Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

#to不定詞が主語の文, to不定詞の意味上の主語(「to不定詞が主語になるときは形式主語のitを用いて、主語が長くなりすぎるのを防ぐ」ということについての実例いくつか)

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今回の実例は、Twitterから。

Twitterを英語で使っていれば、流れてくるものを漫然と眺めているだけで「おお」と思う例に遭遇することがけっこうある。そう思ったものには、「#英語 #実例 」というハッシュタグをつけている。

その「#英語 #実例 」のハッシュタグの中で、さらに細分化というか具体化したタグをつけているのが「#to不定詞が主語の文」である。

一般的に、《to不定詞》を主語にする場合は、主語が長くなる(頭でっかちになる)ことを避けるため、《形式主語》(仮主語)のitを使う、と教わる。教わるだけでなく実際にそうである。下記の2つの形では、下の文の形を見ることの方が圧倒的に多い。

  To purchase a new game console is absolutely necessary. 

     主語が長い

  → It is absolutely necessary to purchase a new game console.

  (新しいゲーム機を買うことが、絶対的に必要なんだ)

だから自分で英文を書くときは、下の形のように形式主語のitを使った構文にしておけば、間違いがない。つまり、誤読されることもないし、(ほかのところでミスがなければ)英語が下手すぎて文意が取れないと批判されることもないだろう。

しかしながら、すでに書かれている英文を読むときは、上の形、つまりto不定詞の句をそのまま主語にしてある形に遭遇することも、ないわけではない。

したがって、「to不定詞が主語になる場合は、常に、形式主語のitを用いた構文を使う」と思い込んで決めつけていると*1、英文を正しく読めなくなることがある。

例えば下記の大坂なおみさんのツイートにある文に含まれるto不定詞句は、「同じことが何度も何度も起きているのを見るために」ではなく、「同じことが何度も何度も起きているのを見ることは」という意味である。

さて、これだけでも十分に主語が長くて頭でっかちなのだが、実際に英語が使われる場を見ていると、このto不定詞に《意味上の主語》がついているケースにも遭遇する。さっきのゲーム機の例文で言うと: 

  For Seb to purchase a new game console is absolutely necessary. 

  → It is absolutely necessary for Seb to purchase a new game console.

  (セブにとって、新しいゲーム機を買うことは、絶対的に必要なんだ)

こんなふうに、主語がますます長くなっている例もまあまあよくあるのだ。

となると、「to不定詞を主語にしたいときは、頭でっかちにしないように、to不定詞は後回しにして、文の最初は形式主語のitで始める」というよくある説明も、少々疑ってよいのかな、という気がしてくるだろう。

実際、本当に使われている英語の中で見る、形式主語を使わずにto不定詞のままで主語にした文は、形式主語を使った文と、《文意》は特に違わないかもしれないが、印象が異なる。例えば、「まずはitで始めて……」なんて落ち着いて頭の中で組み立てていられないのかな、というように思うこともある。

例えばこの例: 

ツイートにつけてあるキャプチャ画像の中にあるこの文(ツイートではハイライトしてある): 

For it to happen over and over again was causing alarm at HQ.

これは、この記事のためにBBCの取材に応じた関係者の発言の一節なのだが、「それが何度も何度も起きていることは、本部で警鐘を起こしていた」という意味。

文の形も、内容的に「同じことが何度も繰り返されている」ということを問題視する発言であることも、上で見た大坂なおみさんの発言によく似ている。やはり、形式主語を使うなんていう悠長なことはやっていられない心理状態というものがあって、それを表す語句 (over and over) と、この構文とは、相性がよいのだろう。

 

さて、あと2つほど、実例を見ておこう。まずひとつ: 

これは第2文がto不定詞が主語の文で: 

For an EU Parliament Vice-President (Eva Kaili) to be arrested on charges of corruption is a big deal on its own.

……という具合で、to不定詞の意味上の主語のところが語数ばかり多くてかさばっているが、文意は「欧州議会の副議長(エヴァ・カイリ)が、汚職の容疑で逮捕されるということ」。

ちなみに、その次の文も、形式主語を使わずにthat節でいきなり文を書き始めている。

That it’s related to working on behalf of Qatar, on the weekend of World Cup quarter finals, tips it into different category altogether

この人の書くときの習慣だろうが、長い長い主語のあとに《コンマ》を置いてあるのも注目に値する(文法的にはダメな用法なので、受験のときなどは使わないように)。

 

さて、もうひとつ: 

サッカーの北アイルランド代表(男子)は、今回のワールドカップには出ておらず、つい数日前に監督が代わったばかりなのだが(マーティン・オニールが再任)、ベルファストテレグラフでは連日、サッカーの代表のことを取り上げている。

このフィードもそのひとつで、スティーヴン・デイヴィス選手の発言をそのまま引用符でくくって紹介している

その中に: 

for other people to recognise that and the impact I’ve had is very touching

これが、《to不定詞の意味上の主語》と《to不定詞の名詞的用法》が、"is" の主語になっている文だ、ということが、ツイート全体を一見しただけでわかった人は、相当読みなれた人だろう。

文意は「他の人々が、それを認識し、私が受けてきた衝撃を認識してくれることは、とてもありがたいことです」。

"the impact I've had" のところは《接触節》の構文になっている。わかりにくければ、関係代名詞のthatを補ってみればよいだろう。つまり: 

the impact (that) I’ve had 

 

※3750字

 

 

 

 

*1:そういうふうに決めつけていると、「文頭のto不定詞は例外なく副詞的用法なので、『~するために』と読んでおけば意味は取れる」といった雑でガサツで間違った言い切り解説に遭遇したときに、何の防御もなく取り込まれてしまうことになる。

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