Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

連鎖関係代名詞(マッチデイ・プログラムの冨安健洋選手インタビュー)

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今回の実例は、スポーツ関連のメディアのインタビューから。

今回の「スポーツ関連のメディア」というのは、報道機関ではなく、イングランドのサッカークラブが試合の日に販売しているプログラム(英語で "matchday programme" という)である。試合会場か、クラブの通販で購入でき、通販でも購入できないバックナンバーは試合の日にスタジアム周辺に立つ屋台や、各種古書市、eBayなどのネット上のフリーマーケットで探すことになるので、欲しいものがあったら買っておくのが上策だ。

で、今回みる号は、日本からの購入が増えるかもしれないので、先にリンクをはっておこう

programme.arsenal.com

ここであれこれ表紙を眺めながら、お買い物気分で、 "ARSENAL V TOTTENHAM HOTSPUR | SUNDAY, SEPTEMBER 26, 2021" を探してみてほしい(直接リンクが必要ならこちらへどうぞ)。本体価格が£3.50で、英国内送料込みで£4.99で通販されている。日本への送料はちょっと見たくらいではわからないが、速達扱いにしない場合はそんなに高くはならないと思う。一緒に岩淵選手表紙の女子チームのプログラムを買っても送料はそんなに上がらないのではないか。

というわけで、そう、9月26日(日)にアーセナルのホーム、エミレーツ・スタジアムで行われた "NLD" ことNorth London Derbyでのマッチデイ・プログラムが、今回の実例である。

NLDは、北ロンドンを拠点とする2つのクラブ、アーセナルトッテナムの試合のこと。イングランドのサッカー好きは自分の地元のクラブをサポートするのが基本だが、この2つのクラブの地域は本当に文字通りに隣接していて(だからこそ「ダービー」と呼ばれるライバル関係になる)、NLDのときはどちらのクラブからも観客は歩いて移動が可能なくらいの距離感である(ただしロンドンの人は基本的によく歩くので、徒歩1時間くらいなら余裕で「歩ける距離」と言う)。Twitterでは、アーセナルのホームでやるときは #ARSTOT, あちらのホームでやるときは #TOTARS のハッシュタグが使われる。

今回のNLDのマッチデイ・プログラムは、現場から @saru_gooner さんがツイートしておられた通り: 

この試合、冨安選手の壁っぷりはすばらしく、Twitterで見てたら「おお、アーセナルにディフェンスが戻ってきた。それもすばらしいディフェンスが」感があふれていて感涙ものだった。

試合はアーセナルが3-1でトッテナムに快勝し、試合後にサポーターが選んだMOTM (man of the match: MOMとも) は……

というわけで、今回の実例は、 @saru_gooner さんが最初にツイートしてくれたマッチデイ・プログラムの冨安特集の書き出しにある一節から。

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https://twitter.com/saru_gooner/status/1442137957369094147

《連鎖関係代名詞》みっけ。

... the start of what he hopes is a long and happy love affair with the Arsenal fanbase

「連鎖関係代名詞」という用語が一般的な文法説明で使われるようになったのはかなり最近のことで、聞いたこともないという人がかなり多いと思うが、その場合、妙に小難しい文法用語に邪魔されて重要な中身が頭に入ってこないようならば、方便として、「関係代名詞の節の中に《挿入》が入っている」と考えてもよい。目的は文法用語を覚えること、文法用語を使いこなすことではなく、とにかく読めるようにすること、書いたり口頭で述べたりするときに使えるようにすることであるのだから。

シンプルな例を挙げると: 

  what is the most important 「最も重要なこと」

  what I think is the most important 「私が最も重要だと考えること」

こういうふうになっている。

これはそれぞれ、例えば: 

  Honesty is the most important thing.*1 

  I think (that) honesty is the most important thing. 

  Honesty, I think, is the most important thing. 

  Honesty is, I think, the most important thing. 

……といった文例を頭の中で想起すれば、理解も納得もすんなりできるだろう。

ここで挿入されうるのは、S+Vの構造を持つ短い語群だが、このVになるのはthink, believeなど「思う、考える」系の語や、say, describe, writeなど「言う、言葉にして表す」系の語、know, recogniseなど「知っている、把握している、知覚・認識する」系の語である。

  What she believed was the cause of the disease is now disputed. 

