今回の実例は、Twitterから。
前回、9月26日(日)の「北ロンドン・ダービー North London Derby (NLD)」での、アーセナルのDF冨安健洋選手の活躍っぷりが現地でめっちゃ高く評価されていることについて触れたが、今回はその活躍っぷりを数値で見るツイートから。
Takehiro Tomiyasu had more touches (67) and made more ball recoveries (8) than any other Arsenal player against Tottenham.
— Squawka Football (@Squawka) 2021年9月26日
He is yet to be dribbled past by an opponent in the Premier League this season. pic.twitter.com/hKY5AqxUVq
(as quote retweeted by @saru_gooner)
@Squawkaはサッカー情報サイトのアカウントで、UKを拠点としている(使っているデータはOptaからのライセンス)。イングランドのプレミアリーグだけでなく、欧州各国のトップリーグや、UEFAやFIFAの国際試合・国際大会についてのニュースやスタッツをTwitterで見ようとすると、必ず目にするアカウントのひとつである。
今回はこのツイート本文を見ていこう。
第1文:
Takehiro Tomiyasu had more touches (67) and made more ball recoveries (8) than any other Arsenal player against Tottenham.
《比較級+than+any other ~》の構文で、内容的には最上級の内容を表す。ここでは《比較級》のところが "had more touches" と "made more ball recoveries" の2つがandで結ばれた意味のかたまりになっている。
また、 "any other" のあとはplayersではなく単数形のplayerで、ここは主語が単数なのでそれと合わせるのが自然だからこうなっているのだろう。
文意は、直訳すれば、「冨安健洋は、トッテナムに対し、他のどのアーセナルのプレイヤーよりも多くのタッチ数を持ち(67回)、多くのリカバリーをした(8回)」となる。
第2文:
He is yet to be dribbled past by an opponent in the Premier League this season.
太字にした部分は《be yet to do ~》の形、下線で示した部分は《受動態》で、"to be dribbled" は《to不定詞の受動態》である。
《be yet to do ~》は、以前説明したことがあると思うが、《be+to不定詞》がベースにある構文で、意味としては、直訳では「まだこれから~する」、つまり、普通の言い方をすれば「現時点ではまだ~していない」ということになる。
ここでは《to do ~》の部分が受動態なので、「まだこれから~される」=「まだ~されていない」。
dribble past ~は「ドリブルで~を抜く」で、be dribbled pastはこれが受動態になったものなので「ドリブルで抜かれる」。
つまり文意は、「彼は、今シーズン、プレミアリーグにおいて、まだ対戦相手にドリブルで抜かれていない」。
全部止めてるんだ。すごい。
壁だ。
以上、どちらの文も、サッカーキッズやサッカー青年はぜひ、暗記例文として活用していただきたい。紙に書いて壁に貼って一日に何度か眺め、ここで解説したような構造を踏まえて読み、続いて暗誦し……ということをやると、自分で使える構文として身につく。
冨安選手がチームに溶け込めている理由のひとつは、確実に、英語で話ができることだ。日本のメディアが過剰に「流暢」「英語力を披露」「地元のファンも感嘆」とか言って騒ぎ立てるのは、あいかわらず頭のネジがゆるいというか、20年前から何も変わってねぇなという感じで見るとうんざりするのだが、冨安選手個人が努力を重ねてきた結果がこれだ。彼が小学生・中学生・高校生だったころは既に日本のサッカー界で語学力、特にどこでも通じる*1英語力の重要性について、現役のプレイヤーたちが力説していたと思うが、それにしても、「要するに通じればいいんだろ」程度のゆるい構えでは、ここまでしゃべれるようにはならないから、相当がんばったはずだ。
🎙️ 𝗙𝗶𝗿𝘀𝘁 𝗶𝗻𝘁𝗲𝗿𝘃𝗶𝗲𝘄: Takehiro Tomiyasu
— Arsenal (@Arsenal) 2021年9月14日
✍️ Joining The Arsenal
🏆 Playing in the @PremierLeague
🤩 Fulfilling a childhood dream
📺 Don't miss part one of our exclusive interview with Tomi now! 👇 pic.twitter.com/KO14TC8QGZ
単語の羅列ではなく、ちゃんと文を構成し、普通に「通じる英語」を使っている。仮定法も関係詞・接触節も完璧に使いこなしている。中高生のサッカーキッズは、サッカーだけでなく英語でも冨安選手をお手本にしてがんばっていってほしい。
今回ちょっと短いけれどこんなところで。
※2330字
*1:欧州でも、事実上の共通語は英語だ。