか、《動詞 and 動詞》とか、《現在分詞 and 現在分詞》といった構造を作る。《名詞 and 動詞》の形になることはないし、《動詞 and 現在分詞》の形になることもない。これがandの文の構造をつかむ手がかりになる。

これを見極めるには、andの後に注目することになる。andの後が例えば名詞なら、そのandはその前にある名詞とつながっているし、動詞なら動詞とつながっている。

下記の例では、andの後が名詞で、その前の名詞とつながっている。

  I visited the British Museum and the National Gallery

  (私は大英博物館とナショナル・ギャラリーを訪れた)

一方下記の場合はandの後が動詞で、その前の動詞とつながっている。

  I visited the Britsh Museum and spent more than five hours. 

  (私は大英博物館を訪れ、5時間以上を過ごした)

 

以上の基本を確認したところで、実例の文を見てみよう。

This requires work to strengthen the club’s board and football executive and to once again make Arsenal a place where fans have a real sense of belonging.

1つ目のandの後は "football executive" で名詞、2つ目のandの後は "to once again make" でto不定詞(厳密には分割不定詞。後述)である。

 

1つ目のandはシンプルだ。 "football executive" とその前にある名詞である "board" をつないでいる。つまり「クラブのボードとフットボール・エグゼクティヴ」という構造で、これは日本語でいえば一言で「クラブのフロント」ということになるだろう。

 

2つ目のandについては、先行する部分でto不定詞を見つけなければならない。すると、次のように、少し離れた場所にある "to strengthen" が見つかるはずである。

This requires work to strengthen the club’s board and football executive and to once again make Arsenal a place where fans have a real sense of belonging.

また、"to once again make" は《分割不定詞》で、toと動詞の間にonce againという副詞句が入っている。文構造をとるときにはこの副詞句は外してしまい、"to make" と考えよう。

そうすると、この文は、"This requires work to strengthen ~ and to make ..." という構造が見えてくる。

このto不定詞は《形容詞的用法》で、work(名詞)を修飾している。つまり「このこと(文章の先行部分で述べていること)は、~を強化し、…する作業を必要とする」という意味である。

 

次に、"to once again make ..." の部分だが、ここは《make + O + C》の形になっていて、"make Arsenal a place where ~" で「アーセナルを~な場所にする」という意味。

このwhereは《関係副詞》で、"a place where fans have a real sense of belonging" は「ファンたちが、本物の所属の感覚を持つ場所」という意味。もっとわかりやすい日本語にすると「ファンたちが、自分たちはここに属していると心から感じられる場所」などとなる。

 

というわけで今回の実例の文は、「これには、クラブのフロントを強化し、もう一度アーセナルを、ファンの人々が自分たちはここに属していると心から感じられる場所にしていく作業が必要だ」という意味になる。

 

なお、https://www.wecaredoyou.co.uk/ で文面全体を読んで賛同できると思った方、自分もこの異議申し立てというか直訴の一部になりたいと思った方は、オンライン署名という形で参加できる。下記からどうぞ。

https://secure.avaaz.org/en/community_petitions/Enos_Stanley_Kroenke_-_Owner_Arsenal_Football_Club_fans_unite_in_warning_to_owner_Stan_Kroenke_WeCareDoYou/

Avaazというオンライン署名サービスを利用している。ここはほんとにいろいろと押しつけがましくて、関係のないトピックについても「ついでに署名してってよ」と言ってくるので私はこのサイトは嫌いだ。というか、私の環境からは署名がコンプリートしない(Facebookにログインしろって言われるけどFBのアカウント持ってないんだよね)……文書の内容には賛同するんだけど、署名できないな、これじゃ。あと、署名に成功するとAvaazからの案内がメールで届くようになるかもしれないが、メールが不要なら解除は簡単にできるはず。

 

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英文法解説

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*1:細かくは調べていないが、front officeはたぶん米語の野球用語だと思う。英国のサッカー報道ではboardという。