今回の実例は、Twitterから。
たまたまのタイミングで、2021年にパレスチナ(ヨルダン川西岸地区: ガザ地区ではない方)でイスラエルの違法入植地絡みで起きた人権侵害・人権蹂躙、さらに殺人についての過去記事を、いつもの「【再掲】」枠でアップロードしている最中に、イスラエルの総選挙が行われた。イスラエルは基本的に複数政党の連立で政権ができるのだが、近年、政治的に「安定」せず、選挙をやって連立政権を組んで、その連立政権がポシャって、また選挙をやり、新たに連立政権が……ということを繰り返していて、とにかくしょっちゅう総選挙をしているのだが、そのたびに極右が勢いづいていくという感じである。
そして今回の総選挙では、前回の総選挙のときに汚職事件で政権の座から滑り落ちたネタニヤフが、何と復活した……ということばかりが強調されて伝えられているが、実際のところ、もっとやばい方面がいろいろとアレだということで、イスラエルのリベラルなユダヤ人やイスラエルの外に住んでいるユダヤ人の選挙期間中の言葉は、実に悲痛なものだった。それと一緒に、パレスチナに対するとんでもない暴力の報告なども流れてくるタイムラインは、破壊しかないような有様だった。
その中でもきっと、極右を支持する人々は、極右に希望の光を見ているのだろう。絶望的である。(と書くと「勧善懲悪思想かよ」と嘲笑・冷笑されるんだろうな、というのが今の日本語圏についての身構えになるかと思うが、私は「どちらが善でどちらが悪」とか、そんなことは言っていない。)
人々が極右に希望の光を見ているのはもちろんイスラエルだけではない。
で、英国を拠点とする(というか英国内の)ジューイッシュのメディア2つの姿勢というか世界の見方の違いが明確になるツイートが流れてきた。
ツイート主のフェラーさんはJewish Newsの編集長、フェラーさんが参照しているのはJewish Chronicleの発言である。
Today's @JewishChron editorial in nine words:
— Richard Ferrer 🗞 (@richferrer) 2022年11月3日
"Fascists should only be condemned when they threaten Jews." pic.twitter.com/SOZ06MkJdQ
フェラーさんの発言は、「今日のジューイッシュ・クロニクルの社説を9語でまとめるとこうなる」としたうえで:
Fascists should only be condemned when they threaten Jews.
《助動詞》のshouldは《当然》を表し、「~して当然である」「~すべきだ」の意味になる(結果的に同じ「~すべきだ」という日本語になる《義務》とはちょっと意味が違うので注意)。
それに続く部分が《受動態》になっているので、「~されて当然である」「~されるべきだ」。
そして、この場合はonlyとwhenの節があるので、「…の場合においてのみ、~されるべきだ」という意味の構文になる。
文意は「ファシストは、ユダヤ人を脅かす場合においてのみ、非難されるべきである」。
つまり、ファシストが存在を脅かしているのがユダヤ人でなければ、非難などしなくてもよい、とジューイッシュ・クロニクルは言っている、とフェラーさんは批判しているのである。
では、ジューイッシュ・クロニクルはどう言っているのかというと、これがまた語数ばかり多くて回りくどいweasel wordsで、だからこそフェラーさんのように端的にまとめたくなるのだが、まあ、どんなに取り繕ったところで言ってることはそうだよね、という内容である。
【書きかけ】
で、実際にどうなのかというと、国際報道で派手に取り上げられているのは、今回の選挙で躍進した極右ではなく、連立政権の主役となる、ド派手な復活劇を遂げた(「しぶとい」とも言う)ネタニヤフだ。ではそのネタニヤフが、西洋諸国でいう「極右ではなく、ちゃんとした保守の政治家らしいふるまい」をしているかどうかというと:
1) ハンガリーのオルバン首相となれ合い
2) イタリアのメローニ首相ときゃっきゃうふふ
……という様子を世界に見せつけているわけである。
JewishNewsUKのフェラーさんの言っていることは、こういう現実を踏まえて出てくるわけである。