今回の実例は、Twitterから。
(以下、肩書・敬称等省略)
日本の報道機関でも大きく報じられていると思うが、ドナルド・トランプの弾劾裁判は、予想されていたより早く先週末に結論が出され、共和党の反対により上院で必要な3分の2に届かず、米議会はトランプを1月6日の暴動煽動について、明白な証拠が山ほどあったにもかかわらず、有罪にすることはできなかった。下記BBCニュースのフィードに "43-57" とあるのは、「無罪が43票、有罪が57票」のことで、単純な過半数で事態を決定するシステムであれば「有罪」になっていた。隅から隅まで、政治的なことである。
US Senate votes 43-57 to acquit Donald Trump of single charge of impeachment related to Capitol riothttps://t.co/W5Fd99Y26i pic.twitter.com/aHUhSA1vwF
— BBC Breaking News (@BBCBreaking) 2021年2月13日
この様子を、私はTwitterでジャーナリストやアナリスト、研究者のフィードを追って見ていた。意味合いとしては、共和党から7人が「有罪」に投票したという事実は軽視できない。
The 7 GOP Senators who voted to Convict Trump:
— Joyce Karam (@Joyce_Karam) 2021年2月13日
1- Richard Burr
2- Bill Cassidy
3- Susan Collins
4- Lisa Murkowski
5- Mitt Romney
6- Ben Sasse
7- Pat Toomey
そうであっても、あれほど明白な証拠の数々がありながら、最終的な結論としてトランプを「有罪」にできず、すなわち「無罪」にしてしまったということは、好むと好まざるとにかかわらず、自分たち自身には何の権利もないのに一方的にアメリカ合衆国の政策にすべてが左右されてきた世界の多くの人々にとっては、まさに、呆れるよりないような事態である。これについては、アメリカ人ジャーナリスト(パレスチナ系)のアハメド・エルディン @ASE の下記の言葉に尽きると思う。
America just redefined and reduced its democracy, emboldening future Trumps to incite similar attacks.
— Ahmed Eldin | أحمد شهاب الدين (@ASE) 2021年2月13日
There can be no healing without accountability. The senate failed to hold Trump accountable bc Republicans fear his control over a more radical Republican base. #SHAME pic.twitter.com/nkCh7SvMaI
"future Trumps" と複数形になっているのは、これがドナルド・トランプ個人のことではなく、「将来出てくるトランプ型の人々」のことだからで、@ASEが言っているのはドナルド・トランプ個人がサイド大統領選に打って出るとかそういうことではなく、共和党そのものがトランプ的な何かの党になってしまった(のであろう)ということだ。
共和党の上院議員たちのふるまいの中でとりわけ注目されていたのが、上院院内総務という要職を務めるミッチ・マコネル(マコーネル)だった。彼はトランプは暴動を扇動したということを事実としてはっきり認識しており、それにもかかわらず、「退任後なので」というよくわからない理屈をつけて「無罪」に票を投じた。事態が起きたのは在任中であり、在任中の行為が問われているのだが。
McConnell making clear at some length he thinks Trump guilty but making some technical argument for not voting to convict.
— Laura Rozen (@lrozen) 2021年2月13日
said if Trump was still in office, he would have considered.
McConnell’s words and arguments are indistinguishable from a speech to convict. And yet.
— Jim Sciutto (@jimsciutto) 2021年2月13日
He calls the Capitol assault “terrorism” and says Trump is “morally and practically responsible”. How did he vote to acquit?
— Jim Sciutto (@jimsciutto) 2021年2月13日
Shorter McConnell. "He was guilty as hell which is why I was forced to acquit."
— Dan Murphy (@bungdan) 2021年2月13日
“These criminals were carrying his banners. It was obvious that only President Trump could end this. He was the only one that could. The President...did not do his job.”
— ian bremmer (@ianbremmer) 2021年2月13日
- Senate Minority Leader Mitch McConnell, on his vote of conscience to acquit Trump
Shorter McConnell:
— ian bremmer (@ianbremmer) 2021年2月13日
Watch what I do,
Not what I say.
上記の6つのツイートは、同じことを言うにも人が違うとどうなる、という点での好例だろう(イアン・ブレマーの1つ目のツイートは引用符を使ってマコネルの発言をそのまま書いているだけだが)。ダン・マーフィーとイアン・ブレマーが使っている "Shorter McConnell" というフレーズは、英語圏Twitterなどでよく見る表現で、直訳すれば「より短くしたマコネル発言」ということになるが、多くの場合批判や風刺の意図をこめて「長々と発言していたが、要するにマコネルはこういうことを言っているのだ」として極端に振り切った形で要約するときに使う。マーフィーは「マコネル曰く、『トランプは有罪だ、異論の余地などない。したがって私は無罪に投票する以外にはない』」、ブレマーは「マコネル曰く、『私の行動を見なさい。私の発言ではなく』」と、この事態をまとめているわけだ。
さて、当日のツイートはこんなところにして、議会の出したこの結論に対する米国の人々の反応についての短いツイートを見ておこう。報道系のツイートを見るときには知っておかないといけない約束事も確認できるので。
ABC News/Ipsos poll: 58% of Americans say that Donald Trump should have been convicted at his impeachment trial
— Jesse Rodriguez (@JesseRodriguez) 2021年2月15日
書き出し、コロン (:) までのところは、出典を示す。この場合は「ABCニュースとIpsosの世論調査によると」ということだ。位置が逆になり、下記のように、文尾に置かれることもある。
58% of Americans say that Donald Trump should have been convicted at his impeachment trial: ABC News/Ipsos poll
もうひとつ、このツイートのポイントは、一見してわかった方が大半ではないかと思うが(ここでぼーっと英文を眺めていただけの方は、どこが文法ポイントとなるか、もう一度英文を見直して推測してみてほしい。それ自体がよい訓練になるので)、《助動詞+完了形》である。
58% of Americans say that Donald Trump should have been convicted at his impeachment trial
《should + have + 過去分詞》で「~すべきであった」。ここはさらに、この完了形の部分が受動態になっているので《should have been + 過去分詞》で「~されるべきでああった」。「アメリカ人の58パーセントが、ドナルド・トランプは弾劾裁判で有罪とされるべきであったと述べている」という文意になる。
参考書:
The Madman Theory: Trump Takes On the World (English Edition)
- 作者:Sciutto, Jim
- 発売日: 2020/08/11
- メディア: Kindle版
Every Nation for Itself: What Happens When No One Leads the World (English Edition)
- 作者:Bremmer, Ian
- 発売日: 2012/05/01
- メディア: Kindle版
サムネ: