Hoarding Examples (英語例文等集積所)

いわゆる「学校英語」が、「生きた英語」の中に現れている実例を、淡々とクリップするよ

【再掲】悲報の際の定型表現, 感情の原因を表すto不定詞, 《国》を受ける代名詞のshe, など(サー・ショーン・コネリー死去)

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このエントリは、2020年11月にアップしたものの再掲である。

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今回の実例はTwitterに連続投稿された、かなりフォーマルな文面から。

日本でも大きく報じられている通り、10月の終わりに俳優のショーン・コネリーが90歳で亡くなったことが公表された。この人について、日本では「イギリスの俳優」と言われることが多いが、彼は自分が「スコットランド人」であると強固に意識し、公的な言動でもそれをはっきり伝えてきた。

彼の生涯については、ウィキペディアが詳しい。また、BBCのオビチュアリーが読みやすく、通り一遍でなくて味わい深い。

en.wikipedia.org

www.bbc.com

エディンバラの労働者階級の地域で、19世紀にアイルランドからスコットランドに移り住んだカトリックの家の出である工場勤務の父親と、プロテスタントで家政婦(掃除係)の仕事をしていた母親の間に1930年に生まれたコネリーは、劣悪な住環境で育ち、小学校を出てすぐに働き始めた。牛乳配達や現場仕事といったいろいろな仕事をする中で、劇場での作業を通じて演劇と接したという。エディンバラ美術学校(美大)で絵のモデルのバイトもしていて、サッカーではかのマット・バズビーに「うち(マンチェスター・ユナイテッド)でプレイしないか」と誘われたほどだったというが、サッカー選手になってもプレイできるのはほんの短い間だからということでその道には進まず、ボディビルの大会で耳にしたミュージカル劇のオーディションを契機に芸能界入りした。1950年代前半のことである。

まだ芸能界に入る前の16歳のとき、コネリーは海軍に入隊し、そのときに腕にタトゥーを入れた。"Mum and Dad" というタトゥーと、"Scotland Forever" というタトゥーの2つで、後に、スコットランドの英国(連合王国)からの独立を目指す政党、Scottish National Party (SNP)*1の党員となり、1990年代に住居をカリブ海バハマに移したあともSNPに金銭的寄付を続けていた(2001年に英国の法律で国外からの政治団体への寄付が禁止されるまで続けられていたという)。この件では、10年以上前に日本語圏ではかなり劣悪な誤情報が流されていたのでちょっと書いたものがある*2、それについてのコネリーの発言は、今年8月に90歳の誕生日を迎えたときのスコットランドの新聞『ナショナル』の記事にまとめられているものが、文脈があって読みやすいだろう。

長くなったが、前置きはここまでにして、以下本題。

今回の訃報に、コネリーがずっとサポートしてきたSNPの政治家たちも哀悼の意を表している。個人的にも親交のあった前党首アレックス・サモンドもステートメントを出しているが、ここでは現在のスコットランド自治政府のトップ(首相)であるニコラ・スタージョン現SNP党首のツイートを見てみよう。彼女は6件のツイートを連続投稿してコネリーをしのんでいる。

 

最初の1件: 

 "I was heartbroken to learn ~" という書き出しは、悲報を受けての反応の定型表現である。ここで "I was" と過去形になっているのは、後続の "this morning" との連携であり、通例、悲報を他者に伝えるときは過去形ではなく現在形を使う(「これを書いている今」の筆者の気持ちを反映するため)。この "to learn ~" は《感情の原因・理由》を表すto不定詞(副詞的用法)で、この文は「今朝、サー・ショーン・コネリーの逝去を知り、非常な悲しみをおぼえました」の意味。

2番目の文は現在形を使っている。また、"nation" を受ける代名詞としてitではなくshe/her/herを使っているのは間違いではなく、英語の伝統的な語法である(国や船などを受ける代名詞としてsheを用いる)。

また、「~出身の(偉大な)人物」を言うとき、~'s son/daughterという表現を使うことも、英語ではよくある。

 

2件目のツイート: 

 これは、文法としては特に解説するところもない。あえて言えば、最後の《one of the + 最上級 + 複数形》の形に注意が必要である。

 

