Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

前置詞のbut, 接続詞のbut, 形式目的語, 引用符の使い方(ハリー王子のスピーチ)【再掲】

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このエントリは、2020年1月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例は報道記事の見出しから。

これまた前回の《前置詞+whom》と同じく、少し前の日本で流行っていてまだまだ支配的といえる力があるらしい「英文法不要論」の立場からは「教えなくてもいい英語」と扱われていたものだが、実際には、普通にがんがん使われている。

記事はこちら: 

www.bbc.com

トピックは、最近日本でも大注目の*1ハリー王子(サセックス公)の「引退」。ハリー王子は、日曜日(19日)に「引退」表明後初めて公の場でスピーチをおこない、その内容が報道されている。

 以下、まずはキャプチャ画像の英文をざっと見てもらいたい。文中に多用されている《引用符》は、ハリー王子の発言(スピーチの文言)そのものを一字一句たがわない形で引用しているということを示している。

f:id:nofrills:20200121032029p:plain

2020年1月20日, the BBC News

見出し:

No other option but to step back

太字にしたbutは《前置詞のbut》で、「~を除いては」の意味。

  Nobody but you can do it. 

  (きみ以外のだれも、それをすることはできない→それはきみにしかできない)

  There were nobody there but me and my dog. 

  (そこには私と私の犬以外、だれもいなかった→そこにいたのは私と私の犬だけだった)

  My cat eats anything but onions! 

  (うちの猫はタマネギ以外なら何でも食べちゃうんだよ)

  My cat eats nothing but quality fish! 

  (うちの猫は質の良い魚以外は何も食べないんだよ)

 

このbutについては、上述したように、「教えなくてもいい」論があるので、これを知らないまま大学受験に臨む人がいても不思議ではないが(でも問題集にはよく出ているので、知ってる人が多いと思う)、実際にはこのように、いわゆる「生きた英語」の中では多用されるものなので、見かけたときに覚えてしまおう。

"No other option but to step back" は、「ステップ・バックする(引退する)以外、ほかの選択肢がない」という意味だ。このフレーズごと覚えておくと応用がきくし、これでは覚えにくければ自分なりに言い換えたフレーズを覚えておくとよい。例えば: 

  No other option but to go to bed

  (寝る以外の選択肢はない)

  I had no other option but to eat the katsu-don the detective offered me. 

  (刑事さんが勧めてくれたかつ丼を食べる以外の選択肢は私にはなかった)

 

さて、一方で同じキャプチャ画像内にある下記のbutは、おなじみの《接続詞のbut》である。

The prince said he had found "the love and happiness that I had hoped for all my life" with Meghan, but he wanted to make it clear they were "not walking away"

 ここでは "The prince said (that) he had ..." という文があり、そのあとに but という《等位接続詞》が置かれて、"he wanted to make it clear..." というもうひとつの文が置かれている。「王子は~と述べたが、…ということをはっきりさせたがった」という意味である。

ここで、仮にbutの直後にthatがあり、"but that he wanted ..." という形になっていたならば、"he wanted ..." も "said" の目的語のthat節ということになり、「王子は~だが、…ということをはっきりさせたいと述べた」という意味になる*2。これは、誤訳が発生しやすいところなので注意。大学受験の下線部和訳なら1点か2点、あるいはそれ以上の減点になる。

 

さらに、下線部で示した個所、 "make it clear they were 'not walking away'" では《形式目的語のit》が使われている。また、発言そのものを記事で使っていることを明示するための引用符もこの個所には含まれている。

この《形式目的語》も、下記北村一真さんのツイートにあるように「文法不要論」の超過激派からは排斥されているのだが: 

《形式目的語》は実際にはめっちゃ頻出で、英国のニュースやラジオ番組、英国会下院の中継のようなものを「英語のシャワー」的にかけっぱなしにしておけば、「1~2行の会話文に」出てくるのを、1日に少なくとも3度か4度は耳にするはずだ。

もう忘れられているかもしれないが、英国の前の首相だったテリーザ・メイの口癖が "I would like to make it (very) clear that ..." (またはそれに類する表現)だった。そう言い切るわりに、ほとんど何もclearにならないのが、いわば「May節」だったのだが。

 

なお、ハリー王子のスピーチそのものを聞きたい人は下記からどうぞ。文面はこちらに文字起こしがある。

www.youtube.com

 

 

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*1:都内のコンビニの雑誌コーナーで見かけた女性週刊誌の表紙に、非常に毒々しいメガン(メーガン)disの言説のカケラを見て、思わず目を逸らしたんだけど。

*2:スピーチのスクリプトを見れば確認できるが、実際には王子はまさにそう述べているので、このBBC Newsの文章が不正確というか、thatを抜かしてしまったと考えられるのだが、このBBC Newsの文章をそのまま解釈する場合は、thatはないものとして解釈しなければならない。