Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

完了不定詞、関係副詞の非制限用法、関係詞の先行詞が離れている場合(アンネ・フランクの同級生)【再掲】

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このエントリは、2019年5月にアップしたものの再掲である。英語における《過去》と《現在》に注目してご覧いただければと思う。

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今回の実例は、「歴史の生き証人」の活動についての文章から。

アンネ・フランクという少女の名前を聞いたことのない人はまずいないだろう。ドイツの都市フランクフルトのユダヤ人の家にアンネが生まれたのは1929年だったが、1933年1月にアドルフ・ヒトラーが首相となってからほどなく、一家はドイツを脱出してオランダのアムステルダムに逃れた。そこでアンネは幼稚園に上がり、モンテッソーリ学校で明るく楽しく子供時代を過ごしていたが、1939年9月にドイツがポーランドに侵攻して第二次世界大戦が始まると雲行きが変わる。

1940年5月にはドイツ軍がオランダに侵攻。それから1週間もしないうちにオランダはドイツ軍に占領されていた。以降、オランダのユダヤ人たちはじわじわと、ナチス・ドイツの「反ユダヤ主義」にさらされ、しめつけられていく。子供たちはユダヤ人学校に通わされることになり、アンネたちはモンテッソーリ学校には通えなくなった。

そしてついに、ドイツ支配下にある国・地域で「ユダヤ人狩り」(絶滅作戦)が始まると、アンネの父親は経営していた会社が入っている建物に「隠れ家」を準備して、元のように暮らせる日々まで潜伏して待つことにした。そして、1942年7月にアンネたちフランク家の人々と、その友人のファン・ペルス一家の人々など8人が、建物の外には一切出ず、それどころかそこに人が住んでいる気配を見せることもせずに潜伏生活を始めることになったのである。

そのような日々のなか、10代前半となったアンネが書いた日記は、これまでに世界の60の言語に翻訳され、3000万部以上が売れている

増補新訂版 アンネの日記 (文春文庫)

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完全版 アンネの日記 (文春文庫)

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彼女の日記は、何度か改訂され増補されるなどして、読み継がれつつ内容を充実させてきたが、2019年5月にCollected Worksとして英語の新訳が出たとのことで、今回見ているガーディアンの記事が出たわけだ。 

Anne Frank: The Collected Works

Anne Frank: The Collected Works

 

 記事はこちら: 

www.theguardian.com

 実例として見るのは書き出しの部分から: 

f:id:nofrills:20190529052915j:plain

2019年5月25日、the Guardian

Albert Gomes de Mesquita is one of the last people alive to have known Anne Frank in person.

文全体の述語動詞は "is" で、時制は《現在》。その文の中にある不定詞では、その1つ前の時、つまり《過去》のことを表すので、《完了不定詞(不定詞の完了形)》、つまり《to have + 過去分詞》が用いられている。

また、《~ is the last ... to do =》の構文は、「~は=する最後の…だ」、つまり「世界中の…がみな=するとして、~はその最後の…だ」ということで、比喩的に「~はまず絶対に=しない」ということを表すのが受験英語でのお約束だが(例文はすぐ下)、ここではその構文ではない。"one of the last people alive" は文字通り、「最後の存命者のひとり」で、その "people" を修飾する形容詞用法の不定詞が、上で説明したように完了不定詞になっているわけだ。文意は「アルバート・ゴメス・デ・メスクィタは、アンネ・フランクを直接知っていた最後の存命者のひとりである」。

 

受験英語でのお約束の場合の例文: 

  Tom is the last person to speak badly of his friends. 

  (トムは友人たちを悪く言う最後の人だ→トムはまず絶対に友人たちを悪く言ったりしない)

 

次の部分: 

He appears briefly in her diary as a fellow student at the Jewish Lyceum in Amsterdam, where she writes of him: “Albert de Mesquita came from the Montessori School and jumped a year. He’s really clever.”

太字で示した , where は、《関係副詞の非制限用法》だ。コンマを置いて、補足的に情報を言い足す場合に用いられる。

  I was born in a small town near Kyoto, where there was only one school. 

  (私は京都の近くの小さな町で生まれたが、そこには学校は1つしかなかった)

 

この関係副詞の先行詞は、少し離れているが、 "in her diary" である。《場所》を表す語句としては、もうひとつ、"at the Jewish Lyceum in Amsterdam" もあり、むしろそちらのほうが関係副詞との距離が近いのだが、そちらを先行詞として解釈しようとしても意味が通らない。このように、形式だけでなく意味も考えながら読む必要がある(だから意味を理解しない機械翻訳には完全には扱えない)のが英語の文である。

文意は、「彼は彼女の日記に、一瞬だけ、アムステルダムユダヤ人学校の同級生として登場するが、日記では彼女は彼について次のように書いている。『アルバート・ゴメス・デ・メスクィタはモンテッソーリ学校出身で、1学年飛び級している。彼は本当に頭がよい』」。

 

次回も、この記事の少し先の部分を取り上げてみることにしよう。

 

 

徹底例解ロイヤル英文法 改訂新版

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英文法解説

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