Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

東エルサレム、シェイク・ジャラー地区で起きていること: Part 1 (動名詞と現在分詞, if節のない仮定法, 構造が取りづらい長い文, など)

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今回は、東エルサレムのシェイク・ジャラー地区で何が行われているのかについての解説を、Twitterの連続投稿(スレッド)で読んでみよう。

シェイク・ジャラー地区については、下記2件のエントリで本題に入る前の前置きの部分で少しだけだが書いてあるので、まずはそれをご参照いただきたい。これだけでは予備知識として不十分かもしれないが……。

hoarding-examples.hatenablog.jp

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シェイク・ジャラー地区で起きていることを簡単に説明すると、パレスチナ人(イスラエルでは「アラブ系イスラエル人」と呼ぶが、実際には彼らは民族的にアラブ人だけとは限らないので、イスラエルによるこの呼称の時点で大きくゆがめられている)の暮らす家を、ユダヤ教徒イスラエル人入植者が乗っ取り、元からの住民を追い出す、ということが起きている。イスラエルはこれを「土地紛争 (land dispute)」と位置付け、パレスチナ人(アラブ人)の追放、すなわち民族浄化 (エスニック・クレンジング: ethnic cleansing) であるということを事実として認めようとしてこなかった。その点に関して司法が判断を示すという大きな動きがあったのだが、その結果は、パレスチナ人にとってはまさに落胆としか言いようのないものだった。このことを、在米の非営利組織で、パレスチナおよび中東についての情報をジャーナリストなどに提供することを目的として活動しているIMEU (the Institute for Middle East Understanding) のアカウントが連続ツイートで解説している。

文頭の "THREAD: " は「ここから連続ツイート(スレッド)を始めます」という表示。英語圏では糸巻きの絵文字が使われることもある(糸 = thread)。 

Israel’s Attorney General essentially just paved the way for ethnic cleansing by declining to intervene in the Sheikh Jarrah case

太字で示した部分は《前置詞+動名詞》 で、ここでは《by doing》の形で「~することによって」。ここまでの文意は「イスラエルの司法長官は、シェイク・ジャラー地区の件について介入するのを拒むことによって、民族浄化への道をひらいてしまったといえる」。

ツイートの文の後半: 

..., giving Israeli settlers a green-light to forcibly displace Palestinians in the Jerusalem neighborhood.

下線で示した "giving" は《現在分詞》で、これは《分詞構文》。ここまでの文に補足的に情報を加えている。"give ~ a green-light" は成句で「~に青信号を与える」、つまり「~にゴーサインを出す」。「エルサレムの街区のパレスチナ人を強制的に立ち退かせるための青信号を、イスラエル人入植者に与えた」という意味。

このツイートは、スレッドの最初だから、これから具体的に説明していくことについて、端的に、また抽象的に、結論だけを述べているので(英語の文章を書くときの《トピック文とサポート文》の構造の《トピック文》にあたる)、これだけ読んでも内容が具体的にはつかめないかもしれない。その場合も、ここで臆することなく、この先を読んでいってほしい。そうすれば具体的な説明があるので。

続いて、スレッドの2つ目を読んでみよう。

280字という文字数をほぼ上限まで使い切った*1ツイート全体で1つの文という、《やや長い文》だが、構造は比較的単純だ。まず、《等位接続詞》のbut(下記朱字)で大きく区切り、その前と後で分けて読めばいい。

The Attorney General could have stepped in and regarded the case as a public policy issue, but instead is refusing to get involved, implicitly accepting the argument that what’s happening in Jerusalem is a “real estate issue” instead of ethnic cleansing and apartheid.

butの前の部分で、太字で示した部分は《if節のない仮定法》の形で、《仮定法過去完了》だ。また、下線で示した "and" は、"stepped" と "regarded" をつないでおり、ここは「stepし、regardすることもできたはずだ」という構造になっている。

ここまで文意をとると、「司法長官は、介入し、この件を公共政策の問題とみなすこともできたはずだ」。

そしてこのやや長い文を2つに分ける "but" を挟んで、後半は: 

..., but instead is refusing to get involved, implicitly accepting the argument that what’s happening in Jerusalem is a “real estate issue” instead of ethnic cleansing and apartheid.

これは "is" がわかりづらいかもしれない。というか、「このisの主語は何だろうか」という問題。"instead" は副詞だから(意味は「そうではなく」「そうせずに」)動詞の主語にはなりえない。だがそうなるとこのisは主語が見当たらないisだということになってしまう。一方で、英語では主語なしということは基本的にないわけで、つまりここは「主語なし」ではなく「主語が省略されている」という判断ができるだろう。(できない場合は修行が足りていないだけなので、修行をがんばってください。)

ここで等位接続詞の "but" に戻ると、この長たらしい文は次のような構造になっていることが見えるだろう。

The Attorney General could have stepped in and regarded the case as a public policy issue, but instead is refusing to get involved... 

つまり、主語は "The Attorney General" で、これに対する述語動詞が "could have..." の仮定法過去完了と、"is refusing" という直接法の現在進行形なのである。

わかりづらい場合は、次のように単語を置き換えたり構造を単純化するなどして、自分にわかりやすい例文を考えてみてほしい。こうやって例文を考えることで文法項目がいつか自分で使える知識となるので。

  Andy could have quit playing at that time, but instead is returning to the court. 

  (アンディはそのとき競技をやめてしまうこともありえたのだが、実際にはそうせずに、競技に復帰しようとしている)

さて、そのあとの部分: 

..., but instead is refusing to get involved, implicitly accepting the argument that what’s happening in Jerusalem is a “real estate issue” instead of ethnic cleansing and apartheid.

ここで太字で示した "accepting" は《現在分詞》でここもまた《分詞構文》。だからこの読みづらい箇所*2をもうちょっと読みやすくリライトすると、The Attorney General is refusing to get involved, and implicitly accepts the argument ... ということになる。

ここで既に当ブログ既定上限文字数の4000字を超過してしまったのでこの先足早に行くと、下線で示した "that" は《同格》の接続詞thatで、《the argument that ...》で「…という議論」。

そのあとは《関係代名詞のwhat》が出てきて「エルサレムで起きていることは、エスニック・クレンジングとアパルトヘイト(の問題)ではなく、『不動産の問題』なのであるという議論」というのがこの部分の意味。

つまり、イスラエルの司法長官は、シェイク・ジャラー地区で進行中の、入植者によるパレスチナ人の住居の乗っ取りという問題について、司法として「民族浄化」と位置付けることを拒み、これは「土地紛争」なのだという議論を受け入れた、ということである。

IMEUの連ツイはまだこの先6件あるので、このあとは次回に回すことにしよう。少しペースを上げていかないとまた終わらないね。

 

 

 

*1:コピペで確認したところ、残り12文字。

*2:読みづらくはあるが、このくらいは読めるようにしておかないと、実務では使い物にならない程度の英語力にしかならないだろう。

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