今回の実例は、前回の続きで、国連のInternational Day of Women and Girls in Science (2月11日)に際してのプレスリリースの最後の方、STEM分野(いわゆる理系)と女性・女子の関係について説明している部分を読んでみよう。
記事はこちら:
International Day of Women and Girls in Science | United Nations
前回は下記キャプチャ画像内の最初のパラグラフを見た。今回はその続き。
キャプチャ画像内2番目のパラグラフ:
Long-standing biases and gender stereotypes are steering girls and women away from science related fields.
書き出しの "Long-standing" は語と語をハイフンで結んだ《複合語》で、形容詞。「長く保たれている偏見と、ジェンダー類型が」。
太字で示したsteer ~ away from ...は、「熟語」といえるほどのものではないが、そこそこよく見る表現で、「~を…から遠い方向に進めさせる」。steerという単語は辞書を引いて確認しておいてほしい。自動車の「ハンドル」を英語ではsteering wheelと言うが、そのsteerである。
というわけでこの部分は「女性たちを、科学関連の分野から遠ざらせている」といった意味になる。
次:
As in the real world, the world on screen reflects similar biases—the 2015 Gender Bias Without Borders study by the Geena Davis Institute showed that of the onscreen characters with an identifiable STEM job, only 12 per cent were women.
先ほど見た第一文が《トピック文》で端的に結論を述べ、この文は《サポート文》でその具体的な中身を説明する、という構造になっている。
文頭の "As" は「~のように」で「リアル世界に見られるように」といった意味。
"the world on screen reflects similar biases" (「スクリーン上の世界も同じような偏見を反映している」)のあとのダッシュ (—) は、そのあとにちょっと長めのセンテンスを言い足すようにするときに用いられる。なお、「スクリーン上の世界」とはドラマや映画のことを言う。
そしてそのダッシュの後は、固有名詞のせいで長くなっているのだが、構造は実はシンプルだ。見やすくするために、固有名詞の部分を削れるだけ削って、薄いグレーで表示してみよう。
the 2015 Gender Bias Without Borders study by the Geena Davis Institute showed that of the onscreen characters with an identifiable STEM job, only 12 per cent were women.
つまり「Instituteによるstudyが、that以下のことを示している」という構造。
そのthat以下は:
of the onscreen characters with an identifiable STEM job, only 12 per cent were women.
前置されている "of ~" のフレーズは「~のうち」の意味で(「はっきりと同定できるSTEM系の仕事をしているドラマ等の登場人物のうち」)、本体はそのあと、"only 12 per cent were women" (「わずか12パーセントだけが女性であった」)。
その次のパラグラフは、キャプチャが切れてしまっているが、全文はこうだ:
In order to achieve full and equal access to and participation in science for women and girls, and further achieve gender equality and the empowerment of women and girls, the United Nations General Assembly adopted resolution A/RES/70/212 declaring 11 February as the International Day of Women and Girls in Science.
これはかなりだらだらと長く続いている文だが、構造はわりとシンプルで(このだらだら文を見ると「ああ、国連の文書だな」と思う)、すぐ上で見たのと同様に、固有名詞で長くなっている。
シンプルなんだけど、この構造を取るのはけっこう難しいかもしれない。
この構造をとるときの鍵は、文頭の "In order to do ~" を正確に把握できるかどうかで、それができるかどうかは《等位接続詞》andによる接続が正確に押さえられるかどうかにかかっている。つまり:
In order to achieve full and equal access to and participation in science for women and girls, and further achieve gender equality and the empowerment of women and girls
andが5個もあって、さすがに笑える。少し読みやすくしてみよう:
In order to achieve ( full and equal ) ( access to and participation in ) science for ( women and girls ), and further achieve { gender equality and the empowerment of ( women and girls ) }
"full and equal" は形容詞で、後続の "access to and participation in science" を修飾している。朱字の部分が、"access to science and participation in science" というように見えるかどうかが鍵。「完全で平等な、科学へのアクセスと参加」。
そのあとの "for women and girls" もこれにかかっていて、ここまでまとめると、「女性たちにとっての、完全で平等な、科学へのアクセスと参加」ということになる。
それが "In order to achieve" のachieveの目的語なので、「女性たちにとっての、完全で平等な、科学へのアクセスと参加を実現するために」。
さて、この "In order to" は、太字で示したように、もう一展開していて、 "In order to achieve ~ and further achieve ..." という構造になっている。
furtherはfarの比較級で、(《距離》ではなく)「さらに」と《程度》を言うときに使われる形*1。
そしてこの "further achieve" の目的語が、"gender equality and the empowerment of women and girls" である。これはandが2つもあって読む気をなくさせるかと思うが、大きな構造としては、「gender equality と the empowerment of women and girls」という形になっている。つまり「ジェンダーの平等と、女性・女子のエンパワメント」。
ここまでまとめると、「女性たちにとっての、完全で平等な、科学へのアクセスと参加を実現するために、および、さらにジェンダーの平等と、女性・女子のエンパワメントを実現するために」となる。
ここまでが副詞句で、そのあとが文の本体だ。
the United Nations General Assembly adopted resolution A/RES/70/212 declaring 11 February as the International Day of Women and Girls in Science.
"resolution A/RES/70/212" は国連用語で「決議第~号」みたいな番号の表記法なので、読むだけなら見るだけ見て流してもよいところ。「国連総会は決議A/RES/70/212を採択した」。
太字で示した "declaring" は《現在分詞》で、《後置修飾》。"resolution A/RES/70/212" を後ろから修飾している。よって「2月11日を『科学における女性と女児の国際デー』として宣言する決議A/RES/70/212」。
最後の方など少々読みづらかったかと思うが、かなり無味乾燥な文を読む練習にはなったのではないだろうか。
※3960字
*1:《距離》を言うときは farther となる。