今日もまた、引き続きイレギュラーな感じで。
イスラエルによるガザ地区攻撃が行われると、私が見る画面はガザ地区内からの #GazaUnderAttack のハッシュタグ*1での逐次報告――「ドローンの音だ」とか「爆発音が2度」とか、攻撃を受けた場所や死傷者数についての現地報道などの英語化――と攻撃をやめてほしいという叫びと、在外パレスチナ人による分析的なツイートや文脈の提示、あと、英語圏報道機関のフィードと合わせ、英語を使うイスラエル人や英語圏のユダヤ人からのイスラエル政府批判のツイートに埋め尽くされる。
そう、ユダヤ人だからといってイスラエル政府のやっていることを支持するとは限らないし*2、イスラエル国内にだって政府に批判的な人たちはいる。今回書いてきた、中東についての一連のエントリの最初のもので少し触れているが、 @BtSIsrael (Breaking the Silence Israel) のように、国の政策に対して異議を唱える組織的な活動もある。
それは、少しでも中東に関心を持っている人ならば、当然のこととして知っているはずなのだが、残念ながらそういう人ばかりではなく、「ユダヤ人なのにイスラエルを批判している」みたいな言説は、あまりにもありふれている。そもそも、今回のこの攻撃と、それに至る東エルサレムや西岸地区での暴力を行使したネタニヤフは、首相ではあるが、政権を維持できず何度も選挙をやるはめになっている(つまり、イスラエル国内にはネタニヤフを支持していない人々が相当数いる)のだが、なぜか、イスラエル国外の人々を含め「ユダヤ人」といえば同じような考え方をしていると思いこまれがちである。これは当事者のユダヤ人からみれば「差別」である(ユダヤ人が集団として何か方針を立てているという「反ユダヤ主義」の前提に直結している)。
では実際にどういうことがあるかというと、例えば下記:
Over 500 Israeli Jews have signed an open letter calling on the int'l community to put pressure on Israel to end the occupation and the siege, allow Palestinian refugees to return to their homeland, and reach a just and democratic solution.https://t.co/nGJAF2oZ2q
— Edo Konrad (@edokonrad) 2021年5月21日
ツイート主のエド・コンラッドさんは、 ツイートで記事を紹介している +972 Magazine の編集長である。+972 Magazineは、イスラエルの首都として国際的に認められているテルアビブ(テルアヴィヴ)を拠点とするイスラエル人でジューイッシュのジャーナリスト4人によって2010年に立ち上げられたオンライン・メディアで、イスラエル国内の左派 (Progressivesと呼ばれる人々) の立場からのニュースや論説をたくさん掲載している。「972」というのは国際電話の国コードで、イスラエルとパレスチナ(「パレスチナ自治区」と日本語では呼ばれてきた地域)が共有している。
コンラッドさんが紹介しているのは、この媒体に掲載された、イスラエル人たちが国際社会に対し、イスラエルのアパルトヘイトに介入するよう呼びかけている公開書簡についての記事である。
この記事を読んでいけるとよいのだが、記事を読む上で要求される前提知識の量がかなりあって、あくまで英語の実例を蓄積しているだけの当ブログが扱える範囲を軽く超えてしまっているので、この記事についてどうするかは考え中だ。
というわけで、コンラッドさんのツイートを見てみよう。
Over 500 Israeli Jews have signed an open letter calling on the int'l community to put pressure on Israel to end the occupation and the siege, allow Palestinian refugees to return to their homeland, and reach a just and democratic solution.
長い文だが、太字にしたandの接続に気づけば、文全体の構造をとるのはたやすいだろう。すなわち、「putし、allowし、reachする」という接続になっている。
これが、下線で示した《call on ~ to do ...》(「~に…するよう呼びかける」)の《to do ...》に入っている。
つまり、「国際社会に、putし、allowし、reachするよう呼びかける」の意味だ。
"calling on the int'l*3 community" の"calling" は《現在分詞》で、直前の "an open letter" を後ろから修飾している(後置修飾)。
というわけで、文全体は、「500人を超えるイスラエル国籍のユダヤ人が、国際社会に、putし、allowし、reachするよう呼びかける公開書簡に署名した」の意味。
あとは、put, allow, reachのところの意味のまとまり(センスグループ)をひとつひとつ押さえていけばよい。
そんなに難しい文法事項は入っていないので、ご自身で、必要な場合は辞書を参照しながら、読んでみてほしい。
こんなふうに、ユダヤ人の中でも考え方はひとつではないということを「言うまでもない、明々白々たる事実」にしていかねばならない。そういうことを地道にやっていかないと、本当に、いつ、「反ユダヤ主義」の思想が事態を決定づけるようになるか、わからない。
このユダヤ人は入植者としてパレスチナ人を「アラブ」と呼んで痛めつけているが、あのユダヤ人は「パレスチナの占領をやめよ」とデモを組織している、というのが、当たり前のあり方であり、また現実である。
中途半端かもしれないが、今回はこんなところで。
※2900字
*1:何年も前からずっと、おそらくTwitterでハッシュタグという仕組みができてからずっと使われているものだが、今回は荒らしが出たようで、 #GazaUnderAttak などスペルが違うものが林立してしまい、ガザ地区内部の人々は #Gaza_Under_Attack とアンダースコア(Twitterのハッシュタグでかなり最近になって対応された記号)を入れたハッシュタグを使っていた。
*2:例えば英国の映画監督のマイク・リーは、マンチェスター圏のジューイッシュのコミュニティーの出身だが、若いころにイスラエルの理念にひかれてキブツに行ったものの、現地で幻滅したという経験を持っている。数年前にガーディアンに掲載されたインタビューでそう語っていた。
*3:internationalと書くだけのスペース的・文字数的なゆとりがないときに使われる省略形。