今回の実例は、金属のコバルトについての「報道特集」的な記事から。
コバルトは、古くから青の色の顔料として使われてきたが、現代の技術に欠かせないハイテク素材を作るために必須の原材料となったのは20世紀のことである。
コバルトがどう使われているか、ウィキペディアを参照しておこう。
単体金属としてのコバルトの利用はほとんどないが、合金材料として重要であり工業的に利用される。……
ニッケル・クロム・モリブデン・タングステン、あるいはタンタルやニオブを添加したコバルト合金は高温でも磨耗しにくく、腐食にも強いため、ガスタービンやジェットエンジンといった、高温で高い負荷が生ずる装置などに用いられているほか、溶鉱炉や石油化学コンビナートなどでも充分に役割を果たす。
そのほか、鉄よりも錆びづらく酸やアルカリに侵食されにくい性質を利用して、コバルト含有率を大幅に高めたコバルト合金は、鋏などの高級素材として利用されている
……
コバルト酸リチウムは、リチウムイオン二次電池の正極材として用いられ、携帯電話など小型デジタル機器の急速な普及により需要が増大している。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%83%90%E3%83%AB%E3%83%88
こういったことを予備知識として頭に入れておくと、今回見る記事はぐっと読みやすくなるだろう。
記事はこちら:
《one of + 複数形》や《to不定詞》など、見所がそこかしこにある文章だが、今回実例として見るのは4番目のパラグラフ:
Combining it with other metals produces alloys that are immensely tough, stable under extreme temperatures and anti-corrosive.
この文、ぱっと見ただけで意味が取れただろうか。いや、文の構造が取れただろうか。
このレベルの英文は中堅私大の入試でもよく見るが、読めているつもりでも実は全然読めていない(単語をつなげて好き勝手に解釈をでっち上げているだけ)ということがよくある。特に英語がいまいち苦手だという受験生の方は、こういうタイプの文で、しっかりと構造を取る練習をしておく必要がある。
まずはこの文の主語(S)と述語(V)がどれなのかを把握することから始めよう。頭から読んでいくと、combining it with other metalsという-ing形に導かれた句が《分詞構文》(-ing形が現在分詞)なのか、《動名詞句》(-ing形が動名詞)なのかが判然としないことに気づくだろう。-ing形で始まる文はだいたいそうだ。
これがそのどちらであるかがはっきりするのは、-ing形に導かれた句が終わって、その次にどういう語があるかを見たときだ。
例えば、-ing形の句の次に新たに何か主語になりそうなもの(下記の例文では下線を補ったwe)が出てきたら、この句は《分詞構文》だ。
Combining it with other metals, we get heat-resistant and anti-corrosive material for the use in jet engines.
(それを他の金属と組み合わせ、私たちはジェットエンジンに使えるような熱に強く侵食にも耐える素材を得る)
一方、-ing形の句の次に動詞が出てきたら、この句は《動名詞句》で、文全体の主語になっている。今回の実例はこのパターンで、produceは動詞(3単現のsがついてproducesになっているが)。
Combining it with other metals produces alloys
(それを他の金属と組み合わせることが、合金を作り出す/それを他の金属と組み合わせ、合金を作る)
続いての部分:
alloys that are immensely tough, stable under extreme temperatures and anti-corrosive.
このthatは《関係代名詞》の主格で、先行詞はalloysである。alloysが複数形なので、thatに対するbe動詞はareとなっている。意味は「きわめて強靭で、極端な高温・低温のもとでも安定しており、侵食にも耐える合金」。
このような性質を持つコバルト合金は、ジェットエンジンやロケット、原発から、タービン、工具類、果ては人工股関節と幅広く使われている。
……というのがこの記事の前置きの部分で、本題は第6パラグラフ(上記キャプチャ―画像の一番下のパラグラフ)から始まる。ここで「投資家たちに魅力なのは、コバルトは蓄電池の陽極で使われることだ」といった情報が与えられ、読者はその「蓄電池とコバルト」というトピックへと読み進めていくことになる。
今回の記事を読んで、ここまでたどり着くだけで疲労困憊していたら、英文読解の基礎力をまだまだこれからつけていかねばならないというしるし。量をこなすことがよい対策となるので、簡単なレベルから始めて段階的に上げていけるタイプの長文読解の問題集をやってみるとよいだろう。下記のシリーズが入手しやすい。(リンクは3からだが、もちろん英語が不得手な人は1から始めるのが定石。)
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