Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

否定の命令文, 動名詞の意味上の主語, 同格のthat, など(労働者階級の女性政治家から、労働者階級の女性サッカー解説者への連帯のメッセージ)

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今回の実例はTwitterから。

前回取り上げたアレックス・スコットのツイートには、彼女と同じく労働者階級のバックグラウンドを有する人々から共感や感謝を示すリプライが多くついている。今回、実例として見るのはそのひとつ。

投稿者のアンジェラ・レイナーは、労働党所属の国会議員(下院議員)。1980年生まれで、1984年生まれのアレックス・スコットとはほぼ同世代の女性である。マンチェスターのエリアにあるストックポートという街の出身で、16歳で子供を産んだために学校を中退し(そのときの子供の父親とはのちに結婚している)、後に専門学校(職業訓練校)で手話を学んでソーシャル・ケア・ワーカーの資格を取り、地元の議会で働いているときに労組の活動に携わったことから、労働党との接点を持つようになり、2014年に下院議員として初当選した。2016年には当時の労働党党首ジェレミー・コービンによって「影の内閣」の一員(教育大臣)に抜擢され、メディアでの露出も多くなり、同時にコンサルでもついたのかルックスにもこだわるようになって*1、私は「写真を見るたびに髪の縦ロールが盛り盛りになっていく人」という印象があるのだが、明らかに、「次世代の労働党を担う若手」の1人として存在感を発揮しようとしている(というか実際に発揮している)政治家である。たぶん、今の労働党では最左翼に位置する人で、最近はキーア・スターマー党首によって党の要職から外されてニュースになり、そのすぐ後に別の要職につけられていたりする。

というわけで、このツイートをしたアンジェラ・レイナーも、アレックス・スコット同様、スコットの発音に文句をつけたディグビー・ジョーンズ卿パブリックスクール出のビジネスエリートで、1955年生まれと高齢の男性)とは対極的なバックグラウンドを有する。

ツイートの文面、最初の文: 

Solidarity Alex you are amazing and an inspiration.

これは、くだけた表記法になっていて、コンマが抜けている。それを補うと: 

Solidarity, Alex, you are amazing and an inspiration.

"solidarity" は「連帯を」という意味で、左翼の人が使う/右翼の人はあまり使わない表現。

 

第2文: 

Never change and never try to tone down your accent - you being on our TVs every night sends such an inspirational message to millions of kids that they can achieve their dreams and is doing more than the haters ever could

これがちょっと長いのだが、ハイフン(《ダッシュ》の代用)の前後で大きく区切ればよい。

ハイフンの前の部分: 

Never change and never try to tone down your accent

前回のアレックス・スコットのツイートでも使われていた、《否定の命令文》である。文意は「決して変わらないで、決してあなたの話し方をトーンダウンしようとしないでください」

ハイフンの後の部分: 

you being on our TVs every night sends such an inspirational message to millions of kids that they can achieve their dreams and is doing more than the haters ever could

※書きかけ。数時間内に書きます。

これで1文なのだが、まず、主語と述語動詞が把握できるかどうか。

この下に

答えを

書くので

まずは

自分で

考えて

みてほしい。

 

答え: 青字が主語、朱字が述語動詞である。

you being on our TVs every night sends such an inspirational message to millions of kids that they can achieve their dreams and is doing more than the haters ever could

もっと言えば、述語動詞の "sends" の前にある句全体が文の主語だ。

これの構造をみてみよう。

you being on our TVs every night

青字の "being" は《動名詞》で、太字で示した "you" はその《意味上の主語》。youの代わりにyourが用いられることもある。というわけで "you being ~" の意味は「あなたが~であること」。

ここでは「あなたが毎晩、私たちの(見る)テレビに出ていること」という意味になる。

続いて、述語動詞から後の部分: 

... sends such an inspirational message ( to millions of kids ) that they can achieve their dreams and is doing more than the haters ever could

まず大きな構造として、《等位接続詞》 のandが作る構造がある。つまり、《主語 sends ... and is doing ...》というふうになっている。

そしてその前半部分(sendsの目的語の部分)に、《同格のthat》が入っている。少々見て取りにくいのだが、《an inspirational message that ...》で「…というinspirationalなメッセージ」という意味である。さらにここでは、messageに "to millions of kids" という修飾語句がついていて、「何百万人という子供たちに対する、…というinspirationalなメッセージ」の意味になっている。

"such a ~" は「そのような~」「そんな~」「そんなにも~」が直訳だが、日本語の「そんな~」とは似てはいるものの完全に一致はしないので、なかなか扱いが難しい。詳細は辞書を読み込んでみてほしい。 ここでは「非常にinspirationalなメッセージ」という意味にとらえることができる。

 

 次。andから後の部分: 

and is doing more than the haters ever could

ああ、ここ、読み流してしまっていたが今気づいた。《関係代名詞》のthanだ(「関係代名詞的に用いられるthan」とも言う)。解説大変だからいやだ。

……とかいってないで書くが、江川泰一郎『英文法解説』には次のようにある (p. 89)。

than 次のような構文に使われるが、(asの場合と同様に)接続詞と見てもよい。

  The next war will be more cruel than can be imagined. (= than we can imagine.) 

江川の例文は主格の例だが、今回見ている実例のは目的格だ。 頭の中では次のように考えるとわかりやすいと思う。(これは別に、「whatが省略されている」というわけではない。)

  more than the haters ever could

  = more than (what) the haters ever could

さらにここには《強意》の副詞everや仮定法由来のcouldもあってなかなかに難しいのだが、というか直訳しろと言われたら私は泣くレベルで難しいのだが、"is doing..."から後ろの意味は「hatersがやろうと思ってもできないくらいのことをしている」(意訳)となる。

この "haters" は英語圏でも口語、俗語に属するが(特に下品ではない)、日本語でいえば「アンチ」の語感だろう。「あなたがテレビに毎日出ていることは、アンチがやろうと思ってもできないくらいのことをしている」。

一種ネットスラング的なものだが、"Haters gonna hate." という表現を覚えておくと便利だ。意味は「こっちが何をしたってアンチは絶対に褒めないから」みたいな感じ。テイラー・スウィフトの下記の歌のサビに出てくるのがとても印象的である。


www.youtube.com

 

f:id:nofrills:20210803234456p:plain

https://twitter.com/AngelaRayner/status/1421763234558849027


 

 

 

 

*1:これは多くの政治家が当たり前のように行っていることである。日本でも知られている例としては米国のヒラリー・クリントン。政界入り前は「切れ者だが、もっさりした堅物」のようなイメージだった彼女は、眼鏡を外して髪型を変え、華やかな印象を与える女性政治家となった。

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