Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れる表現: stop -ing (動名詞), 否定疑問文, 省略, 同等比較【再掲】

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このエントリは、3月にアップしたものの再掲である。「ネタ」を「ネタ」とわからない人にはインターネットを使うのは難しい、という方向性のトピックだが、何かについて「ふざけるな」と言いたい場合に使える英語表現のバリエーションを知るにはけっこうよいエントリなのではないかと思う。

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今回の実例は、やや変則的に、ツッコミどころ満載のニュースにツッコミを入れるときの表現を、Twitterから集めてみよう。

 

「ツッコミどころ満載のニュース」というのはこれだ。話題としてはせいぜい「スポーツ新聞の記事」で、「超能力者(自称)が念力でのBrexit阻止を宣言!」といったところか。

www.theguardian.com

 

なお、この記事、日本語圏では「高級紙ガーディアンがこんな記事を……」として広まっている側面もあるようだが、掲載はガーディアンでも記事元はPress Association (PA) という通信社である(ガーディアンの記者が書いた記事ではない)。日本でいうと、大手の新聞が共同通信時事通信の記事を掲載するのと同じ。また、ゲラーが直接この「公開書簡」を送ったのは、ジューイッシュ・テレグラフというロンドン拠点の小さなメディアである。

 

ところでこのおじさん、誰、という人も多いだろう。1970年代の世界的超能力ブームのころ、最も有名な「超能力者(自称)」がこの人、ユリ・ゲラーだった。十八番は「スプーン曲げ」で、念力で(つまり物理的な力を使わずに)金属のスプーンを曲げてみせるという芸だったが、これは本物の奇術師から見れば、「へたくそな手品に『超能力』というレッテルを貼って売り込みに成功しただけのもの」というような代物だったという。私はそういうのにほとんど興味がなかったので、名前とスプーン曲げくらいしか知らないのだが、はまる人はとことんはまっていた。(ここらへんの「超能力ブーム」が入り口となって、のちに精神世界やらオカルトやらにはまっていき、オウム真理教を含む90年代のカルトに引き寄せられていった人も少なくない。)

 

ユリ・ゲラーは現在のイスラエルという国が成立する前に英国の委任統治領だったパレスチナで生まれているが、英国に長く暮らしてきた(2015年にイスラエルに戻っているそうだが)。その家が、テリーザ・メイ首相の選挙区にあり、実際に交流もあったというつながりがあって、上記記事で伝えられているような「公開書簡」に至ったそうだ。

 

なお、彼自身は「超能力者」を自称しているが、客観的には「イリュージョニスト(奇術師)」と位置付けられていることは、上記ガーディアン掲載PA記事でも確認できる。

 

記事自体は読む価値はない。英文法の実例としては、《意思未来のwill》の用例としてわかりやすいとは思うが、その項目を見るためにこの文を読むほどの価値もない。

 

おもしろいのは、ユリ・ゲラーのこの行動に対する人々の反応のほうだから、Twitterを見てみよう。ガーディアンのアカウントでこの記事をフィードするツイートについているリプライから:

 

「目の前に迫った最悪の事態を利用して、売名するのはやめろ」という反応。

"sod off" は英国の俗語で、"go away" の意味を表す非常に強い表現。同意の "f*** off" のような卑語ではないので伏字にしなくても使えるが、まあ、やたらと使うべき表現ではない。直接誰かに向かって言うときは、日本語で「うざったい」とか「うぜぇ」と言っても人間関係を破壊しないような間柄でのみ使うようにするのがよいだろう。

 

文法的には、《stop -ing》の形が入っている。この-ingは動名詞で、全体で「~することをやめる」の意味だ。

 

続いて、「テレパシーが使えるのなら、わざわざ紙に書かなくてもいいんでは」。(正論すぎてぐうの音も出ない。)

「なぜ~しなかったのか」の否定疑問文、《Why didn't he ~?》は使えるようにしておきたい表現のひとつ。

 

最後の文の "Could he ~?" のcouldは、日常会話で頻出する《婉曲》のcould。英国では特にティーンエイジャーの間で刃物を使った暴力事件がまた激化してきており、ここでツイート主はそのことを言っているわけだ。「じゃあ、刃物という刃物を全部曲げて、刃物を使った犯罪が起こらないようにしてくださいませんかね」。

 

続いては「どうせなら、今ではなくあの時に……」。

「2016年」は、EU離脱可否を問うレファレンダム(国民投票)が行われた年。「超能力なら、そのときに使っててくれれば」。これまたド正論だ。

 

"Shame he didn't use ~" は口語的な(日常的な)表現で、いろいろ省略されている。省略を補うと、"It is a shame that he didn't use ~" となる。

 

続いて《同等比較》を使った表現。見た目は否定文ではないが、内容的には否定文、という先日も見たようなパターンだ。

ツイートに出てくるグレン・ホドルはサッカー指導者。1998年のワールドカップ(フランス大会)のときにイングランド代表監督を務めていたが、大会開始前にユリ・ゲラーが「ホドルさんが助力を求めて私のところに訪ねてこられました」とホラを吹いたとして名誉棄損で裁判に打って出ている。詳細は当時のBBC News記事を参照。

 

また、その前の1996年の欧州選手権(EURO)でイングランドスコットランドと対戦したときに、ユリ・ゲラーはスタジアム上空をホバリングするヘリの中から念力を送り、スコットランドのプレイヤーがPKを得て蹴ったボールを操作して、イングランドに勝利をもたらした、と主張している(つまり、自分が念力を送ったのでイングランドは勝利できたのだ、と主張している)。もちろん、誰も本気になどしていない。ゲラーにそんな能力があったのなら、マラドーナの「神の手」ゴールを阻止していてしかるべきだし。

During the Euro 96 football match between Scotland and England at Wembley, Geller, who was hovering overhead in a helicopter, claimed that he managed to move the ball from the penalty spot when Scotland's Gary McAllister was about to take a penalty kick; the penalty kick was saved and Scotland lost 2–0. https://en.wikipedia.org/wiki/Uri_Geller#Paranormal_claims

 

さて、実例として参照している@ro3041さんのツイートに戻ろう。

Uri Geller will be just as successful in stopping Brexit as he was in helping Glen Hoddle’s England team

これは、そのまま考えれば、「Brexit阻止の成功度は、ホドルのイングランド代表への助力の成功度と同等である」という意味。この2番目のasの後ろが、控え目に言っても「効果などなかった」のだから、最初の方も「効果などない」ということを言っている。

 

これらのような反応のほか、米国から「Brexit阻止し終わったらこっちに来て、トランプ阻止してね」という呼びかけも(もちろんネタとして)いくつか投稿されている。各自、ガーディアンのツイートのリプライを御覧いただきたい。

もちろん、他のメディアでもこのネタは取り上げているので、Twitterをあれこれ検索してみれば、いろいろな発言に出会えるだろう。

 

なお、ユリ・ゲラー本人は、最初に「公開書簡」を送った媒体に、ビデオも送っている。部屋の壁際に整然と並んでいるのは瓶詰の食品か、化粧品だろうが、おそらくこういうものを売る商売をしているのだろう。わざわざ安息日(土曜日)に話題になるようなタイミングで動いたのは本人で、宣伝の好機ととらえて出てきただけだろうし、別に相手する必要はないのだから無視しておけばよいわけで、実際にエスタブリッシュメントからは無視されているようだ(BBC Newsには記事がない)。

 

 

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ユリ・ゲラー わが超能力―それでもスプーンは曲がる!

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英文法解説

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