Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

やや長い文, 疑問詞節, 付帯状況のwith, 【ボキャビル】「~に関する」の意味を表すon (新型コロナウイルスと学校というシステム)

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今回の実例は、先週月曜日(5回前)に見た新型コロナウイルス禍の中の米国の学校制度についての論説記事より。

先週のうちに扱っておく予定だったのだが、香港国家安全維持法の件があるなどしたので遅くなった。

記事はこちら: 

www.usatoday.com

この論説の筆者についてなどは5回前に書いてあるのでそちらを参照されたい。

 

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2020年6月25日, USA Today

キャプチャ画像内の最初の文:  

An utter lack of leadership and guidance from Washington on how states and school districts should move forward with the virus continuing to circulate is a hurdle.

やや長い文だが、どれが主語でどれが述語動詞か、一読して構造が取れただろうか。

もちろん、こういう文では主語がどれかを考えるより、述語動詞を見つけることが先だが、それは最後から3語目の "is" だ。そこまでのだらだらと長いのが主語で、その中に文法項目が矢継ぎ早に出てきている。文の意味の骨格は「~はハードルである」で、その「~」の部分が情報量も多くて長いのだ。

そこだけ、スラッシュを入れて見てみよう。

An utter lack of ( leadership and guidance from Washington )  / on how states and school districts should move forward ( with the virus continuing to circulate )

まず、 "Washington" は*1、実用レベルの英語では、「ワシントンDCという都市」ではなく「合衆国連邦政府」の意味で用いられることが非常に多い。米国を外から見る場合、つまり国際ネタなら「米国政府」だし、米国内の内政ネタなら「連邦政府」だ*2

というわけで、最初のスラッシュの前までのセクションは、「連邦政府のリーダーシップとガイダンスの完全な欠如」という意味だと取れる。「リーダーシップ」はカタカナで定着しているが、「ガイダンス」はそうではなく、下線部和訳の場合は少々考えなければならないが、ざっと意味を取る場合は「ガイドすること、導くこと」という意味が頭の中でわかっていれば問題ない。なお、leadershipもguidanceも似たような意味の語で、こういうふうによく似た意味の語を2つandでつなぐという用語法は英語では非常によくある。

その後の部分、青字で示した "on" は、その "leadership and guidance" とつながっている。"leadership and guidance on ~" という形だ。このonは「~についての」の意味で、「~についての」といえはaboutと習ってきた人には非常な反発心みたいなのを覚えさせることもあるみたいで、私も自分が書いた英文について人から猛烈な勢いで「英語が間違っている」と指摘されて何かと思ったらこのonだった、ということが何度かある。何なのだろうね、これは。普通に英語で論説文などを見ていれば1日に1度は遭遇する用法のonである。

閑話休題。そのあと、太字で示した "how" 以下は《疑問詞節》。ここでは "should" が後続しているので「いかに~すべきか」という意味になる。

そしてその後、下線で示したのがおなじみ、《付帯状況のwith》だ。ここでは現在分詞の "continuing" を伴っている。 "continue to do ~" は「~し続ける」だから、"with the virus continuing to circulate" は「ウイルスがcirculateし続けている状態で」。

circulateという単語は、「サーキュレーター」という日本語で日常生活の中に入っている。あれは「空気を循環させる装置」だ。

circulateはcircle(円)の派生語で、「円を描く」というイメージと同時に、クレープの生地を焼くときみたいに「点から円になるように広げていく」というイメージを作るとよい。だから「循環する」「~を循環させる」(円状の軌道に乗る/乗せる)のほか、「広まる」「~を広げる」の意味がある。よく見かけるのは「真偽不明の情報が出回っている」というようなことを言う用法だ。

  Misleading claims circulate online ※BBC記事の見出し

  (事実を誤認させるような紛らわしい主張がネットで出回っている)

  Is Kim Jong-un dead? Rumours circulate as Chinese doctors sent to North Korea ※今年4月、北朝鮮金正恩氏の死亡説が流れたときのMetro記事の見出し

  (金正恩氏は死亡している? 中国の医師が北朝鮮に送られるなか、うわさが流布している)

今回の実例では、"with the virus circulating" となっているので「ウイルスがまだ市中に出回っている中」という意味になる。

文意としては「新型コロナウイルスがまだ終息しない状態で、各州や各学区がいかに進むべきかについて、連邦政府からリーダーシップも何もまったく示されていないことは、障害(ハードル)である」ということになる。

 

パラグラフの構成としては、今回見たこの部分は前置きで、本題はそのあとのBut以降だ。「AだがBだ」という場合、本題は「B」のほうだ。

「熱はないが、頭痛がひどい」と言う人に「熱がなくてよかった」と言うのは特別な文脈があるときで、何もなければ「頭痛がひどいんですか、お大事に」と言うだろう。

「腹が減っているが、カレーは食いたくない」と言われたら、「この人は腹が減っているんだ」と受け取らずに「この人はカレーは食いたくないんだ」と受け取って、「じゃあピザ食いに行こう」などと提案するだろう。ここで「腹が減ってるならカレーだな」などと言えば、「人の話、聞いてんのか?」ということになってしまう。

そういった基本的なことを常に意識しておくことで、文章を読むときに正確な読解が効率よくできるようになる。

 

※3040字

 

参考書:  

英文法解説

英文法解説

 

 


本稿、予約投稿の設定を間違えていて(日付を間違えていた)、7月6日の15:30にアップされるべきところ、18:30になってしまいました。すみませんでした。

 

*1:「ワシントン」という人の名前である場合もあるが、ここでは米国の首都ワシントンDCのことを言う場合に絞って解説する。

*2:米国は基本的に、ひとつひとつの「州」が行政の主体だが、「州」を超えて「米国」としてまとまってひとつの方針がある場合などが連邦政府の出番となる。米国内の政治は、その連邦政府の権限をどんどん縮小しようという考えの人々と、そうではない人々とのせめぎ合いという側面がある。

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