Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

パラグラフの構造, 文頭のAnd, due to ~, 前置詞のas, make sure (that) ~(五輪開催地をめぐるフェイクニュース)

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今回の実例はTwitterから。

2020年2月20日、妙にキーボードで打鍵しやすい日付のこの日に、Twitter上の日本語圏に「フェイクニュース」があふれた。今回はそれについて取り上げようと思う。いつもとは趣向を変えて、ブログの執筆をライヴ・ツイートする形にした。当ブログを読んでいない人にも届けたかったからだ。

ログはここ: 

https://threadreaderapp.com/thread/1230503506814980096.html

 

このままだとブログでは読みづらいので、こちらはこちらで形式は別に整えるが、内容自体はライヴ・ツイートと同じである。

 

個人的に、Twitterは使用言語を英語に設定して、Trendsの地域設定もIrelandにしてあるので(Brexit Dayまではthe United Kingdomにしてあった)日本語圏で何が流行っているのかは気づかないことが多いのだが、今日は【今夏五輪はロンドンで 市長候補】とかいう刺激的な話が流行っていたようだった。

この記事(時事通信)自体、非常にミスリーディングである。「市長選の主要候補」の発言が「ロンドンでの代替開催の誘致に名乗りを上げた」ことになるわけがない。

考えてみてほしい。例えば都知事選で現職ではない立候補者が、例えば「東京でのガソリン車販売を禁止する」という "公約" を掲げ、現職が「それも検討していかねばならない課題だ」と語ったら、「東京、ガソリン車販売禁止へ」という話になるだろうか。なりはしない。

なのに時事通信は、野党候補者がツイートして、現職も同じようなことを述べたという話を、「今夏の五輪『ロンドン開催を』 新型肺炎で市長選候補名乗り」などというド派手は話に仕立て上げてしまった。正直、何考えてんすか、としか言いようがない。 

今夏の五輪「ロンドン開催を」 新型肺炎で市長選候補名乗り(時事通信) - Yahoo!ニュース

 

しかもそれをYahoo! Japanが猛プッシュ。何もなくても東京オリパラに対して否定的なムードが強いところにこの新型コロナウイルスの感染拡大があって誰もが不安になっている中、「ロンドンが名乗りだって? どうぞどうぞ」とばかりに広まったのも無理からぬ話である。

 

これはただ流行ったのではなく、「フェイクニュース」化して流行ったのだ。つまり、拡散されるうちに、「ロンドン市長候補が名乗り」という変な日本語が、いつの間にか「ロンドン市が名乗り」となっていたのだ。元都知事の舛添さんまでこの短絡っぷりである。 

(これは皮肉ではなく、私は本心で舛添さんという方の頭脳は尊敬している。)

 

さらには自民党の国会議員までこうだ。

 

こうして「インフルエンサー」的な立場にあるアカウントが次々と「釣られた」状態になり、Twitter上の日本語圏ではすっかり、「ロンドンが名乗りを上げた」という話になってしまったようだった。

このように「フェイクニュース」化したのは、どうやら新聞が変な見出しを付けて印象操作したことも一因となっているようだ。

こういうのはどうしたらいいんだろう。アニメ美少女が出てきて「もう、みんな、あわてんぼうさんなんだから☆」と怒ったりしたら改まるのか? 

 

実際には、ロンドンでは支持が薄くて弱い保守党の候補が、少しでも目立とうとしてフカしているだけだ。下記の指摘は正しい。

 

ではこの候補はどう発言したのか。そもそもこの候補はどういう人なのか。それを今回の当ブログの「実例」として見ていきたい。

 まず、「ロンドン市長」だが、これは名誉職のLord Mayorではなく、行政の長のMayorである。行政の長として投票で直接選ばれる「市長」の歴史は、議会制民主主義を旨としてきた英国(というかイングランドウェールズ)では非常に浅く、1999年に成立した国の法律で新設された。

Mayor of London - Wikipedia

 

最初の市長選挙は2000年5月に行われた。ロンドン市長の任期は4年で、2004年、08年、12年、16年と選挙が行われてきて、今年20年は6度目の選挙となる。投票日は5月の第一木曜日だ。

2020 London mayoral election - Wikipedia


2000年、04年は労働党ケン・リヴィングストン、08年、12年は保守党ボリス・ジョンソン(現英首相)、2016年は労働党サディク・カーンが当選し、今回の選挙ではカーンが二期目に挑む。その現職に対する保守党の候補が、今回、問題のツイートをしたショーン・ベイリーだ。