上記のように、この《連鎖関係代名詞》の構造を含む文は、1文のなかに動詞が3つも出てきたりして読解不能なように見えたりもするが、落ち着いて構造をほどいていって、必要なようにカッコやスラッシュで区切ればよい。つまり: 

  What  ( she believed ) was the cause of the disease / is now disputed. 

こういう構造を見抜くことが重要だ。なおこの例文は、今私が考えたものだが、時制もちょっとめんどくさい例文しか思いつかなかったのでその点は申し訳ない。文意は「当時、彼女がこの病の原因であると信じていたものについては、現在では異論が出ている」である。というか、そういう意味を表しているつもりである(自分で書いた英文の意味を自分で日本語にするというのは、かなりの拷問で、うまくいくという保証もないので失敗しているかもしれない。その場合はご指摘ください)。

というわけで、今回の実例: 

... the start of what he hopes is a long and happy love affair with the Arsenal fanbase

下線で示した部分は、

what ( he hopes ) is a long and happy love affair with the Arsenal fanbase

と読むと、すっと構造が取れる。 "what is a long and happy love affair with the Arsenal fanbase" は「アーセナルのファンベースとの、長く幸せな恋愛関係であるもの」で、そこに "he hopes" が挿入されていると読み取ればよい。直訳すれば、この部分は「彼が、アーセナルのファンベースとの長く幸せな恋愛関係になると期待しているもの」となる。

この夏に新たにアーセナルに加わった冨安健洋選手に、サポーター向けの媒体であるマッチデイ・プログラムがロング・インタビューを行い、そのインタビュー記事が掲載された試合で、冨安選手が大活躍したという、何か漫画みたいな展開だが(さらに言えば、冨安選手は夏の時点ではトッテナムに行く可能性が取りざたされていたわけで……)、漫画ではなく現実である。

マッチデイ・プログラムの長文記事は、試合が終わって少しするとウェブにアップされるので今回も待っていたところ、火曜日にアップされていた。下記。誰でも全文読めますのでぜひ。

www.arsenal.com

急いで書いて印刷に回したものなのか、最初のパラグラフで下記のようなto抜けというミスがあるけど、どう見ても単純ミスなので、「本当はこういう構文もあるのでは」などと気にしないで読めばいい。

f:id:nofrills:20210928203347p:plain

https://www.arsenal.com/news/ive-never-heard-sound-it

マッチデイ・プログラムのような媒体に限らず、新聞でも雑誌でもなんでもそうなんだけど、こういうふうに読者に読ませるための文章術みたいなのが駆使されている文章では、書き出し部分がやたらと読みづらかったりすることもある。特にこの媒体ではこれまでのことを知っているファンが想定読者だから、今初めてこのクラブについて知ろうと思ったという人にはここに書かれているのは「知らんがな」と言いたくなるようなことかもしれないが、そこでくじけないでほしい。ぶっちゃけ、そこは飛ばして読んでもかまわないところだから。

飛ばせないのは、第4パラグラフ以降、"Tomi, as he's known around the club, had arrived from Italian side Bologna just over a week earlier, on transfer deadline day." で始まるところから後である。

(「とみやす」は4音節あって英語圏の感覚では長すぎるので、2音節の「とみ」が普段の呼び名になっているようだ。Tommyという英語名にも通じるし、呼ぶ側も呼びやすそう。)

 

「はい、連鎖関係代名詞ですね」だけで済むかと思ったら4000字を軽く超えてしまったのでこのへんで。

 

あ、そうだ、NLD (North London Derby) については @gooner_saru さんの解説をぜひ! 

www.youtube.com

www.youtube.com


※4450字

 

 

次回は↓これ↓っすね……比較級みっけ。今のうちに仕込んでおこう。

ฅ^Φ ω Φ^ฅ

 

 

 

*1:余談だが、こういう当たり前のことを言ういかにもな英語参考書っぽい例文が、参考書の中だから書かれている文になってしまっている日本語の報道やネットの言語状況は、実に憂慮すべきものだと思う。

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