Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

付帯状況のwith, SVOCの文型, 「経験する」の意味のsee(新型コロナウイルス感染状況がひどくても、人々からは許容されている英国)

↑↑↑ここ↑↑↑に表示されているハッシュタグ状の項目(カテゴリー名)をクリック/タップすると、その文法項目についての過去記事が一覧できます。

【おことわり】当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。

今回の実例は、一読して「大学入試(国公立二次など)に出そうなパターン」と思った記事から。

記事というか、報道記者が専門家の話を聞いてまとめた、社会的な状況を解説する文章だ。大学入試には分量が多すぎるのだが、入試にありがちなパターンとして、こういう文章を読ませて、「〇〇教授の述べていることと一致しているものを次の4つから選べ」とか、「〇〇教授の述べていることを要約せよ」といったもの、あるいは単に「この文章の内容を日本語で200字以内で要約せよ」といったものがある。そういった出題がなされる大学を受験する予定の人は、この記事はざっと読んでおくと、パターン慣れという点で役立つかもしれない。

記事はこちら: 

www.theguardian.com

こういう文章の例にもれず、この文章も書き出しは、読者をひきつける「つかみ」の文として書かれていて、英語学習者としては非常にとっつきづらく読みづらいのではないかと思うが、「つかみ」の部分は読み飛ばし、本題に入るところからちゃんと読めばよい。普通に読解力があれば、本題に入ったらそれとわかるはずだが、多くの場合は冒頭の2~3パラグラフが「つかみ」である(文章の形式によっては1パラグラフだけのこともある)。この文章の場合は、第3パラグラフから本題が始まっている。

なお、記事の一番上についている写真(上記埋め込みでサムネイルとして表示されてもいる)は、ロンドンのテムズ川の南岸、国会議事堂と向かい合うあたりの壁に描かれたミューラル(壁画)、The National Covid Memorial Wallの最近の様子だ。このミューラルは、英国で新型コロナウイルスの大流行が始まってからほぼ1年となる今年の3月29日に、この感染症で家族を失った人々の団体と、Brexit以降大掛かりな風刺アートを次々と世に出してきたLed by Donkeysというチームが共同で立ち上げたもの。Covidの死者1人につき、ハートを1つ描くという形で、この感染症が社会に強いた犠牲を目に見えるようにしている。下記サイトで、スクロールダウンし続けると、このミューラルをゆっくり歩きながら見学できるようになっている。画面の右下に表示されている数字は、描かれたハートの数、つまり死者数だ。

nationalcovidmemorialwall.org

この「国会議事堂の対岸に、犠牲を視覚化した情報を置く」というのは、かつて1980年代に当時のロンドン市議会(そのころは今のような「ロンドン市長」の制度はなく市議会が行政機関だった)が行っていた掲示にルーツがあるのではないかと思う。当時の市議会の議長、ケン・リヴィングストンは、国会議事堂の対岸にあった議会の建物に、日々上昇するロンドンの失業者数の数字を掲示して、マーガレット・サッチャーの保守党政権をイラつかせた(これにより、当時のロンドン市議会はウエストミンスターの国会議員たちによって廃止されることとなった)。この3月に開始されたCovid Memorial Wallのプロジェクトは、明らかにこのことを連想させる取り組みだ。

だが、ミューラルのプロジェクトが開始されて半年が経過し、今回ガーディアンの記事に掲載されている報道写真に見えているのは、当初の色鮮やかなハートの数々ではなく、よほど目を凝らさないと見えないくらいに薄れたハートの数々と、何ら関心を示すふうではなくただ歩きすぎていく人の姿だ。路面には枯葉が積もり、歩いている人の服装も秋のものだ。

では英国では新型コロナウイルスの感染は収まっているのかというと、そんなことはない。むしろ状況はひどく悪く、「収束の兆しが見えない」といってよい状況が伝えられている。下記は2021年10月19日付の記事だ。

www.theguardian.com

閑話休題。本題に入ろう。

今回実例として見るのは、この分量のある記事の「つかみ」が終わって本題に入ってすぐの部分、第4パラグラフから。

f:id:nofrills:20211020200116j:plain

https://www.theguardian.com/world/2021/oct/15/why-britons-are-tolerating-sky-high-covid-rates-and-why-this-may-not-last

キャプチャ画像の最初のパラグラフ(文章の第4パラグラフ)の第2文: 

Hospitalisations are rising, with one-fifth of ICU beds occupied by Covid patients, and the latest figures showed an estimated 200,000 pupils absent from school.  

《等位接続詞》の "and" は、ここでは文と文をつないでいる。

最初の文、太字で示した部分は、《付帯状況のwith》の構文で、《過去分詞》をともなっている。「~が…された状態で」の意味だ。

下線で示した "one-fifth of ~" は「~の5分の1」の意味。分数の表し方の基本の例だが、 "one-fifth" が「5分の1」だ。

というわけで文意は「ICUのベッドの5分の1が新型コロナウイルス感染の患者によって占められているなか、入院件数は上昇している」。

"and" でつながれた2番目の文: 

..., and the latest figures showed an estimated 200,000 pupils absent from school.  

少々珍しいshowの構文。例えば『ジーニアス英和辞典(第5版)』ではp. 1930に出ているが、これは《show ~ to be ...》の "to be" が省略された形で、《...》のところに形容詞の "absent" が来ている形。文型としてはSVOCになる。「最新の数字は、推定で20万人の児童生徒が学校を欠席していると示している」という文意で、これはthat節を用いて、 "the latest figures showed (that) an estimated 200,000 pupils were absent from school." としても同じである。ただしthat節を使わずSVOCの文型にすれば、be動詞はwereだなといったことを考える手間が省けて楽だ。

 

次のパラグラフ: 

The UK is faring far worse than its European neighbours, with a rate of deaths per million people nearly triple those seen in France, Germany and Italy.

こちらもまた《付帯状況のwith》の構文で、こちらは《形容詞》を伴っている。

"triple" という語は動詞として使われることも多いのだが(例: The pharmaceutical company tripled their earnings during the pandemic. 「その製薬会社はパンデミックの間に収益を3倍にした」)、ここでは「3倍の」の意味の形容詞である。

下線で示した "those" は代名詞で、前出の名詞を受けている。ここでは "a rate of deaths per million people" を受けた表現だが、これが単数なのに、なぜ単数のthatではなく複数のthoseなのかというと、後続する限定句を見ればわかるだろう。「フランスのそれ、ドイツのそれと、イタリアのそれ」で限定されているので、複数になるのである。

またここで動詞のseeが使われていることにも注目しておきたい。「経験する」といった意味で用いられるseeだ。ここでは過去分詞で「経験された」の意味。

文意は、「英国は、100万人当たりの死亡率は、フランスやドイツ、イタリアで経験されたそれらの3倍に近く、欧州の近隣国に比してずっと悪い状況にある」ということ。

 

次回もこの同じ記事から、別なところを見ていこう。

 

※3350字

 

 

 

 

 

 

当ブログはAmazon.co.jpのアソシエイト・プログラムに参加しています。筆者が参照している参考書・辞書を例示する際、また記事の関連書籍などをご紹介する際、Amazon.co.jpのリンクを利用しています。