3件目のツイート: 

 これも文法的には特に解説が必要なところもなく、すっと読めるはずである。最初の "will be remembered" は《助動詞+受動態》で「ショーンはジェイムズ・ボンドとして最もよく記憶に残されるでしょう」の意味。そのあとに "but" で「ボンドだけではなかった」ということが語られ、次の文も同じようにbutを使った《対比》の構造で、「世界的な大人物であったけれども、何よりも国を愛し誇りを抱いたスコットランド人でした」としている。その具体的なエピソードとして、1999年のスコットランド議会 (the Scottish Parliament) の開会式典に言及している。

その映像は私には探し出せなかったが、1997年のレファレンダムでスコットランドに議会(自治議会)を設立することが支持されたあとのスコットランドのメディアSTVのインタビューの映像があった。

www.youtube.com

2020年、今目の前にある現実と照らし合わせて聞くと、刺さる発言である。

 

スタージョンのツイート、4件目: 

これも特に解説すべき点はないだろう。強いて言えば、"those of us who share that belief owe him a great debt of gratitude" の構造をとるのが少し難しいかもしれない*3定型表現としては、故人について語るときはこのように過去形 (He was ... の形) を使うことに注意しよう。

 

5件目: 

 "It was a privilege to have known Sean." (構造としては《it is ~ to do ...》の形式主語)で《完了不定詞》が使われていることに注目しよう。「過去において特権であった」+「その前にずっとショーンと知己を得ていたことが」という構造である。

その次の文、"When I last spoke to him it was clear even then that his health was failing" も《形式主語》だ。ここではスタージョンは「健康状態が悪化しつつあった」としているが、"his health was failing" は、高齢者について使うときは「認知症が進んでいた」ということを言う婉曲表現であることが多い。

このツイートの最後の "will miss him" の3連発は、胸に迫るものがあるが、スピーチ調の文面である。

 

最後の6件目: 

"My thoughts and condolences are with ~" は、遺族にかける言葉としての定型表現で、とてもフォーマルなものである。Micheline(ミシェリーヌ)はコネリーの配偶者の名前で、「ミシェリーヌさん、お子さんたち、またご家族ご親族のみなさまに、深く哀悼の意を捧げます」という意味の文。

最後は「サー・ショーン・コネリー、安らかにお眠りください」。

 

英語学習者としては、1つ目と6つ目を、自分で使いたいときにひな形として使えるようにしておくとよいだろう。特に6つ目はこのまま暗記しておいてよい。

 

007は全然好きではないのだが(80年代にはすでに、女性の扱いがあまりに古臭くなっていて耐え難いものになっていた)、ショーン・コネリーの映画は、世代的に、娯楽映画としてよく見ている。スコットランドのニュースでこの人の名前が出てくることももうほとんどなくなるわけで、寂しくなる。合掌

 

※4900字超えてる。

 

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https://twitter.com/NicolaSturgeon/status/1322521609249456129

 

参考書:  

ジーニアス英和辞典 第5版

ジーニアス英和辞典 第5版

  • 発売日: 2014/12/17
  • メディア: 単行本
 

 代名詞のsheのことは、辞書を見ると書いてあるよ。

 

*1:日本語にするなら「スコットランド国民党」とすべきだが、「国民」という日本語をここで持ち出すのは事態をわかりづらくしてしまうので、本ブログでは一貫して「SNP」を用いる。なお、日本語圏で見かける「スコットランド*民族*党」は誤訳といってよいようなひどい訳である。SNPは「民族主義」を掲げているわけではない。

*2:スコットランド独立」のための政治運動と、「アイルランド独立」と誤解された「統一アイルランド達成」のための武装闘争をごっちゃにした非常に質の低い誤情報だが、なんと、プロの書き手がやらかしていた。

*3:"those of us who share that belief" が主語でwhoは関係代名詞、"owe" が述語動詞で、"owe him a great debt" は「彼には大きな借りがある」の意味だが、"owe him a great debt of gratitude" も一種の定型表現で「どんなに感謝しても感謝し足りない」ということ。

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