Shaun Bailey (London politician) - Wikipedia


2018年に行われた保守党の候補者選挙を制したベイリーは、1971年生まれと現職カーンと同世代。カーンがアジア系(パキスタン系)でベイリーはジャマイカ系だ。(きっと日本では「マイノリティ同士の一騎打ち」とかいう注目のされ方をするだろうが、ロンドナーはそんなこと構っちゃいないだろう。)


ベイリーは西ロンドンのノース・ケンジントン出身。ギャング・カルチャーの色濃い地域だ。若いころはその地域のカルチャーにどっぷりで、後にその経験を生かして若者のための社会活動をするようになり、市議会へと進んだ。つまり経歴的に「保守党らしからぬ候補者」である。保守党は前回「ばりばりの保守党」のザック・ゴールドスミスを擁立して惨敗したので趣向を変えてきたのだろう。


というわけで今回の実例の最初のパート。ベイリー氏のTwitter bioを見てみよう(添付画像)。縦棒で区切りながら「ロンドン市長候補」「ロンドン市議会議員」と身分を列挙しているが、3番目の "Hon Col Cadets for the Royal Regiment of Fusiliers" に注目だ。

f:id:nofrills:20200221031244p:plain

 

"the Royal Regiment of Fusiliers" は陸軍の「ロイヤル・フュージリアーズ連隊」だが、ベイリー氏は軍人だったわけではない。"Hon" は英国でよくある肩書で、Honouraryの略語(「名誉~」の意味)。"Col" はColonelのことで、Honorary Colonelとなる。下記に解説がある。

https://en.wikipedia.org/wiki/Colonel_%28United_Kingdom%29#Honorary_Colonel


これは軍人というより何かの顕彰なのだが、ベイリー氏は子供の頃にArmy Cadet Force という、国防省がやってる少年団に属していたとのことで、そのつながりだろう。でもぱっと見、この肩書は「元軍人」っぽく見えるのがミソ。

 

では次の実例。時事通信が「今夏の五輪『ロンドン開催を』 新型肺炎で市長選候補名乗り」と書き立てていたベイリー氏のツイートを見てみよう。 

 

第1文と第2文は、前回見たような《トピック・センテンス》と《サポート・センテンス》の構造になっている(改行のやり方から見ると、書いてるご本人はそれを意識していないかもしれないが)。

London can host the #Olympics in 2020.

We have the infrastructure and the experience.

第1文の "can" は《能力》を言っているが、この「ロンドンは2020年の五輪を開催することができる」という発言の根拠が、第2文で「我々はインフラと経験を持っている」と示されているわけだ。

 

そこに新情報が追加されているのが第3文。

And due to the #coronavirus outbreak, the world might need us to step up.

日本では「《接続詞》のAndで文を書き始めてはならない」と四角四面に指導されることもあるが、実際には文頭のAndは珍しくない。ただ日本語母語話者の感覚だと全ての文の間にandを入れてしまいかねないので、その点は注意が必要。大文字のAndはここぞというときにだけ使うものだ。

太字で示した《due to ~》は「~のために」「~が原因で」。英語が得意な高校生はこのdue to ~と、because of ~, thanks to ~など同じような意味の表現との違いを考えてはまってしまうことがあるが、辞書を参照し解説を読んで例文を咀嚼しさえすれば、それ以上あまり考えすぎなくてよい。 重要なのは自分で使いたいときに使えるようにしておくことだ。

 

最後の第4文。

As Mayor, I will make sure London is ready to answer the call and host the Olympics again.

文頭の"As" は《前置詞のas》で「~として」の意味。

《make sure (that) S + V》は「S + Vを確実にする」という意味で、日常生活で非常によく使う表現である。

 この文は、直訳すれば「(当選した暁には)市長として、私はロンドンがこの要求に応え、再度五輪を開催する準備が整うよう、確実にする」となる。こなれた訳文を考えたい人は、このようなしっかりした解釈をベースに、どんどん考えてもらえればと思う。

 

この件、内容的なことを改めて述べておくと、上述した通り、ロンドン市長選は5月第一木曜である。そこで当選したとして、7月下旬の五輪本番まで2か月ちょっとしかない。ロンドンのオリンピック・スタジアムは既に「ロンドン・スタジアム」として改装され、サッカーのウエストハム・ユナイテッドFCのホームになっている。2020年のロンドン五輪はかなり非現実的である。

 

というか、何年か前にも「東京はダメなのでロンドンで開催」っていうフェイクニュースが流れたよね。確か日本語圏だけで。

誰かが意図的に流してるんじゃない?

私は個人的に五輪には関わりたくないので、関心払ってなくてよく知りませんが。

 

参考書:   

真実の終わり

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フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器 (角川新書)

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それを,真の名で呼ぶならば: 危機の時代と言葉の力

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