今回の実例は、アフガニスタンのタリバンと米国の和平合意についての報道記事から。
新型コロナウイルスがこれほどまでに世界的関心を集める切迫した事態になっていなかったら、また、米大統領選挙で民主党の予備選挙でジョー・バイデンがようやく勝利したというニュースがなかったら、少なくとも英語圏では丸1日はこの話題で持ち切りになっていたであろう。当然、日本語のメディアでも大きく報じられている。
ただしこの「和平合意」、確かに画期的な一歩と言えるかもしれないが、中身のほうはどのくらい実現性があるのか、かなり疑問だ。
こういったことを解説するのは本ブログの目的ではないので、関心がある方は各自報道記事などをご参照いただきたい。重要なのは、アフガニスタンに対し米国が(国連決議を伴って)軍事介入(戦争)を仕掛けたのは2001年10月で、それからもう18年以上が経過しているということである。今、高校生の人たちはこの戦争が始まったときは生まれてさえいない。大学生の人たちも記憶がつく前の出来事だ。
今回参照する記事はこちら:
実例として参照するのは、書き出しの部分。
第1パラグラフ:
The US and the Taliban have signed a landmark peace agreement after nearly 20 years of war that could result in American troops leaving Afghanistan within 14 months.
青字で示した "that" は《関係代名詞》の主格で、先行詞は、形式的に見れば直前の "war" のように見えるかもしれないが、意味を考えるとそれでは意味が成立しないということがわかるだろう。先行詞は "a landmark peace agreement" である。
その関係代名詞節内で下線で示した《result in ~》は「~という結果になる」「結果として~する(になる)」という意味の句動詞だが、inが前置詞なので《~》の部分は名詞または動名詞となる。ここでは "leaving" という動名詞だ。
この動名詞の《意味上の主語》が、"leaving" の直前に置かれている "American troops" である(太字で示してある)。動名詞の意味上の主語は所有格で表すのが原則だが、この実例のように、所有格にせず普通の形の名詞を動名詞の直前に置くことが多い。
I'm sure of his[him] starting his own company.
(彼が自分の会社を始めることを私は確信している→彼はきっと自分で起業するよ)
I'm sure of the Korean film director('s) winning the competition.
(その韓国人映画監督がコンペティション部門で勝つことを私は確信している)
というわけで、 "result in American troops leaving Afghanistan within 14 months" は「その結果、米軍が14か月以内にアフガニスタンを去ることになる」という意味。
さらに、関係代名詞thatの直後にある "could" は、canの過去形ではなく《仮定法》がもとになった用法で、ここでは現在のことを言っている(仮定法過去が現在のことを述べるときに使われることを想起せよ)。日本語にするときは「~することができた」としてはならない。「~する可能性がある」としておくのが鉄板だ。
したがって、上記の文全体を日本語にすれば、「米国とタリバンは、20年近くの戦争のあと、米軍が14か月以内にアフガニスタンを去るという結果を生じさせる可能性のある画期的な和平合意に署名した」となる。
第2パラグラフ:
The deal also paves the way for talks between Afghans to end one of the longest-running conflicts in the world.
太字にした "for talks between Afghans" も《意味上の主語》。ここでは直後のto不定詞、"to end" の意味上の主語である。文意は「この合意は、アフガニスタン人の間での話し合いが、世界で最も長く続く紛争のひとつを終わらせる道を開くことにもなる」ということ。
つまり、この和平合意は、米軍の撤退と、アフガニスタン国内での紛争終結の話し合いという結果につながる(つながりうる)ものである、ということを、記事の書き出しの2パラグラフでコンパクトに述べているわけだ。
詳細な説明はこの後ろの部分に続いている。関心がある方は読んでみてほしい。高校生・大学受験生だとちょっと大変かもしれないが、新型コロナウイルス対策のための休校措置で、急に時間がありあまるほどあるのに家から外に出られないという状況になってしまった人にはちょうどよい「ちょっと難し目の課題」になるだろう。
参考書: